鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

経営戦略の対象と目的

会社にとって経営戦略は大切だという

ことは、多くの方が考えていることだと

思います。


しかし、経営戦略にはどういうものが

あり、どういう経営戦略を自社が採る

べきかというところまで検討している

中小企業はあまり多くないと、私は

感じています。


そこで、今回は、経営戦略の種類に

ついて述べたいと思います。


まず、土台となる戦略はとして、全社

戦略というものがあります。


全社戦略とは、会社全体を対象にする

戦略のことで、その目的は、会社を

成長させるための戦略です。


したがって、全社戦略は、成長戦略とも

いうことができます。


全社戦略の具体的なものは、アンゾフの

提唱した成長ベクトルや、ボストン・

コンサルティング・グループの提唱した

プロダクト・ポートフォーリオ・マネジ

メントが著名です。


つぎに、柱となる戦略として、事業戦略が

あげられます。


事業戦略は、事業を対象にする戦略のこと

ですが、その目的は、他社の事業との

競争に勝つための戦略であり、競争戦略と

いうこともできます。


なお、事業がひとつしかない会社は、全社

戦略は採らずに、事業戦略だけを採っても

よいでしょう。


事業戦略の具体的なものは、ポーターの

提唱した3つの基本戦略や、コトラー

提唱した地位別競争戦略が著名です。


そして、会社の屋根となる戦略として、

機能別戦略があげられます。


機能別戦略は、会社の機能ごとに採る

戦略で、販売機能に対する販売戦略、

生産に対する生産戦略、財務機能に対する

財務戦略、労務機能に対する人材戦略

などがあります。


特に、販売戦略の中には、マーケティング

戦略が大きな比重を占めており、マーケ

ティング戦略では、マッカーシーの提唱

した、マーケティングミクスが著名です。


ここまで、経営戦略の対象と目的を説明

してきましたが、どれが重要でどれが

重要でないということはありません。


事業を安定的に発展させていくためには、

適切な経営戦略を採らなければなりま

せん。


例えば、全社戦略で多角化戦略を打ち

出しても、製品開発戦略で新しい製品を

開発できる体制を整えたり、人材戦略で

人材を育成するための戦略を採らな

ければ、多角化戦略は遂行できません。


希に、「1年で売上を2倍にする戦略」

などといった提案をしているコンサル

タントがいますが、そのようなことを

実現するには、販売戦略だけでなく、

人材戦略、財務戦略なども整えなければ

実現できないでしょう。


大切なことは、経営戦略はつまみぐいは

できないということです。


そして、もうひとつ大切なことは、経営

戦略を打ち出すための、さらに敷地とも

言える経営理念が必要ということです。


経営理念がなければ、それを目指すための

経営戦略も打ち出せません。


さらに、経営戦略を遂行するには、それを

より具体化した戦術も明確にする必要が

あります。


結論は、経営戦略は適切な組み合わせが

必要であるということと、経営戦略に

よってどういう状態に会社を導くのかを

明確にする経営理念、そして、経営戦略を

遂行するための具体策の戦術までを

明確にしていなければ、どのような優れた

戦略をとっても、掛け声倒れになって

しまうことでしょう。

 

 

 

 

 

