鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

専門用語・業界用語の多用は危険

私がこれまでに事業改善のお手伝いをして

きた会社(に限りませんが)の多くは、そ

の会社、または、その業界の専門用語がよ

く使われます。


専門用語でも、他の言葉に置き換えられな

いものは、それを使わざるを得ないのです

が、置き換えることができる言葉があるに

もかかわらず、独特の言葉を使うこともあ

ります。


私が長くいた銀行では、実質金利という言

葉があります。


これは、融資先から受け取る融資金利額と

融資先に支払うその融資先の預金金利額の

差額を、融資先への融資額と融資先からの

預金額の差額で割って、実質的な資金運用

効率を見るための架空の指標です。


実質金利=(受取金利額ー支払金利額)÷

(融資額ー預金額)


これは、銀行が融資をするにあたって、そ

の取引先の収益性が高いかどうかを判断す

る目安で、同じ金額を同じ金利で融資をし

た場合であっても、預金額が多いほど実質

金利は高くなり、収益性が高いということ

になります。


この言葉は、他に置き換えることができな

いので、銀行の新人職員はこれをそのまま

覚えてもらうことになります。


(経済学用語にも実質金利という言葉があ

り、それは、名目金利から物価上昇率を差

し引いた金利のことで、言葉としては同じ

ですが、意味は異なります)


一方、銀行で独特に使われる言葉に、「日

本茶」というものがあります。


これは、怪しそうな来客があったとき、同

僚に「日本茶をお出ししてください」と伝

えることで、「いま、不審な来客と応対す

るので、上職者に伝えて警戒してほしい」

ということを暗に伝える言葉です。


そこで、銀行職員同士では、単に怪しい来

店者を日本茶と言ったりすることがありま

すが、これは、単に怪しい人物と言い換え

ることができます。


ところで、私がこれまでお手伝いしてきた

会社で、これは最初にきいただけでは意味

が分からないと思った言葉に「業界販社」

というものがありました。


これは、1社だけではなく、まったく関係

のない別の会社でも使われていたので、特

定の会社だけでの用語ではなさそうなので

すが、法人向け営業活動を指す言葉のよう

です。


どうして、法人向け営業活動が業界販社と

いう言葉になったのか、経緯の想像がつき

ませんが、あえて業界販社とは言わずに、

法人向け営業活動でもいいのではないかと

感じています。


また、システム開発会社の方が、「チャネ

ル」という言葉を使っているのをきいたこ

とがありましたが、これは卸売会社を指す

言葉のようです。


チャネルとは流通経路を指すことは知って

いたので、そこから、卸売会社もチャネル

と指すようになったのではないかと思いま

すが、私はそこまでは広げすぎなのではな

いかと感じています。


ちなみに、最近読んだ本で、岡本文宏さん

のご著書「仕事をまかせるシンプルな方法

-9割がパート・アルバイトでも繁盛店に

なれる!」( https://amzn.to/2kN317K )

