鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

リースによる資金繰改善

よく、「機械を購入するための融資を

申し込んだら、銀行から、頭金を増やす

条件をつけられた」という話をきく

ことがあります。


銀行は、設備購入のための融資は、

通常は全額を融資せず、30%程度は

自己資金で支払うことを条件とします。


しかし、設備購入代金を、全額、立て

替えてもらう方法があります。


それは、リースで設備を調達する方法

です。


例えば、1,000万円の設備を調達

するときは、銀行に融資を申し込むと

700万円程度しか融資をしてもらえ

ません。


しかし、リースを利用すると、設備

購入代金の全額をリース会社が立て

替えてくれます。


リースは、経済的効果は、融資を

受けることと同じですが、法律上は

賃貸借契約なので、リース会社が

設備を所有しなければならず、その

ためには、設備購入代金の全額を

リース会社が支払うことになります。


この記事の本旨からはずれますが、

リースで調達できる資産は、動産

だけでなく、内装一式、厨房一式、

コンピューターブログラムなども

リースで調達できるという点も

リースの利点です。


話しを戻して、リースはリースの

ユーザーの資金負担を減らすという

利点がありますが、一方で、リース料に

含まれる利息相当額は、一般的に銀行の

融資金利より高めです。


これは、一概に比較はできませんが、

リース料にはリース物件の廃棄費用

なども含まれていることから、

金額的には銀行からの融資が有利

ですが、私は決してリースを利用

することが得策ではないとは考えて

いません。


ところで、リースを利用することで

ユーザーの資金負担を減らすことが

できると述べましたが、それでは、

事業を営む会社が新たな設備投資を行う

場合、頭金を用意する必要はなくなる

のでしょうか?


これについては、私はそのようには

考えません。リースを利用する場合、

頭金は不要ですが、頭金を用意できない

という会社は、資金繰がよくない、

すなわちあまり業績がよくないという

ことです。


事業を行っていて、資金繰がよくない

状態を続けることは、事業の目的を

達成していないということになります。


リース利用によって資金繰を改善する

ことはできますが、より有利に事業を

展開していくために、さらに多くの

利益を得ることを目指さなければ

ならないことには変わりはないと

思います。

 

 

 

 

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甘えの構造

筑波大学教授で産業医の松崎一葉さんの

著書、「クラッシャー上司-平気で部下を

追い詰める人たち」を読みました。

( http://amzn.to/2vofmUu )


「クラッシャー上司」とは、部下を精神

的につぶしながら出世いく人を指して

いるそうです。


本書は、クラッシャー上司の現状、

クラッシャー上司が生まれる構造、

クラッシャー上司への対策が主要な

テーマですが、私が注目したことは、

「甘えの構造」です。


すなわち、クラッシャー上司のような

人が現れる原因のひとつは、社外には

礼儀正しいものの、社内に対しては、

「黙って空気を読め」「会社のために

働いている人の苦労を配慮しろ」と

いう同調圧力を働かせる、すなわち、

部下に過重労働を強いることを「愛の

鞭」と誤解している「甘えの構造」が

あるということです。


言い換えれば、業績をあげるためという

大義名分を掲げて、部下が犠牲になる

ことを正当化するという考え方があると

いうことです。


これについては、多くの方によくないこと

であると理解されるものの、現実の社会

では残念ながら珍しくないようです。


いわゆるブラック企業が問題化している

ことがその例です。


そういう私も、このような考え方をして

いた記憶があります。


私はサラリーマン時代は仕事を最優先して

おり、そのことが家族に負担を強いていた

にもかかわらず、仕事を優先することは、

家族のためにもなると考えていました。


一見、「会社のため」「業績をあげる

ため」という理由をつければ、多少の

犠牲もやむを得ないと考える方は、

これまでたくさんいたと思います。


これは、本当は、真の課題を先送りする

ための詭弁になっていると私は考えて

います。


別の言い方をすれば、本来は、従業員が

仕事に満足できなければ、業績も向上

しないのに、従業員の犠牲によって

会社の業績は向上すると考えることで、

経営者は職場環境を改善しなければ

ならないという責任から逃れようと

しているということです。


さらには、今後、人手不足の状況は

ますます深刻化していくことでしょう。


会社が従業員を選ぶ時代ではなく、

従業員が会社を選ぶ時代になっている

ということです。


かつての就職難の時代は、経営者が

「オレのやり方が気に入らないなら、

代わりはいくらでもいる」というような

態度をとることも通用してきましたが、

これからは、よい従業員に自社で働いて

もらうには、よい職場環境を提供しな

ければなりません。


そして、それが会社の業績にも直結

します。


結論は、組織運営、職場環境改善という

経営者の本来の役割がますます重要に

なってきているということです。

 

