鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

月例会議はなぜ効果があるのか

私は機会があるたびに、月例会議を開くこ

とをお薦めしています。


この月例会議は、もちろん、月に1回の会

議をただ開けばよいということではなく、

計画の進行状況を確認する会議です。


「計画」と「進行状況」を見比べるわけで

すから、「月次計画(=事業計画)」と

「月次決算書」が必要になります。


ですから、私のいう月例会議を開くには、

事業計画を作成しており、かつ、月次決算

を行っている必要があります。


となると、現実的には、この2つの条件を

満たす会社は、数としては多いと思います

が、比率としてはだいぶ低くなります。


では、仮に、事業計画があり、月次決算も

行っている会社があったとして、その会社

で月例会議を開くとしたら、どんなことを

するのでしょうか?


実は、特別なことをしていません。


計画と実績の乖離を見て、その原因を探っ

たり、改善の余地がありそうであればアイ

ディアを出し合ったり、改善が見込めなけ

れば撤退を検討したりという感じで、特別

のことをしていません。


もしかしたら、もっとより良い方法がある

と思います。


BSCを導入している会社であれば、会議

を開かずに、イントラネットで改善策を検

討することができるでしょう。


ただ、このような会議を開くことそのもの

が特別なことになっていると私は考えてい

ます。


なぜなら、事業計画を作成し、かつ、月次

決算を行っている会社は、比率として低い

からです。


確かに、これだけで本当に会社が良くなる

のかという疑問があるかもしれませんが、

計画を達成するために毎月業績を確認する

ということをしていれば、年に1回程度し

か自社事業の改善を検討しない会社の12

倍の改善が進むと考えることもできます。


この目標の管理については、稲盛和夫さん

が、次のようにお話しをしていました。


「毎月の会議で、自分の目標はこれだけで

すと数字を述べることはできても、会議の

場でないところで、『あの件はどこまで進

んでいるのか』と質問すると、『えーと、

えーと』と言って答えられない人もいる」


これは、目標は会議のためにあると認識し

ている人が多いが、本当は、毎日の活動の

中で、目標を達成するためにはどうすれば

よいか考えなければならないということで

す。


これも当たり前と感じる方が多いと思いま

すが、稲盛さんの伝えたいところは、会議

の時だけ数字を言えればいいという程度の

ことでは目標は達成できない。


目標が頭から離れないくらい、常に目標を

達成するためにはどうすればよいか考えて

いなければ、目標は達成できない。


経営者は、単に、目標を達成しろと会議で

指示すればよいのではなく、従業員の方が

常に目標を達成するための方法を考えるよ

うに育成しなければならないということで

す。


これは、私が実際に顧問先の月例会議のお

手伝いをして感じていることですが、月例

会議のときだけ「来月は目標を達成するよ

うがんばります」と決意表明をし、会議が

終われば、頭から目標が消えてしまうとい

う方が多いと思っています。


では、どうすれば常に目標に向かって活動

する人を育成できるのかということは、別

の機会に述べたいと思いますが、月例会議

を行っている会社でさえなかなか目標を意

識する人が少ないのに、年に1回に状況を

確認ない会社は、ほぼ、1年の間は成り行

きで活動してしまう人ばかりになってしま

う可能性が高いということです。


ここで「月例会議は、単に、目標を意識さ

せるだけが目的なのか」と感じてしまう人

もいるかと思います。


月例会議を開くことの効果は他にもあるの

ですが、このような地味な活動が目標達成

のためには最も効果があると、私は考えて

います。


事業運営は、「●●戦略」や「●●式●●

法」といった派手な方法に目が向きがちな

経営者の方が多いようですが、毎月の目標

確認という地味な活動なしには、それらの

方法を実践しても、その効果も薄れてしま

うと私は考えています。

 

 

