鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行の営業情報

銀行の業務は、預金、融資、送金(決済)

が主なものですが、最近は、営業情報の

提供にも力を入れているようです。


これを利用している人も少なくありま

せんが、まだ、利用している人の方が

多いようですので、今回は、銀行の営業

情報について書いてみたいと思います。


銀行は、他の銀行との差別化を進める、

融資先の安定的な事業展開を支援する

といったことを目的に、取引先にとって

有益な情報の提供を積極的に行って

います。


さらに、これらの情報は、無償か、安価な

負担で受け取ることができるということも

特徴です。


具体的には、販売先、仕入先などの

ビジネスマッチングのほか、先端的な

技術を持っているものの、それを活用した

製品を製造するための設備を提供して

欲しい、または、その製品の販売を委託

したいという情報や、後継者が見つから

ないので、会社を買い取って欲しいと

いう、一般には得にくい情報も得られると

いうことも特徴です。


また、銀行が担保として設定している

不動産について、それを処分したい場合、

その不動産に関する情報も受け取ることが

できます。


そのような不動産の場合、銀行も、担保が

売却された金額で融資を回収できるという

事情もあるので、その不動産を購入する

ための融資にも積極的に応じてもらえる

ということも利点です。


さらに、銀行によっては、取引先の親睦

団体を作っていることもあります。


そのような団体に加わることによって、

協力しあえる会社経営者と知り合いに

なることも期待できます。


また、これは、大きな比重を占めるわけ

ではありませんが、親睦団体の会員に

なっていると、銀行の支店長などと

接触する機会が増えるといった要因から、

銀行の自社への理解が深まり、融資の

審査に有利に働くということもある

でしょう。


以上、簡単ですが、銀行の営業情報に

ついて説明しました。


これらのほかにも銀行の活用法は

たくさんありますので、積極的に

取引先の銀行の方にお問い合わせする

ことをお薦めします。

 

 

 

