鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

「こと」に対する売上

この記事などでこれまで何度かお伝えして

来ましたが、現在は、「もの」ではなく、

「こと」を売らなければならない時代に

なっています。


「こと」というのは、改めて説明すると、

牛どん屋さんでは、牛どんではなく、

「低価格で短時間に食事をとれる」という

利便性を売っているということです。


ところで、自社の商品の価格はどのような

活動で稼いでいるのかということを分析

する手法として、価値連鎖分析という

ものがあります。


とはいえ、今回の記事は、価値連鎖分析を

説明することが本旨ではないので、簡単に

先ほどの牛どん屋さんを例に説明すると、

牛どんそのものの生産活動よりも、商品を

安価に提供できる仕組みと、短時間で

商品を提供できるオペレーションが、

牛どんの価値を作っているということに

なります。


しかし、牛どん屋さんのメニュー表には、

「牛どん並300円」といった、商品に

対して価格が書かれているために、顧客は

「牛どんを購入している」ととらえて

しまいがちです。


ところが、最近は、産み出している価値に

対して代金をもらう事業が現れてきて

います。


そのひとつは、メニコンのメルスプランと

いうサービスです。

参照→ http://www.menicon.co.jp/mels/


メルスプランでは、入会金3,000円と

月額費用(1,800円から)を支払う

だけで、コンタクトレンズの代金は

支払わずに、コンタクトレンズを使う

ことができるというサービスです。


これは、コンタクトレンズという商品を

買うのではなく、コンタクトレンズ

使って、きちんとものが見える暮らしを

過ごすことができるようにするという

サービスに対して代金を支払うという

ことになります。


定額制の別のサービスとしては、東京都

新宿区にある子―フィーマフィアという

お店が、月額制でコーヒーを飲めるという

サービスを始めています。

参照→ http://coffeemafia.jp/


このお店では、月額2,000円を払えば

コーヒーを何杯でも飲むことができます。


会員でない場合は、1杯200円ですから

11回お店に行けば得をするということに

なります。


ただ、このお店が、コーヒーという飲み

ものを提供するお店ではなく、やすらぎを

与えるお店という考え方で事業を行って

いるとすれば、2,000円はコーヒー

10杯の値段ではなく、やすらぎの対価

と言えるでしょう。


これまでは、「こと」を売りながら、

売上は「もの」の価格というところ

ばかりでしたが、これからは、売上も

「こと」に対する売上になる事業が

増えてくるのかもしれません。


そして、それは、自社の事業をより

明確にすることにもなると思います。


どうすれば適正な対価が得られるかと

考えている経営者の方は、「こと」を

売って、さらに、「こと」の対価を

得るという方法を検討してみることに

よって、業績の改善の手がかりになる

かもしれません。

 

 

 

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判断基準

先日、経営コンサルタントの木戸一敏

さんが、木戸さんのポッドキャストで、

判断基準を持つことが大切だとお話し

されておられました。


ご参考→ https://goo.gl/oTyj58


木戸さんが、かつてリフォーム会社を

経営していたとき、外注業先の職人の方と

うまくお付き合いができなかったことが

あったそうです。


最初は、気に入らないからというだけで

付き合いをやめるようなことをしては、

また、別の職人さんを探さなければ

ならないので、気に入らない職人さん

とも付き合いを続けていた。


しかし、あるとき、判断基準を設けて、

その基準に満たない職人さんには、

じっくり話し合い、それでも状況が

改善しないときは付き合いをやめる

ようにした。


そうすることで、職人さんとの紛議は

なくなるようになった、ということです。


私は、この判断基準を持つという木戸

さんの考え方は、おつきあいする職人さん

以外のことにもあてはまると思います。


例えば、「自分は、二代目経営者として

父親から旅館の社長を引き継いだ。


しかし、この時代にこの場所で旅館を

繁盛させることは至難の業だ」という

ような経営者の方とお会いしたことが

あります。


確かに、地方の旅館は経営が難しいと

私も考えます。


しかし、「経営を引き継ぐ」、「自社の

事業を旅館業とする」、「自社の事業を

行う場所を、現在の場所とする」という

ことは、果たして誰が決めたのかという

ことに疑問が残ります。


その経営者の父親は、旅館業という

事業を、現在の場所で営んでいましたが、

社長を引き継ぐことは依頼されたと

しても、どういう事業を行うか、どの

場所で事業を行うかということまで

依頼されているのでしょうか?