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魚のいるところで釣りをする

事業計画を作るポイントとして、市場調査

(マーケットリサーチ)が挙げられます。


端的に言えば、魚のいないところに釣り糸

をたらすようなことのないようにする、す

なわち、需要のあるところに的確に応じる

ようにすることが目的で、これも至極当然

のことです。


ただ、これは、順番が逆ですが、経営者の

方がやりたいと考えている事業が先に決

まっていて、それが成功するという裏付け

をとるために実施するということもしばし

ば行われます。


本来なら、まず、どういったニーズがある

かということを先に調査して、それに合わ

せた適切な事業を選ぶという手順を踏むべ

きです。


ただし、中小企業の場合、事業を選択する

ほどの経営資源やノウハウがないこと、そ

して、経営者が実施したいという事業を行

うことが経営者にとってのモチベーション

にもなるので、展開する事業が先に決まっ

ているという例は多く見られます。


市場調査の結果、幸い、やりたい事業の需

要が見込めそうだというときは、そのまま

実行できるわけですが、需要が少ないと思

われる場合は、展開する地域を変更する、

顧客属性(顧客の好み、年代、職業、性別

など)を変えて新たな標的とする、当初の

事業を少し変えて別の商品を提供できるよ

うにするなどの対応を行います。


では具体的に、どのような調査を行うかと

いうと、私の場合、まず、地方自治体など

が行っている統計資料をあたります。


地方自治体の行っている統計資料は、いま

はホームページで容易に入手できます。


さらに、地方自治体の統計を担当する部署

に直接出向くと、もっと細かい資料を得る

ことができる場合があります。


この地方自治体の統計資料はかなり広範囲

な分野に渡って行われているものの、それ

でも、欲しい資料が見つからないこともあ

ります。


その場合、民間の調査会社から入手するこ

とになります。


一部には無料で入手できるものもあります

が、その多くは有料です。


とはいっても、必ずしも高額とは限りませ

んので、効果的に活用されるとよいと思い

ます。


(ご参考に、民間会社が提供している資料

の例として、株式会社パスコさまが提供し

ている商圏大勝というサービスをご紹介し

ます。→ http://www.cocohore11.com/


さらに、民間会社が提供する資料でも不足

するときは、実際に自分で調査を行いま

す。


具体的には、店舗の前の通行量、商圏のラ

イバルの店舗数・来店者数・キャパシティ

・営業時間などです。


もうひとつの方法として、テストマーケ

ティングがあります。


本格的に事業を始める前に試作品を販売し

て、どれくらいの反応があるかということ

を確かめたり、ホームページやメールマガ

ジンにどれくらいの反応があるかとうこと

を通して、本格的な需要があるかどうかを

探ります。


このような資料の収集は、労力はかかるも

のの、確実な情報をえることとなり、事業

を始めたあとの失敗を高い確率で防ぐこと

ができます。


また、融資を受ける際にも、銀行から信頼

性の高い資料として評価され、承認も得や

すくなります。


今回の結論は、経営者の方が実行したい事

業については、ある程度の準備期間を確保

して、しっかりとした調査を行うことが望

ましいということです。

 

 

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勝つための事業計画

事業計画を作成する理由は、従業員や銀行

に対して目標などを伝える役割のほか、事

業のシミュレーションの意味もあります。


シミュレーションをするのは、事業が黒字

になる見込みがあることを前もって確認す

ることが目的です。


したがって、単に、社長の構想を数値にす

るというだけでなく、その構想が黒字にな

ることを確かめる役割があるということで

す。


では、どのように確かめるのかというと、

その方法はいくつもあります。


今回は、その方法のうち、経営戦略からの

アプローチについて説明します。


経営戦略は、自社の強みをビジネスチャン

スに活かせるように策定しますが、まず、

そのために、環境分析を行います。


この環境分析は、顧客や市場などの外部環

境と、自社の特徴などの内部環境を分析し

ます。


詳細は省略しますが、外部環境の分析は、

PEST分析や5Force分析という方

法があります。


内部環境の分析は、価値連鎖分析やVRI

O分析という方法があります。


そして、外部環境分析と内部環境分析をま

とめる方法がSWOT分析です。


これらの分析を行うことは労力が大きいの

で、小規模な会社には向いていません。


そこで、3C分析という方法が使われるこ

とがあります。


3C分析とは、顧客(Customer)