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見えないものを見せる

きょうの記事の内容は、すでに多くの方が

実践してていることと思います。


先日、黄色い帽子の自動車専門店で、

タイヤ交換を依頼してきました。


単なるタイヤ交換なら、タイヤを交換

すれば、それで依頼された仕事は終わり

なのですが、そのお店では、作業が

終わった後、私を自動車のところまで

案内し、目の前ですべてのタイヤの

ナットをしめ直しているところを見せ、

確実にタイヤが取り付けられたという

ことを納得できるようにしていました。


また、先日、コストを訪れたのですが、

そこでは、同店では、店舗内の顧客が

見えるところに、「今月の優秀従業員」

という掲示があり、そこには、対象と

なった従業員の方の顔写真、名前、

表彰された根拠が記載されていました。


こうすることで、同店では、従業員の方の

士気向上に努めるとともに、顧客に

対しても、サービスの改善に努めている

ところをアピールしていると思われます。


別の例では、先日プレイしたゴルフ場では

顧客からの改善のリクエストに応じて改善

した内容について掲示がありました。


例えば、コースの中のトイレに転落防止の

ための柵を取り付けた、帰りの道路の

渋滞情報を表示するようにした、という

ようなものです。


このような取り組みをしているという

ことが利用者に伝わるだけでも、その

ゴルフ場の評価は変わるでしょう。


他者のことばかり批評している私も、

自ら努めていることは、お客さまからの

問い合わせには、直ちに回答をすること

です。


なるべく1時間以内には何らかの連絡を

するようにしています。


即答できない場合は、きちんとした回答を

できる見込みの日時だけはお伝えして

います。


また、メールマガジンやブログを毎日配信

していることも、行動力があることを

客観的に示すことが目的のひとつです。


口では「すぐに実行します」、「必ず成功

させてみせます」とは言うことはいくら

でもできますが、それを信用してもらう

ためには、何らかの客観的な証拠が必要

だと思っています。


そして、もうひとつ大切だと思っている

ことは、このような心がけは、一朝一夕

では実を結ばないことです。


残念ながら、多くの経営者の方は、実施

してみて、1か月後、2か月後に効果が

見込めるものでなければ実施はしないと

判断していると思います。


すぐに効果が現れる戦術は、経営者の方

からみて望ましいのですが、競争が激しい

時代にあっては、即効力のある戦術は

ほとんどありません。


ですから、一日でも早く、地味な努力を

始めるしかないと私は考えています。


よく、「即効力のある戦術を提案できない

コンサルタントは、能力がない」と批判

されますが、一朝一夕で事業が改善できる

ほど事業運営は単純ではないでしょう。

 

 

 

 