これは、当事者ではないから言えると

言われてしまうかもしれませんが、

旅館業を現在の場所で営まなければ

ならないというのは、変えることが

できないものではないと私は思います。


すなわち、「もうかる事業を選択する」

「もうかる場所で事業を行う」という

判断基準をその経営者の方が持つことに

よって、現状を変えることができる

可能性が残っていると私は考えます。


現状を変えることも易しいことではあり

ませんが、ゆでがえるの状態を続ける

くらいであれば、アントレプレナー

シップを持って、新しい事業に取り組む

ことの方が、収益の状況が好転する

可能性は高いと思います。


また、ここからは上から目線で恐縮

ですが、「自分は父親から儲からない

旅館業を引き継がされた」という

被害者的な立場を主張して、現状を

変えない言い訳にしているという面も

あると思います。


ここまで、旅館業を引き継いだ経営者の

方の例を書きましたが、経営者の中で

自社の事業がうまく行かない理由を

他人のせいにしてしまいがちであると

いうことは、私がここで述べるまでも

なく、多くの方が分かっていると

思います。


しかしながら、自分のことになると

気づきにくいことでもあると思います。


業況がよくならないと考えている方は、

「判断基準」を設けることで、本当に、

現状を変えることはできないのかと

いうことを確かめてみることも、現状を

打開するひとつのきっかけになるのかも

しれません。

 

 

 

