鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

CFと利益

最近、「キャッシュフロー経営」という言

葉をよく耳にします。


キャッシュフロー(CF)とは、直接的に

は、お金の流れという意味ですが、会計で

は、会社の中をお金が出たり入ったりして

流れた結果、会社に残ったお金(=現金+

預金+短期的に運用している有価証券)が

いくらかということを指しています。


あえて、ここで説明するまでもありません

が、なぜ、CFが大切かというと、ひとつ

は、現金がなくなると、会社の事業が停止

してしまうからです。


具体的には、材料を仕入れたり、従業員に

給与を支払ったりできなくなり、事業が止

まってしまうばかりでなく、いわゆる「支

払いの停止」をしてしまった会社は、社会

的な信用も失ってしまいます。


もうひとつは、ひとつめの理由と重なる部

分もありますが、CFが適正な財務管理を

行うための管理の対象になっているからで

す。


というのは、利益が増えても現金がないと

いう「勘定合って銭足らず」の状態になる

ことは、適切でない財務状態なので、その

ような状態になることを避けるよう、CF

についてもしっかりとした管理を行わなけ

ればなりません。


以上がCFの大切さの根拠ですが、本題に

戻ると、私は、最近のCFの大切さが強調

されることについては、疑問を感じていま

す。


前回の記事( https://goo.gl/bgJsx9

でも触れましたが、融資を受ければCFが

増えますが、それだけですべてが解決しな

いにもかかわらず、それ以上のことをしよ

うとしない会社も存在します。


CFの維持も大切ですが、CFを安定させ

るためには、本源的には利益を得なければ

なりません。


これを言い換えれば、黒字の会社でなけれ

ば、資金提供(融資や出資)をしようとす

る協力者はなかなか現れません。


とはいえ、このことは理解されているにも

かかわらず、CFが利益より強調されやす

い状況にある理由は2つ考えられます。


ひとつは、財務管理そのものが稚拙な会社

が多いということです。


本来ならば、CFと利益のバランスを勘案

しながら、財務管理をすることが理想なの

ですが、不慣れな人にとっては、それは、

やや高度な管理となるので、「まず、現金

の残高から管理しましょう」と指導する専

門家が多いのだと思います。


ふたつめは、CFの維持は短期的な課題で

あり、利益獲得という長期的な課題より、

比較的容易に解決できるからでしょう。


「お金が足りない」というときは、銀行に

融資を受けたり、仕入先に支払いを待って

もらうといった対応で、直ちに解決できま

す。


一方、「会社が赤字になりそうだ」という

ときは、どうすれば赤字を解消できるかと

いう分析を行い、それに対する改善策を考

え、それを実践するというステップを踏ま

なければなりません。


こういった事情から、CFに経営者の関心

が向きがちなのだと思います。


今回の記事の結論は、CFと利益は、それ

ぞれ、別の意味で大切であり、どちらの方

が大切か比較することができないこと、そ

して、CFを維持することが利益の維持に

つながり、また、利益を維持することがC

Fの維持につながるというように、お互い

に貢献し合っているということです。


したがって、管理の仕方が容易などの理由

で、CFだけ重要視するということは、結

果として、CFの維持も困難にすることと

なり、避けなければなりません。

 

 

 

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融資を受けた後何をするか

「銀行が、こちらから依頼した通りの金額

を、やはり、こちらから依頼した通りの期

間、融資してくれたとしたら、次に、あな

たの会社では何をしますか?」


これは、私が、融資の申請のお手伝いをす

る会社経営者の方に最初に行う質問です。


なぜ、このような質問をするかというと、

このことを銀行は最も知りたいからです。


すなわち、融資の申し込みがあった会社に

融資をするのであれば、その会社が融資を

受けて、さらに事業が改善するということ

が前提になります。


そこで、融資を受けた会社は、その後、事

業改善のために、どのような活動をするの

かということを、銀行は知りたがるわけで

す。


ところが、私の経験では、融資を受けた後

に、具体的に何かをしようとしている経営

者の方は、これまでほとんどいませんでし

た。


私が質問した経営者の方は、恐らく、「お

金が足りないから融資を申し込んだ、そし

て、融資が受けられたら、今まで通りに事

業を続けられる」というところまでしか考

えていないのでしょう。


これを別の言い方をすれば、融資を受ける

ことがゴールになっていて、融資をすべて

返済し終わるところまでは考えていないと

いうことでしょう。


このように書くと、「融資を受けるのであ

れば、経営者は、融資の返済が終わるとこ

ろまで考えておかなければならない」と私

が言おうとしていると受け止めてしまうか

もしれません。


確かにそのような面もありますが、その前

に、見落とされがちなことがあります。


というのは、とにかく融資が受けられれば

よいというような、その場のことだけをや

り過ごすこしか頭にない経営者の方に限っ

て、「銀行から融資をしてもらうには、労

力がかかる」と考えているのではないで

しょうか?