では、あるコンビニエンスストアチェーン

では、「売場マッサージ」という言葉がよ

く使われていると書いておられます。


これは、「商品陳列・レイアウトの変更を

行い、売り場を新鮮に見せるようにするた

めの作業」を指すそうです。


岡本さんは、このような会社の専門用語は

経験の浅いアルバイトの方には伝わらず、

かつ、指示されたことの意味が分からない

と聞き返してくる人は希であり、したがっ

て、指示した側は指示したつもりになって

いても、その指示が実践されないこともあ

ると指摘しておられます。


これも当然のことですが、岡本さんは「情

報は、伝わってこそ価値がある」とご指摘

されておられ、岡本さんがかつて勤務して

いたアパレル会社で上司の方から言い聞か

されていた「伝達事項は中学1年生が読ん

で理解できるレベルにしなさい」という言

葉を大切にしているそうです。


このことも多くの方が理解されておられる

と思いますが、実際には、前述の通り、一

部の人にしか伝わらない言葉が使われてい

ることが多いと私は感じています。


これに加えて、業界用語や専門用語が多く

使われている職場では、勤めて浅い人たち

は、会話の意味が分からないために、疎外

感を感じてしまいがちになります。


そういった観点からも、業界用語、専門用

語は不必要なものは使わないことが望まし

いと私は考えています。


今回の記事の結論は、もし、自社のコミュ

ニケーションがあまり円滑ではないと感じ

ている経営者の方は、社内で業界用語、専

門用語が多用されていないか見直してみて

いただき、多用されていれば、それを減ら

すことを検討されることをお薦めするとい

うことです。

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180604164148j:plain

機会原価と赤字

これもすでに多くの方がご存知のことと思

いますが、管理会計の考え方に機会原価と

いうものがあります。


例えば、利益が200万円を見込める受注

があり、それを受けると100万円の費用

がかかるとしたときに、何らかの理由でそ

れを受注しなかった場合、受注に応じてい

れば得られたであろう100万円の利益を

損失と考え、受注に応じなかったことに

よって機会原価100万円が発生したと言

います。


とはいえ、この機会原価は、仮定での考え

方であり、仮に100万円の利益が得られ

る機会を失ったとしても、実際に費用が発

生する訳ではないので、機会原価が多い会

社であっても、なかなか批判されることは

ありません。


ただ、これは、私がコンサルタントという

部外者の立場であるから言えることかもし

れないのですが、事業の成果が赤字の会社

は、機会原価の考え方からみれば、本当に

もったいないと感じることがあります。


例えば、会計期間が1か年の会社の成果が

赤字であった場合、その会社が1年間に支

出した費用、時間などは、意味がないもの

ということになってしまいます。


もちろん、会社の評価は1年間だけで判断

すべきものではないのですが、会計の側面

だけで判断すれば、もったいないと思えて

なりません。


日本の会社の自己資本利益率(=会社の純

資産の部の額に占める利益額の割合)は、

約8%と言われていますが、純資産の部が

1,000万円の会社であれば、利益額は

80万円は期待されているとも言えます。


もし、会社が赤字であった場合、その赤字

額だけが損失ではなく、期待される利益額

も損失に加えなければならないでしょう。


そして、繰り返しになりますが、それだけ

でなく、1年間の経営者の方、従業員の方

の費やした時間や労力も報われないものと

なってしまいます。


もちろん、これは会計的な側面だけでの評

価なので、これだけをもって会社のすべて

を評価することは適切ではないのですが、

先日、ある税理士の方とお話をしたとき、

「顧問先の方には、会計を1番目の評価指

標にするよう指導している」というお話を

ききました。


その税理士の方によれば、日本では、経営

者の方は、会計での評価を後回しにしてし

まいがちであり、そのことが、事業の成果

が赤字になっても甘んじてしまうので、あ

えて会計を最も重視するように指導してい

るということでした。


赤字の会社の経営者の方も、もちろん自ら

望んで事業を赤字にしているわけではない

と思いますが、赤字が続けば事業を続けら

れなくなってしまうので、自社の収益につ

いて、もう少し会計に関して意識を高めて

もらえればと、前述の税理士の方と同様に

私も考えています。

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180603155348j:plain

 

組織の管理原則

今回は、あらためて組織の基本的なことが

らについて説明したいと思います。


組織については、これまで多くの学者の方

たちが研究していますが、その組織には、

一定の秩序があるということが分かってい

ます。


(とはいえ、これは特に難しいということ

ではなく、普段から組織にかかわっている

ビジネスパーソンも実感できることです)


もし、この秩序がなければ、組織が維持で

きなくなったり機能しなくなったりしてし

まいます。


ただ、この秩序については、多くの研究者

が組織の管理原則として示しており、例え

ば、管理過程論の研究で著名な、フランス

人の実業家、アンリ・ファヨールも、14

の管理原則を示しています。


しかし、この原則についてはある程度は収

斂されているものの、広く定まったものは

ないため、ここでは重要と思われる5つの

原則を示します。

 

(1)専門化の原則:組織の構成員が、細

かく分けられた仕事のひとつを専門的に行

うようにするという原則。


このことにより、ひとりに割り当てられる

仕事が単純になり、そして各々の仕事の習

熟度が高まるため、組織全体として仕事が

効率的に行えるようになる。

 

(2)権限責任一致の原則:負わされる責

任はそれに相応する権限をともなはなけれ

ばならず、また、与えられる権限もそれに

相応する責任をともなわなければならない

という原則。


また、これらの権限と責任は、組織内の職

位(階層)に基づいて与えられたり負わさ

れたりするものでなければならない。

 

(3)統制範囲の原則:上司ひとりあたり

が指揮・監督する部下の数を適正にしなけ

ればならないという原則。


これについては、明確な基準はありません

が、直接部門については30人程度まで、

間接部門については10人程度までと言わ

れており、この範囲を超えると、上司の部

下に対する指揮・監督の効率が下がること

になります。

 

(4)命令統一性の原則:組織の構成員は

ひとりの上司からのみ命令されるという原

則。


これは、部下が上司のさらに上司から命令

されたり、他の部署の上司から命令を受け

たりすることによる、指揮系統の混乱を避

けるためのものです。

 

