鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

意思決定することが正解

東洋経済新報社のWebPageで、埼玉

鶴ヶ島市に本社のある地場スーパーマー

ケットの、ベルクに関する記事を読みまし

た。


(ご参考→ https://goo.gl/xxoSNs


その記事によれば、「同社が5月10日に

発表した4月の既存店売上高は前年同月比

1.3%増と、60か月連続での前年同月

超えを果たした。


全体の業績も好調で、2019年2月期は

売上高2,205億円(前期比4.3%

増)、純利益68億円(同0.5%増)を

計画しており、28期連続での増収、13

期連続での最高純利益更新を見込む」そう

です。


さらに、「品質・サービスの均一化や低価

格販売が顧客から支持を受け、ベルクの従

業員1人当たりの売上高は同業他社の

1.3倍の水準となっている。


会社全体の営業利益率も4.5%(201

8年2月期実績)と、同じく埼玉を地盤と

し高収益率で知られるヤオコー(2018

年3月期営業利益率は4.1%見込み)と

肩を並べる」と、同社の特徴を説明してい

ます。


ここで、この記事がおもしろいと感じたこ

とは、「こうした作業効率の向上を支えて

いるのが店舗運営の標準化で、競合のヤオ

コーは、店長に大きな裁量を与えることで

地域特性に応じた店舗を展開し、収益を伸

ばしているのに対し、ベルクは店舗運営の

フォーマットを統一し、本部主導で100

店を超えるすべての店舗で同じ店作りを追

求している」というところです。


ヤオコーの本社所在地の川越市は、ベルク

の本社所在地の鶴ヶ島市の隣にあり、両社

の経営地盤は重なっていて、まさに同じ

マーケットで戦っているライバル同士とい

うことです。


そして、両者とも高い利益率を示している

のですが、ベルクは本部主導で標準化を徹

底しているのに対して、ヤオコーは店舗に

権限を与えているという真逆の方針を採っ

ているということです。


業種が同じ、地盤が同じでもあるにも関わ

らず、真逆の方針で両社はともに好業績で

あるということです。


ここが「経営」のおもしろいところで、本

部主導型も権限移譲型も正解ということで

す。


では、どちらを選んでも意味がないという

ことになるでしょうか?


それは完全に誤っていると私は考えていま

す。


ベルクとヤオコーの例では、本部主導型と

権限移譲型のどちらを選んでも正解です

が、正解でないことは、どちらも選ばない

ということです。


ベルクもヤオコーも業績が好調なのは、店

舗運営をどのように行うかを明確にしてい

るからです。


すなわち、両社とも、それぞれの独自の戦

術を選択してそれを極めようとする中で、

さまざまな業績を向上させるための活動が

実践されてきたのでしょう。


一方、店舗運営の方針が明確になっていな

ければ、なんの工夫も行われません。


これはちょっと非論理的に感じられるかも

しれないのですが、私がこれまで多くの会

社の事業改善のお手伝いをしてきた経験か

らも、決定をすることが正解であって、ど

ういう方針を出すかはその次だと思ってい

ます。


よく、会社経営者から「どうすれば事業が

改善しますか?」ときかれますが、これに

対して、私は「社長が決める方針に従って

事業を運営すれば改善します」と答えてい

ます。


もちろん、私は社長の方針決定のための支

援はしますが、決定にはかかわりません。


もし、私が決定にかかわってしまうと、社

長はその方針に対して受動的になってしま

うからです。


自らが選択した方針に責任を持って対処し

ていくことが正解であり、なにも決定しな

いことは不正解であるということが、私の

経験から感じていることです。

 

 

 