 

 

 

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実質同一体

銀行の融資に関して、実質同一体という

用語があります。


これは、複数の融資先を1社をみなして

融資を管理することです。


例えば、社長Aが会社Bと会社Cの代表

取締役に就任していて、かつ、両社とも

社長Aがすべての株式を所有している

とき、銀行からみて会社Bと会社Cは

実質同一体であり、両社に対する融資は

個別に管理せず、1つの会社に対する

融資として管理します。


(ただし、もちろん、融資契約は、

それぞれの会社で行います)


このような管理をする理由は、もし、

会社Bの資金繰が悪化した場合、

会社Cも大きく影響を受ける可能性が

高いからです。


具体的には、会社Bの資金繰が悪化

すると、会社Cが会社Bに対して

資金の融通をする可能性が高いから

です。


また、両者の決算期が異なる場合、

会社Bの業績悪化したときに、

会社Cと架空の取引を行う方法などで

会社Bのみかけ上の業績をよくする

ということも行われかねません。


そこで、銀行は、実質同一体の全体の

資金繰や業績を見ながら融資審査を

行います。


ところで、実質同一体の考え方は、

連結決算の対象である、連結企業

集団とにています。


連結企業集団は、親会社と子会社の

ような支配従属関係にある会社が、

法律上は個別の会社であっても、

事業活動は親会社に従属している状態で

行われていることから、1社ずつの財務

報告を見るよりも、連結企業集団を

1社の会社とみなした場合の財務報告を

見ることが適切であることから、

それぞれ個別の会社に財務報告を基に、

連結企業集団同士の間での資金のやり

取りや利益を調整して、連結財務諸表が

作成されます。


しかし、実質同一体は、連結企業集団

よりも広い概念です。


前述の、会社Bに、同社が100%

出資している会社Dがあった場合、

会社B・C・Dは実質同一体ですが、

会社Bと会社Dは、連結企業集団に

該当するものの、会社Bと会社Cは

連結企業集団ではありません。


また、社長Aが住宅ローンを利用して

いる場合、社長Aと会社B・C・Dは

実質同一体と管理されます。


これは、もし、会社B・C・Dの

業績が悪化した場合、社長Aの住宅

ローンの返済が懸念されるからです。


以上のことから、よく、銀行から受け

られる融資額を増やそうとして、会社を

新たに設立しようとすることを考える

方がいらっしゃいますが、実質同一体と

いう管理方法によって、それは不可能と

いうことになります。


なお、実質同一体という考え方は、

明確な線引きが難しい場合もあります。


社長Eと社長Fは兄弟で、それぞれ、

会社Gと会社Hの代表取締役に就任

しているとします。


そして、社長Eは弟の経営する会社Hの

取締役に就任しているとします。


ただし、会社Gと会社Hはまったく業種が

異なり、かつ、両者間での取引や資金の

融通も行われていないとします。


この場合、会社Gの社長が会社Hの役員

にも就任しているので、両者は実質

同一体と考えることもできますが、

会社Hの取締役に、たまたま会社Gの

社長が就任しているだけで、両者は

お互いに依存する関係にない会社と見る

こともできます。


これは、銀行が実態に即して判断する

ことになります。


結論は、銀行は実態に即して融資審査を

しているので、銀行からの評価を高める

目的で複数の会社を設立してもあまり

効果がないということです。

 

 

 

 

