鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

棚卸資産の評価

今回は、単純に、棚卸資産の評価に

ついて説明します。


棚卸の評価については、評価基準、

評価方法、評価単位という3つの

評価に関するルールがあります。


このうち、評価基準と評価方法は、

言葉だけでは違いが分かりにくい

ものですが、評価基準とは、どの

タイミングの価額を評価の基準と

するのかというルールで、一方、

評価方法とは、棚卸資産をひとつ

ずつ評価するのか、まとめて評価

するのか、まとめて評価する場合、

どのように評価額を計算するのか

というルールです。


具体的には、評価基準は、(1)

棚卸資産を取得した時の価額

(取得原価基準)、(2)棚卸

資産を評価する時の時価(時価

基準)、(3)取得した時の価額と

時価のいずれか小さい方の金額

(低下基準)の3つですが、

一般的な棚卸資産は低価基準で

評価することが原則となって

います。


(この説明の仕方は、厳密には、

棚卸資産会計基準に示されている

ものとは異なりますが、理解を

容易にするために、あえて変えて

いることをご了承ください)


そして、評価方法は、(1)個別法、

(2)先入先出法、(3)平均原価

法(総平均法と移動平均法)、(4)

売価還元法、(5)最終仕入原価法が

あります。


それぞれどのようなものかという

ことについては、この記事では

説明を割愛します。


また、評価単位とは、棚卸資産

1つずつ評価するか、複数で評価

するかというルールです。


原則は1つずつですが、複数で

評価することが妥当という場合も

あります。


例えば、自動車とその付属品を

評価する場合、それぞれ個別に

いくらで売れるかという見方で

評価するよりも、合わせて販売

するときの価額で評価することが

妥当ということができます。


ところで、これらの棚卸資産

評価に関するルールは、なぜ

大切なのでしょうか?


簡単に言えば、棚卸資産の評価は

難しいということです。


例えば、会社の建物は取得価額を

減価償却していくだけで価額を計算

することができますが、棚卸資産は、

短期間でたくさんの数量を扱うため、

単純に計算できないということです。


だからこそ、複雑な規則があります。


でも、これも当たり前のことであり、

大切なことは、このルールを守ると

いうことです。


私はこれまで、正確な会計情報を

把握したり銀行に提供することが

大切だと述べてきましたが、規則に

基づかない方法で棚卸資産を評価

することは避けなければなりません。


確かに、会計のルールに基づく価額が

必ずしも正確な価額ではないという

こともありますが、それでも、会計の

ルールに基づく価額には合理的な

理由があります。


会社の事業の改善のためには、統一

されたルールに従うことが基本で

あると私は考えています。


なお、棚卸資産に関する知識は、

拙著「図解でわかる棚卸資産

実務いちばん最初に読む本」

( http://amzn.to/1UjplCq )を

ご活用いただきたいと思います。

 

 

 

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ステークホルダーも組織の一員

ステークホルダー(利害関係者)とは、

会社の事業に関わる人(組織)を指し

ます。


より具体的に示せば、顧客、株主、

銀行、仕入先、行政機関、地域社会

などです。


ところで、会社を組織としてとらえた

とき、その組織に所属する人はどう

いう人たちでしょうか?


多くの場合、経営者と従業員を指すと

考える人が多いと思います。


それは、「組織は人で構成される」と

考えることが一般的だからでしょう。


この考え方が間違っているわけでは

ないのですが、事業を運営する場合、

会社の組織はステークホルダー

含まれていると考えるべきと私は

考えています。


例えば、会社と従業員の関係は、

法律上は雇用契約に基づいて

いますが、経済的には労働力の

提供と賃金の支払という関係で

成り立っています。


これと同様に考えれば、仕入先は

商品の提供を受ける代わりに代金を

支払う相手であり、顧客は代金を

受け取る代わりに商品を引き渡す

相手です。


株主は、出資金の提供を受ける

代わりに配当金を支払う相手で

あり、銀行は融資を受ける代わりに

金利を支払う相手です。


行政機関は、税金を支払う代わりに、

社会全体の調整を行ったり、時には

保護を受ける相手です。


地域社会は、直接の金銭の支払いは

ないものの、良好な関係を維持する

ことで、潜在的な顧客を産み出したり、

優秀な従業員を育成してくれる相手と

なります。


ここまで書いたことは、多くの方が

理解されておられることであり、

かつ、良好な関係を作るべき相手で

あると考えておられることでしょう。


しかし、組織を人の集まりという

考え方ではなく、事業で最大の利益を

得るために経営者が関与する相手と

とらえた場合、関わり方が変わって

くるのではないでしょうか?