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希望にあふれる時代が起業家を苦しめる

人材コンサルタントで、「会社人生で必要

な知恵はすべてマグロ船で学んだ」などの

ご著書で有名な齊藤正明さんのご著書、

「『自己啓発』は私を啓発しない」

( https://amzn.to/2wAOPYe )を拝読しま

した。


同書は、自己啓発セミナー・教材に600

万円以上をつぎ込んだ齊藤さんの経験をも

とに、どのように自らの能力を磨くべきか

とうことが書かれています。


結論としては、自己啓発セミナーなどは、

答えを教えてくれるものという前提で受講

するのではなく、他者の成功事例として聴

くべきであり、原則的に自分の能力を高め

るには、セミナーなどできいたことを、自

分にどうあてはめるかという姿勢がなけれ

ばならないということです。


ところで、齊藤さんが高額セミナーなどを

たくさん受講してきた理由は、独立して活

躍できるようにするための能力を身に着け

ようとしたからでした。


そして、たくさんの高額セミナーを受講し

てきた結果、齊藤さんが感じたことは、

「希望にあふれている時代が起業家を苦し

めている」ということだそうです。


すなわち、「インターネットがあれば、無

名でもお金がなくても全世界に自分自身や

自社の商品を売り込むことができるので、

一気に人生を逆転できる希望にあふれる時

代だ」と煽る「起業支援家」」はいるもの

の、結果として、トップになれる人は本の

一握りだということです。


これは、悲観的な意味ではなく、例えば、

プロ野球チームで、優秀な選手を集めた球

団が、実際に4番やエースとして活躍する

選手は数名になることが現実であり、社会

はそういう仕組みになっているという意味

だそうです。


もう少し、別の言い方をすれば、自称「起

業支援家」は、そのような事実を分かって

いて、人生の一発逆転を狙う人を食い物に

しているということでしょう。


とはいえ、良心的でない「起業支援家」を

批判することが本旨ではなく、「希望にあ

ふれる時代」は、自分の人生に期待する人

が増える分、結果として夢がかなわない人

を増やし、自分は不幸だと感じる人を大量

生産してしまうということを、齊藤さんは

ご指摘しておられると思います。


そのため、自分がヒーローのように活躍で

きないとしても、それだけで不幸と考える

のではなく、「きょうはお客さまからほめ

てもらえた」「試しにはいったらーめん屋

さんのらーめんがおいしかった」「きょう

は雨が降らなかった」という、小さい幸せ

に目を向けて自分を不幸に落とし込まない

ことが大切だと齊藤さんは述べておられま

す。


この齊藤さんの考え方が必ずしも100%

正しいとは限らないと思いますが、私の考

えは齊藤さんと近いものです。


話がそれますが、よく、創業にあたって、

銀行からの融資をどうやって受けるかとい

う相談を私も受けることがありますが、

「人生の一発逆転を狙う」あまり、リスク

の高い事業に挑もうとし、結果として融資

を受けられなくなるということが少なくあ

りません。


このような例に遭うとき、私は、リスクの

高い事業に挑むことが間違っているという

ことではなく、銀行から融資を受けようと

することが間違っていると思っています。


その理由は、事業が成功する確率が低いか

らということではなく、銀行の融資利率は

高くても5%程度であるのに、リスクの高

い事業に対する融資の申し込みをすること

は、バランスが取れないということです。


一方で、リスクの高い事業に金融的な支援

をする機関として、ベンチャーキャピタル

があります。


私は、必ずしもリスクの高い事業に挑むこ

とが問題だとは思っていませんので、自分

の始めようとする事業に自信のある方は、

ベンチャーキャピタルの利用が適している

と思います。


ただ、ベンチャーキャピタルを説得するに

は、銀行の何倍もの資料や労力が必要にな

ります。


仮に、それを避けたいから、銀行から融資

を受けたいという人がいるとすれば、それ

はご都合主義ということになるでしょう。


話を戻して、今回の記事の結論は、真に自

らの能力を高めたいのであれば、セミナー

に依存するのではなく、自ら学ぼうとする

姿勢が欠かせないということです。


逆に、「高額セミナーを受講すれば人生を

逆転する」という依存的な考え方をしてい

ると、成功からより遠ざかってしまうこと

になるでしょう。


最後に、齊藤さんは、人生やビジネスでの

学びの場面は、セミナールームだけではな

く、日常で起きたことすべてが学びの種に

なるとして、次のような助言をしておられ

ます。


「何かを試し、うまくいったら自分の成功

パターンのひとつとして記憶する。


失敗したら違うやり方をして、成功を目指

す。


優れた人がいたら嫉妬せず、真似できると

ころは真似する。


嫌な人がいたら、反面教師として活かす」

 

