鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

坑道のカナリア

弁護士の鳥飼重和さんが、ご自身の制作し

ているポッドキャストで、職場にはカナリ

アのような人でも働けるようにすべきとい

うことをお話ししておられました。


(ご参考→ https://goo.gl/43R9Mh


これは、坑道のカナリアという逸話とし

て、すでに多くの方がご存知と思います。


カナリアとは繊細な生き物の例えであり、

坑道にいるカナリアは有毒ガスを誰よりも

早く察知して坑道から逃げてくる。


それと同様に、職場の中で最も繊細な人は

いち早く、メンタル面などでの不調を訴え

るというものです。


そして、鳥飼先生は、いままでは、職場の

カナリアのような人は、お荷物的な扱いを

受けてきたが、これからはカナリアのよう

な人は、職場がおかしくなっているという

ことを知らせる警鐘を鳴らしてくれる人と

考え、このような人が働ける職場を目指す

べきだ。


そうすることで、誰でも働くことができる

すばらしい職場になり、そのことが、真の

働き方改革だ。


そして、このような働き方改革は、社長が

自ら意識改革をして率先して臨まなければ

ならないとご指摘しておられました。


この鳥飼先生のご指摘は至極もっとではあ

りますが、言うは易く行うは難しというこ

とでもあると、私も思います。


とはいえ、渡邉幸義さんが社長を務めるア

イエフエスネットでは、ハンディキャップ

のある人や、マイノリティの人たちを積極

的に雇用しつつも、黒字の事業を続けてい

ます。


(ご参考→ https://goo.gl/At9gd3


この渡邉さんのような事業運営も難しいこ

とではありますが、これからは、このよう

なやさしくないことに挑むことにこそ、経

営者としての評価が高まる時代になってき

ていると私は考えています。


中小企業はなかなかよい人材が集まらない

と悩んでいる経営者の方は多いと思います

が、“カナリア”が安心して働くことがで

きる職場づくりを目指すことが、良い人材

の確保にもつながり、それは大企業との競

争力を縮めることにもなると私は考えてい

ます。

 

 

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上流工程と下流工程

多くの中小企業では情報技術を採り入れた

いと考えていると思いますが、その多く

は、生産性向上・合理化、インターネット

による集客などだと思います。


これらも効果のある情報化武装ですが、

残念ながら、戦術レベルでの情報化でに留

まります。


情報化武装についての詳しい説明は割愛し

ますが、マクドナルド、ユニクロニトリ

などのサプライチェーンは、全面的に情報

技術を採り入れている事業です。


また、ERP( Enterprise Resources

Planning , 経営資源計画)を導入してい

る会社も、情報技術を事業に全面的に採り

入れなければ、それを実現できません。


(ERPの詳細な説明は省略しますが、ひ

と・もの・かねの経営資源を適切に配分す

る計画をコンピューターで作成し、無駄の

ない事業運営を行うことです)


とはいえ、経営資源の少ない会社で、サプ

ライチェーンを構築したり、ERPを導入

することは容易ではありません。


(ただし、最近は数千万円でERPシステ

ムを導入できるようになってきたので、中

小企業であっても、必ずしも、ERPの実

施が不可能ということではないようです)