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融資審査のプロセス

今回は、中小企業から申し込みされる

融資はどのように審査されていくのか

ということについて、私の経験から

書いてみたいと思います。


銀行の融資係の労力の約半分は、

既存の融資の反復融資の手続きです。


既存の融資とは、短期借入金が主な

もので、期限が到来すると、ほぼ、

同額の借入の申し込みがあるので、

その新たな融資の手続きを行います。


既存の借入の反復融資は、ある程度、

前もってスケジュールが分かるので、

取引先には、引き続き融資を受けるか

どうか、融資を受ける場合は、どういう

書類が必要かということを、2か月から

1か月前に知らせておきます。


こうすることで、既存の融資の期限が

到来しても延滞とならないように

します。


残りの30%は、新規の融資の手続き

です。


新規の融資は、当然のことながら、

事務手続きは既存の融資よりも多く

なります。


まず、融資の申し込みを受けた職員は、

「融資面談報告書」などといった名称の

報告書で、融資の申し込み内容を渉外係

→融資係→支店長といって順に回付され

ます。


これは、実質的な事前稟議書になり、

よほどのことがなければ、正式な融資

稟議書で内容が覆ることはありません。


私が融資係にいたときは、難しそうな

案件であっても、融資面談報告書で

融資を実行する方針になっていると、

むりやり融資可能な理由をこじつけして

融資稟議書を書いていました。


融資稟議書は正式な書類ですが、そも

そも、それが書かれる時点で融資を

実行することは固まっており、詳細な

条件を記載したり、案件に問題が

ないかということの最終確認が、

正式な融資稟議書で行われるという

ことになります。


ここまでの説明を読むと、申し込んだ

融資はすべて承認されてしまうような

印象を持たれると思いますが、やはり、

承認されない案件もあります。


大幅な赤字の会社、借入額が過剰な

会社、異例な条件が多い案件、

何らかの疑わしい事情がある案件

などは、融資面談報告書が回る

時点ではじかれることになります。


そもそも、銀行も、何とかして融資額を

増やそうとしているわけですから、

融資を検討するということは、

「どの融資を断るか」ではなく、

「この案件は取り上げることができ

そうか」という判断をしています。


いわば、取り上げるべきかどうかの

ラインの上にある案件を、前述の

融資面談報告書などで検討している

ということです。


ここまでの説明で、銀行に融資を

申し込む中小企業経営者の方は

どうすればよいかということですが、

それは、早めの対応をするという

ことに尽きます。


前述の、融資面談報告書の段階で、

ほぼ方針が固まるわけですから、

きちんと資料をそろえ、論理固めを

して銀行に申し込むことが確実です。


「承認が得られるかどうかわから

ないけれど、ひとまず銀行に行って

みよう」という程度であれば、

むしろ行かない方がよいと私は

考えています。


そのような状況であれば、顧問

税理士の方か、融資に詳しい

コンサルタントに相談して、

きちんと理論固めをすることを

お薦めします。


準備が十分でない段階であっても

どうしても銀行に探りを入れて

見たいということであれば、銀行の

職員の方とお話しする時点で、

「きょうはご相談で来た。正式な

申し込みは、後日、詳細な条件を

固めてから改めて行いたい」と

明確に伝えてからお話をすると

よいでしょう。

 

 

 

 

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中小企業経営者は偉い

私は、ブログなどで「経営者はこうある

べき」などと書いていますが、もし、

それを読んでいただいている経営者の

方は、「それができたら苦労しない」と

お考えの方も多いと思います。


私自身も、書くことが目的の、実現味の

ない記事を書くことは、本意ではありま

せん。


そこで、記事を書くにあたっては、

2つのことに注意しています。


ひとつめは、書いた内容は、自分に

はね返ってくるということです。


当然、自分にできないことを他人に

求めるということをしてはならないと

いうことです。


ふたつめは、経営者は尊敬されるべき

人という前提で書くということです。


こう考えるようになった経緯は、稲盛

和夫さんが講演で、「中小企業経営者の

方は偉いのだ」とお話しされていたから

です。


もう少し具体的に書くと、稲盛さんは

仏教臨済宗に帰依されていることは

多くの方がご存知ですが、「偉い人と

いうのは、毎日修行しているお寺の

お坊さんだけではない。


毎日多忙で「修行」はできないけれど、

仕事をすることで心を高めている中小

企業経営者の方にとって、仕事をする

ということは、お寺でお坊さんが修行を

することと同じだ。


そして、ただでさえ自分の家族を養う

ことさえ難しい時代にあって、中小

企業経営者の方は、従業員の方も

養っているということになり、その

こと自体が尊いことである。


中小企業経営者は単なる守銭奴のように

扱われることがあるが、そうではなく、

本来は、偉い立場の人であり、尊敬

されるべき存在だ」とお話しされて

いました。


私も、稲盛さんと同様に、中小企業

経営者の方は偉い方々だと思っています。


だから、ブログなどでは、普通の人には

やや難しいことであっても、経営者の

方はそれを遂行しなければならないと

書いていますが、それは、尊敬の対象

であるからです。


また、まだ経営者にはなっていはいない

ものの、これから経営者になろうとして

いる方には、経営者は何をするべきかと

いうことも知ってもらいたいと思って

いますが、その前に、普通の人には

なかなかできない難しいことをしな

ければならない立場に立つ人でもある

ということを知ってもらいたいとも

思っています。


もうひとつ付け加えさせていただくと、

「会社の経営者に就任」するには、

自らが会社を設立し代表取締役に就任

することで可能ですが、「就任」する

ことと、経営者として能力を発揮する

ということは、当然、異なります。


経営者に就任する人が、必ずしも最初

から、100点をとれる経営者という

わけではないことも確かですが、ある

程度の「経営者」としての能力を身に

付けることもせずに「会社の経営者に

就任」してしまうと、最悪の場合は、

事業に失敗し、会社をたたむことにも

なりかねません。


「偉い」存在である経営者になろうと

する人が、これからだくさん現れる

ことは望ましいことですが、「会社の

経営者になるには会社を設立して、

自ら社長に就けばいい」という手続き

だけと考えている方がいるとすれば、

もう少し、経営者の役割や資質について

学んでから、会社の設立をしていただく

ことが賢明であると私は考えています。

 

