鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

情報弱者

婚活コンサルタントの田中菊乃さんのブロ

グに「情報弱者」という言葉がありまし

た。


(ご参考→ https://goo.gl/pGvjfT


私は田中さんのブログを読むまでこのよう

情報弱者の方については知らなかったの

ですが、それはどういう人かというと、

ニュースなどは芸能ニュースしかみないの

で、社会情勢が分からず、したがって、自

分の経済力が実は相当下位にあるにもかか

わらず、それが普通だと思ってしまうため

に、結婚相手を探している男性からも選ば

れないという女性の方だそうです。


婚活のことは私は専門外なのですが、田中

さんのブログを読んで気になったことは、

この情報弱者を狙ったセミナーを開いてい

る人たちがいるということでした。


私も、眉唾物(まゆつばもの)のような効

果のいぶかしいセミナーが開かれていた

り、その講師が受講者におかしな助言をし

ているというようなことは知っていたので

すが、そのようなセミナーを受講する人は

どのような経緯で受講してしまうのか不思

議に思っていました。


これは、田中さんのブログによれば、あま

り社会情勢を知らなかったり、いい意味で

世間ずれしていないために、甘い言葉につ

られてしまうということのようです。


規制緩和によって、起業は容易になったこ

とは事実ですが、起業することは、必ずし

も事業が成功するということではなく、む

しろ、事業者間の競合が厳しくなっている

ことも事実でしょう。


しかし、前述のような情報弱者は、悪意の

あるコンサルタントにそそのかされ、起業

=成功と安易に考えで起業してしまうので

しょう。


ここで話が変わるのですが、公共職業安定

所のあるOBの方から、次のようなことを

きいたことがあります。


すなわち、最近は求人倍率が高いが、自社

の定着率が低いために多くの求人をしてい

る会社があり、そのような会社のおかげで

見かけ上の求人倍率が高くなっている、と

いうことです。


同様のことはほかの専門家の方もお話しさ

れておられるので、真新しい情報ではない

でしょう。


これは、未熟な経営者が増え、人材育成が

うまくいっていないことの表れのひとつだ

と思います。


それも、前述のような安易な起業が増加し

ていることが一因ではないでしょうか?


とはいえ、私は起業することそのものは否

定するつもりはありません。


多くの会社が起業に成功することが、日本

の経済活動を活性化すると考えています。


しかし、少ない情報しか得ていない人が、

その情報だけで誤った判断をして起業して

しまうことは、避けるべきでしょう。


まず、起業家にはならなくても、実力のあ

る経営者のもとに雇われることでビジネス

感覚を身に着け(すなわち、情報弱者から

抜け出し)、そしてから正しい方法で起業

するということの方が、遠回りのようで最

短の道になることもあると私は考えていま

す。


これも当然のことですが、「学問に王道な

し」という故事がありますが、ビジネスに

も王道はないということです。

 

 

