鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

顧客との距離を縮める事業

先日、ITコンサルタントの方とお話しを

しました。


その中で、日本の中小企業で、なかなか

情報化武装が進まないのは、中小企業が

情報リテラシーを高める機会が少ないから

だと思われる。


もし、システムベンダーが、その役割を

担っていれば、システムベンダーの売上も

伸びるのではないか。


そして、それは、自動車運転免許証を

持っている人が少ないのに、自動車を

たくさん販売しようとしているのと

同じだ、というお話しをしました。


このことは、なかなか気づきにくいこと

ではなく、多くの人が気づいていると

思いますが、なかなか実践することが

難しいことなのだと思います。


ただ、事業は違うものの、それを実践し、

成功した会社があります。


ハーレー・ダビッドソン・ジャパンです。


同社は、一時、販売不振に陥れましたが、

オートバイを売るという考え方を変え、

オートバイのあるライフスタイルを売る

という考え方のマーケティングを実践し、

業績を回復させたことは有名です。


具体的には、同社の製品を購入した顧客を

ハーレー・オーナーズ・クラブという

組織に入会させ、会員同士でツーリングの

イベントを行ったりするなどして、

顧客から同社製品への忠誠度を高めて

います。


そのことが、顧客ひとりあたりの

同社からの製品購入額が増加させることに

つながりました。


このような商法は決して少なくなく、

例えば、IBMはコンピューターの

製造業を営んでいたものの、徐々に

コンピューターを活用したコンサル

ティングに事業をシフトし、ついには、

コンピューターの製造事業を売却して

しまいました。


ABCクッキングスクールは、当初、

調理器具を販売するために料理教室を

始めたものの、いまでは、クッキング

スクールが本業になっています。


カラオケ店を営んでいるシダックスも、

事業所向けのお弁当の販売から、社員

食堂の運営を経て、食事を提供する

カラオケ事業に進出したという

経緯があります。


ものが売れないというときは、明らかに、

顧客と自社製品との間に距離があります。


ですから、前述の例のように、その距離を

縮めるための事業に進出するという

ことは、その解決策になるでしょう。


ただ、それは難易度の高い課題です。


でも、年を追うごとに会社の選択肢は

減っているとも私は考えています。

 

 

 

 

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経理事務を分散する

このことを指摘する人は少ないと思うの

ですが、事業が大きくなるかどうかの

壁のひとつは、経理事務を分散しているか

どうかということです。


なぜ、経理事務を分散しなければ事業は

大きくならないのかというと、直接的な

連関はありませんが、そのひとつは、

分散しなければ効率的ではないという

ことです。


では、なぜ効率的ではないかというと、

発注業務は、事業の現場で行うことが

多いでしょう。


発注をするのであれば、それと同時に、

勘定の記帳も行う方が効率的です。


また、販売についても、販売担当者が

販売データを作っているわけですから、

やはり、それと同時に勘定の記帳を

行う方が効率てきです。


そして、もうひとつの理由は、事業に

携わる現場で勘定記帳を行うように

なると、会計に関する知識が増えたり、

関心が高まったりする効果が期待

できます。


むしろ、事業が拡大したときは、

現場に権限委譲する必要があり、

会計の知識があるということは

その前提となるでしょう。


そして、今回の内容のようなことを

書いた背景には、次のようなことが

あります。


ひとつは、経理部が聖域化している

ということです。


経理部といえども、効率化を目指さ

なければなりませんが、いわゆる

ルーチン業務にしがみついて、

効率化を拒むような会社は、

組織の育成に問題があるでしょう。


もうひとつは、会計の知識を従業員

全員に身に付けさせる余力がないと

いうことです。


今回は、会計に焦点をあてていますが、

事業拡大にともない、自律的に仕事が

できるようになるためには、会計を

初めとした幅広い知識と能力を、

従業員の方たちに身に付けてもらわな

ければなりません。


むしろ、会計は初歩的な知識であり、

それを身に付けさせることができな

ければ、事業の規模は自ずと限界が

あるでしょう。


長期的に事業を拡大したいと考えて

いる経営者の方は、それにともなう

組織の能力も高めることが必要です。

 