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後継者

銀行からみて、融資先の中小企業に

後継者がいるかどうかということは、

融資の方針に一定程度の影響があり

ます。


なぜなら、中小企業の場合、事業の

業績は経営者の能力に大きく左右

されており、実際に、経営者が病気

などで急死してしまい、その後、

会社の業績が悪化して倒産に至った

という例はたくさん起きています。


そういう面から、リスク管理として、

中小企業も後継者を育成し、また、

将来はその人に経営を引き継ぐ予定で

あるということを、社内にだけでなく

社外に向けても明確にしておくことは

大切だと思います。


しかし、経営者の方の中には、自分が

急死してしまうということを想定しない

ばかりか、自分以外の人に経営を譲ると

いうことはまったく念頭になく、さらに

後継者を育成すれば、自分が会社から

追い出される可能性を高めることに

なると考える方もいるようです。


これは、冷静に考えれば、ほとのどの

人が、後継者を育成して円滑に経営を

委譲することが望ましいとは理解でき

ても、実際には、会社への思い入れ

などから、自分以外の人が経営者に

就くことを前提とした対策をとること

さえもできないという人も少なくないと

思います。


このようなこと、すなわち、お家騒動は

中小企業だけでなく、時折、上場会社

でも起きているので、実際には、とても

難しい問題だと私も思っています。


そのため、銀行としては、そのような

機微な情報を、めったなことでは、

経営者にたずねることはしません。


その一方で、前述のように、銀行は

融資先の会社に後継者がいるかどうか

ということには大きな関心を持って

いるので、後継者が明確になって

いない会社には、後継者になりそうな

人がいるかどうかということを注視

しています。


ただ、仮に、後継者としてめぼしい

人がいても、経営者が経営の引継ぎに

関心がなさそうであれば、もし、

現在の経営者に万一のことがあった

ときは、混乱が起きるであろうと

考えるでしょう。


繰り返しますが、後継者については

機微なことがらですが、後継者を

明確にし、そのための準備を進める

ことは会社のリスクを減らすことに

なり、かつ、銀行からの評価も高める

ことになりますので、まだ、明確に

していない会社は、それを明確にする

ことをお薦めします。

 

 

 

 

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信用保証協会の担保

信用保証協会の1つの会社に対する保証

額は限度があります。


一般保証は、無担保で8千万円、有担保で

2億円、合計で2億8千万円までです。


このうち、担保条件の保証は複雑な面が

ありますので、ここで少し説明したいと

思います。


保証を受けるための条件となる担保とは、

論理的にはさまざまなものがありますが、

ほぼ、不動産担保を指します。


そして、これは、明確な根拠はなく、私の

経験で述べるのですが、担保の評価は、

銀行よりも信用保証協会では、高目に評価

される傾向にあるようです。


例えば、同じ担保条件でも、銀行では

1,000万円の融資しか得られない

場合であっても、信用保証協会の保証を

1,200万円得られるということも

あります。


そういった点では、担保条件で信用保証

協会に保証を申し込めば、より多くの

融資を受けられる可能性があります。

 

また、この不動産担保の契約の仕方には

ふた通りあります。


そのひとつは、一般的な方法で、銀行と

担保契約を結ぶ方法です。


もうひとつは、信用保証協会と担保契約を

結ぶ方法です。


この方法の長所は次の通りです。


(1)根抵当権の登録免許税が、

1,000分の4から、1,000分の

1.5に軽減される。


(2)不動産担保を1つの金融機関だけ

でなく、複数の金融機関からの融資に

利用できる。


逆に、短所は、不動産担保の権利が信用

保証協会にあると、銀行側がイニシア

ティブを発揮して融資をしにくくなると

いう面があります。


現実的には、不動産担保は銀行が契約者

となる例が多いようです。


ところで、当初、いわゆるプロパー融資

のために銀行と契約した不動産担保が、

その後に申し込まれた、信用保証協会の

保証のために使われることがあります。


こういったことは、建前としては、融資を

受ける側に銀行が了解を得た上で担保を

信用保証協会の保証の条件に使うことが

望ましいのですが、現実的には融資を

受ける側は「保証を受けられるのであれば

条件は銀行に一任する」といった回答を

する会社が多いので、事後的に知ることが

多いようです。


どうすれば、担保が信用保証協会の保証の

条件となっているかどうかを知ることが

できるかというと、信用保証協会が銀行

あてに発行した保証書の保証条件欄に

担保の明細の記載があれば、担保条件と

いうことになります。


信用保証協会が銀行に対して発行する

保証書は、その写しが保証申込人

(借入人)にも融資実行後に送られて

くるので、それを知ることができます。


ただ、この、銀行に提供した担保が、

信用保証協会の保証の条件になることに

ついては、銀行が融資を受ける側に

不利になるように利用するということは

私がきいた限りでは例はありません。


とはいえ、銀行と担保契約をしていて、

信用保証協会の保証も利用している

会社は、担保が信用保証協会の保証に

どのように利用されているのかという

ことを銀行に尋ねておくことが望ましい

ということに変わりはありません。

 

 

 

 

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融資対策

「融資対策」ときくと、何を思い出す

でしょうか?