しかしながら、すでに売られているソフト

を、単に、そのまま取り入れるということ

だけでは、情報技術を十分に経営に活かし

ているともいえません。


では、どうすればよいかというと、戦略策

定の段階から、どのように情報戦略を活用

するかということを織り込むことが必要に

なります。


この、情報技術を織り込んだ戦略と、そう

でない戦略の違いは分かりにくいと思いま

すので、以前に多能工の例で紹介した、三

州製菓さんの例を示します。


(ご参考→ https://goo.gl/Cd1ZRP


この三州製菓さんでは、トレーサビリティ

(もともとの意味は、追跡可能性という意

味ですが、現在は、食品の加工・製造・流

通などの過程を明確にすることという意味

で使われています)に情報技術を採り入れ

ました。


同社では、以前から手作業でトレーサビリ

ティを行ってきましたが、情報技術の導入

によって、材料、仕掛品、製品にラベルを

貼って追跡を容易にするなどの合理化を

行っています。


これだけであれば単なる合理化に過ぎませ

んが、製造工程のデータを社員全員で共有

できるようになったことから、クレーム対

が、従来の5日間から1日間に短縮し、納

品先からの信頼性を向上させただけでな

く、社員の安全への取り組みの意識を向上

させることにつながっています。


さらには、将来は、顧客自身が商品に貼ら

れたコードから、直接、生産情報を確認で

きるようにすることを目指しています。


確かに、これらの効果は手作業を機械化し

たことで得られるものですが、信頼性向上

を目指すという戦略のもとで情報化を行っ

ている点で、単なる合理化とは異なるもの

となっています。


ところで、今回の記事の結論は、三州製菓

さんのような情報化武装をしましょうとい

うことではありません。


もちろん、三州製菓さんはお手本になる事

例ですが、情報化武装は、戦略ありきで導

入することの方が効果が大きいということ

が今回の記事の結論です。


では、なぜ、このようなことを指摘するか

というと、現在のシステム開発会社の多く

は、ユーザーに対して、単に、自社システ

ムの導入だけを提案する例が多いからで

す。


そのことが直ちに問題になるわけではない

のですが、いわゆるパッケージソフトの導

入では、それをどう活かすかという検討が

不十分なまま導入されてしまいがちになり

ます。


導入前に、自社はどのような戦略を採るべ

きか、そのためにはどのような情報化武装

が適切か、その情報化武装によってどのよ

うな効果が得られるのかという検討を経る

ことなしに、単に、パッケージソフトを採

り入れただけでは、それを十分に使いこな

せなかったり、期待していた効果が得られ

なかったりということが起きやすくなりま

す。


最悪の場合は、そのパッケージソフトを使

うことを止めるということに至ってしま

い、結果として投資を無駄にしてしまうと

いうことになります。


このような、情報化武装の前の、戦略の検

討といったプロセスは、情報化武装の上流

工程といいます。


これに対して、システム開発会社の選定、

システムの導入、システムの運用といった

工程を下流工程といいます。


(なお、システム開発会社でも、上流工程

下流工程という言葉を使っていますが、

ここで示したことと別の意味で使っていま

すのでご注意下さい)


ところで、前述の、現在のシステム開発

社の多くは、ユーザーに対して、単に、自

社システムの導入だけを提案しがちである

という理由は、上流工程を支援できる人材

が少ないという事情があります。


本来の情報化とは、上流工程が土台となっ

て、それに基づいて下流工程があるわけで

すから、下流工程だけの情報化を行って

も、十分な効果は得らないことは明らかで

す。


では、これに対しては、どのような対策を

採ればよいかというと、前述の三州製菓さ

までも行っていますが、ITコーディネー

タなどの外部専門家を活用することです。


(ちなみに、小職も、ITコーディネータ

であり、情報化武装のご支援を顧問先に対

して実施しています)


最後に、繰り返しになりますが、情報化武

装とは、単に、ソフトを導入するだけでは

十分ではないということをお伝えしたいと

思います。

 

 