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執行役と執行役員

今回は、指名委員会等設置会社の執行役と、

監査役会設置会社執行役員について説明

します。


まず、執行役と執行役員について説明する

前に、指名委員会等設置会社と監査役会

設置会社について説明します。


日本の会社法では、会社の統治形態に

よって、指名委員会等設置会社、監査役会

設置会社、監査等委員会設置会社に分かれ

ます。


監査役会設置会社は、従来の日本の会社の

典型的な会社です。


監査役会設置会社では、取締役は業務

執行を担い、取締役会が監督を行い、

監査役会が監査を行います。


なお、監査役会は、大会社(資本金5億円

以上、または、負債200億円以上の

いずれかに該当する会社)の公開会社

(いわゆる上場会社という意味ではなく、

株式の譲渡に制限がないという意味の

公開会社)に設置を義務付けられており、

そうでない会社は、必ずしも監査役会

設置する必要はありません。


一方、指名委員会等設置会社では、業務

執行は執行役が担い、監督は取締役会が

行います。


なお、指名委員会等設置会社には、代表

取締役は設けられず、代表権は、執行役の

中から選任された代表執行役が担います。


そして、指名委員会等設置会社の監査は、

取締役会の内部期間の監査委員会が行い

ます。


監査委員会は、3名以上の取締役会で

構成され、かつ、過半数社外取締役

なければなりません。


また、指名委員会等設置会社の取締役は

執行役を兼任できますが、執行役を兼任

している取締役は監査委員になることは

できません。


ここまで、法律上のことを述べてきま

したが、ひとことで言えば、指名委員会

等設置会社は、米国のオフィサー制度を

モデルとしているということです。


すなわち、オフィサー制度の、

オフィサーが執行役で、ディレクターが

取締役ということです。


ただ、日本では、一般的に、代表

執行役が社長と呼ばれていますが、米国

ではCEOをプレジデントと呼ばず、

ディレクターがプレジデントと呼ばれて

います。


ところで、監査等委員会設置会社という

会社もありますが、これは、監査役会

設置会社と指名委員会等設置会社の

中間的な性格の会社で、詳細な説明は

割愛します。


ここでようやく本題にはいります。


指名委員会等設置会社の執行役は前述した

通りです。


では、執行役員はどういうものかという

ことになります。


執行役員は、指名委員会等設置会社の

制度ができる前の、1997年6月に

ソニーが導入したと言われています。


当時、38名いた取締役は、社長や副社長

などの7名と社外取締役3名の10人に

絞られました。


そして、社長や副社長などの取締役7人は

取締役のまま執行役員を兼任し、残りの

28名は取締役は取締役を退任して執行

役員に就任しました。


このことは、ソニーが、米国の

オフィサー制度を任意に導入したという

ことが言えるでしょう。


なお、ソニーは2003年6月に委員会

等設置会社に移行しています。


ソニー執行役員制度を導入した後、

多くの会社がソニーに倣って執行役員

制度を導入しました。


現在でも、監査役会設置会社執行役員

制度を導入している会社もあります。


このような会社では、ソニーのように、

取締役を社長、副社長、専務取締役

などに限定して就任させて、少数の

取締役が集まって(これを経営会議や

常務会などと呼ばれることがあります)

会社の方針などを定め、日常的な

業務執行は、執行役員に担わせると

いうことが行われています。


ただし、執行役員は、法律で定められて

いる役職ではないため、会社によって、

その位置づけが異なるようです。


ポストが不足しているものの、取締役を

増やしたくない会社が取締役相当の役職

として、執行役員を用意するという

こともあるようです。


今回の結論は、役職はあまり複雑にせず

シンプルな方がいいのではないかと私は

考えているということです。

 

 

 

 

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経営計画書が担保

小山昇さんの著書、 「無担保で16億円

借りる小山昇の実践銀行交渉術」

( http://amzn.to/2rk6SdG )という本

には、次のようなことが書かれています。


「武蔵野(小山さんが社長を務める会社)

が最大16億円も無担保で借りることが

できたのは、『経営計画書』と『経営計画

発表会』と『社長と社員の姿勢』が担保

代わりになっているからです」


ちなみに、武蔵野さんの融資については、

小山さんは個人保証もしていないよう

です。


武蔵野さんは、毎年、全従業員を集めた

経営計画発表会を行っていますが、そこに

取引銀行の支店長を招いているそうです。


経営計画書を作成していること、経営計画

発表会を開くこともすばらしいことですが

社長と従業員の方が真剣に社長の発表を

聞いている姿勢を、銀行の支店長が見る

ことで、銀行の同社に対する信頼性が

高くなるということです。


このことは多くの方が理解し、かつ、賛同

されることで、また、私が改めてここで

述べるようなことではないでしょう。


しかしながら、経営計画書をあまり重要と

考えていない方とも、私がこれまで多く

お会いしてきていることから、ここで、

経営計画書に関する私の考えを述べたいと

思います。


経営計画書に否定的な考えが持たれる

理由のひとつは、将来は完全に予測

できないことから、計画を建てることの

意味がないというものです。


これについては、私は矛盾があると考えて

います。


一見、「予測はできない」という点は

事実であると思いますが、そうであれば

「自社の事業は発展するとは限らない」

ともいうことができます。


予測できないことはやらないというので

あれば、自社の事業の将来も予測でき

ないわけですから、会社を経営すること

そのものもやれないことになります。


この考え方は、どちらかというと、

面倒なことを避けるための後付けの

理由に過ぎないでしょう。


もうひとつの否定的な考え方をする

理由は、経営計画書を作ったとしても、

結局、画餅になってしまうというもの

です。


これも本末転倒な考え方だと思います。


目指すところと現実には、どうしても

ギャップができてしまうということも

事実と思いますが、その差を縮めるた

めの工夫こそが、まさに経営者の方の

役割だと思います。


私も、お手伝いする会社には、目標と

現実のギャップを埋めるための助言を

させていただいており、その差を埋める

ことこそが、経営者としての能力を

高めて行くことにもなっています。


もし、最初から、それができないという

ことであれば、経営者としての役割を

放棄してしまうことではないかと、私は

考えています。


経営計画書のもうひとつの役割として、

従業員や銀行などのステークホルダー

対して、経営者の方が目指すところを

明確に伝えるというものがあります。


確かに、計画は100%遂行できるとは

限りませんが、経営者が、今後、どの

ように事業展開をしていこうと考えて

いるのかということを、ステーク

ホルダーに伝えることは、求心力を

高めることにもなります。


ただちに100点満点の経営計画書を

作るということは難しいとは思いますが、

現在、経営計画書を作っていないという

会社の経営者の方には、経営計画書を

作ることをお薦めしたいと思います。


また、経営計画書を自ら作成し、それを

銀行に提出するというだけでも、小山

さんの会社のように、直ちに無担保で

16億円を借りられるようにまでは

ならないものの、銀行からの評価は

間違いなく高くなるでしょう。

 