例えば、文房具の通信販売で有名な

アスクルでは、飲食店向けの事業も

行っていますが、食器やユニフォーム

などは、過去の販売先からどのような

デザインが優れているのかという

情報を収集し、より使いやすいものを

企画製造して販売しています。


飲食店で使う器具は、かつては、

「社内」で検討していたものですが、

仕入先からより有益な情報が得られる

ようになり、このような関係にある

仕入先は、事業にとって強力な協力者

ということになるでしょう。


これについても多くの方は理解して

おられるでしょう。


ただ、今回お伝えしようとしたのは、

ステークホルダーを自社の組織の

一員と捉えているかどうかという

ことです。


仕入先だから、こちらの思い通りに

ならなければ取引を解消しよう」とか、

「うるさい顧客にはもう販売しない」

というお金だけの関係になっていない

でしょうか?


さらに、最近、問題になっている

ブラック企業というのは、従業員で

さえ、消耗品のように扱っても

構わないという考えによるものでは

ないでしょうか?


経営者の役割を「ステークホルダー

構成される組織の利害関係を上手に

調整し、最大の効果を得ること」と

定義した場合、「思い通りにならな

ければ…」という考え方で行動して

いる経営者は、あまり評価されない

方だと私は考えています。

 

 

 

 

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経営者保証を外すには

最近、自社の融資取引の条件となって

いる、経営者の保証を解除するには

どうすればよいかという相談を受ける

ことがあります。


まず、どのような会社は経営者の

保証なしに融資をしてもらえるのか

という目安は、中小企業庁金融庁

公表している、経営者保証に関する

ガイドラインに示されています。


(ご参考→ https://goo.gl/2HjSWS


そのポイントは次の通りです。


(1)会社と経営者の資産が区別

されている。


(2)会社の業績が良好である。


(3)会社の財務状況について、

適宜、情報開示が行われいる。


少し本旨から外れますが、よく、

報道機関は、銀行は経営者の資産に

頼って融資をしているというような

報道をしていますが、それは誤解で

あると私は考えています。


むしろ、経営者との保証契約を

結んだり、万一、会社が借入の返済を

滞ったときに、保証人に返済を求め

たりするという手間が増えてしまう

ので、経営者保証がいらないような

会社に融資をする方が楽であると

考えていると思います。


そうはいっても、前述のような条件を

満たさない会社が多いことから、

経営者の保証を求めざるを得ない

ようです。


ただ、それも、経営者の財産をあてに

しているということでもありません。


そもそも、経営者に潤沢な財産が

あれば、会社は銀行から融資は

受けません。


経営者の財産を会社につぎこんでも

それでも資金が不足するから、

銀行から融資を受けていると考える

ことが自然でしょう。


では、なぜ銀行が経営者に保証人に

なってもらっているかというと、

中小企業は、会社と経営者は、

実態としては同一人物であると