自社(Company)、競合(Comp

etitor)の3つCを分析の対象とす

る分析のことを意味しています。


そして、これらの3つのCの特徴を分析し

どのような経営戦略が自社の事業に適して

いるかということを検討します。


そして、自社が採るべき経営戦略が定まっ

てから、その経営戦略に基づいて、誰が、

何を、どこに、いつまでに、どれだけと

いった事業計画を作成していくことになり

ます。


今回の結論は、事業計画は、そもそも、ラ

イバルに勝てる事業でなければ作成する意

味がなく、そのためにしっかりとした環境

分析と経営戦略の策定が前提になるという

ことです。


繰り返しになりますが、経営者の構想を表

すだけでは足りず、それが奏功しなければ

事業を実践する意味はありません。


もちろん、経営者の方は事業が成功すると

いう前提で事業を始めるわけですが、環境

分析によってその裏付けを固めておくこと

が、説得力が高く、実効的な事業計画を作

成することにつながります。

 

 

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シミュレーションとしての事業計画

これは私の経験で感じることなのですが、

会社経営者の方に事業計画書の作成や提出

を依頼すると、多くの方が負担と感じてい

るように感じられます。


とはいえ、ここでは、「経営者のくせに、

事業計画を作ろうとしないとは何ごとだ」

という批判をしたいということではありま

せん。


どうあるべきかどうかは置いておき、経営

者の方の多くは、やりたいことの中に、事

業計画の作成は含まれていないということ

です。


かといって、そのような経営者の方は、自

分がやろうとしている事業がもうからない

とは考えてはいないようです。


どのような根拠があるのかということはと

もかく、「自分がやろうとしている事業は

うまくいく」と考えているようです。


そして、「事業がうまくいくことは分かっ

ているのだから、わざわざ事業計画を作る

までもない。


うまくいくと思っているから会社を設立し

たのであって、銀行は自分を信用して融資

をしてくれればいい」と考えているようで

す。


ただ、残念なことは、「うまくいく」はず

の事業が、実際に始めてみると、「こんな

はずではなかった…」という例も少なくな

いということです。


そこで、そのようなことになることを避け

るためにも、事業を始める前にシミュレー

ションをする意味で、自分の構想を事業計

画として明確にしておく方が賢明と言える

でしょう。


と、ここまで私が述べてきたことは、文字

で見れば、至極当然のことと感じる方は多

いと思いますが、それでも事業計画を必要

と感じていない、または、関心がないとい

う経営者の方にお会いすることは珍しくあ

りません。


確かに、事業計画のようなものを利用せず

に、感性だけで事業を成功させている人も

いるというのも事実です。


芸術家タイプや、創造的な仕事をする人た

ちの中には、自分がやりたい仕事をするだ

けで、事業が成功していくということもあ

り、私もそのような人に会うことがありま

す。


ただ、そのような事業に挑んだ方の中で、

成功者になる割合が低いのも事実です。


さらに、そのような事業に挑むことが問題

ではありませんが、ある意味、リスクの高

い事業に臨む以上、人を雇う、銀行から融

資を受けるなど、事業を行うにあたって他

者の協力が必要な場合は、それなりの自己

資金を用意した上で、協力を請う相手に事

業計画を示すことは欠かせません。


実は「事業を始めてみたら、こんなはずで

はなかった」という内容の相談を、私はこ

れまでに多く受けています。


手短に述べれば、自分の事業構想を過信し

て、事業のシミュレーション、すなわち、

事業計画を作成することなしに事業を始め

てしまったという人です。


話が本題からそれますが、そのような状態

に至ってしまった会社は、銀行から救済的

な融資を受けることはより難しくなりま

す。


話しを戻して、現在は規制緩和が進み、起

業することも容易になりましたが、それは

新規参入者も増え、競争も激しくなるとい

うことでもあります。


だからこそ、起業にあたっては十分な時間

を確保して、しっかりとした事業計画を作

ることが大切です。

 