 

 

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会計おたくの効用

私がコンサルタントになったきっかけは、

大学で会計を習ったことでした。


私が所属した学部は、人文部で、当初は

英文学を専攻しようと思っていたの

ですが、たまたま人文部に関西ことばで

話をする面白そうな教授がいて、その

教授が会計学を担当していたため、

教授に惹かれて会計学を専攻することに

しました。


その教授は、「会計は会社の事業の

ひとつの側面を表しているに過ぎない。


本来、会社は『ひと』の論理で動いて

いる。


だから、会計を習う人は、ひとの論理、

すなわち組織論も習っていなければ、

なぜ『かね』がこのように動いている

のかということを理解できない」と

ことあるごとにお話しされていました。


そこで、私はその教授から、組織論も習う

ことになりました。


そして、会計を専攻した人が目指す職業は

公認会計士や税理士だと思われると思うの

ですが、前述のように、組織論を習った

こともあり、経営コンサルティング

仕事にしようと考えました。


ちなみに、「かねの論理」と「ひとの

論理」の関係については、小職の新刊、

「図解でわかる経営の基本いちばん

最初に読む本」に詳しく記載してあり

ますので、ご関心のある方はお手元に

取り寄せていただけると幸いです。

http://amzn.to/2lu3fU4


話しを戻すと、会計の専門家は、おかねの

論理だけで会社を見てはいけないという

ことが、私の信条となっているという

ことです。


ところが、その後、私は、会計はあなどれ

ないとも考えるようになりました。


会計に関する学習を進めていくと、対象と

なる事業に対応して、さなざまな工夫が

凝らされています。


例えば、ホテル業界には、独特のユニ

フォーム・システムという会計基準

あります。


(ユニフォームとは、制服の意味では

なく、「統一の」という意味です)


ホテルは、ホテルの建物の所有者が、

別の会社に運営を委託することが多く、

その結果、ホテルの運営者に責任のない

費用である減価償却費は、ホテルの

損益計算書の営業利益には反映され

ません。


すなわち、一般の会社と異なり、

営業利益はホテル運営者の責任となる

利益と費用で計算されるということに

なります。


また、別の例では、棚卸資産の価額の

算出方法も、事業の内容によって様々

です。


極端な例では、少額の商品をたくさん

売っている小売業は、直接、仕入額を

把握するのではなく、売価から逆算

して、それを仕入額としています。


しかも、その商品は、異なる種類の

商品であっても、類似性があれば、

ひとまとめにして仕入額を計算する

ことが許されています。


もうひつ例をあげると、建設会社では、

請負額が10億円以上、期間が1年以上

などの条件を満たしている工事は、

その建物が販売されていなくても、

建設会社の決算時に、完成の度合いで

収益が得られたという前提で計算を

行います。


ここまでさまざまな事業の会計について

述べてきましたが、この記事は、会計の

規則の説明が本旨ではないので、事業

ごとの会計の特徴についての記載は、

ここまでとしたいと思います。


ところで、私が銀行で働いているときは、

このような会計についてむさぼるように

学びました。


その結果、多くの事業の特徴について

学ぶことができました。


もちろん、会計だけで事業のすべてを

学ぶことはできませんが、このような

事業ごとの特徴を学ぶことは、私に

とって、会計を学ぶための大きな

動機となりました。


また、このようなことを学んだことが、

いま、コンサルタントとして、様々な

業種のコンサルティングを行える

ようになったのだと思います。


今回は、私の考える会計の面白さに

ついて書いてみましたが、これが、

会計を苦手と考える方にとっての、

会計を学ぶきっかけのひとつに

してもらえればと思います。

 

 

 