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コアコンピタンスとUSP

最近、会社の強みを指して、コアコンピ

タンス、または、USPという言葉が

使われているのですが、私としては

おかしい使われ方だと思うので、今回は

両者について解説したいと思います。


まず、コアコンピタンスとは、米国の

経営学者のハメルと、インド生まれの

経営学者のプラハラードが提唱した

考え方で、中核能力と訳されます。


コアコンピタンスの指す強みは、単に

「技術力が高い」とか「スキルが高い」

というものではなく、もっと本源的な

「顧客に特定の利益をもたらす一連の

スキルや技術」と定義されています。


そして、両氏は、ソニーを例に挙げ、

同社のコアコンピタンスは「小型化」で、

顧客の利益とは「携帯性」であると指摘

しています。


こして、このようなコアコンピ

タンスの要件として、つぎの3つを

あげています。


(1)顧客から認知される価値を

持っている


(2)競合他社との違いがある


(3)新製品や新サービスを産み出す

ことができる


定義は抽象的な面もありますが、単に、

「自社の強み=コアコンピタンス」では

ないということは明確です。


会社によっては、コアコンピタンス

持っていないこともありますので、

「あなたの会社のコアコンピタンス

どのようなものですか」という質問は

不適切で、「あなたの会社にコア

コンピタンスはありますか。ある

場合は、どのようなものですか」と

いう質問にすべきでしょう。


つぎに、USPですが、これは

Unique Selling Propositionの略語で、

独自の売りの提案と訳されます。


これは、自社製品を分かりやすく顧客に

伝えるための手段として、利用される

ようになったものです。


その例として著名なものは、ドミノピザの

「30分以内に届かなければ無料」という

触れ込みで、食品の本来の品質である味・

量・価格という要素とは無関係な点に

焦点をあててマーケティング活動を行い、

成功を収めました。


このUSPを使ったマーケティング活動は

小さな会社に適しているといえます。


なぜなら、一つの特徴で顧客を引き付ける

ことが可能だからです。


例えば、「鍵の紛失や閉じ込みに24時間

365日出張して対応」というサービスを

している会社があります。


「鍵の販売」という面では大手と真正面

から対抗することになりますが、「24

時間365日出張して対応」という緊急性

への需要については、小回りのきく小さな

会社の得意とするところでしょう。


このようなUSPを打ち出せれば、小さな

会社が活躍できる機会が大きく広がる

でしょう。


話しを戻して、コアコンピタンスは中核

能力であり、USPは独自の売りの提案

ということで、両者は性質の異なるもの

です。


そして、コアコンピタンスは、会社の

強みの一種であり、会社の強みと言い

間違えられやすいとは思いますが、

USPは提案なので、それは直接に

会社の強みを指すものではないでしょう。


ただ、USPは、会社の強みがあることが

前提になっていると誤認し、そのことから

USPは強みを指すものと誤用される

ようになったのかもしれません。


とはいえ、私は、ここで「言葉を正しく

使いましょう」ということを伝えたいと

考えているわけではありません。


言葉は、しばしば、当初の意味と別の

意味で使われることがあります。


例えば、ゴーイングコンサーンは、

本来の意味とは別の意味で使われる

ことがあります。


ゴーイングコンサーンは、単に、会社の

事業が半永久的に継続する前提という

意味でした。


例えば、会社が機械を購入した時、その

購入代金のすべてを、購入したときの

会計年度の費用とせずに、耐用年数に

わたって費用化する減価償却は、会社の

事業が半永久的に継続するという前提が

あるからで、ゴーイングコンサーンとは

単に、その前提のことに過ぎません。


しかし、現在では、「事業を継続させな

ければならないという会社が担うべき

使命・責任」や、「事業を継続している

会社」ということを指すようにもなって

きています。


ですから、徐々に、コアコンピタンス

USPは、会社の強みを指す言葉として

定着していくかもしれません。


ただ、私の疑問は、なぜ、会社の強みを

コアコンピタンスやUSPと言い換える

必要があるのかということです。


恐らく、「わが社の強みは…」という

よりも「わが社のコアコンピタンスは…」

ということの方が聞こえがよいからでは

ないでしょうか。


これも、当初は厳密なコアコンピタンス

持っていない会社が、その後、製品開発に

注力して、本当のコアコンピタンス

手に入れるとすれば問題はないでしょう。


ただし、わざわざ言い換える必要のない

単なる強みを、あえて言葉だけはコア

コンピタンスと言い換えておきながら、

表面的なことだけにこだわるものの、

中身がともなわないような状況を続けて

しまうとすれば、これは避けなければ

ならないでしょう。

 

 

 

 

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長嶋選手のバット

靴下の製造・販売をしているタビオ株式

会社( http://www.tabio.com/jp/ )の

越智直正会長が、かつて、つぎのような

ことをお話しされておられました。


すなわち、「長嶋選手(現、読売巨人軍

終身名誉監督)のバットを買ってきても、

ホームランを打つことはできない」と

いうものです。


これは多くの方が理解できると思います。


長嶋さんがホームランをたくさん打つ

ことができたのは、バットが優れていた

わけではなく、長島さんの打撃の技術が

優れていたからです。


しかし、越智さんは、会社経営者の方の

中には、道具を揃えることで、事業が

改善すると考えている方が多いという

ことを、前述のような例えで指摘して

おられました。


私も、これには覚えがあります。


私が会社員時代に、恐らく、前の日の

夜に「カンブリア宮殿」などの番組を

見てきたと思われる上司が、番組で

紹介された会社の真似をしようとして、

「きょうから、こういう方法で仕事を

する」と意気込むことがありました。


でも、そう宣言した上司自身が、その

ことを1週間もしないうちに忘れて

しまいます。


そもそも、組織は、一朝一夕では変わる

ことはありません。


まず、戦略を打ち出し、それを実現する

ための人材育成をしながら、当初の目的を

達成するという手順を踏まなければ、

ほとんどの場合、一字の打ち上げ花火で

終わってしまうでしょう。


まさに、長島選手のバットを買うという

ことです。


得てして、経営者は理想を掲げることを

好みます。


このことは大切なのですが、実現しない

手順で実施しても、それは無意味です。


より、高度な戦略を実践しようとする

のであれば、まず、組織の能力を高めな

ければなりません。


組織の能力の高さのことを、私は、

習熟度と呼んでいますが、私のコンサル

ティングは、顧問先の習熟度を高める

ことです。


そして、組織の習熟度を高める役割が

経営者の最優先の仕事だと考えています。


話がそれますが、よく、私の行っている

コンサルティングはよくわからないと

言われますが、私は、顧問先の習熟度を

高めるお手伝いをしています。


そして、組織の習熟度を高める役割が

経営者の役割であり、だから、私の

コンサルティングは、経営のコンサル

ティング、すなわち、経営コンサル

ティングだと考えています。


しかし、巷間では、「経営」とは何かと

いうことが、とても漠然としているため、

私は、多くの方に「経営とは何か」と

いうことを明確に理解していただきたいと

考え、ブログ、メールマガジン、ポッド

キャスト、出版などで、それを解説して

います。


話しをもどして、今回の記事の結論は、

より水準の高い経営を目指すには、

手法やツールと同時に、経営の習熟度を

高めることが大切だということです。


くれぐれも、書店で過激な書名の本の

内容を翌日から実践しようとしたり、

テレビで放送されていた会社の真似を

翌日から行おうとすることは、ご注意

ください。

 

 

 