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ローリングプラン

中期計画とは、3~5か年の事業計画のこ

とですが、これにはフィックスプランと

ローリングプランの2つがあります。


とはいえ、フィックスプランは一般的に言

われている中期計画のことです。


これに対して、ローリングプランは中期計

画に修正を加えることが特徴であることか

ら、ローリングプランに対して一般的な中

期計画をフィックスプラン(固定計画)と

呼ぶようになったのではないかと私は類推

しています。


そこで、今回はローリングプランにを中心

に説明します。


前述の通り、ローリングプランは修正を行

うことが特徴の中期計画です。


ただし、修正の方法に特徴があります。


例えば、ローリングプランの期間が3か年

であった場合、1年が経過したところで、

経営環境の変化などに合わせて計画の修正

を行います。


ただし、この修正は、残りの2か年に対し

て行うのではなく、当初の計画の2年目を

修正後の計画の1年目とする、新たな3か

年の計画とするということです。


これを言い換えれば、ローリングプランは

中期計画でありながら、常に1年目の計画

を実行しているということになります。


このことは、ローリングプランは短期計画

と変わらないのではないかと批判される対

象となっていますが、位置づけは中期計画

の初年度なので、単なる短期計画ではなく

3年後を見通しながら活動を行うという点

で短期計画と異なります。


すなわち、環境変化による修正を毎年行い

ながら、活動は中期的な視点に立って行う

という点が特徴です。


これは、繰り返しになりますが、ややもす

ると、単なる短期計画の積み重ねに陥って

しまいがちなので、中期計画として活動を

するという点に難しさがあると私は考えて

います。


ただ、真にローリングプランに基づいた活

動ができる会社というのは、環境変化にき

ちんと対処できる会社であるということで

しょう。


これは私の類推ですが、ローリング(ro

lling)とは回転という意味であり、

ローリングプランは毎年対象期間が1年ず

つ先に延びていく様子が、計画が転がって

いくように見えることから、このように名

付けられたのではないかと思っています。


もうひとつ付言したいこととして、フィッ

クスプランは決して修正しない計画ではな

いということです。


フィックスプランであっても、環境変化が

あれば修正が必要になります。


ただし、ローリングプランとの違いは、

ローリングプランが計画策定の時点で計画

の修正を行うことを前提としている一方

で、フィックスプランは修正は前提として

おらず、急激な環境変化があった場合な

ど、修正せざるを得ない場合に修正を行う

という点で異なります。


また、フィックスプランの計画修正は計画

の中途での修正であって、修正した時点を

1年目とするローリングプランの修正とは

ことなります。


即ち、ローリングプランの計画修正は、あ

る意味、当初の計画を修正した新たな計画

が最初から始めることであるのに対して、

フィックスプランの計画修正は、修正時点

での残りの期間のみを修正し、計画そのも

のは続行されるという点で異なります。


今回の結論は、事業計画に基づいた事業運

営ができるようになった後は、より難易度

の高い、ローリングプランを導入すること

が望ましいということです。

 

 