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融資稟議書には何が書かれるのか

当然のことですが、一般の方は、銀行の融

資稟議書に書かれる内容についてはあまり

知る機会がないと思います。


ちなみに、銀行職員向けの専門書を見る

と、融資稟議書にどういった内容を書くべ

きかと言われているかを知ることはできま

す。


(ご参考→ https://amzn.to/2jvWEoL


と、ここまで書いておきながら、私は、融

資を申し込もうとする会社経営者の方が、

融資稟議書に書かれる内容にどんなことが

書かれるのかということを意識する必要は

ないと考えています。


ただ、ここで融資稟議書に言及した理由

は、融資稟議書を書く時点では、それを書

いている銀行の支店では、融資を行うとい

う前提で書いているということを述べた

かったからです。


そもそも、「この会社から融資の申し込み

がありましたが、融資をしてよいもので

しょうか?」という伺いを立てるような内

容では、本部は融資の承認をしないでしょ

う。


本部に融資稟議書を書いている時点で、銀

行の支店では、すでに融資を受ける側と同

じ立場に立って、「この会社には融資をす

べきと考えているので、承認をして欲し

い」という内容を書いています。


(その詳細については、こちらの記事に書

いていますので、ご参照ください。→

https://goo.gl/mbQbLS


ただ、ここまで、「融資稟議書には何を書

いているのか」ということを述べてきまし

たが、もう少し厳密に書くと、「業績が芳

しくない会社の場合、あえて融資をしよう

とする理由をどう書いているか」というこ

とがポイントになります。


というのは、業績のよい会社の融資稟議書

には、融資申し込みの内容、取引状況、会

社の業況(これらの情報は、銀行のシステ

ムで機械的に記載されます)の他には、手

書きで支店所見欄に「業況良好であり申し

出どおりに応じたい」程度しか書かなくて

も承認を得られます。


しかし、このような例は圧倒的に少なく、

90%以上の融資取引先は、機械から得ら

れない情報を手書きで記載することで、本

部の承認を得られる状態になります。


その手書きされる具体的な内容は、決算書

などから得られない定性的な情報、経営者

の人柄や風評、将来に向けての事業計画と

その進捗状況などです。


融資の可否は、定量的な情報、すなわち、

決算書などから得られる数字が大きな決め

手になりますが、業績が芳しくない会社の

場合、定性的な情報は本部を説得する大切

な情報となります。


したがって、私が顧問先などの融資申し込

みのお手伝いをする場合は、融資稟議書を

書く銀行職員の方や、本部の審査担当の人

が欲しい情報を書面にまとめて提出するの

で、比較的円滑に承認を得られるようにな

ります。


しかし、その要領が分からない場合(とは

いえ、一般の会社経営者の方が、融資稟議

書の書き方の要領が分からないことは当然

のことです)、融資申し込みをしに行った

ときに、そのような情報をすべて伝えるこ

とは困難です。


そこで、融資の申し込みをしなければなら

ないときに備えて、すぐに融資が必要では

ないというときから、銀行の職員と接触し

ておくことが大切になります。


では、どういうことを銀行に伝えておけば

よいかということは、一概には言えません

が、6か月から1か年の資金繰予定表を作

成し、「3か月後に融資が必要になりそう

です」などと伝えると、銀行からは、正式

な申し込みをするまでに、どういった情報

が欲しいかということを教えてもらえるで

しょう。


そうするだけでも、余裕を持った対応がで

き、結果として、より円滑に融資の承認を

得られるようになるでしょう。


結論は、急な融資の申し込みは承認しても

らいにくいけれど、余裕をもって融資申し

込みをすると承認を得られやすいというこ

とです。


これは、融資申し込みに限ったことではな

いですが、先を読んで行動することは大切

です。

 

 

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情報化武装の壁

前回の記事で、中小企業が現在の経営環境

に応じるためには情報化武装が欠かせない

と書きました。


(ご参考→ https://goo.gl/hLmmoe


しかし、これまで私が中小企業の事業の改

善のお手伝いをする中で、情報化武装がな

かなか進展しない要因が、主に3つあると

感じています。


ひとつめはお金の面です。


中小企業であっても、情報化武装のための

システム導入をシステム開発会社に依頼す

ると、数百万円の投資が必要になります。


これは、別の表現をすると、システム開発

会社にとっては、おおよそ500万円以下

の案件については採算が合わないと考え、

それ以上の価格の製品しか作らないのが実

態であると私は感じています。


これについては議論の余地が残ると思いま

すが、私は、投資額が低くても中小企業が

情報化武装ができるようにすることによっ

て、将来、数千万円の投資をする会社がた

くさん現れるようにすることが、システム

開発会社にとってもメリットがあると思っ

ていますが、現時点では、そうはなってお

らず、中小企業が情報化武装をするときの

ひとつの壁となっています。


ふたつめは、情報化武装を前提とした経営

戦略の立案をする人材が少ないということ

です。


この役割を誰が担うべきかということにつ

いては、中小企業側でもなく、システム開

発会社でもなく、中立のコンサルタント

望ましいと私は思っています。


(なお、私を含め、約6,000人の資格

保有者がいるITコーディネータは、その

ような役割を担うコンサルタントなのです

が、相対的には人数がまだまだ不足してい

るようです)


(ご参考→ https://goo.gl/hgrTjT


しかし、現実的には、情報技術に詳しい立

場にあるのは、システム開発株式会社なの

で、システム開発会社がそのような役割を

担うことが、次善の策だと思います。


ところが、システム開発会社も人手不足で

ある上に、経営戦略立案までを担うことが

できる人材を育成する余裕がある会社は少

ないようです。


(ちなみに、ITコーディネータの資格

は、多くのシステム開発会社の従業員の方

も取得していますが、割合としては少数の

ようです)