そして、だからこそ、何らかの融資対策が

必要になると考えていることでしょう。


しかし、これは、本末転倒なことだと思い

ます。


事業改善に向き合おうとすることなく、融

資対策だけで頭がいっぱいという経営者の

方は、厳しい言い方ですが、会社経営を放

棄しているようなものです。


そして、銀行を説得して融資を受けること

は労力がかかるとはいえ、本来の役割であ

る、顧客や従業員などに働きかけて、事業

を地道に改善していく活動よりは、銀行に

依頼して、融資を引き出すことの方が、ま

だ楽であると考えているのだと思います。


これは、「水は低きに流れ、人は易きに流

れる」ということでしょう。


今回は、やや、辛口になりましたが、私が

会社経営者の方は「融資対策」をあまり行

うべきではないと考えている理由のひとつ

は、経営者の方が、本来取り組むべき事業

改善活動から逃れたいために、融資対策を

口実にしてしまう例が多いからです。


ただ、そのような会社は、当然、事業は悪

化する一方で、ますます融資を受けにくく

なり、早晩、事業が行き詰ることになるこ

とは明らかです。

 

 

 

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最大限よりもバランス

先月、おかげさまで、小職の最新刊、「図

解でわかる経営の基本いちばん最初に読む

本」( http://amzn.to/2lu3fU4 )が増刷さ

れ、第3刷となりました。


著名なベストセラー作家の著書と比べたら

ゆっくりとした売れ方ですが、1年3か月

で2回の増刷というのは、これまで私が書

いてきた本の中では、最も速く売れている

本であり、また、版元の出版社の本の中で

も、比較的、増刷の速さが速いようです。


この本は、当初は、出版社の方はあまり乗

り気ではなかったのですが、よい方向に予

想を裏切ったことになり、私もうれしく

思っています。


とはいえ、結果として、たまたま拙著が売

れたというように考えてはいません。


この本に、当初、出版社が乗り気でなかっ

た理由として、類書がたくさんあるという

こと、実務書というよりは参考書という感

じの本であったことなどがありました。


でも、私とすれば、類書は経営用語解説書

的なものばかりで、物足りなさを感じる本

ばかりでしたので、きちんとした内容で書

けば、きっと買ってくれる方はいると考え

ていました。


その、きちんとした内容の本にするために

盛り込んだ要素はいくつかあるのですが、

そのひとは、「経営とはなにか」を強調し

とことです。


「経営」ということばは多くの方が使って

いるにもかかわらず、「経営とはなにか」

を説明できる方は少ないと私は感じていま

す。


そもそも、多くの経営入門書でさえ、経営

の定義を書かずに経営戦略や学説ばかりを

取り上げており、すなわち、幹の部分に触

れず、枝葉ばかり解説しているから、それ

が物足りなさを感じる要因になっているの

だと思います。


一方で、この経営は何かということを説明

することも、確かに難しいという面もあり

ます。


そのため、拙著の中では、何か所にも分け

て経営を解説することになってしまいまし

た。


このようなこだわりをもって書いたことか

ら、拙著は予想よりも速く売れているのだ

と分析しています。


と、ここまで長い前振りとなったのです

が、今回の記事の主旨は、なかなか説明が

むずかしい経営について、そのひとつの側

面を説明したいと思います。


経営者の方は、自社の業績を最大限にする

ことが役割と考えている方が多いと思いま

す。


このことは、一見、当然と思えるのです

が、では、最大限の業績とはどういうこと

でしょうか。


すべての役職員が全力を出し切って、得ら

れるであろう利益を、100%得ることで

しょうか?


例えば、ある会社で、売上を前年比5%増

で成長させるために、(違法にならない範

囲で)従業員の方に残業をさせていたとし

ます。


その結果、何とか、5%増は維持できてい

るとします。


では、この会社の経営者は、役割を十分に

果たしているといえるでしょうか?