 

 

 

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※写真と本文は関係はありません。

銀行の融資の形式

今回は、銀行の融資の形式について説明

します。


銀行の融資の仕方は、(1)手形貸付、

(2)証書貸付、(3)当座貸越、

(4)商業手形の4つの種類があります。


(1)手形貸付

融資を行うときに、融資先から手形を差し

入れてもらう融資のことです。


主に、期間が1か年以内の短期間の融資の

ときに手形貸付が行われます。


商品仕入代金などの、一時的な資金の

不足に応じる融資であるため、返済方法は

分割返済ではなく、期限に全額を返済する

契約が多いようです。


したがって、融資を受ける会社では、短期

借入金という勘定科目で表示されます。


手形に貼る印紙は、後述する証書貸付より

少額ですむという点も特徴です。

 

(2)証書貸付


融資を行うときに、融資先から借用証書

(金銭消費貸借契約証書)を差し入れて

もらう融資のことです。


主に、機械や建物のなどの購入代金や、

安定的な長期運転資金など、期間が1年を

超える長期間の融資のときに証書貸付が

行われます。


したがって、毎月、一定額を分割して

返済する契約が多いようです。


融資を受ける会社では、長期借入金と

いう勘定科目で表示されます。

 

(3)当座貸越


小切手や約束手形の決済は、当座預金

行われますが、その当座預金の残高が不足

しているときに、残高を超えて、銀行が

小切手や約束手形の決済代金を支払う

形式の融資です。


例えば、あらかじめ、銀行と100万円

までは、銀行が決済代金を立替えて支払う

という契約があれば、当座預金残高が

50万円しかないときには、150万円

までは小切手や約束手形の決済ができる

ことになります。


また、手形貸付や証書貸付と異なり、

「枠」の契約なので、当座貸越契約が

100万円であっても、50万円しか

銀行が立替えていなければ、50万円に

対する利息のみを支払うことになります。


返済は、当座預金に入金することに

よって、銀行の立替金からあてられ、

立替分が埋まれば、当座預金として預け

られることになります。


また、当座貸越契約期間内であれば、枠の

範囲内で何度でも融資を受けることができ

ます。


最近は、当座預金とは切り離された、貸越

専用口座を設けて融資を行うことも行わ

れるようになっています。


事業者向けのカードローンがそのひとつの

例です。


なお、融資を受けている会社では、当座

借越という科目で表示されます。

 

(4)商業手形


会社が商品の販売代金として受取った

手形(これを商業手形といいます)を、

銀行が会社から買取ることで、実質的に

資金を融通する方法を、手形割引と

いいます。


手形割引の割引とは、手形の期日までの

利息相当分(割引料)を、手形金額から

差し引くことです。


例えば、手形金額が100万円の手形の

割引料が5万円の場合、銀行は100

万円の手形を会社から買取り、割引料を

差し引いた95万円を、その会社の口座に

入金します。


ただし、万一、銀行が買取った手形が

不渡りになった場合、割引を依頼した

会社は、その手形を買戻しする義務を

持っている点に注意が必要です。


ちなみに、商業手形に対義語は融通手形

です。


融通手形は、商取引の裏付けのない、単に

お金の融通のために振出された手形を指し

ます。


また、商業手形を割り引いてもらった

会社では、割引手形という科目で表示

されます。


今回の記事の結論は、どのような理由で

自社の資金が不足するかという点を

明確にし、それに合う形式で融資を受ける

ことが賢明だということです。

 

 