もし、経営戦略ありきで情報化武装ができ

る仕組みをシステム開発会社が提供できる

ようにすれば、システムの需要はもっと増

えると思うのですが、現状はそこまでは及

んでいないようです。


3つめは情報技術リテラシーの問題です。


すなわち、情報技術を使いこなせる能力が

日本の中小企業ではまだまだ改善の余地が

多い上に、それを改善する仕組みが少ない

ようです。


しかし、これも、前述の経営戦略立案の能

力と同様に、それを伸ばすための専門家が

少ないようです。


ちなみに、私が事業改善をする場合、必然

的に情報技術を取り入れざるを得ないの

で、情報化武装を前提とした経営戦略の立

案や、会社従業員の方の情報技術リテラ

シーの向上のお手伝いをしています。


手前みそ的になりますが、私のような情報

技術によって事業を改善させるコンサルタ

ントがたくさん現れると、中小企業の業況

は改善するし、システム開発会社も繁盛す

ると思うのですが、人材育成の壁が大き

く、足踏みの状態となっていることを残念

に思っています。

 

 

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2018年版中小企業白書

2018年版中小企業白書が公表されまし

た。


(ご参考→ https://goo.gl/UHiQyA


今回の白書で最も紙面が割かれていた分野

は情報技術でした。


その主な事例は次のようなものです。


●千葉県のプラスチック製品製造業者で、

IoTを導入し、稼働率を20%向上、利

益率を3.9倍にした。


●東京都のパン製造小売業者で、社内に情

報技術に精通している人はいないものの、

地元のシステム会社の支援によって、出勤

データを紙ベースからクラウド管理に移行

し、給与計算を自動化したことで、1か月

の事務負担が、7人月から3人月に減少し

た。


この情報化投資に180万円を要したが、

IT導入補助金を活用した。


●東京都の板金加工業者が、専門分野の異

なる同業他社2社との共同受注を行うこと

とし、その共同受注案件の進捗や引き合い

状況を3社がクラウドで共有するシステム

を構築し、また、顧客向けのポータルサイ

トも作成した。


その結果、年間で引き合いが30件あり、

共同受注した案件は15件となった。


宮城県(本社は神奈川県)の金属鋳造業

が、特に危険な大型部品の鋳造工程にロ

ボットを導入し、また、女性が使いやすい

電動式ハンドリフトを導入した結果、ロ

ボットの工程で生産性は2.3倍になり、

不良率は20%低下したほか、パートと派

遣の工員のうち、女性が過半数を占めるま

で増加させることができた。


なお、ロボット投資額約5,000万円の

うち、ものづくり補助金3,000万円の

補助を受けた。


以上が、主なもので、白書に載る事例です

から、お手本になるような事例になりがち

ではあるものの、中小企業においても、積

極的に情報技術を活用することで、業況が

改善できるということが分かります。


ただ、中小企業庁が、なぜ、このような情

報技術の活用を強調したかということにつ

いては、業況改善はもちろん、人材不足へ

の対応、大手企業からの発注の際の高度な

要望への対応、製造業の海外移転への対抗

策といった、現在の日本の中小企業の課題

の解決策として有効であるという側面があ

ると思います。


その一方で、私が、業況改善のお手伝いを

する際は、簡単な情報技術の導入も提案し

ていますが、実態として、従来のやり方を

変えたくないという抵抗が、経営者や従業

員の方の中にあるということも、少なから

ず感じています。


第4次産業革命が起きているといわれてい

る現在のビジネスにおいては、中小企業も

情報化武装は避けられないということが、

今回の中小企業白書を読んで感じました。


なお、小職は、情報技術の導入や、それを

前提とした経営戦略の策定、情報技術の導

入のための補助金の申請、融資の申請など

に関するご支援も行っていますので、情報

技術導入にご関心のある方は、ぜひご相談

いただきたいと思います。

 

 

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POファイナンス

日経ビジネス2018年4月30日号に、

POファイナンスが紹介されていました。


(ご参考→ https://goo.gl/CtZ5k5


POファイナンスのPOとは、Purchase

Order、すなわち注文書のことで、注文を

受けた会社が融資を受けられる仕組みのこ

とです。


具体的には、仕事の受注があった中小企業

が、城南信用金庫と提携したベンチャー

業にその情報を送り、電子記録債権にしま

す。


そして、城南信金はその電子記録債権を担

保に、受注額の半分(ただし、その割合は

条件によって変動するそうです)を中小企

業に融資をするそうです。


ひとことで言えば、フィンテックを活用し

た債権担保融資です。


この仕組みのメリットは、発注者が大企業

の場合は、担保としての評価が高いので、

低利融資ができたり、融資を受ける会社が

赤字でも融資しやすいというものがありま

す。


しかし、私は、この仕組みはあまり普及し

ないと考えています。


その理由は次のとおりです。


ひとつめは、融資額の受注額に占める割合

が低いということです。


(この融資額の割合が約半分ということに

ついては、担保債権が確実に回収できるか

どうかは、仕事を受注した会社がきちんと

その仕事を遂行できるかどうかという、受

注した会社側の能力にもよるという要因も

あるので、妥当であると思います)