 

 

 

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法令に関するリスクへの対策

いま、静岡県の中堅地方銀行が、シェアハ

ウス投資家向けの融資で不正を行ったこと

が問題になっています。


(詳細は、こちらをご参照ください。→

https://goo.gl/ibr3NJ


これについては、具体的な事実の詳細はま

だ分かりませんが、単純に、コンプライア

ンス違反であり、それ以上の議論はあまり

意味がないでしょう。


ただ、このような事件を起こした会社はど

うなるのかということは注視すべきだと、

私は考えています。


この事件によって、当該銀行は損失を被る

ことは確実です。


ただ、問題となった融資額は約1,000

億円であり、仮にこれらがすべて回収不能

となったとしても、融資総額が3.1兆

円、預金総額が3.9兆円の銀行の規模か

ら勘案すれば、直ちに経営が行き詰るとは

考えにくいと私は思います。


しかし、問題が明るみになったことによっ

て、その銀行の現在の株価は、今年の株価

の最高値の約半分にまで急落しています。


また、一部には、経営が行き詰るのではな

いかという報道もあります。


これは、100%断言することは困難です

が、私は、この不正融資そのものの損失で

は当該銀行は経営が行き詰るとは思えない

ものの、風評などが大きくなることで、不

正をした融資以外の事業に影響すれば、経

営が行き詰ることもあるかもしれないと考

えています。


要は、これも多くの方が同様に考えておら

れることですが、会社は(特に銀行は)信

用が大切であり、それが失われると、会社

の存在そのものが危ぶまれることになると

いうことです。


ところで、法令違反の影響については、銀

行の融資審査においても同様のことが起き

ます。


例えば、法令違反をした会社が、当局に

よって事業停止命令を受けた場合などは、

業績に大きな悪影響を受けることになるの

で、これは容易に理解できるでしょう。


ましてや、中小企業の場合、大企業と比較

して事業基盤が小さいため、影響の度合い

はより深刻となることは理解に難くないで

しょう。


ただ、このような法令違反によって信用を

失うことについては、法令を守れば防ぐこ

とができるので、どうすればよいかという

ことを議論するまでもないでしょう。


しかし、真面目に事業に取り組んでいても

信用を失ってしまうこともあります。


それは、顧客、ライバル、仕入先、従業員

などに訴えられてしまうことです。


会社としては、積極的に法令違反をしよう

としていなくても、業績を伸ばすために、

違反にならないぎりぎりのところで事業活

動をしていた結果、他者からはそれが法令

違反と解釈され、訴えられてしまうことが

あります。


不幸にもそのようなことが起きてしまう

と、銀行側も将来起きるであろう損失を読

み切ることができないことから、融資には

慎重になります。


ここで、会社の営む事業は常にあらゆるリ

スクにさらされているために、他者から訴

えられるというリスクも、そのひとつに過

ぎないということができるでしょう。


ただ、法令違反については、民間会社で

あっても、広く社会から清廉さを求めると

いう傾向が年々強まっているため、わずか

な法令違反であっても、大きな損失につな

がってしまいかねないということに注意し

なければならないでしょう。


詳細な説明は割愛しますが、法令違反が起

きた会社では、多くの場合、最終的にその

会社を支えるのは銀行ということになりま

す。


このような面からも、ピンチになってから

銀行に相談に行くということでなく、普段

から銀行と頻繁に接触し、自社の業況や方

針を伝えておくことは有用でしょう。

 

 

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チェンジモンスター

ボストンコンサルティンググループの上級

副社長のジーニー・ダックの著書、「チェ

ンジモンスター-なぜ改革は挫折してしま

うのか?」( https://amzn.to/2wA8d7K )