 

 

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銀行の手間を省く

私の仕事の大きな部分は、融資申請の

お手伝いが占めていますが、その際、

どうやって銀行に応諾を受けるかという

最大のポイントは、銀行の手間を省いて

あげるということです。


例えば、「自社はこんな状況です」という

説明をした段階であれば、銀行からは

「それではこれから社内で検討します」と

いう回答をさせてしまうことになります。


しかしながら、「自社はこんな状況です。

そして、収益の見通しはこの通りであり、

融資の返済は確実に行える見通しです」

と言える段階まで資料を揃えておくと、

銀行側は、その書類の検証をするだけと

いう状況になります。


すなわち、銀行職員に代わって、融資

稟議書の付属資料を作成するイメージ

です。


もちろん、銀行も、融資申請者の都合の

いいように資料が作成されていないかと

いう疑義は持つことになりますが、その

根拠の客観性が高ければ、疑う余地は

あまり多くありません。


もちろん、この方法で100%応諾して

もらえるとは限りませんが、銀行に

考える余地を減らしておくことによって、

応諾に導きやすくなります。


とはいえ、この方法は、一般の経営者の

方には実践は困難です。


ただし、これに近い方法を実践する

ことはできます。


その代表的な方法は、毎期、利益計画書を

作成して銀行へ提出し、その後、毎月、

月次試算表と計画との差異分析をまとめて

銀行へ提出することです。


これは、結果として、融資先が資金不足に

なったときに、その理由を分析するときの

手掛かりになります。


ただ、このようなことをすると、

「銀行が自社の事情を細部まで知ることに

なり、融資が引き上げられてしまうことに

ならないか」という不安を持つ方も少なく

ないでしょう。


この疑問については、100%論理的な

回答とはなりませんが、銀行に対して

何かを隠そうとする姿勢は銀行には

伝わります。


むしろ、隠しごとがない会社は、銀行から

見ても信用が高まります。


銀行に対して「お金を貸して欲しい」と

いう依頼は、自社を信用して欲しいという

ことでもあるわけですから、お金を借りる

側も、銀行を信頼することが欠かせない

でしょう。

 

 

 

 

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好きなことの事業こそ準備が大切

事業を起こす人の動機には、自分の関心の

あるものや、自分の好きなものに関わって

仕事をしたいというものが多いと

思います。


そのことに問題があるわけではありま

せんが、そのような動機で事業を始めた

人は、他の動機で事業を始めた人よりも、

失敗してしまう例が多いように感じて

います。


(もちろん、好きなことに関わる事業で

あることから、成功する方もたくさん

いらっしゃいます)


この例で失敗してしまう人の原因は、

好きなものに関わることが目的となって

しまい、開業したことで満足したり、

そのような事業に関わったりしている

ことで満足してしまい、収益を維持

しようとするところまではあまり

注意が届かないことであると思います。


とはいえ、事業を始めるきっかけが、

好きなものに関わることであるから

ということが失敗の原因になるわけ

ではありません。


事業を始めてから、事業家として

学習していくことで、好きなことを

事業として続けていくことは十分に

可能でしょう。


好きなことがきっかけで始める事業の

例としては、飲食店が多いと思います。


ただし、飲食店の利用者は、そこで

食事をすることだけを求めている

訳ではなく、ホスピタリティや、楽しい

体験を求めているということは多くの

方が認識されておられると思います。


ところが、「飲食店を始めたい」とだけ

考えている経営者の方が、飲食店を

始めると、顧客の求めているものに

気づきにくくなってしまうようです。


また、開業前に気づきにくいことは、

従業員の方との関わりです。


人を動かすということは、経営者の方に

とって最も難しい分野でしょう。


しかも、前もって訓練しておくという

こともなかなか難しいものです。


だからといって、私は、好きなことに

関わる事業を始めることに否定的では

ありません。


事業を始めるときは、「経営者」に

なるわけですから、事業に関するスキル

だけでなく、経営者としてのスキルも

ある程度は身に付けておくことが

大切だと思います。


それを行うだけでも、「開業してみたら

こんなはずではなかった」ということを

感じることを避けることができるように

なると思います。


将来が不確実なときこそ、準備も怠らない

姿勢がより大切になってきていると私は

思っています。

 