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銀行の種類

今回は、知っているようで意外と知られて

いない、銀行の種類について書きたいと

思います。


まず、銀行、信用金庫、信用組合の違いを

説明します。


銀行は、銀行法に基づく株式会社で、

資本金10億円以上、かつ、内閣総理

大臣の免許が必要です。


銀行の中でも、メガバンク、信託銀行、

地方銀行などに分けられることがあり

ますが、法律上はいずれも銀行法に基づく

銀行です。


信用金庫は、信用金庫法に基づく、協働

組合形式の金融機関です。


協同組合といっても、かなり、銀行に

近い金融機関で、預金業務に関しては

制限がありません。


ただし、融資は、非事業性の融資を除き、

従業員300人以下、または、資本金

9億円以下の事業者である組合員に対して

しかできません。


とはいえ、組合員でない人が融資を

受けたいときは、直ちに組合員になる

ことができるので、実質的に制限が

あるのは、会社の規模ということに

なります。


最後に、信用組合は、金融機関である

ものの、組合員の相互扶助が目的であり、

預金も融資も組合員に限定されます。


信用組合は、職域、業域、地域の3つに

業態が分かれており、街中で見かける

信用組合は、地域信用組合です。


融資を受ける会社から見れば、地域信用

組合は、ほとんど信用金庫と変わりあり

ませんが、融資を受けることができる

事業者の規模は、信用金庫より、やや、

小さい規模となります。


つぎに、銀行の分類について説明します。


かつての都銀については、何度も再編が

あり、いろいろな定義があります。


定義の代表的なものとして、全国銀行

協会の統計資料では、都市銀行を、

みずほ・三菱東京UFJ・三井住友・

りそな・埼玉りそなの5社に分類して

います。


別の定義では、いわゆるメガバンクには

りそな銀行埼玉りそな銀行は入らない

とか、埼玉県内でしか営業していない

埼玉りそな銀行都市銀行に入れるべき

ではないという考えもあるようです。


定義はいずれにしても、これらの5つの

銀行は、大規模な会社向けの融資を

中心に行っています。


中小企業向けの融資も行っていますが、

業績のよい会社、ある程度の規模のある

会社などを選択して取引しているよう

です。


つぎに、信託銀行は、信託業務を中心に

行っています。


融資業務も行っていますが、10億円

単位での融資が中心で、大規模な会社で

ないと、なかなか融資を受けることは

できないでしょう。


その次に、地方銀行ですが、これは、

都道府県ごとにほぼ1つずつある

銀行で、地方銀行協会に加盟している

銀行を指します。


いわゆる、第二地方銀行は、厳密には、

第二地方銀行協会加盟銀行のことです。


第二地方銀行協会は、かつての、相互

銀行協会であり、同協会に加盟して

いる銀行も、かつては、相互銀行

でした。


しかし、かつて存在した相互銀行は、

すべて普通銀行に転換しており、

現在は、相互銀行はありません。


第二地銀は、地銀よりも少し規模の

小さい銀行ということも言えますが、

融資額が5兆円を超える第二地銀

ある一方で、融資額が3千億円未満の

地銀もあるので、個別に見ることが

妥当でしょう。


今回の記事の結論として、中小企業の

方は、信用金庫または信用組合から

融資取引を始めることをお薦めします。


ただし、信金・信組は、融資額に限度が

あるころから、事業規模の拡大とともに、

地銀・第二地銀からも融資を受けるように

するとよいでしょう。


会社自体が大企業になった場合は、都市

銀行と取引することが望ましいことは

いうまでもありません。

 

 

 