を読みました。


本の内容としては、著者の経験を通して得

られた、リーダーとしての組織の変革をど

う推進していくかにかかわる手法とノウハ

ウが紹介されています。


そして、タイトルにある、チェンジモンス

ターとは、ことばとしては変革をかき乱す

怪獣という意味ですが、具体的には、人間

的・感情的なものから生まれる変革に対す

る「阻害要因」です。


この阻害要因であるチェンジモンスターに

ついては、同書の補論に書かれている、日

本に現れるチェンジモンスターについて見

てみると、より理解しやすいと思います。


●タコツボドン:自分のたこつぼに閉じこ

もり、他の人とかかわろうとしない。「う

ちの部署とは関係ない」「ご忠告はありが

たいが、後はこちらにお任せください」と

叫ぶ。


●ウチムキング:社内での評価にだけ関心

があり、顧客など、社外からの評価には目

を閉ざす。「社長!社内での反応は上々で

すので、このままでうまくいきます!」と

叫ぶ。


●カコボウレイ:かつての経営者が手がけ

た事業にとらわれ、業績が悪くても撤退に

関する議論や撤退の決断ができない。「先

代会長が手塩にかけた事業を君はどうしよ

うというのか?」と叫ぶ。


●ミザル・キカザル・イワザル:変革のた

めの活動が行われようとしていても、首を

すくめてやり過ごそうとする。「どうせ、

今回もまたかけ声だけだ。動くだけ損する

に決まっている」と叫ぶ。


●ノラクラ:言い訳をして変革を回避しよ

うとする。「前例はないし、組合がウンと

いわないだろう。それに忙しくて人手も足

りない」と叫ぶ。


●マンテン:100点の報告書がないと動

き出せず、具体的なアクションをとれない

か、遅れてしかとれない。「またデータ不

足だ。もう少しじっくり検討すべきだ」と

叫ぶ。


●カイケツゼロ:できない理由の説明は巧

みだが、解決策の提言は出せない。「それ

は何度も検討しましたが無理のようです。

その理由は5つあって…」と叫ぶ。


そして、この本は、これらのモンスターを

退治するためノウハウが書かれているので

すが、モンスターたちはかなりの強敵で、

特効薬のようなものは無いようです。


ひたすら、改善策を明確に示し、飴と鞭で

根気よく変革を促すことが基本のようで

す。


ただ、この本の主旨とは少し外れるのです

が、気になったことがかかれている部分が

ありました。


「これまで、日本の会社が変化の必要性に

迫られたのは、業績が傾き、危機的な状況

に瀕してから、メインバンクなどから送り

込まれた再建請負人が、会社の生き残りや

雇用確保のために、コストダウンや合理化

を徹底して進めるという状況だけだった。


しかし、今後、日本の会社に変化が必要と

される状況とは、業況がよいうちに、経営

トップが株主の要請に基づいて、より高い

株主価値を創造できる、より強い会社に変

革するために、業態転換や再編成を大胆に

進めるめることができる状況だ」(327

ページ)


ひとことで言えば、会社が倒れそうになっ

たときに変わろうとしても遅くて、変わる

ことができるエネルギーがあるうちに変わ

らなければならないということです。


これも当たり前のことを述べているように

思えますが、私もコンサルタントをしてい

て、事業改善の依頼を受けるとき、どうし

てもっと早い段階で相談してくれなかった

のだろうと思う時がままあり、著者が訴え

ていることにとても共感します。


これは、日本の会社では、倒産しなければ

いいという低い目標しか持たない会社が多

いからだと思います。


会社は、本当は、強い存在でなければなら

ないと考えれば、そこそこの利益が得られ

ている状況で満足せず、より、高いところ

を目指すべきなのでしょう。

 

 