もし、融資額が受注額の半分でも足りない

場合は、その不足分は、結局、従来の方法

で融資を受けなければならず、かえって融

資を受ける側と銀行の事務負担が増えてし

まいます。


もうひとつは、従来の債券担保融資と同じ

ことなのですが、債権担保が融資を促すた

めの、決定的な決め手にはならないという

ことです。


外見的には、銀行は担保が得られるのだか

ら融資をしやすくなるのではないかと考え

られがちですが、頻繁に起きる商取引で発

生する債権は、短期間(一般的には数か月

から、長くても1か年)で回収できるもの

であり、それを担保とすることは融資を受

ける側にとっても融資をする側にとっても

事務負担が大きくなります。


すなわち、もともと、短期間で消滅する債

権は担保にはあまり向いていないというこ

とです。


(だからといって、債権担保がまったく無

意味ということではありません)


そこで、債権担保の法整備が進む前から、

銀行は、受注がある会社には、それを担保

にしなくても、ある程度は回収が確実と見

込んで無担保で融資をするという考え方を

持っています。


ですから、繰り返しになりますが、債権担

保融資については、決して従来は担保がな

かったから融資を受けにくかったものが、

担保を提供できるようになったので融資を

受けやすくなるということにはならないと

私は考えています。


ただ、自己資金が比較的潤沢な会社にとっ

ては、融資額が受注額の約半分でも十分な

場合もあるので、低利で融資が受けられる

POファイナンスはメリットがあると思わ

れます。


また、業況が芳しくない会社でも、PO

ファイナンスは、融資を受けられる確実性

が高いという面でメリットがあると言える

でしょう。


結論として、私は、POファイナンスにつ

いては、融資を受けることに苦心している

会社の救世主にはならないのではないかと

考えてはいるものの、まだ始まったばかり

の仕組みですので、今後の動向を引き続き

注目していきたいと思います。

 

 