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社員の教育は社長の役割

先日、イエローハットの創業者の鍵山秀三

郎さんのメールマガジンに、次のようなこ

とが書いてありました。


「平気で人を傷つけるような社員や、傲慢

な社員になってほしくありません。


会社でも家庭でも信頼され、そこにいるだ

けで雰囲気が和むというような社員が理想

です。


つまり、社員には、能力よりも思いやりの

心を磨いてほしいのです。


最終的には、思いやりのある社員が社会生

活を通じて『穏やかな社会』創りに貢献で

きればと願っています」


この鍵山さんの考えは、まったくその通り

であり、多くの経営者の方も、自社の社員

を鍵山さんのいうような社員に育てたいと

考えていることでしょう。


では、このような社員を育てるのは、誰の

役割かというと、結論としては、社長であ

ると私は考えています。


この結論については、「なんでも社長がや

らなければならないということであれば、

コンサルタントは要らないということにな

るので、そんなことをコンサルタントが指

摘するのはおかしいのではないか?」と考

える方もいるでしょう。


これについては、順を追って説明したいと

思います。


まず、なぜ、コンサルタントは社員の育成

の役割を担わないのかというと、その理由

のひとつは、一般的に、コンサルタント

会社に常駐しないからです。


いわゆる、知識、スキルなどは、コンサル

タントが伝えることができますが、鍵山さ

んのいうような「思いやりのある社員」に

ついては、コンサルタントが心がまえなど

を伝える機会があっても、研修だけで身に

付けることができるものではありません。


もちろん、私が顧問先を訪問するときは、

顧問先の方たちの参考となるような動きを

しようとします。


とはいえ、私は顧問先の社員の方から見れ

ば、月に1度、多くても2度訪れる人でし

かありません。


ですから、社員の方を思いやりのある人に

するには、その会社に常にいる、経営者、

リーダーが、社員から見れば最も影響力が

大きく、そのような方が社員の育成の役割

を担うことが効果が大きい訳です。


そして、理由のふたつめは、コンサルタン

トは、良くも悪くも部外者であるというこ

とです。


本題からそれますが、仮に、コンサルタン

トが、顧問先の会社の一員になってしまう

と、適切なコンサルティングを行うことが

できなくなります。


話しをもどして、コンサルタントが部外者

であったとしても、顧問先の社員に対して

よい影響を与えることはできますが、よい

社風を作ったり、社員の人間性を高めたり

することは、やはり、会社の内部にいる経

営者やリーダーでなければできないことで

す。


とはいえ、ここまでの説明は頭では理解で

きても、社員の人間性形成には時間がか

かったり、大きな労力が必要になったりす

るということで、経営者としては、別の面

に労力を注ぎたいと考える方も多いと思い

ます。


しかし、ここでは、詳細な説明は割愛しま

すが、製品などでは他社との差別化する余

地はなくなってきており、社員の(広い意

味での)能力のよしあしでしか差別化でき

なくなっているということが現実だと、私

は考えています。


これを言い換えれば、経営者の腕の見せ所

は、社員の育成能力が大きな部分を占める

ということです。


今回の結論は、ちょっと厳しいものです

が、ライバルに勝つためには、経営者の社

員の育成が鍵ということです。

 

 

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マーケットインとプロダクトアウト

作家の安田佳生さんが、ご自身の制作して

いるポッドキャスト番組で、島根県の寺院

の住職の質問に回答していました。


(ご参考→ https://goo.gl/5MVydC


すなわち、寺院を訪れる人が少ないが、仏

教の教えを広めたいので、訪れる人を増や

すにはどうしたらよいかという質問に対し

て、訪問しない人がなぜ訪問しないのかを

調査して訪問してもらうにはどうすればよ

いかを考えるのではなく、少数ながらも、

現在訪問している人がなぜ訪問しているの

かという理由を究明し、同様のニーズを

持っている人にアプローチすべきという回

答をしておられました。


安田さんはこのことばを使いませんでした

が、安田さんの回答は、プロダクトアウト

よりもマーケットインの考え方でアプロー

チすることを提案していると私は考えてい

ます。


プロダクトアウトとマーケットインについ

ては、ここで説明するまでもないくらい知

られていることばですが、念のためにおお

まかな説明をすると、プロダクトアウトは

自社製品を開発してからそれを市場に投入

していくという考え方で、マーケットイン

とは、市場のニーズを調査してからそれに

応じた製品を開発するという考え方です。


安田さんは、住職の方に対しては、マー

ケットインの考え方でアプローチを薦めて

おられましたが、どちらかが優れていて、

どちらかが劣っているというわけではない

ので、それぞれの状況に応じて適切な方法

を選ぶべきものと私は考えています。


寺院については、宗教的なサービスだけで

は需要に限界があるので、あらたな需要に

応じる方が得策であり、そこで、安田さん

は、マーケットインによるアプローチをお

薦めしたのではないかと思います。


これは、安田さんはお話ししていないこと

ですが、最近は、寺院に宿泊したいと考え

ている人が多いようで、寺院で民泊に応じ

るというアプローチがあるのではないかと

思います。


一方、プロダクトアウトの例としては、こ

れもたくさんありますが、私が思い浮かぶ

ものは、スターバックスコーヒーや、ブ

ルーボトルコーヒーです。


いずれも、喫茶店、コーヒースタンドとい

う従来からあった業種ではあるものの、顧

客から見れば、新しいコーヒーの飲み方を

提供している店です。


ただ、現在は、プロダクトアウトによる顧

客獲得は、商品に極めて優れた特徴がなけ

れば、マーケティングに大きな費用がかか

るので、経営資源の大きな会社でなければ

採ることができないと私は考えています。


ここで今回の結論に入りますが、経営資源

の小さな会社では、マーケットインの手法

を採ることが望ましいということです。


ある程度の需要があることが前もって明確

であれば別ですが、そうでなければ、しっ

かりと需要を調査することが大切です。

 

 