銀行は捉えているからです。


例えば、事業のための運転資金と

して受けた融資金を、経営者が

個人的に使ってしまい、その後、

会社が倒産したときに、経営者が

保証人になっていなければ、銀行は

経営者に対してお金を返すことを

求めることができなくなります。


これは極端な例ですが、銀行が

経営者に連帯保証を求める背景

には、公私混同や放漫な経営を

牽制することが主な目的になって

います。


話しを戻して、前述の3つの

を満たせば、経営者

保証を外してもらえる可能性は

高くなります。


しかし、実際には、一朝一夕に解除

してもらえる例は少ないようです。


その理由のひとつは、3つの目安は

明確な基準が示されていないこと

です。


業況がよい会社、資産の区分、情報

開示の程度は、銀行の主観によって

判断されるため、融資を受けている

側が目安を満たされていると考えて

いても、必ずしも銀行側が保証を

解除してくれるとは限りません。


これは、融資を受けている側に

不利とは思いますが、前もって、

保証を解除して欲しいと考えて

いるが、どういう状態になれば、

保証を解除してもらえるのかと

いうことを伝えて、それを満たす

ようにしてから解除をしてもらう

という方法を踏むことになる

でしょう。


もうひとつの解除が難しい理由は、

銀行側は現状を変えたがらない

場合もあるようです。


これは論理的ではないので、説得

して解除してもらうしかないの

ですが、銀行職員としては、

融資条件を緩める(=保証を解除

する)ということを決断する

ことは、心理的に負担が大きい

こともあるようです。


これは、規模の小さい銀行ほど

その傾向があるようです。


仮に、前述の3つの目安を満たして

いるのにもかかわらず、それでも

明確な理由を示さずに解除に応じ

ようとしない銀行がある場合は、

ほかの銀行に借り換えをすると

いうことを示唆するなどして、

解除を交渉するとよいでしょう。


ここで、保証解除に関して注意して

いただきたいことを述べたいと思い

ます。


金融庁中小企業庁も、経営者保証を

解除することについては、肯定的に

考えているものの、とはいえ、保証を

条件としないことによって、融資額が

減ってしまう可能性もあります。


ある程度事業が軌道に乗っている

会社であれば別ですが、これから

創業しようとする会社、創業して

間もない会社は、経営者保証を

条件としないことで、融資額が

減らされてしまうこともあります。


これはケースバイケースで判断する

ことになりますが、あまり、保証を

解除することにこだわり過ぎると、

かえってそれが資金調達の足かせに

なる可能性もあるということに

注意が必要です。


最後に、この記事の本旨とは直接

関係ないのですが、経営者保証が

条件とされない融資取引をしている

会社というのは、銀行から評価

されている会社であるということを

述べたいと思います。


当初の目的としては、経営者保証を

外すということですが、それは

銀行から評価されているという

証でもあるので、多くの経営者の

方には、経営者保証を外して

もらえるような会社を目指して

いただきたいと私は考えています。

 

 

 

 