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事業計画の対象期間

今回は、事業計画はどれくらいの期間のも

のを作ればよいのかということについて述

べたいと思います。


結論としては、事業計画に基づいて事業を

始めるという中小企業は、3か年程度でよ

いと、私は思っています。


それは、事業計画を使い始めた当初は、P

DCAをじょうずに行うことに注力するこ

とが基本であり、PDCAを実践するだけ

であれば、3か年程度で十分であると考え

るからです。


ただし、3か年だけの事業計画を作ること

も、どのようにしたらよいか、迷う面があ

ると思います。


そのような場合は、まず、10年後は、会

社がどうなっているのかという目標を決め

るところから始めることをお薦めします。


例えば、現在、店舗を1つ持っている小売

店が、10年後に店舗数を5つにしたいと

いう目標を持っているとすれば、売上高を

5倍+αという目標にすることから始めれ

ばよいでしょう。


そのためには、5つの店の間接業務を束ね

たり、店舗の出店企画、店舗の事業の改善

指導や人材育成などを担う部署が必要にな

るでしょう。


また、店舗が増えることによって、固定資

産や、借入金、出資金も増えることになる

でしょう。


このような要素から、10年後の会社の資

産、負債、費用などを計算します。


次に、10年後の状況に至るまで、毎年の

売上高、費用、利益計画を作っていき、今

後、10か年にわたる、1年ごとの収支状

況や、財政状況を計画損益計算書、及び、

計画貸借対照表として明らかにします。


このような10か年程度(乃至は5か年程

度)の事業計画を長期計画と言います。


ちなみに、事業計画は、損益計算書や貸借

対照表だけで表すものではありません。


従業員数、来店者数、地域でのシェア、そ

れぞれの目標の達成方法なども盛り込むこ

とが必要ですが、事業計画の利用を始めた

ばかりの段階では、計画損益計画書だけで

もよいでしょう。


その10か年のうち、こんご3か年(また

は5か年)を中期計画として、より、精緻

に検討をします。


具体的には、1年目、2年目、3年目の売

上高などを達成するために、どのような活

動や支出が必要かといった内容を明確にし

ます。


さらに、できれば、36か月(または60

か月)分の計画月次損益計算書を作成しま

す。


そして、こんご1か年について、短期計画

として、より詳細な数値を決めます。


例えば、商品ごと、販売先ごと、部門ごと

などの販売計画、それらを達成するために

必要となる費用や人員配置、設備導入など

を明確にします。


ここまでのステップは、こんご10か年に

わたる計画を、1か月に細分化するという

ものです。


この事業計画は、さらに、多くの項目を加

えることができますが、多すぎると管理負

担が増えますので、慣れないうちは、計画

の対象となる項目は絞り込むことぉお薦め

します。


実際に、事業計画を活用しながら、項目を

増やす必要があると判断される場合、例え

ば、ある製品を販売地域ごとに分けて管理

することが得策であると判断されるような

ことがあれば、そのような項目を増やすこ

とをお薦めします。


この逆に、細かい管理が必要と判断してい

たものが、後になって不要と感じられた

り、ほかのものといっしょにしても支障が

ないと判断できる場合は、項目を減らすと

よいでしょう。


ちなみに、この事業計画は、経営理念や経

営戦略に基づいて作成されなければなりま

せんが、黎明期の会社にあっては、経営理

念や経営戦略を明確化にすることなく、計

画損益計算書のみによって、まず、黒字に

するということを当面の目標としてもよい

でしょう。


最後に、このような事業計画を作成する意

義ですが、経営管理をするというツールを

持つということだけでなく、自社の事業が

黒字を確保するにはどのような活動が必要

かということが明確になります。


最後に、これは多くの方が述べていること

ですが、事業計画の作成は負担となります

が、事業計画なしに成り行きの活動によっ

て、がんばって事業に臨んだものの、その

成果が赤字になってしまうということを避

けるには、事業計画の作成が最良の方法で

す。

 

 