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土俵の真ん中で相撲をとる

「土俵の真ん中で相撲をとる」というのは

稲盛和夫さんの言葉です。


かつて、稲盛さんの知人の経営者が、

手形の決済があるのに、そのための資金が

なかなか集まらず、苦労の末に資金を

かき集めて手形を落としたということを

自慢話にしているのを聞いたそうです。


しかし、稲盛さんは、手形を決済する

ことはあたりまえのことであり、それを

決済したことは何の自慢にもならないと

感じたそうです。


そして、どうせ同じ苦労をするなら、

ぎりぎりの段階になって苦労するのでは

なく、余裕のあるうちからぎりぎりに

なったときと同じように懸命に取り組む

べきだと考えているそうです。


これを、相撲に例えて、土俵際に追い

込まれてから力を出すのではなく、

土俵の真ん中にいる時から全力を出す

べきだとお話しされていました。


これは、私自身にも心当たりがあり、

原稿などは締め切りが近づかないと

なかなか着手できないことがあり、

いつも反省を繰り返しています。


また、中小企業経営者の方についても

土俵際にならないと、なかなか動き

出してもらえないと感じることがよく

ありました。


私が銀行で働いていたとき、取引先の

中で、資金繰りの忙しい会社には、

前もって資料提出などをお願いする

ようにしていました。


それは、月末ぎりぎりになって融資

稟議書を申請すると、じっくりと

稟議書を見てもらうことができず、

承認されなくなる危険が高くなる

からです。


例えば、融資を受ける金額が不確定

であっても、多めの金額で、日数に

余裕を持って申し込んでもらうことの

方が、お互いに楽になることは間違い

ないことは明らかです。


それでも、なかなか、前倒しの対応を

とってもらえない理由は、気持ちの

問題だと思います。


確かに、きょうやあすにやらなければ

ならない仕事があることは理解できる

のですが、いつまでも仕事に追いかけ

られる状態を続けていれば、受動的に

仕事をすることになり、よい結果には

なかなかたどりつけないと思います。


何かのきっかけで、仕事に追いかけ

られる状態から、仕事を追いかける

状態に切り換える、すなわち、土俵の

真ん中で相撲をとる状態にならな

ければ、能動的な事業展開をできる

ようにはならないでしょう。


とはいえ、これは言うは易く行うは

難しであることも事実でしょう。


だからこそ、強い意志を持つことの

大切さも稲盛さんは強く説いています。


そういう私もいつも土俵際で相撲を

とっている状態です。


一方、年に何冊も本をご出版されている、

経営コンサルタントの小山昇さんは、

常に、何冊分かの原稿を書きためている

そうです。


だからこそ、能動的に執筆活動ができる

のでしょう。


一朝一夕にはいきませんが、私も少しでも

土俵の真ん中に近づくようにしたいと思い

ます。

 

 

 

 

 

 

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リースの薦め

融資のご相談を受ける際は、私はリースを

利用することを薦めています。


その理由を説明する前に、リースは多くの

方がご存知とは思いますが、その特徴を

述べたいと思います。


リースは、法律上は賃貸借契約ですが、

リース物件は、前もってリース会社が

リース物件を所有しておらず、リースの

利用者(ユーザー)が指定したものを

リース会社が購入してユーザーに貸与

するという点が、ひとつめの特徴です。


同じ賃貸借契約であるレンタルは、

レンタル物件を前もってレンタル会社が

所有しており、その点が大きな違いです。


ただし、リース物件は、中途解約が

認められておらず、リース料全額を

ユーザーが支払うことが義務付けられて

います。


リース料全額をユーザーが負担すると

いう点で、リースは、融資によって

設備などを調達する場合と似ており、

これをリースの金融機能と言います。


以上が簡単なリースの特徴ですが、

私がリースの利用をお薦めする理由は

次の通りです。


(1)ユーザーが欲しい機械や設備の

全額をリース会社が負担する。(銀行

からの借入の場合は、必要額の70%

程度が上限となる)


(2)法律上、リース物件の所有者は

リース会社にあり、リース物件が

事実上の担保として利用できる。

そのため、リースの審査は、銀行と

比較して承認されやすい。(機械や

設備などの動産も、法律上は担保に

できるものの、銀行は、手続きの

煩雑さから、動産を担保にする例は

多くない)