多くの方は、銀行にどのような折衝を

すればよいのかということを思い

浮かべるでしょう。


しかし、私は銀行への折衝は不要だと

思っています。


確かに、折衝が100%いらないと

までは言わないまでも、折衝で銀行の

方針が覆ることはあまりありません。


では、「融資対策」は何をすれば

よいのかというと、私は、次のような

ことをすることを薦めています。


(1)翌月10日までに当月の月次

試算表を作成し、銀行へ、持参、

または、郵送する。


(2)当月から6か月先までの資金繰

予定表を作成し、銀行へ、持参、

または、郵送する。


(3)3か年(36か月)程度の売上

計画を作り、毎月、計画と実績の差異

分析を行い、その分析結果を銀行へ、

持参、または、郵送する。


ここで、いくつかの疑問を持つ方が

いると思います。


ひとつめは、自社の状況を知らせる

だけで、銀行は融資をするのかという

ことです。


これは、「Yes」です。


意外かもしれませんが、銀行が融資を

断るときの理由として、会社の業況が

わからないということがあります。


例えば、月次試算表を作成していない

会社が、前回の決算から6か月を経過

してから融資の申し込みをしたとき、

銀行としては、ほぼ必ず、月次試算表の

提出を求めるでしょう。


銀行としては、本来は、前月、または

2か月前の状況を知りたいところなの

ですが、最低限、6か月前の状況は

知っておきたいと銀行は考えています。


ですから、月次試算表を提出するだけ

でも、銀行は融資に前向きになります。


むしろ、「翌月10日までに当月の月次

試算表を作成」することを負担と感じて

いる会社は多いのではないでしょうか?


「月次試算表を作成するだけで銀行は

融資をする」ときくと、「それは簡単

過ぎないか」と感じるかもしれま

せんが、実際には「翌月10日までに

当月の月次試算表を作成する」こと

どころか、月次試算表を作成すること

そのものも負担と感じる会社は多い

ようです。


これは、明確な因果関係は示すことが

できないのですが、月次試算表を作成

することができる会社は、事業に

ついても管理する能力があるという

ことでもあり、また、タイムリーな

会計情報を的確な事業判断に活用

しているのであろうと私は考えて

います。


ですから、「月次試算表を作成する」

ということは、「自社の管理能力を

高め、事業運営に活用する」と言い

換えることができ、だから、銀行は

融資に前向きに応じることができる

ようになると言えるでしょう。


なお、資金繰予定表、および、計画と

実績の差異分析に関する説明については

スペースの兼ね合いで割愛しますが、

「融資対策」の肝となる部分は、どの

ように銀行に折衝するのかということ

ではなく、適時な情報開示と、きちんと

自社の事業を管理していることを銀行に

示すことです。


事業の管理もせずに業績が悪化して

しまう会社に対して、銀行が融資を

躊躇するとすれば、それは当然の

結果でしょう。

 

 

 

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おかねもうけ


私は、会社は「おかねもうけ」をすべき

であると思っています。


これは当然のことなのですが、「おかね

もうけ」は、どういうことを指すのか、

曖昧になっている面もあり、人によって

解釈が異なることがあります。


私は「おかねもうけ=付加価値の創造」

と考えています。


しかし、「おかねもうけ」と聞くと、

少しずるいことをしてでも値段をつり

あげて、不当な利益を得ることである

というイメージを持つ人も多いと思い

ます。


実際に、例えば、それほどの価値の

ない商品を、過剰な広告によって

高額で売るということをする会社が

現れ、批判を浴びることがあります。


これは、価値のないものを価値のある

ものと偽ったり誤認させたりして売る

ことが問題なのであり、言い換えれば、

顧客の信頼を得られないことをすると

いうことに問題があると言えます。


しかし、高額な商品であっても、それ

だけの価値があると顧客に認識されて

いる商品はたくさん売れるし、また、

顧客からの信頼も失いません。


例えば、トヨタハイブリッドカー

プリウスは、同じ大きさのガソリン車

より高額であるにもかかわらず、

人気は高く、品薄の状態が続いて

います。


ですから、「おかねもうけ」とは、

高額で商品を売ることで達成され

ますが、本質的にはそれなりの価値が

顧客に認識されるような商品を売る

ということです。


逆に、こちらは希な例ですが、本当

はもっと高額でも売れるような商品を

低い価格で販売している会社もあり

ます。


このような会社には、商品の価値が

正しく顧客に伝わるようにマーケ

ティングを行うことで、「おかね

もうけ」ができることになります。


おかねをもうけるとは、価値を創造

するということが本質的な活動で

あり、優位に競争している会社は、

この価値を創造する能力が大きい

会社であるということが結論です。

 

 

 

 

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