 

 

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日報は活用するもの

私はコンサルティングをする中で、事業

計画の策定と検証、日報と定例会議の

実践を薦めています。


でも、いずれもあまり受け入れてもらえ

ません。


例えば日報は毎日記載する作業ばかりに

目が行ってしまうからでしょう。


私も、営業マン時代の10年間は、

毎日日報を書いていました。


時には、月曜日に提出する日報を、

日曜日の半日をかけて書いたことも

あります。


実に、日報は嫌なものでした。


でも、それは日報そのものが悪かった

のではありません。


当時は、職場の責任者である支店長が

「日報でしっかり部下の活動を管理して

いる」というアリバイのための日報を

書かせていたからです。


ですから、日報にネガティブな情報は

書くことはできませんでした。


もし、ネガティブな情報を書くと、

「お前がしっかりしていなから、

顧客から苦情を言われるのだ」と

怒られてしまいます。


また、ネガティブな情報を書かなければ、

それですむかというと、「日報を書いて

いるのに、なぜ、実績があがらないのだ」

と言われ、日報にはよい情報しか書けない

ものになっていました。


結局、日報は、上司の機嫌をとるための

ものとなってしまい、本来の日報らしい

日報は別に作ることになってしまうという

状態でした。


ここで、あえて悪い例を書きましたが、

それは、日報に否定的な人は、日報を

誤解しているということを伝えたかった

からです。


タビオ会長の越智直正さんは、「長嶋

選手(現、読売巨人軍終身名誉監督)の

バットを買えば、ヒットが打てるように

なると勘違いしている人が多い」と

お話しされていましたが、経営者の

方は、何か新しいツールを採り入れれば、

短絡的にそれで課題が解決すると思って

しまいがちです。


日報に限ったことではありませんが、

新しいツールを導入したときは、それを

使いこなす腕も必要になります。


日報を導入しても業績が変わらない

会社は、それを使いこなすことが

出来ていないからでしょう。


ただし、「日報を導入する」という

言い回しも不正確ですので、本当は、

「日報を活用したPDCAの実践」と

いう言い方が正しいのでしょう。


ですから、日報を使いこなせない→

PDCAができない→事業が成行管理

となっている→適切な事業が実践され

ない→業績がよくない、ということに

なるのでしょう。


そして、もし、「そんな日報は面倒だ」と

考えている方がいるとしたら、それは、

単に、「きちんとした経営が面倒だ」と

お話しされているに等しいと私は考えて

います。

 

 