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合併と傘下入り

今回は、熱心な読者の方のSさんからの

ご質問に回答したいと思います。


ご質問は次のとおりです。


> ある方の会社が生き残りをかけて
> 別会社の傘下に入ったという内容を
> 経営者の方がFBで投稿なさって
> いました。
>
> 傘下に入るという事は合併?
> 傘下に入ることと合併との違いが
> わかりません。
>
> また、そうする事の自社にとっての
> メリットやデメリットがあったら
> 教えてください。


まず、合併について説明します。


合併は、2つ以上の組織が1つになる

ことを意味していますが、会社法第2条

第27項と第28項で2種類の合併が

定義されています。


吸収合併→会社が他の会社とする合併で

あって、合併により消滅する会社の権利

義務の全部を合併後存続する会社に承継

させるものをいう。


新設合併→二以上の会社がする合併で

あって、合併により消滅する会社の権利

義務の全部を合併により設立する会社に

承継させるものをいう。


A社とB社が合併するとき、吸収合併は

A+B→Aとなる合併で、新設合併は

A+B→C(新しく設立する会社)と

なる合併です。


ただし、実際には、新設合併はあまり

行われておらず、多くの場合は、吸収

合併が行われているようです。


なお、吸収合併であっても、合併後に

会社が商号(社名)を変えることもあり、

外見的に新設合併に見える場合もあり

ます。


例えば、第二電電は、KDDと日本移動

通信と合併し、KDDI(合併した時の

商号は「ディーディーアイ」)となり

ましたが、これはKDDIという新しい

会社が設立されたわけではなく、

合併後も第二電電が存続し、商号を

KDDIに変更したという吸収合併です。


一方、傘下とは、「全体を一つの勢力

としてまとめる指導的な人物や機関の

下で、その統制・支配を受ける立場に

あること」(大辞泉)ということです。


しかし、会社について「傘下に入る」

ということの法律での定義はないので、

人によって指すものが異なります。


ただし、具体的は、次のようなことを

指すと考えられます。


(1)ある会社から出資を受けて子会社

になる。


(2)ある会社から出資を受けて持分法

適用会社になる。


(3)ある会社と契約を結び、継続的

または多額の商取引を行う。


正確さを犠牲にしてわかりやすく説明

すると、ある会社が、別の会社の株式の

50%を超えて保有しているとき、その

会社は子会社といい、別の会社の株式の

20%以上50%以下を保有している

とき、その会社を持ち分法適用会社と

いいます。


親会社と子会社は、法律上は別の会社

ですが、親会社は子会社の株式の株式の

50%を超えて保有し、子会社を支配

しているため、親会社は子会社を含めた

決算書(連結財務諸表)を作成するなど、

実態はひとつの会社と同じです。


したがって、ある会社が、別の会社の

子会社になるとき、それは「傘下に入る」

とはいわず、「子会社化する」という

ように言われることになるでしょう。


よって、「傘下に入る」とは、持分法

適用会社になるか、多額の商取引を

することを指すと思います。


では、持分法適用会社になることと、

多額の商取引をすることの違いは何か

ということですが、実態としては、

両者はあまり変わりがないと私は

思っています。


先ほど、持分法適用会社の定義として、

20%以上の株式を保有している会社と

と説明しましたが、実は、株式の保有

後付けと言えます。


というのは、まず、両者で多額の

商取引をすることが前提にあって、

次に両者の関係を強化するために、

傘下に入る会社が20%以上の株式を

持ってもらうということになる例が

ほとんどです。


最近の例では、販売や製品開発などの

業務提携にともなって、自社の34%の

株式を日産自動車保有してもらった

三菱自動車が挙げられます。


では、株式の保有をともなわない、

契約だけの傘下入りとはどういうことか

というと、中小企業の多くは、実態と

しては株式を他社に保有してもらうと

いうことは、手続きが煩雑でもあり、

あまり行われていません。


さらに、法律上は株式会社であっても、

規模の小さい会社は経営者の個人的な

信用(いわゆる、「顔」)で取引が

行われており、他社の株式を保有する

という必要性があまりありません。


傘下に入れるということは、必ずしも

出資をしなくても、商取引で実質的に

傘下に入れることもできるということ

です。


ここまで、合併と傘下について説明

してきましたが、ご質問への回答は、

「合併」は法律で定められた手続きに

よって、2つの会社が1つの会社に

なることで、「傘下に入る」とは

商取引を強めて主従関係を作るという

ことです。


恐らく、Sさんのお知り合いの方が

FBに投稿した内容は、別の会社から

商取引で支援をしてもらうという

程度の意味であり、法的に合併したり、

出資をしてもらうということまでは

考えていないのではないかと想像

します。

 