(3)リースによって機械や設備を

調達することによって、銀行からの

いわゆる融資枠を確保できる。


以上が、私がリースを薦める理由の

主なものですが、他には、リース料は

定額であり管理がしやすい、機械や

設備の法定耐用年数よりもリース

期間を短く設定し、その期間ですべて

費用にできるなどの利点があります。


一方、リースのデメリットとして、

融資の利率と比較してリース料が割高

であるということが挙げられます。


これについては、私はそれほど気に

する必要はないと思っています。


なぜなら、リースの利用によって

事務の効率化が図れることから、

機械や設備を購入した場合の煩雑な

事務の表面化しないコストが、

リースの利用によって顕在化した

ものということができるからです。


もうひとつ、リースについて注意する

点を述べたいと思います。


それは、「リースによって機械や

設備を調達すると、貸借対照表

資産が計上されないので、会社の

資産がスリムになる」ということを

述べる方が、希にいます。


リース会計では、リースによって

機械や設備を調達したとき、その

資産の相当額をリース資産として

資産の部に計上し、その同額を

リース債務として負債の部に計上

します。


金額がまったく同額とはなりませんが、

会計上はリースによる機械や設備の

導入は、融資によって調達した場合と

同じように考えて、記録します。


ただし、「中小企業の会計に関する

指針」では、リース会計の方法に

よらず、リースを賃貸借として考え、

リース資産やリース債務を計上せずに、

リース料のみを費用として計上する

方法を認めています。


そのため、多くの中小企業では、

会計上はリース契約を賃貸借契約と

して取り扱っています。


その結果、リース資産などは、貸借

対照表には現れませんが、銀行は、

リースも借入とみなして考えている

場合もあります。


したがって、リースによって会社の資産が

スリムになるという考え方は採らない

ことをお薦めします。


なお、リースに関する知識と実務に

ついては、拙著「図解でわかるリースの

実務いちばん最初に読む本」に詳しく

記載されていますので、ご参考にして

いただければ幸いです。

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事業部制組織とカンパニー制組織

今回は、事業部制組織、カンパニー組織、

そして持株会社について説明します。


まず、それぞれについて説明します。


最初の事業部制組織は、米国のGE社が

導入したと言われています。


事業部制組織が導入された背景には、

会社の規模が大きくなったということも

ありますが、その直接的な要因は、

複数の事業や、複数の地域で事業を

展開するにあたって、それぞれの課題を

それぞれの事業や地域で解決させようと

いう主旨で、事業部制を導入したと

いわれています。


事業部制の特徴としては、事業部長

には、大きな権限が与えられている

ということです。


具体的には、事業部の事業計画策定、

製品価格の決定、事業部内の人事権

などです。


その代わり、各事業部には、利益を

得る義務が課されます。


このことから、事業部はプロフィット

センターと呼ばれることもあります。


そのため、同じ会社内であっても、他の

事業部との間の取引では、社外へ販売

する価格と同じ価格で取引される、

いわゆる社内振替価格が適用されます。


つぎに、カンパニー制ですが、これは、

事業部制よりも独立性の高い、社内

カンパニーを置く制度です。


事業部制との違いは、カンパニーのトップ

である、カンパニープレジデントには、

設備投資の権限を有していることです。


その権限の見返りとして、社内カンパニー

には、投資に対する収益を得ることを義務

付けられています。


そのため、社内カンパニーは、インベスト

メントセンターと、呼ばれることがあり

ます。


そして、社内カンパニーは、カンパニー

ごとにそれぞれ貸借対照表を作成し、

投資に対する利益が得られていることを

本社に対して示すことになります。


このような社内カンパニーが採られる

背景には、社内カンパニーをあたかも

ひとつの会社に見立て、起業家精神

発揮させようという意図があります。


最後に、持株会社ですが、これは、

社内カンパニーを法律上も独立した

個別の会社とし、親会社である持株

会社が子会社をたばねていくという

管理の方法です。


ちなみに、ここで改めて説明をしておくと

日本の会社法では、他の会社から議決権の

50%を超えて保有されているなど、

その会社から実質的に支配されている

会社を子会社と定義しています。


一方、子会社を支配している会社は、

親会社といいます。


また、独禁法では、会社の資産のうち、

子会社の株式の取得価額の合計額が

50%を超える会社を、持株会社

定義しています。


持株会社のうち、自らも事業を行っている

会社は事業持株会社、株式の保有だけを

している会社を純粋持株会社といいます。


かつては、事業持株会社が多く存在しま

したが、最近は、組織再編などを行う

場合は、純粋持株会社を設立する例が

多いようです。


持株会社の場合、他社を買収することに

よって、直ちに自社の傘下にしたり、

不採算の子会社を売却または整理したり

することが容易である、という利点が

あります。


なお、持株会社とその子会社は、法律上は

別会社であっても、会計上はひとつの会社

とみなして、連結財務諸表が作成される

ことが一般的です。


今回の結論は、事業部、社内カンパニー、

持株会社の特徴を示しただけです。


複数の事業を営んでいる会社が、これから

さらに積極的な事業展開を行おうと考えて

いる場合は、前述のような制度から、どの

ような制度が適切かということを判断する

際のご参考としていただければと

思います。


ただ、会社によっては、事業部制や社内

カンパニーという名称の部署があっても、

それぞれ、その会社の定義で組織が

作られており、必ずしも前述の通りとは

限りませんので、ご注意ください。

 

 

 

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