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賃金は固定費と変動費のどちらか

私ごとで恐縮ですが、私の兄は製造業に勤

務していました。


いまは兄は会社を退職しているのですが、

在職中に製造業の会計についてふたりで話

をしたことがあります。


そのとき、私が、「製造原価の賃金は変動

費である」と述べたところ、兄は「賃金は

固定費であり、変動費になることはない」

と反論してきました。


後であらためて説明したいと思いますが、

私が「賃金は変動費」と述べたのは、標準

原価計算の考え方です。


一方、正社員の方は固定給で働いているの

で、正社員に支払う賃金は、契約の形態か

ら見れば固定費と考えることができます。


兄は製造業に携わっていたので、標準原価

計算の知識を持っていると私は考えていた

のですが、その知識はなかったようで、私

が、雇用契約は固定給でも、標準原価計算

の考え方で製造原価を計算するときは、賃

金は変動費として計算するのだと時間をか

けて説明したのですが、結局理解してもら

うことはできませんでした。


では、その標準原価計算について簡単に説

明します。


製造業の賃金の会計処理には3つのステッ

プがあります。


まず、工場で働く従業員の方(以下、工員

と述べます)への賃金(賃金にもさまざま

の定義がありますが、ここでは会計的な観

点での人件費を指すものとします)を支

払ったとき、それは労務費という勘定科目

(会社によって変わることがあります)に

加えられます。


ただし、ややこしいのですが、この労務

という科目は、費用の科目ではなく、資産

の科目です。


なぜ資産なのかというと、これもあらため

て後述しますが、工員への賃金は、製品の

材料と同様の考え方をしているとご理解く

ださい。


材料は、代金を支払って、直ちには製品の

ために使われず、いったん倉庫などに資産

として保管されます。


そして、賃金も、工員から労働力の対価と

して支払われ、工員の方に働いてもらう権

利を資産として蓄えているというように、

会計的にはとらえています。


さらに、材料は製品製造のために、必要な

分だけ利用(これを、会計の用語では消費

といいます)され、そのたびに帳簿から材

料が消費された分の金額が減らされ、同額

が仕掛品(しかかりひん、製造の途上にあ

る未完成の製品を指す勘定科目)や製品

(完成品)に加えられます。


これと同様に、賃金も、工員の方が働くた

びに労務費勘定から減らされ、仕掛品や製

品に加えられます。


これが2つめのステップです。


そして、3つめのステップは、製品が販売

された時です。


この段階で、販売された製品に要した原価

(材料や労務費の消費額)が、製造原価と

いう費用の科目に移ります。


(ここまでの説明は、理解を容易にするた

めに、必ずしも正確なものとはなっており

ませんことをご了承ください)


復習すると、工員の人件費は、いったん労

務費という資産の科目に計上され、つぎ

に、仕掛品や製品という資産の科目に計上

され、販売された段階で製造原価という費

用になるということです。


では、本題の人件費が変動費だるという説

明に移ります。


標準原価計算では、賃金はどのように仕掛

品や製品に計上されるかというと、一般的

には、時間に応じて計上されます。


例えば、仕掛品を製品にする工程では、正

社員が1時間その作業に携わると、1個の

製品が完成するとします。


そして、正社員の1時間あたりの賃金額が

2,000円であるとすれば、製品が1つ

完成するたびに、帳簿では労務費から製品

勘定に2.000円が加えられることにな

ります。


ところで、変動費とは売上に比例して発生

する費用です。


そこで、前述のように、製品が製造される

(ここでは、製品は製造すれば必ず売れる

という前提で説明をします)たびに賃金が

計上されるので、賃金は変動費としてとら

えることができます。


ここまで、簡単に標準原価計算について説

明してきましたが、1度読んだだけでは理

解が難しいかもしれません。


そこで、賃金は工員に対しては契約に基づ

いて固定的に支払われるものの、製品に対

しては、製造に要した時間に応じて案分さ

れて費用になると考えていただければと思

います。


(なお、すべての製造業が必ずしも標準原

価計算に基づいて原価計算をしているわけ

ではないので、ご注意ください)