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強気の折衝は得策ではない

私が銀行勤務時に渉外係で融資先を

訪問していたときのことですが、

半数以上の融資先の経営者からは

いつも叱られていました。


叱られる内容は、礼儀作法や、その

会社のローカルルールを守ること、

銀行の融資姿勢や金利の高さなど、

様々でした。


確かに、私も発展途上の人間で

あった(いまでもそうですが)ので、

叱られることがあっても当然なの

ですが、それにしても叱られ過ぎ

ではないかと思うことはよくあり

ました。


はっきり言えば、理不尽なことで

叱られることもありました。


要は、銀行職員はいつも叱られる

対象であったということです。


では、なぜ一方的なのかというと、

融資交渉でイニシアティブをとり

たいという意図によるものでしょう。


もちろん、融資を受ける側が何でも

銀行の意向に従う必要はなく、主張

すべきことは主張して構わないの

ですが、中には、聞かれたくない

ことを聞かれないようにするという

ことも目的としていることもあり

ました。


例えば、前々期は黒字決算であった

会社が、前期は赤字を計上した上に、

融資の増額の依頼があったとします。


そういったときに、「前期は赤字と

なった原因をどのように分析して

いますか」などと社長に訊くと、

極端な場合、「うちの会社に融資を

したくないのか?」と、ちょっと

脅し気味に返答されることもあり

ました。


すべての会社がこのような会社では

ありませんが、どちらかというと、

丁重に対応を求められる会社の方が

多かったと記憶しています。


ここで、「融資を受ける側がそんなに

横柄なら、融資を断ればよいのでは?」

とお考えになる方も多いと思います。


しかし、それはなかなかできません

でした。


その理由のひとつは、競合する銀行が

あったからです。


多少は無理を聞き入れなければ、他の

銀行に融資シェアを奪われるという

状況がありました。


もうひとつは、私が勤務していた地方

銀行は、明確に融資を断る客観的な

状況がなければ、なかなか融資を断り

にくい状況にありました。


すなわち、業況がかなり悪化したと

いうような状況でない限り、その

会社と融資取引を解消すると、

「●●銀行は、○○会社を見捨てた」

というような風評が営業地域に

広がってしまいかねないので、

単純に、「あの会社は気に入らない」

という理由だけでは融資を断ることは

できませんでした。


それでも、過剰な要求をする会社は

融資を断ることはありました。


その際も、単に「融資はできません」

という説明ではなく、十分に時間を

かけて説明をして断るという手順は

欠かせんませんでした。


ここまでの文章では、融資を受ける

側の会社の社長はひどい人が多い

という内容になっていますが、

必ずしもそうとは限りません。


ひとつは、融資先の経営者の方も、

当然のことながら、多くの顧客に頭を

下げて売上を獲ってきています。


ですから、自社に来る銀行の渉外係の

気持ちは十分に理解しているでしょう。


そして、銀行に対して金利を支払って

いる自社は、銀行から見れば顧客で

あるわけですから、銀行に対しては、

きちんと言いたいことは言おうとする

気持ちになるでしょう。


そして、自社担当の渉外係が、自分

より、年下の場合が多い訳ですから、

やはり粗が見えれば指摘したくも

なるでしょう。


そして、会社経営者が最も恐れる

ことは、「貴社から申し込まれた融資は

お受けできません」と銀行から言われる

ことです。


そのようなことを言われないようにする

ために、銀行には強気で折衝に臨みたい

という気持ちになるでしょう。


ここまで、私の経験を書きましたが、

結論は、これからは、単に強気だけで

銀行に融資折衝をすることは得策では

なくなりつつあるということです。


確かに、いい意味で強気になることは

大切ですが、単に表面を取り繕う

だけの強気では、銀行は融資を引き

受けなくなるということです。


その背景としては、銀行の数が、

合併や統合によって減ってきている

一方で、銀行職員1人あたりの担当

先数が増えていることから、融資

交渉のための時間はあまり割いて

もらえなくなりつつあります。


そのような状況であれば、きちんと

した説明がなければ、銀行職員に

とって負担の大きい、赤字の会社で

説明も十分に聞くことができない

という会社への融資は断られて

しまう確率は高まるでしょう。


また、最近、金融庁は金融検査

マニュアルを廃止する意向を示す

など、銀行の自主性を重んじる

方針を示しています。


これは、銀行にとっては、事業の

収益は自己責任であるということ

でもあります。


だからこそ、手間のかかる融資先

への融資は避けようとする傾向が

強まるということです。


このように書くと、会社は銀行の

手間を減らす配慮をしなければ

ならないのかと感じる方もいると

思います。


しかし、銀行は融資審査の手間を

減らすということを求めている

訳ではありません。


「中小企業の会計に関する基本要領」

( https://goo.gl/hR8Y2x )に基づく

会計を行い、月次決算を行うだけで、

多くの場合は、銀行は十分な情報を

得ることができます。


むしろ、会計の体制をあるべき状態に

するということです。


そうすることが、融資対策だけで

なく、自社の事業の改善にも活用

できるようになります。


ちょっと青臭いですが、これからは

正攻法でなければ融資は受けにくく

なると私は考えています。

 

 

 

 

 