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最初のアイディアに恋しない

経営コンサルタントの間でよく話に出るの

ですが、「最初のアイディアに恋をしては

いけない」という格言があります。


例えば、米国の経営コンサルタントのバー

ネットらの著書の「LIFE DESIG

N」( http://amzn.to/2AXsphv )の中に

は、次のように書かれています。


「ふつう、わたしたちの脳は怠けものなの

で、なるべく早く問題を取り除きたいと考

える。


そのため、最初のアイディアを媚薬漬けに

して、私たちを“恋”に落とそうとする。


しかし、最初のアイディアに恋をしてはい

けない。


この恋愛関係は、まず、うまくいかないか

らだ。


たいていの場合、最初の答えは平凡で、あ

まりクリエイティブではない。


人間はまず当たり前のことを指摘する傾向

がある」


私も多くの創業者の方のお手伝いをしてき

ましたが、根拠が分からないものの、どう

いうわけか、自ら始めようとしている事業

に絶対的な自信を持っている人が多くを占

めていました。


すなわち、そのような人たちは「最初のア

イディアに恋をしている」人たちと言える

でしょう。


一方で、そのような人たちは、なぜ、恋に

落ちてしまうのか、ずっと不思議だったの

ですが、LIFE DESIGNを読んで

「そうだったのか!」と、胸のつかえが取

れたような気分になりました。


とはいえ、私を含め、人は自分自身のこと

を最も理解できない傾向があるので、最初

のアイディアに恋に落ちてしまうことを避

けることよりも、外部専門家、税理士、銀

行など、他者の意見に耳を貸すという謙虚

さが重要だと思います。


ちなみに、LIFE DESIGNには、

最初のアイディアに恋に落ちない方法につ

いては書かれていませんでしたが、最初の

アイディアに恋に落ちても失敗しない方法

については述べられていました。


そのひとつは、マインドマップやブレイン

ストーミングを使って、創造的なアイディ

アを見つけ出すというものです。


これは、至極当りまえのことであり、真新

しいものでもありません。


すなわち、経営者の方は、冷静に自らのア

イディアを客観視できるようにする能力が

求められるということでしょう。


ところで、今回の記事の結論は、最初のア

イディアに恋しないように気をつけましょ

うということよりも、しっかりとした準備

をしましょうということです。


というのは、私にご相談をしてくる創業者

の方の多くは、前述のように、最初のアイ

ディアに恋しているということもあるので

すが、さらに問題だと思うことは、1か月

以内に開業しなければならないという前提

であったり、すでに創業してしまっている

という方が、その多くを占めています。


そのような方を、仮に、恋から覚めさせる

ことができたとしても、すでに後戻りでき

ない状態であるということです。


いまは、起業することは容易になってきて

いますが、事業を成功させることは難しく

なってきています。


最初のアイディアに恋をしてしまうと、起

業することと事業が成功することが同じで

あると理解してしまうので、起業をする時

は、ある程度の時間をかけて、専門家の助

言を得ることをしなければ、失敗してしま

う可能性が高くなってしまいます。

 

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冴えない社長

私の知人の経営コンサルタントのSさんか

ら、印刷会社のおもしろい社長さんの話を

ききました。


その社長さんは、Sさんの会社の近所に事

務所があり、業歴も長い会社なのですが、

社長さんの見かけはあまりぱっとしないそ

うです。


そして、ときどきSさんの会社に訪問して

きては、Sさんの顔を見るだけで、「こん

にちは!」とあいさつだけして、すぐに出

て行ってしまうそうです。


このように、その社長はそれほど愛想がい

いというわけでもなく、印刷技術に何らか

の優れた特徴があるわけでもなく、値段も

安いというわけでもないので、Sさんはそ

の社長さんには仕事を依頼せずに、名刺を

作るときなどは、インターネットで発注し

ていたそうです。


しかし、ある時、Sさんの上司が、その印

刷会社の社長が来たタイミングで、「●●

さん、いつものお願いね!」と、何かを発

注したところを見たそうです。


これに対して、その社長さんは「かしこま

りました」とだけ答えて、翌日、その上司

の方の名刺を4箱印刷して納品に来たそう

です。


さらに、その後、Sさんが出張の準備をし

ていて忙しい思いをしているときに、たま

たま、その社長さんがSさんの前に現れた

そうです。


そして、Sさんがその社長さんの顔を見た

ら、社長さんは何かに驚いたようで、逃げ

るように出て行ってしまったそうです。


思わず、Sさんは、すぐにその社長を追い

かけて行き、「名刺を200枚印刷してく

ださい」と発注してしまったということで

した。


この社長さんがよいか悪いかは別として、

Sさんの印象に残っているということは間

違いがなく、だからこそ、私にお話しをし

てくれたのだと思います。


では、このお話しから何か得るものがある

とすればどういうものがあるでしょうか?