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融資申込と事業計画

融資の申込をするには、事業計画が必要だ

と考える人は大部分を占めると思います。


しかし、そうは言いながら、融資を受ける

ために仕方なく作るという方も多いと思い

ます。


むしろ、事業計画は作らずにすませたいと

いう方も少なからずいるようです。


これは極端な例ですが、「融資の申込をし

たら、銀行から事業計画を出せと言われた

ので、作って欲しい」と私に依頼されるこ

とがありますが、「では、貴社の事業の内

容を教えて欲しい」と依頼すると、「そん

な面倒なことをしたくないから専門家に頼

んでいる」と言われることもあります。


要は、事業計画は融資申請の手続きのため

だけの書類としか考えていないということ

のようです。


話しを戻すと、事業計画を作成することに

否定的に感じる理由として、銀行には口頭

で自社の状況を伝えるだけで済むと考えて

いる方も多いという事情もあると思いま

す。


そのように考える要因として、かつて、中

小企業金融円滑化法(融資のリスケジュー

ル、すなわち、融資条件の変更によって、

融資の返済の猶予を促す法律)の申込は、

口頭だけで申し込みがあっても極力受け付

けるようにとの当局からの指導があり、多

くの金融機関では、事業計画を含む書類の

提出を受けずに条件変更に応じた例がある

ということです。


また、金融検査マニュアル別冊中小企業編

でも、例えば、事例12の解説として、次

のように記載されています。


「中小・零細企業等の債務者区分の判断に

当たっては、今後の業況見通しや借入金の

返済能力の判断について、債務者が作成し

た経営改善計画や収支計画等によって確認

することが望ましいが、それらがない場合

であっても、例えば、本事例のように、金

融機関が返済条件の緩和を行う際、債務者

の今後の収支見込等を基に返済能力を検討

した資料等で確認することもできると考え

られる」


この事例の会社は、「3期連続で赤字を計

上、財務内容は倉庫部分の減価償却不足額

を加味すると実質債務超過状態に陥ってい

る」会社で、金額は明確に書かれていない

ものの、恐らく約2~3億円程度の融資に

ついて「3年前から元本返済猶予の条件緩

和」に応じているようです。


このような会社であっても、同マニュアル

では「経営改善計画や収支計画等による確

認」を必須としなくてもよいと記載してい

ます。


このような当局の指針が示されていること

から、事業計画がなくても融資の申込は可

能と考えている方もいるということです。


もちろん、確実に融資に応じてもらえるよ

うにするためには、自ら作成した事業計画

を書面で提出することが望ましいわけです

が、もうひとつ、別の観点から事業計画に

関する考え方について述べたいと思いま

す。


金融機関は、なぜ、融資先の事業計画にこ

だわるのかというと、融資先を支援したい

ということだけに限らないということで

す。


前述の金融検査マニュアル別冊中小企業編

を読んでもらえると分かるのですが、例え

ば、事例28の解説では、「債務者は、本

業は順調であるものの出資金の減損という

一時的かつ外部的な理由により、大幅な赤

字、債務超過状況に陥っているものの、本

業である水産加工業は順調であり、また、

キャッシュフローの状況も悪化しておら

ず、今後も当初約定通りの返済が可能であ

るならば正常先に相当する可能性が高いと

考えられる」と記載があるなど、業況のよ

くない会社であっても、正常先として取り

扱うことを可能とすることを認めていま

す。


この意味するところは、債務超過先への融

資金は約70%の貸倒引当金を積まなけれ

ばならないけれど、正常先であれば数%の

貸倒引当金ですむということです。


金融機関が事業計画にこだわる本当の理由

は、金融機関にとって費用である貸倒引当

金を減らすということです。


これは、メガバンクなどの経営基盤が強く

て余裕のある銀行の場合、前述の事例のよ

うな会社に接したときは、検査マニュアル

の解釈を適用せずに、決算書通りの債務超

過先として貸倒引当金を積むということも

あります。


そのようにすることの方が効率的であると

メガバンクは考えているからです。


話しを戻すと、金融機関が要求する事業計

画は、融資をする側の事情で要求している

ということです。


だから、「銀行への事業の見通しの説明は

口頭で行うだけでだいじょうぶだった」と

しても、それは、必ずしも、その会社の将

来はだいじょうぶであると銀行が確信した

とは限らないということです。


結論は、仮に、銀行が書面ではなく口頭で

事業計画を説明してくれればよいと言った

としても、それはその会社に対して事業計

画がなくてよいというお墨付きを銀行が出

したわけではないということです。

 

 

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