(5)権限移譲の原則:上司が部下に権限

の一部を委譲することによって、仕事の効

率化を図るべきであるという原則。


定型的な仕事は、問題が発生しても定めら

れた手続きで解決できることが多いことか

ら、権限移譲を行いやすいといえます。


この権限移譲により、上司は、例外的な判

断や仕事に専念できるようになります。

 

これらは、至極当然のことを述べていると

感じる人が多いと思いますが、その一方

で、原則が守られていない組織も多いと感

じることがあります。


例えば、部下に責任は負わせているもの

の、それに見合った権限を与えておらず、

いつまでたっても部下が責任を果たすこと

ができない状態が続いていたり、経営者が

部下に権限移譲しないために、経営者に判

断業務が集中してしまい、会社全体として

効率的な動きができていないという例を見

ることは少なくありません。


単純なことですが、前述の5つの原則がき

ちんと自社で実践されているかどうかを点

検するだけでも、組織が現状より活性化す

る可能性が大きいと思い、今回は、組織の

管理原則について取り上げてみました。

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180601162837j:plain

従業員満足度と顧客満足度の罠

日本マクドナルド、とんかつ新宿さぼてん

のOBで、経営コンサルタントの松下雅憲

さんのご著書、「店長のための『スタッフ

が辞めないお店』の作り方」

( https://amzn.to/2LO6SNZ )を拝読しま

した。


同書は、飲食店の現場に長い松下さんのご

経験から、どうすればスタッフを定着させ

ることができるかというノウハウが、豊富

に、かつ、体系的に解説されています。


その中で、私が最も注目したことは、従業

員満足度と顧客満足度の罠です。


私は、現在は、従業員満足度(ES)が高

くなければ、顧客満足度(CS)は高くな

らず、CSが高くなければ売上も利益も増

えないと考えています。


一方で、飲食店(に限りませんが)の現場

では、CSは大切かもしれないがもうけの

方が先だとか、CSだけでなくESも高め

なければならないということになると店長

の負担が増えるだけだ、という誤解が多い

と私は感じています。


すなわち、利益以外にも、CSやESとい

う目標が増えるのは非効率と誤解している

人が多いということです。


本来は、利益を得るためには、CSを高め

る必要があり、CSを高めるにはESを高

める必要がある、すなわち、CSとESは

最終的な目標である利益を得るための過程

なのですが、このように理解している人は

意外と少ないようです。


そのような誤解が広まっている原因にはさ

まざまなものがあると思いますが、松下さ

んは、その原因のひとつとして、「ESと

CSの罠」について説明しておられます。


松下さんは「ES向上→CS向上→売上増

加」という考え方は間違っていないが、勘

違いもしやすいと述べておられます。


なぜなら、「ES向上だけではCSは向上

せず、CSを向上させるだけでは売上は増

えない」からだそうです。


そこで、「CS向上がES向上になるよう

に仕掛け、売上増加がCS向上の証拠にな

るように仕掛ける」ようにするとよいそう

です。


その例として、松下さんは、ある居酒屋の

事例を紹介しています。


その居酒屋では、CS向上のために「90

分飲み放題」を利用している顧客に、コッ

プの中が空になったらお代わりを薦めると

いう作戦を実施したそうです。


こうすることでCSが向上し、リピート利

用につながり、売上が増えると店長は考え

たそうです。


しかし、その作戦によって売上は増えたも

のの、提供する飲み物の量も増えたため、

利益の増加にはつながらなかったそうで

す。


そこで、お代わりを薦めるときは、「当店

ハイボールはお薦めですよ!」と提案し

て、ビールより原価の低いハイボールの注

文を増やしたり、「そろそろ飲み放題の時

間が終わりますが、お得な30分の延長は

いかがですか」と、延長を薦めた結果、売

上とともに利益も増加しました。


もちろん、自分たちの作戦が奏功すれば、

スタッフの満足度も高まります。


このように、利益、ES、CSを同時に

達成できるような仕掛けを作ることが大

切と松下さんは述べておられます。


なお、松下さんは直接は触れていません

が、ESの高い職場ではスタッフの定着

率が高まるので、採用や育成の負担が減

り、利益の増加に寄与します。


一見、ESとCSの向上は負担と感じま

すが、松下さんのご指摘のように、上手

な仕掛けがあれば、ES向上→CS向上

→利益増加という好循環を生み出すこと

ができるということが、松下さんのご著

書でよく理解できました。

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

f:id:rokkakuakio:20180601000606j:plain

 