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※記事と写真は関係ありません。

組織の定義

組織を知ることは、会社経営者にとって

重要なことということは、多くの方に

認識されていると思います。


そこで、会社経営者向けに、組織に関する

多くの書籍が発売されていたり、組織に

関する多くのセミナーが開かれていたり

します。


その中で、組織とは何かという組織の

定義が紹介されることもあります。


その定義は、組織論の大家、バーナードの

定義がしばしば引用されます。


バーナードによれば、組織を「2人以上の

人々の、意識的に調整された諸活動または

諸力のシステム」と定義しています。


この定義は有名であるものの、ピンと

来ない人が多いと思います。


その最大の要因は、「諸活動または諸力の

システム」ということばが使われている

からでしょう。


一般的な組織というと、「会社組織」と

いった、何らかの目的を持った人々の

集まりを指すでしょう。


それにも関わらず、バーナードは、組織を

「諸活動または諸力のシステム」のことを

指すと定義しており、人々を指していは

いません。


実は、バーナードが、組織の定義を書いた

主著の「経営者の役割」

( http://amzn.to/2qBZuOq )を発表した

後は、専門家の間では、バーナードの

組織の定義を画期的であると評価されて

いるのですが、その一方で、このような

諸活動やシステムに焦点を当てたことが、

実務家や初学者の理解の妨げにもなって

いると私は感じています。


バーナードは、一方で、会社に属する

人々の集まりを、人的システムと呼んで

おり、それらが一般的に使われる組織に

近いものとなっています。


その他に、会社の建物や機械を物的

システム、会社と販売先や仕入先との

社会的なつながりを社会的システムと

呼び、さらに、人的システム、物的

システム、社会的システムと組織で構成

される仕組みを協働システムと呼んで

います。


この、協働システムは、会社の、ひと、

もの、かねの有機的な活動の場を指して

いるわけです。


ここまで理屈っぽい説明が続きましたが、

結論としては、バーナードの定義する

組織と、一般的に使われている組織は、

別のものを指しているということです。


しかしなが、同じ、組織という文字が

使われていることから、中途半端な

解説では、バーナードの定義する組織と、

一般的に使われている組織は、別のものを

指しているということを説明しないか、

バーナードの定義する組織を一般的に

使われている組織を指していると誤認

して説明しているため、それを読んだり

聞いたりした実務家や諸学者は、消化

不良になってしまうのだと思います。


ということで、最後に宣伝になりますが、

このようなことを踏まえて、しっかりと

解説をしている拙著「図解でわかる経営の

基本いちばん最初に読む本」

( http://amzn.to/2lu3fU4 )をお読み

いただくと、これまで消化不良だった

方は、読後にスッキリすると思います。

 

 

 

 

 

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商売冥利

松下幸之助さんのご著書「商売心得帖」

( http://amzn.to/2r6rbLs )に、お菓子屋

さんのお話しが載っていました。


これは、松下さんが知人から聞いた話と

して書かれており、具体的には次の通り

です。


すなわち、ある町のお菓子屋さんに、

身なりのみすぼらしい人がまんじゅうを

買いにきました。


ところが、店員が躊躇しているのを見て、

店の主人がまんじゅうをその顧客に渡し、

代金を受け取ると深々と頭を下げました。


店員の方は、普段は店に出ない主人が、

あえて店に出てきたところを不思議に

思って、その理由を尋ねたところ、店の

主人は、なかなかまんじゅうを買うことが

できない人が、わざわざ買いに来てくれた

のだから、このことは商売冥利であり、

普通の人が買いに来てくれたときよりも

感謝しなければならないと答えたという

ことでした。


この話を読んで、私は、銀行で働いて

いたときのことを思い出しました。


私が、あまり業況のよくない会社の

経営者の方から融資の申し込みを受けた

ことがありました。


ひととおり話をきいたあと、その社長は

歳下の私に深く頭を下げて帰って行き

ました。


もちろん、その社長は、私個人に頭を

下げたのではなく、銀行職員という

肩書に頭を下げているということは

分かっていたのですが、「赤字の会社

からの融資の申し込みは、稟議書を

書くのに苦労するなぁ」という気持ちが

私の顔に現れていたのだと思います。


その様子を見た上司から、「業績のよい

会社と、業績のよくない会社では、

銀行は融資金利などで差をつけなければ

ならないが、接し方は、どの会社にも

平等にしなければならない。


そうでないと、業績の悪い会社には

銀行は冷たい態度をとると思われて

しまうようになる」と、注意を受け

ました。


その後、私は、顧客とお話をするときは

どんな顧客に対しても、相手を尊重して

話を聞くように心がけました。


前述の松下さんの聞いたお話しも、

そこまでは言及されていないものの、

お菓子屋の主人は丁重に顧客に礼を

述べた一方で、代金については、

きちんと正価を受け取ったと思います。


感謝をするということは、正価を受け

取ることが前提となっているでしょう。


銀行の融資についても、赤字の会社へ

融資をするときは、銀行はその会社から

リスクに見合った金利を受け取ります。


ですから、融資先の業況が違うからと

いって、接し方も変えていいということ

にはならないということになります。


また、このことは、融資を受ける側にも

当てはまると言えます。


これも、私が銀行で働いていたときのこと

ですが、「同業者のA社が融資金利

2%に引き下げてもらえたのだから、

自社も同じ金利にして欲しい」という

ような依頼を受けることが、ときどき

ありました。


その会社の社長も、本当は、A社と自社

では、業況が違うということを分かって

いても、表向きはそれを認めたくない

ために、銀行に無理をききいれさせる

ことで、面目を維持しようとしたので

しょう。


業績の結果に応じて銀行は融資金利

決めているわけですから、横車を押す

ことによって金利を引き下げようとする

ことは、正当な取引をすることには

ならないでしょう。

 

 

 

 

 

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