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何を売るかではなくどう売るか

午後の紅茶とポッキーのコラボレーション

について、そのプロジェクトチーム自らが

書いた本、「ブランドのコラボは何をもた

らすかー午後の紅茶×ポッキーが4年続く

理由」( https://amzn.to/2JLSyE7 )を読

みました。


最近、ダブルブランドの商品を多く見かけ

るようになりましたが、それらはどうやっ

て生み出されたのだろうかということが気

になっていたので、この本を読んでみるこ

とにしました。


内容としては、想像していたより奥深さを

感じました。


コラボ商品なのだから、ポッキー味の午後

の紅茶とか、午後の紅茶味のポッキーでも

十分ではないかと私は考えてしまうのです

が、ポッキーのメーカーの江崎グリコ、午

後の紅茶のメーカーのキリンビバレッジ、

そして広告代理店の電通の3社で組まれた

プロジェクトチームでは、もっと高度なコ

ラボを実現することを目標として、ポッ

キー味の午後の紅茶午後の紅茶味のポッ

キーという商品開発は封印したそうです。


そのため、様々な検討が行われましたが、

ブレインストーミングをする中で、「プリ

ンに醤油をかけるとウニになる」という、

あるメンバーのつぶやきがきっかけとな

り、「単品でもおいしいが、それだけでは

完結しない、2商品を食べ合わせると、さ

らに新しい味覚が生まれる」というアイ

ディアで商品を開発することになったそう

です。


その結果、アップルシナモン味の午後の紅

茶と、バターカスタード味のポッキーを同

時に食べると、口の中でアップルパイ味が

完成するという商品を開発したそうです。


ちなみに、その後、ヨーグルト風味の紅茶

と、レモン味のポッキーで、レアチーズ

ケーキ味を完成させる商品も開発されてい

ます。


また、パッケージのデザインも統一するこ

とは当然ですが、片方に女性、片方に男性

のイラストを描き、両者を合わせると1枚

の絵になるというペアリングパッケージも

行いました。


これは、セット買いをしてもらうための工

夫です。


そして、このプロジェクトがこのような商

品を開発してきた目的は、女性が直感で食

べてみたいと感じる商品を世に送ることで

あり、2つの商品のファンを増やすことで

した。


ここまでが本の概要なのですが、すでに、

単に、おいしいお菓子を製造して販売する

というだけでは競争に勝てない時代にある

中で、商品開発の最先端ではどのようなこ

とが行われているのかという理解すること

ができました。


これは私の経験から感じることなのです

が、確かに買い手の要望に応じる商品を開

発しようとする人はたくさんいると思いま

すが、そうであっても、売り手として専門

的な知識を持っている立場から、知識が少

ない買い手に新商品を提案をするというよ

うな、売り手の視点で商品を開発している

例が多いのではないかと思います。


だからといって、大規模なマーケティング

リサーチをするということまでをしなくて

も、どういう商品だったら買いたいかとい

う視点から商品を開発している会社は少数

だと思います。


この件についてもう一歩足を踏み入れて述

べると、起業をする人は「こういう商品を

売りたい」という動機で起業をする方が多

いので、その動機で起業してしまうと、売

るものを変更することに硬直的になってい

る、すなわち商品ありきで事業が行われて

いるとも言えます。


一方、繰り返しになりますが、前述のポッ

キーと午後の紅茶のプロジェクトの場合、

女性が直感的に食べたいと思う商品を開発

することが目的なので、商品そのものはプ

ロジェクト発足の後に決まりました。


すなわち、「何を売るかではなくどう売る

か」ということが課題になっていました。


これは多くの方がご理解されることだと思

うのですが、意外と見落とされていること

ではないかと私は考えています。

 

 

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在庫を武器にする

アマゾンジャパンの立ち上げに関わった林

部健二さんのご著書、「なぜアマゾンは

『今日中』にモノが届くのか 」

( https://amzn.to/2I2w1W7 )を拝読しま

した。


同書の書名は「なぜ『今日中』にモノが届

くのか」となっていますが、内容は、アマ

ゾンの優れた経営の特徴を中心に展開され

ています。


この本から学ぶことはたくさんあります

が、最も注目したことは、アマゾンは倉庫

に100億円の投資をしたということで

す。


同社のこの多額の投資は、いまとなっては

十分に理解できるものですが、従来は倉庫

のような事業に直接関わりのない機能への

投資は少なくすることが常識でした。


でも、2000年に日本で事業を始めたア

マゾンは、それまで、書店にない本は書店

に注文してから約1か月待って手元に届く

ものという常識を覆し、注文した翌日に本

が届くというサービスによって、多くの顧

客の支持を得ました。


すなわち、アマゾンでは、翌日に確実に手

元に本が届くという利便性を提供すること

が競争力を高めており、100億円の投資

は、事業に直接関わりのない機能への投資

ではなく、事業の根幹の部分への投資で

あったということです。


ここまでの内容は、かつては投資すべきで

なかった倉庫への投資が、実は、競争力を

高める武器への投資であったということに

なるのですが、肝の部分はここではないと

私は考えています。


なぜなら、実は、このアマゾンの事業モデ

ルに追随する会社は日本にはほとんど現れ

ていません。


これについて、林部さんは、3つの理由を

挙げておられます。


ひとつは、そもそも通信販売は実店舗を持

たなくする、すなわち投資を少なくするこ

とを目的に行うものという既成概念が強い

というものです。


これについては、考え方の問題なので、議

論するまでもなく、考え方を変えるか変え

ないかということだけのことになります。


ふたつめは、人材への投資に躊躇するとい

うことです。


仮に、日本の会社が倉庫への投資をするこ

とを決断したとしても、設備への投資が優

先され、それを管理する人材への投資は避

けたがっているということです。


詳細な説明は割愛しますが、アマゾンの事

業の仕組みは、単に設備に投資すれば奏功

するのではなく、設備よりもトラブルへの

対処能力、効率化のためのアイディアの捻

出といった、管理者の能力が大切になって

います。


しかし、日本においては、倉庫への投資は

機械が優先という既成概念が大きいようで

す。


3つめはKPI(重要業績評価指標)によ

る管理です。


(KPIについてはこちらを参照してくだ

さい。→ https://goo.gl/J4QYay


同社では、毎週、KPIを確認しているそ

です。


それくらい頻繁に改善を要する点を確認し

ており、この改善の絶え間ない積み重ねが

競争力をより高めているのでしょう。


ここまで頻繁に改善活動を行う会社は、日

本ではあまり多くないのではないでしょう

か?


結論は、アマゾンは、物流によって競争力

が高い会社に見えますが、実は、高度な経

営のノウハウ(人材への投資、精緻な管理

手法)があるからこそ、物流での競争力が

高まった会社であるということが分かりま

す。


多くの方がご存知のとおり、アマゾンは、

いまは本の通信販売に留まらず、幅広い事

業に展開をしていますが、それも、高度な

経営ノウハウがあるからこそできることで

しょう。


「もの」による事業展開ではなく、「ノウ

ハウ」による事業展開をしている同社は、

まさに21世紀型の会社であると私は考え

ています。

 

 

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