コンサルタントの支援を受ける条件

これは私が感じているという前提ですが、

多くの中小企業経営者の方がコンサルタン

トに期待していることは、自社がピンチに

なったときに現れて、その問題をパッと解

決してもらえることだと感じています。


私の場合、銀行で働いていたことから、よ

く、銀行から融資を断られた会社経営者か

ら、銀行を説得して融資を受けられるよう

にして欲しいという依頼を受けます。


営業系コンサルタントなら、売上が減少し

てしまったときに、売上を直ちに回復して

くれるようなことを期待されるでしょう。


このように、自社が窮地に立った時に、そ

の状況を直ちに改善してくれるコンサルタ

ントがいつでもすぐに現れてくれたら、経

営者の方にとっては心強い味方でしょう。


ところが、コンサルタントの立場からすれ

ば、このような顧問先は歓迎しません。


ピンチから助け出す支援をすることはでき

るとしても、それは、最初の1~2回まで

で、それ以上に何度もピンチになると、そ

こから抜け出すことは現実的に難しいとい

う事情もあります。


でも、もっと問題なのは、ピンチになった

ことから何も学ぶことなく、何度もピンチ

に至っててしまうのであれば、その会社の

経営者は、経営者としての資質がないとい

うことです。


少し言葉としてはきついですが、ピンチに

なったら誰かに助けてもらえるということ

であれば、どんな人でも経営者になること

ができます。


さらに、ピンチのとき「だけ」助けを求め

るということも虫がいいということになり

ます。


これは、単に虫がいいということよりも、

会社がピンチになりさえしなければそれで

よいという、目標の低さが問題であると思

います。


一方で、業績のよい会社は、自社がピンチ

でなくても、常に改善点はないかを探求し

て、さらに自社の体質を強くしようと努め

ています。


しかし、業績の芳しくない会社は、自社に

脆弱なところがあっても、危機が表面化す

るまでなかなか対策を打とうとしない傾向

にあると私は感じています。


このような、経営者の方の事業に臨む姿勢

が、会社の業績の良しあしの要因の大きな

部分を占めているのではないでしょうか?


しかしながら、経営者の方の姿勢が積極的

でないとき、それをよい方向へ変えること

はなかなか難しいと感じています。


コンサルタントとして、会社のピンチを助

けたいと思う一方で、もっと根幹的な部分

で経営者の方の姿勢が変わらなければ、早

晩、その会社の事業は行き詰ってしまうこ

とになるでしょう。


そうであれば、コンサルタントとしても、

その会社に対して支援することに意味を感

じなくなってしまいます。


もちろん、コンサルタントにも能力に差が

ありますが、腕の良いコンサルタント

あっても、経営者自身に強い改善の意思が

なければ、事業の改善のための支援に手こ

ずるだけでなく、コンサルタント側にも支

援をしようとする意欲がなくなってしまい

ます。


結論のひとつは、まず、経営コンサルタン

トに過剰に依存的になってはいけないとい

うこと、ふたつめは、自らが高い目標や志

を持たなければ、コンサルタントからも積

極的に協力をしてもらえなくなるというこ

とです。

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180529143301j:plain

苦しい時に備えるための資金繰のルール

今回も、前回の記事でご紹介した、野坂英

吾さんのご著書「資金30万円から100

億円企業をつくった社長が教える勝ち続け

る会社をつくる起業の教科書」

( https://amzn.to/2xlGoR4 )の中から、

会社の資金繰の維持に参考となる記載があ

りましたのでご紹介したいと思います。


リユース商品のお店を展開していた野坂さ

んは、年に1~2ずつ店舗を増やしてきて

8つとなったときに、いちどに6つの店を

増やそうとしたときがありました。


その際、出店コストなどで半年間赤字が続

いたとき、資金繰が苦しくなったという経

験をしたそうです。


その経験から、業績がよいときであっても

業績が悪くなったときに備えてきちんとし

た資金調達をすることにしたそうです。


具体的には、次のようなことを心がけてい

るそうです。

 