では今回の記事の結論ですが、賃金は経営

者の観点から、変動費と考えるべきだとい

うことです。


ここで、そのようなことはわざわざ指摘さ

れなくても分かっていると考える方が多い

と思います。


その一方で、経営者の方が、受注の採算を

検討するときに、意外と人件費を見落とし

ている例が多いと、私の経験で感じていま

す。


例えば、新たな受注があり、その採算を検

討するとき、目に見える材料などは原価と

して認識はされるものの、目に見えない人

件費は十分に検討されていないように感じ

ます。


「先方の希望する価額が、仕入れ値の20

%増しだから採算が合うだろう」と考えて

応需してしまったものの、粗利相当の20

%では人件費が吸収できず赤字になってし

まうというパターンが、業況のよくない会

社に共通していると私は感じています。


そこで、自社の1人1時間あたりの人件費

がいくらか、そして、それぞれの工程には

どれくらいの作業時間が必要かということ

を把握しておくと、目に見えない人件費も

原価として認識しやすくなり、誤って赤字

の受注に応じなくなると思います。


人件費は契約によって固定給ではあります

が、標準原価計算の考え方によって変動費

として考えると、より精度の高い採算の検

討ができるでしょう。

 

 

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勝てば官軍

日本マクドナルドの元社長で、故人の藤田

田さんのご著書、「勝てば官軍ー成功の法

則」( https://amzn.to/2KLANpC )を拝読

しました。


藤田さんといえば、型破りの経営者として

知られており、私もそのような印象を持っ

ていましたが、同書を読むと、意外とオー

ソドックスなことが書かれていました。


「これから(この本が書かれた当時は平成

8年)の日本人は、短期的な勝負を狙わな

いで長期的な勝負を狙ってほしい。


私は、このハンバーガービジネスもはじめ

から言っているように30年かかる。


1サイクルは30年だ、30年辛抱すれば

成功できる。


その次はまた次の30年だ、だから30年

間がんばろう。


そうすれば0歳の子が30歳になるから、

その子がハンバーガーを食べて育てば、そ

の次の世代もハンバーガーを食べにくる。


だから30年サイトで見てやろうというこ

とができたのだ」(226ページ)


藤田さんは大胆な経営者というイメージが

あるものの、それは、長期的な視点に立っ

ているからこそ、自信を持って判断してい

るのだということが分かります。


それにしても、22年前とはいえ、当時も

情報技術が進展しており、ドッグイヤー

時代と言われていた時代にあっても、30

年サイクルでビジネスを考えるべきという

のは、私も意外でした。


日本で有数の優良会社となった日本マクド

ナルドも、実は「ローマは一日にして成ら

ず」という考えのもとに築かれたものだと

いうことが分かりました。


もうひとつ意外だったことは、ハンバー

ガーの低価格攻勢です。


「多くの人は、巨大なエネルギーをほしい

と思っていながら、それが時間×努力であ

ることをしらないまま、ひと振りで満塁

ホームランを狙うから、失敗してしまうの

だ。


私は、マクドナルドの社員たちに、『満塁

ホームランを狙うな、一歩一歩でいい、努

力と時間をかければ、巨大なエネルギーに

なるのだ』と、ことあるごとに口を酸っぱ

くして言っている。


ハンバーガーを、100円で売れば3千万

個売れた、80円で売れば5千万個も売れ

た。


これはその前に、210円で売り、130

円で売ってと、一歩一歩、時間をかけて努

力してきた結果なのだ。


だから大成功に至ったのであって、いきな

り80円で売って満塁ホームランを狙って

も、この結果は出なかっただろう」(93

ページ)