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経営戦略と経営戦術

きょうは、私が指摘するまでもなく、

至極当然のことを書きたいと思います。


事業改善のお手伝いをしている中で、

その会社が、なぜ、なかなか改善が

できないのかということを考えると、

多くの場合、最終的には、そのような

会社は、場当たり的な活動が多いと

いうところに行きつきます。


もちろん、場当たり的な活動よりも

長期的な視点に立った活動をして

いる方が、より優れた業績に結び

つくと考える方は多いと思いますが、

それでは、なぜ、それが実現できない

会社も多いのかというところが、

コンサルタントとして私も大きな

関心をもって探求しています。


とはいえ、その原因はひとつだけでは

ないようです。


そこで、そのうちの大きな要因を

ひとつあげると、経営者の方は、

経営戦略よりも戦術にばかり目が

行がちということが考えられます。


例えば、「街の電気屋さん」が大手

家電小売店との競合に負けないよう、

きめ細かいサービスを提供するという

「戦略」を採ることにしたとします。


しかし、きめ細かいサービスの提供は

一朝一夕にはなかなか実現できません。


顧客カードの整備や、従業員の育成

などが前提となります。


きめ細かいサービスの実践に着手

しても、その翌日から効果が現れる

という訳でもありません。


そう考えると、「インターネットで

集客する」「目玉商品で来店客を

増やす」「イベントを実施する」

などといった、短期的には効果が

見込まれる「戦術」に目が行きがちに

なります。


そこで、長期的にはきめ細かい

サービスの実現をめざすものの、

当面は短期的な戦術も合わせて実践

するということを考えたりもする

でしょう。


これもひとつの方法だと思いますが、

その場合、短期的な目標に向けた

活動と合わせて、長期的な目標に

向けた活動も意識して実践し続ける

ことは、少し難しくなるようです。


なぜなら、数年後に実現するための

課題は、今週、今月に実現しなければ

ならないための課題に劣後されやすく、

それを根気よく実践することは、

強い精神力が必要になります。


また、短期的な「戦術」で効果を

感じることがあると、なかなか効果が

現れない「戦略」を実践することへの

関心が薄れてしまうということも

考えられるでしょう。


ここで話を戻して、「戦術」ばかりを

実践している会社は、顧客からどの

ように評価されるのかということを

考えてみるべきと思います。


例えば、商品の安さを売り物にする、

イベントを実施している、などといった

お店はいくらでもあります。


そのお店がないと困るというような

顧客はあまり多くないでしょう。


ここで、少しかっこいい言葉を使うと、

「使命(ミッション)」「事業領域

ドメイン)」「理念(ビジョン)」の

いずれでも構わないのですが、この

ようなものが感じられない会社は、

顧客にとってあまり支持はされないと

私は考えています。


そして、ミッション、ドメイン

ビジョンを持った会社を実現させる

役割を持つものが経営戦略です。


そこで、経営戦略が大切になるわけ

です。


そして、このことは、多くの方が

当然とお考えなのですが、なかなか

実践できないでいるようです。


今回の結論としては、経営戦略を実践

できるような経営者の強い意思、

そして、それを実践できるだけの

経営資源をともなって事業に臨む

ことが、大きなポイントであると

いうことです。

 

 

 

 

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銀行は粉飾を見抜くことはできるか

今回は、銀行は融資先の粉飾を

見抜くことができるかどうかと

いうことについて述べたいと

思います。


なお、あらかじめお断りして

おきたいのですが、融資先の

粉飾については、人それぞれに

考え方があるので、この記事は、

私ひとりが考えているものであり、

広く銀行の融資担当者が同じ

ことを考えているわけではない

ということをご承知おきいただき

たいと思います。


粉飾の前に、まず、銀行は、

融資先の決算書についてどう

見ているのかということに

ついて述べたいと思います。


実は、銀行は融資先の決算書の

信憑性はあまり高くないと考えて

います。


ここで、顧問税理士の方も含めて

「当社の決算書はきちんと税務署に

提出し、受付印も押印されている

正式なものだ」と反論される方も

いらっしゃいます。


これについては、税務署が受付

したものであるし、また、株主

総会で承認されたものであると

いう面で、その会社の決算書は

「正式」なものであるという

ことに変わりはありません。


そして、銀行は、その正式な

決算書の数値は重んじます。


しかしながら、決算書が正式で

あることが、必ずしも実態を

表していることを保証している

とは限りません。


会計については「利益は意見、

現金は事実」という有名な言葉が

ある通り、決算書はどうしても

恣意性が入る余地があります。


これは、会社の利益が多くなり

そうなときは、納税額を減らそう

として利益額を少なくする調整が

行われることもあれば、会社が

赤字になりそうなときは、銀行

からの評価を下げないように、

黒字にしようとする調整が

行われることからも明らかです。


このような恣意性は避けられない

ものですが、さらに、「当社は

『中小企業の会計に関する基本

要領』( https://goo.gl/hR8Y2x )