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社内方針の伝え方

近年は、医療現場でインフォームド

コンセントが行われるようになりました。


これは、患者側にも知識が豊富になって

きたことも背景にあると思いますが、

患者やその家族の考えを尊重するという

面で、よいことであると思います。


恐らく、医師の方々は、かつてはあまり

必要とされていなかった説明をする

ことになり、負担を感じるようになった

かもしれません。


でも、説明をしなかったことが原因で、

のちのち、患者側から医師の過失などを

指摘されることになることを避ける

ことができると考えれば、前もって説明

することの方が、医師の側の負担を

減らすことになるものと思います。


ここで、当然、会社のことについて

これをあてはめるのですが、社長の

思いについては、あまり従業員の方々に

伝わっていないという例はたくさん

見かけます。


社長側も、自分の思いを伝えることは

大切とはわかっていても、その作業は

結構面倒なようです。


しかも、社長は「これだけ自分の思いを

伝えているのになぜ伝わらないのか」と

思っているのに、従業員の方々は、

「社長はあまり自分の考え方を説明

せずに、単に指示ばかりが降りてくる」

と感じてしまいがちです。


このことについては、私が銀行で働いて

いたときに、実感したことがあります。


銀行の支店では、6か月ごとに全体会議を

開いて、支店長の方針を支店の職員全員に

伝えます。


それは、口頭で伝え、さらに資料として

文字にしたものも配ります。


しかしながら、職員の多くは、毎日目の

前の仕事に追われ、会議の方針は、その

翌日、とまでは言わないものの、1週間

程度が過ぎれば、覚えている人は少なく

なってしまうようです。


こうなってしまう要因としては、

各職員のキャパシティが小さいという

ことも考えられますが、仕事量が多く、

職場を俯瞰して見るという余裕がない

ということもあるでしょう。


ですから、管理者としては、自らが

出した方針が定着するよう、何らかの

対策をとらなければなりません。


朝礼で方針を読み上げるということも

そのひとつと思いますが、単に、

読み上げるだけでは実感を得にくいので、

方針にしたがったよい事例を発表すると

いう工夫が必要でしょう。


私が述べるまでもなく、人の行動を変える

というのは、とても難しいものです。


しかし、経営者は、自らの方針を明文化

しても、従業員の行動にまで染み込まな

ければ意味がありません。


これは、経営者の方のご苦労される面で

あると思いますが、自らの方針は

しつこいと感じられてしまうくらい

根気よく伝えなければ、画餅になって

しまうと感じています。


説明は面倒で、そして、それを聴く側は

なかなか変わらないものですが、

前述した、医師のインフォームドコン

セントの効果を鑑みれば、その大変な

ことをすることが、実は近道なのだと

私は考えています。

 

 

 

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コンサルタントの成果報酬

先日、ある経営者の方(私の顧問先では

ない方です)と、コンサルタントは成果

報酬で仕事を受けるべきかどうかという

ことをお話ししました。


その方は、成果報酬には、やや肯定的

でした。


その理由は、もし、コンサルタント

能力が低いとき、成果報酬でなければ、

依頼主は無駄な報酬を支払うことになり、

それを避けることができるからという

ものです。


これに対し、私は成果報酬は否定的です。


確かに、コンサルタントの能力が不確か

というリスクはありますが、その一方で、

成果報酬は、コンサルタントに顧問先の

事業のリスクを負わせるということに

なります。


その場合、コンサルタント側は、顧問先の

事業の成功よりも、自分の受け取る報酬を

優先することになります。


私が成果報酬に否定的な理由は、

コンサルタントが顧問先の事業の成果の

責任を負うべきでないということではなく、

コンサルタントが顧問先の事業の当事者に

なるべきではないという考えによるもの

です。


この考え方に対しては、

コンサルタントは何のリスクも負わない

というのは、楽な商売だ」と感じることも

多いでしょう。


しかし、コンサルタントは、自らの事業に

リスクを負っています。


具体的には、顧問先から役に立たないと

思われれば、契約を切られます。


だから、顧問先に満足してもらえるよう

努力しなければなりません。


これに対しても、

「顧問先の業績が上がることで顧問先は

満足してもらえるのだから、コンサル

タントが成果に責任を負うことと何が

違うのか」という疑問を持つ方がいると

思います。


この疑問については、2つの回答を

行いたいと思います。


ひとつは、業績を上げる義務を

コンサルタントに課してしまうと、

コンサルタントは業績の悪い会社の

コンサルティングはしなくなって

しまうということです。


業績の悪い会社であっても、コンサル

ティングを必要とするわけですから、

業績がよくても悪くても、基本的に、

事業の責任は経営者にあるという

スタンスは免れないでしょう。


ふたつめは、もし、成果報酬でコンサル

ティングを請け負ったコンサルタント

支援で会社の業績が向上したとき、

その会社の経営者は、どれくらい満足

できるでしょうか?


成果報酬でコンサルティングを受け

負ったコンサルタントがいる以上、

業績が向上しても、その手柄の一部は

そのコンサルタントのものです。


そして、そのコンサルタントは、

コンサルティングをしたという

よりも、会社の社長の役割の一部を

担ったということになると私は

考えています。


ここまで私の意見を書きましたが、

この議論は結論は出しにくいと

思います。


ただ、私は、コンサルティング

事業の請負は明確に区別することが

大切だと思っています。


コンサルタントを名乗りながら、

会社のピンチのときに経営者に代わって、

バッターボックス立つようなことは、

そのような役割が必要かどうかはさておき、

そのことはコンサルティングではないと

私は考えています。

 

 

 

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