ちなみに、同社のハンバーガーは、その後

59円まで値下げされ、現在は、100円

で売られています。


私も、この価格には驚いていますが、何か

特殊な手法があった訳ではなく、地道な努

力の積み重ねだったことが分かります。


私も、長期的な視点での経営や地道な努力

の積み重ねが大切だと述べていますが、藤

田さんのような実例を経験した方がお話し

されることで、説得力が何倍にもなったと

思いました。


ところで、この本のタイトルである、「勝

てば官軍」とは、藤田さんの「ビジネスの

世界は『勝てば官軍』である、敗ければ即

『倒産』しかないのである」という言葉か

らつけられたようです。


これも多くの方が述べておられる考え方だ

と思いますが、経営者にはそれくらいの厳

しさが求められると考えているからこそ、

藤田さんは前述のような着実な戦術を徹底

してきたのだと思います。

 

 

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PDCAは決断力を高める

 

先日、東京都府中市を拠点とする税理士で

あり、「夢をかなえる志経営塾-『ふつう

の人』を『できる社長』にする経営の基本

とは」( https://amzn.to/2HSeDkD )の著

者でもある金成祐行先生と、私が制作して

いるポッドキャストの収録をしました。


(収録の様子はこちらの動画で観ることが

できます。→ https://goo.gl/WcnC6m


金成先生と私の考え方は非常に近く、お話

もとても弾みました。


中でも最も印象的だったのは、PDCAが

会社を強くするというお話しです。


金成先生のご著書にも書かれているのです

が、カリスマ経営者でないふつうの経営者

が経営する会社が強くなるには、PDCA

の積み上げが大切だということです。


ただし、これは人口に膾炙していることな

ので、あえてここで述べる必要はないと思

います。


そこで、もう少し別の観点から述べると、

金成先生は、レコーディングダイエットを

例に、PDCAの大切さをお話されておら

れました。


すなわち、ダイエットしようとしている人

が、毎日体重計で自分の体重を測ることに

よって、食事の内容を調整するよう自然と

意識が高まるのと同様に、会社経営者がP

DCAを行うことによって自社を改善しよ

うとする意識が高まるということです。


その具体例として、金成先生のご著書に

は、金成先生の顧問先のイタリアンレスト

ランの改善活動について紹介されていまし

た。


そのレストランでは、ひとつの戦略につい

て直ちに効果を測定し、改善を繰り返して

いるそうです。


そのため、1か月でメニューががらっと変

わることもあるそうです。


しかも、クリスマスのために準備していた

七面鳥料理を本番に備えるために試しに顧

客に出したところ、評判がよくなかったこ

とから、クリスマスイブの前日になって、

メイン料理をチキンローストに変更するこ

とを決断したそうです。


この決断は、前もって仕入れていた七面鳥

料理に合うワインも無駄にしてしまう決断

でもありました。


でも、結果としてクリスマス本番は、ロー

ストチキンと、それに合うワインを提供す

ることで、顧客からは大絶賛を得ることが

できたそうです。


このエピソードは結果論だと考える方もい

るでしょう。


また、私も、このレストランの経営者の方

の決断が、100%正しかったということ

は直ちにできないと思います。


でも、決断をするということが、より成功

に近づく活動をしているということは確か

だと思います。


繰り返しになりますが、決断したことが常

に100%正しいとは限りませんが、だか

らといって、何も決断することをせず、過

去と同じことを続けていることの方が、失

敗する可能性が高いといえるでしょう。


そして、前述の経営者の方がこのような大

胆な決断をできたのも、日ごろのPDCA

の実践によって改善の大切さを実感してい

たからこそ、自分の決断に自信を持つこと

ができていたからではないでしょうか?


むしろ、私は決断することこそが経営者に

求められる役割であり、それを実践できる

ようにする手段がPDCAなのだと思いま

す。


確かに、PDCAは管理のための手段であ

り、売上には直結しないものであることか

ら、あまり評価していない経営者の方が多

いと感じていますが、経営者の方の能力を

研ぎ澄ます効果的な方法でもあると私は考

えています。


いま業況がかんばしくなく、改善したいと

いう経営者の方は、急がば回れのように感

じるかもしれませんが、PDCAを実践す

ることをお薦めします。


ちなみに、私が事業改善のお手伝いをする

ときは、このPDCAの実践を基本にして

います。

 

 

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