を採り入れている、または、

『中小企業の会計に関する指針』

( https://goo.gl/knky89 )を

採り入れているので、恣意性は

少ない」とお考えの方も多いと

思います。


これについてはその通りですが、

それでも、中小会計要領や中小

会計指針は完全に恣意性を排除

することはできず、それぞれの

許容する範囲で利益の調整は

可能です。


これは、中小会計要領や中小

会計指針が意味はないという

ことではなく、会計はどう

しても恣意性がはいる余地が

あるということです。


ここまで恣意性について述べて

多く述べてきましたが、私が

伝えたいことは、決算書は恣意

性が入っているという前提の

ものであるということです。


ここで、たいへん恐縮なの

ですが、それは、ステーク

ホルダーの数が比較的少ない

中小企業はその傾向が強い

ということです。


そこで、銀行は、中小企業の

収支状況については、決算書

だけに頼らないようにして

いるということです。


具体的には、口座の異動、

経営者の銀行に来る頻度、

同業者からの風評などにも

注意して、実態と決算書の

内容に乖離がないかを確認

しているということです。


そして、本日の本題である、

粉飾を見抜くことができるか

ということですが、実は、

これは、多くの場合、前もって

見抜くことはできないという

ことが私の結論です。


ここで、私の指す粉飾の定義

ですが、それは会計のルールを

破って決算書を作成している

ということです。


これは、悪意をもって行われる

ので、その隠しごとを第三者が

見抜くことは極めて困難です。


そして、そもそも、会社の

決算書は必ずしも実態を正確に

表しているとは限らないため、

単に、「あの会社は怪しい」と

いうだけでは、粉飾をしている

とは断言できない訳です。


しかしながら、銀行は、その

ような会社に対して何ら対策を

していないのかというと、

やはり、長年の経験をもって

粉飾をしているのではないかと

感じられる融資先に対しては、

それなりの対策をしています。


もし、粉飾をしていることが

濃厚であれば、融資額を減らす

ことをするでしょう。


融資額が大きい場合は、万一の

ときに供えて、損失額が最小限と

なるように対策をとります。


結論としては、粉飾をしているか

どうかは直接的には把握できない

ものの、そもそも銀行は決算書が

必ずしも実態を反映しているとは

限らないという前提で融資先を

見ているので、それなりの対応を

しているということです。


なお、本論からは外れますが、

粉飾決算は、ルールを外れる

行為ということだけでなく、

いま行うべき課題を先送りし、

さらに解決を難しくするだけの

ことであることから、決して

行うべきではないということを

付言いたします。

 

 

 

 

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ルールを生かすためのルール

エビ加工会社の株式会社パプアニュー

ギニア海産という会社の工場長を

務める、武藤北斗さんの著書「生きる

職場」( http://amzn.to/2vadpdM )を

読みました。


パプアニューギニア海産は、出勤・

退勤時間は自由、嫌いな作業はやらな

くてよいという取り組みが注目を

浴びています。


「本当に、出勤・退勤時間は自由で、

嫌いな作業はやらなくてよいという

ことで、事業運営が成り立つのか」

という疑問は多くの方が持つと思い

ますが、それは、同書を読むことで

理解できると思います。


私が、この本をこの記事で取り上げ

たいと思った理由は、「ルールを

生かすためのルール」というところが

重要だと思ったからです。


具体的には、同社では有休を取る

ときには、連絡をしないという

ことをルールにしているそうです。


しかも、休んだ後から、休んだ日を

有休とすることも可能だという

ことです。


このようなことにしている背景と

しては、武藤さんは「有休をパート

タイマーにも与えている」などと

喧伝している経営者は、実際には

無言のプレッシャーで自由に有休を

取得できるようにはしていないと

考えているからだそうです。


本当に従業員に有休を与えたいので

あれば、それを妨げる要因を取り

除かなければなりません。


もし、表面的に制度を整えても、

それが実行力のともなうもので

なければ、画餅となってしまい、

意味はありません。


そうであれば、ルールがきちんと

実現するようにする必要がある

でしょう。


ですから、有休を取るときは、

連絡をしないということを

武藤さんはルールにしたようです。


このように書くと、やはり、

「確かにその通りかもしれないが、

世の中は、必ずしもそのような

建前が通用とは限らない」と

多くの方が感じることでしょう。


しかしながら、武藤さんは、この

ようなルールを実践していながら、

人を性善説でとらえている訳では

ないようです。


だからこそルールを重んじている

ようです。


有休を与えるというルールを作り

ながら、それを有形無実のものと

してしまったら、そのルールの

もとで働く人たちは、余計に

本音と建前を使い分ける人に

なってしまうでしょう。


だからこそ、表と裏がない環境を

整えることに武藤さんは注力されて

いるのだと思います。


今回の結論は、経営者の方が

従業員の方に対して、効率的な

働き方をして欲しいと思うので

あれば、それなりの環境整備を

しなければならないとうこと

です。


パプアニューギニア海産さん

では、そのための取り組みの

ひとつが、出勤・退勤時間は

自由、嫌いな作業はやらなくて

よいというルールです。


そして、これは、同社の事業に

あった独自のルールです。


日本のどんな会社にも一律に

適用できるルールではありま

せん。


どうすれば効率よく従業員の方に

働いてもらえるのかという、自社に

合ったルールを作ることが経営者の

役割であり、それこそがまさに

「会社経営」ということであると、

私は武藤さんの本を読んで感じ

ました。

 

 

 

 

 

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