「傘下に入る」と「合併する」とも、

広い意味で「一緒に仕事をする」という

ことであるとすると、両者の違いは、

手続きの違いであり、合併は、法律上も

ひとつの会社になるということです。


両者のメリットとデメリットは、

傘下に入ることはお互いの意思表示

だけですんだり、少ない金額の出資で

行うことができますが、つながりは

合併よりも薄くなります。


合併はその逆で、手続きが煩雑になり

ますが、事業も会社も一体となることが

できるということです。


以上、今回は読者の方からの質問に

お答えしました。引き続き、読者の方

からのご質問をお待ちしております。

 

 

 

 

 

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妻は夫の事業が成功して欲しくない?

私はサラリーマン川柳がすきで、ときどき

第一生命さんのWebPageを見て

います。

(参照→ https://goo.gl/aNFjkL


川柳には、職場の様子をよんだものも多い

ですが、夫婦関係が最も多いと思います。


中でも、私は、平成28年の57位だった

「サラ川で 妻の仇あだ打つ ダンナ達」

という句に共感しました。


妻にはなかなか頭が上がらない夫が多い

のだと思います。


どころで、夫婦関係については、作家の

本田健さんがセミナーで言っていた、

次のような言葉を思い出します。


「夫が大きな風船のひもにつかまって、

ふわっと上昇しようとしているのを

見ると、妻は、吹き矢を吹いて、その

風船を割ろうとする」


これは、夫が会社員を辞めて会社を

起こし、新しい事業を始めてようやく

成功しようとしているとき、かつて、

「その事業は成功しそうもないから、

独立などせずに、会社で働き続けて

欲しい」と、新しい事業に反対して

いた妻が、自分の主張が間違っている

ことになりそうな状況を見て、夫の

事業が成功しないように夫の邪魔を

することの比喩です。


本田さんは、妻がなぜ夫の事業の邪魔を

しようとするのかということまでは

お話ししていないのですが、私は、次の

ようなことが理由だと思っています。


すなわち、サラリーマンだった夫が

会社経営者になり、経営者として成功

してしまうと、自分はその経営者の

妻ということになり、いままでのような

平凡な立場ではいられなくなる。


また、夫が成功者になってしまう一方で、

自分がいままのままでいたら、夫婦間で

つり合いがとれなくなってしまうのでは

ないかという不安を持つことから、

夫には変わらないで欲しいと考えている

ということではないかと思っています。

 

ここで誤解のないように補足しておき

ますと、本田さんは、夫の邪魔をする

妻を批判しているのではなく、夫は

仕事にばかりかかわって独走する

のではなく、妻の気持ちを慮ることが

大切ということを伝えるために、この

ような事例をお話しされているものと

思っています。


話しをもどすと、実は、このような

ことは、中小企業の経営者と従業員の

間でも起きる例を、私は見てきています。


すなわち、優秀な部下がいると、経営者は

その部下を煙たがります。


その理由は、優秀な部下は、社内での

自分の立場を危うくすると考えるからの

ようです。


これはいうまでもなく、本当は、優秀な

従業員が社内にいるということは幸運な

ことなのに、その部下を煙たがると

いうのは、経営者としては了見が狭いと

言えるでしょう。


ここで挙げた例のような経営者は少数派

ですが、経営者の方は器量を大きくする

ことが最初に求められるということを

改めて考えさせられた次第です。

 

 

 

 

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