これについては、失礼ながら、私はこの社

長さんを丸ごと真似ることは、あまり賢明

ではないと思っています。


しかし、あまり積極的な営業をしていない

にもかかわらず、仕事を受注している点は

見習うべきところがあるのではないかとも

思います。


それは、定期的に得意先を訪問するという

こともあると思うのですが、私は、見込み

客に仕事をする意思があるということを示

すことではないかと思っています。


これは、逆の例を示すとよくわかると思い

ます。


私の経験ですが、ある時、テレビ取材をさ

れた、おいしいと評判のとんかつのお店を

訪れたときがあります。


この時の接客方法が、とてもまずかったと

いう訳ではないのですが、私から見て「た

くさん来る客の内のひとり」という扱いを

されたという印象を持ってしまいました。


これは、私がそういう印象を持ったという

だけであって、お店の方がそのように考え

ていたことが明確であったということでは

ありません。


ただ、そのお店のファンになって、また来

店しようという気持ちにまではなりません

でした。


印刷会社の社長さんのお話しに戻ると、そ

の社長さんは、Sさんに対しては、仕事を

くださいとは言っていませんが、「あなた

から仕事が欲しいと思っている」というこ

とは伝わっていたのだと思います。


すなわち、「私の会社の印刷技術はすばら

しい」とか「私のお店の料理はおいしい」

ということを伝えることよりも、「私はあ

なたから仕事が欲しいと思っている」とい

うことが伝わることの方が効果が大きいの

ではないかと私は思いました。


そういう意思が相手に伝わると、製品や商

品そのものがどうかということよりも、

「自分のために仕事をしたいと思っている

人だったら、きっと、間違いない仕事をし

てくれるだろう」という安心感を顧客が持

つことができ、それが受注につながるので

はないか、ということが、今回の記事の結

論です。

 

 

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ジタハラ

最近(ではないかもしれませんが)、長時

間労働が批判されるようになってから、退

社時刻を過ぎると、間もなく職場を閉めて

しまう管理職の人が増えているようです。


一方で、たくさんの仕事をかかえているに

もかかわらず、有無を言わさずに職場を追

われる部下にとっては、迷惑になることも

多いようです。


このような、部下の事情も考慮せずに、職

場から追い出されてしまうことを、時短ハ

ラスメント(ジタハラ)と呼ぶ人もいるよ

うです。


職場を早く閉めることが直ちに問題になる

とは限りませんし、また、従業員も勤務時

間を減らす努力が求められることは言うま

でもありません。


しかし、仕事の内容や、やり方の見直しを

することなく、単に「残業は禁止するので

6時には職場を出るように」とだけ指示さ

れても、従業員の負担が増えるだけという

ことは明らかです。


従業員が職場を早く離れることができるよ

うになるには、まず、それを実現するため

の基本的な方針を経営者が示し、それに基

づいて時短のためのさまざまな活動が行わ

れる中で、職場を早く閉じるということが

行われなければ、それは単なる経営者やマ

ネージャーの単なるポーズにすぎないとい

うことになるでしょう。


と、ここまで書いてきたことは、あえて私

が述べることもなく、すでに多くの方が分

かっていることです。


問題なのは、なぜ、分かっているにもかか

わらず、単純に職場を早く閉めるといった

ジタハラが行われるのかということです。


その答えはひとつとは限りませんが、私は

経営の方が課題に対して場当たり的になっ

ているから、単に時間になったら職場を閉

じるということだけをしてしまうのではな

いかと考えています。


(もうちょっと意地悪に考えれば、本心は

単に残業代を払いたくないだけなので、無

理やり定時に職場を閉めているだけと考え

ることもできますが、このように考える経

営者は少数でしょう)


経営者から見れば、なんでも経営者がやら

なければならないのかと感じることと思い

ます。


私も、経営者の方はたくさんの課題をこな

さなければならない点は本当にたいへんだ

と思います。


ただ、それとどう向き合うかが大切なのだ

と思います。


ところで「会社の労務管理は、誰が担うべ

きか?」という問いがあったとき、それは

間違いなく、社長か経営者でしょう。


人事部長が管理することがあるとしても、

その方針はマネジメント層の方針に基づく

ものでなければならないことは、労務とい

う大きな柱に関する事がらである以上、明

らかでしょう。


いままでは、終身雇用制度や年功序列など

の日本的雇用慣行があったことから、残業

や働き方などは、多少、従業員に無理を強

いても問題が表面化しなかったことから、

本当は、経営者がきちんと取り組まなけれ

ばならなかったにもかかわらず、後回しに

されてきたのではないかと私は考えていま

す。


しかし、近年は、日本の雇用慣行がかわり

つつある中で、従業員への無理強いは、も

うできなくなっている状態になっているの

ではないでしょうか。


そうであれば、残業問題などは、きちんと

取り組まなければならない課題であるし、

また、それにきちんと取り組めない経営者

は、今の時代には適さないと言えると思い

ます。

 

 

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