(1)安易に融資を受けない:最近は資金

調達が容易になっているが、必要以上に手

元に資金があると、投資判断が甘くなるの

で、最低限の融資しか受けないようにして

いる。


(2)長期融資を増やし、短期融資を減ら

す:短期借入は、業績が悪くなった時に、

銀行から借換の承認をもらいにくくなるの

で、仕入れ代金支払いのための借入は、短

期借入だけでまかなわないようにしてい

る。


(3)複数の銀行と取引する:メインバン

クを持つことは大切だが、リスクヘッジ

する観点から、他の銀行とも取引をするこ

とが望ましい。


(4)資金流用をしない:新店舗出店のた

めに借りたお金を運転資金に流用すると、

返済方法が分かりにくくなるだけでなく、

お金の管理がルーズになるので、流用は避

けなければならない。


(5)目先のことだけを解決しようとしな

い:資金繰の苦しそうな同業者から、お金

を工面するために、原価割れでリユース

品の買取を依頼されることがあるが、この

ような安易な方法で目先の資金繰が解決で

きると考えてしまうと、きちんと利益を出

して資金繰を改善しようとする努力を怠っ

てしまうようになるので、避けなければな

らない。


私は、これらのいずれも大切な考え方だと

思いますが、(4)と(5)は特に大切だ

と思います。


資金繰に苦心している会社経営者の多く

は、「借りられさえすればそれでいい」と

考えがちで、返済することまでは考えが及

んでいない方が多いようです。


でも、借入をきちんと返済することが、次

に融資を受けるときの負担を減らすことに

つながります。


融資に悩んでいる経営者の方は、手元のお

金がなりかけたときに右往左往するという

傾向がありますが、野坂さんのように、

「業績がよいときから、業績が悪くなった

ときに備え」て資金調達しておくことが、

最も効果的で負担の少ない融資対策だと思

います。

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180531185058j:plain

 

教育することがビジネスそのもの

今回も、前回の記事でご紹介した、野坂英

吾さんのご著書「資金30万円から100

億円企業をつくった社長が教える勝ち続け

る会社をつくる起業の教科書」

( https://amzn.to/2xlGoR4 )の中から、

さらに気になるポイントがありましたので

ご紹介したいと思います。


私も顧問先の事業改善のお手伝いをする中

で、従業員の方の育成には、経営者の方と

一緒に苦心した経験があります。


相手が個性を持った方たちですから、そう

簡単には経営者の方の思うようにならない

のが、人材の育成です。


これについては、著者の野坂さんもご苦労

されたようです。


野坂さんも、創業当初はなんでも自分で実

践してみないと気がすまなかったそうです

が、事業規模が拡大するにつれ、その限界

を感じ、人材を育成して仕事を任せなけれ

ばならないことに気づいたそうです。


そこで、「事業の拡大=人材の育成」とい

うように考えるようになったそうです。


ところが、当然、その人材の育成は一朝一

夕に行かなかったそうです。


だからといって、決して、野坂さんが何か

魔法のような手法を編み出したということ

でもないようです。


それは、結論として、野坂さんの視点を変

えたということのようです。


すなわち、「育たない人はいない、人が育

つかどうかは経営者次第」と考えるように

したそうです。


具体的には、次のように考えて部下に接し

ていたそうです。


(1)創業時は自分も素人であったことを

思い出し、初心者の立場にたって部下に仕

事を教えるようにする。


(2)経営者が望む能力の70%を最低ラ

インとする人が多いが、それは部下から見

れば150%の完成度を与えられていると

感じてしまうので、経営者が望む能力の

50%を達成できれば部下を認める。


(3)多くの人を採用すると、まったく仕

事ができない人も入ってくるので、そのよ

うな人に合わせて指導ができるような工夫

をすること。


主に以上のように野坂さんは考えていたそ

うですが、まさに人材育成に王道なしとい

うことなのでしょう。


多くの経営者の方は、効率的に、簡単に、

短期間で即戦力となる人材が欲しいと望ん

でいると思いますが、私は、そのような考

え方はあまり現実的ではないと経験的に感

じています。


なぜなら、すでに優秀な状態になっている

人材を雇うには、それなりの報酬や、会社

の職場環境が必要になります。


これについては、野坂さんもご著書に書い

ていますが、「創業期に、ひとりでに優秀

な人が来てくれるようなことはまずない。


海のものとも山のものともわからないよう

ベンチャー企業に、誰が見ても優秀な人

材が入ってくる確率は低いだろう。


しかし、それを嘆いていても何も前に進ま

ない。


そこで、経営者が考えるべきことは、いま

会社で働いてくれている人の実力をいかに

高めるべきかであり、まだまだ原石の状態

のスタッフを育て上げていくしかない。


仕事ができない人たちをしっかりと教育す

ることが、ビジネスそのものであると考え

ることが大切だ」(138ページ)


今回の結論は、野坂さんの言葉の通り、

「教育することが、ビジネスそのもの」で

あり、それは効率化したり省いたりするこ

とができない、経営の所与の課題だという

ことです。


現在は、経営者の方がこれを認識していな

いと、起業に失敗してしまう可能性が高く

なると私は考えています。

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

f:id:rokkakuakio:20180529163905j:plain