売上増加という実績で見れば、経営者の采

配は正解と言えるでしょう。


でも、それと同時に、残業が多いことに

よって、従業員の士気が下がったり、定着

率が下がるリスクも増加します。


それが、近い将来、採用コストの増加、人

材育成のためのコストの増加、商品の品質

の低下による競争力の低下などで顕在化し

てくるでしょう。


そう考えた場合、売上の増加だけにこだわ

るよりも、5年~10年の長い目で、どう

することが利益を最大化するかという観点

で経営した方が、正解と言えるかもしれま

せん。


ここでは、長期的な視点で見ることが大切

という表現をしましたが、会社の経営資源

である、ひと・もの・かねはそれぞれ有限

であり、それらの制約のある中で、まず、

どのように経営資源の配分を調整するかと

いうことが、経営者の役割、すなわち、経

営ということであると私は考えています。


利益(かね)は、比較的、短期的な結果を

期待されがちですが、そのために従業員

(ひと)が犠牲になると、長期的な視点で

は悪影響を及ぼすことにもなります。


ここでは、売上と従業員の関係だけを例示

しましたが、実際には、もっと複雑な事情

が絡み合って、難しい判断を求められるこ

とでしょう。


経営者には、結果責任が求められますが、

だからといって、経営資源の配分を誤って

しまうとバランスが崩れ、事業が停止して

しまいます。


繰り返しになりますが、経営者には利益を

得るという責任は免れないものの、単に、

直接的に利益を追求するのではなく、社内

の利害を上手に調整(≒経営)することに

よってこそ、利益が得られることになると

考えることが妥当でしょう。

 

 

 

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経営者とコンサルタントの対立は望ましい

私は、労働問題専門の弁護士さんを何人か

知っているのですが、会社側につく方と、

従業員側につく方がいらっしゃいます。


それは、誰から受任をしたかということで

明確で、それぞれの委任者の利益のために

問題の解決を図ろうとします。


ところが、事業者向けのコンサルティング

の場合、依頼主がわかりにくい場合があり

ます。


例えば、事業再生のコンサルティングは、

コンサルタントは会社と契約し、報酬も会

社から支払われますが、実質的には、その

会社の株主である再生ファンドやその会社

を支援している銀行の意図に従って行われ

ます。


そのため、事業再生をする中で、社長の能

力が不足すると判断したときは、コンサル

タントが、社長の交代を株主に求める場合

もあり、実際に社長が交代することもあり

ます。


(事業再生をしている会社の社長は、事業

再生を行う前からの社長がそのまま就任し

ている場合や、再生ファンドから指名され

たターンアラウンドマネージャーなどが就

任している場合もあります)


コンサルタントが社長と対立することがあ

るというのは不思議な感じがしますが、会

社の最終的な責任者は株主なので、コンサ

ルタントの意見と株主の意見が一致すれば

社長が解任されることもあるわけです。


一方、一般的なオーナー会社の場合、社長

は大株主でもあるため、コンサルティング

も社長の意向に沿って行われます。


それでは、コンサルティングを受けている

オーナー会社で、コンサルタントと社長の

間で意見が対立した場合はどうなるでしょ

うか?


その場合は、コンサルタントが自ら顧問を

おりるか、社長がコンサルティング契約を

解除することになります。


もちろん、コンサルタントの力量が足りな

い場合や、方針の選定にあたってコンサル

タントが誤った判断をしている可能性もあ

るので、そのような時は、コンサルタント

と会社との関わりを断つことが正解という

ことになります。


ただ、私の経験から、コンサルタントと社

長の意見が対立する時というのは、社長側

が改善活動の継続に音を上げる時というこ

とが多いと感じています。


そのような場合、コンサルタントの方針が

正しいかどうかというよりは、社長の能力

の高さによって改善活動が停止してしまう

ことになります。


現実には、もっと複雑で、コンサルタント

と社長のどちらが正しいかというように、

明確に線引きができるものではなく、仮

に、社長の能力があまり高くないという場

合は、コンサルタント側にも、社長のキャ

パシティに応じて、実践しやすい改善方針

を提示することが求められます。


ただ、オーナー会社の場合、事業再生をし

ている会社と違って、社長の交代は選択肢

にありません。


解任されない限り、ずっとひとりの社長と

事業改善に取り組むことになります。


だからといって、私は、オーナー会社のコ

ンサルティングを行うことを否定的に考え

てはいません。


むしろ、やりがいがあると思っています。


正直なところ、事業経営において、経営者

の判断や、コンサルタントの判断は、事前

に100%正しいというものを出すことは

できません。


右に進むことが100%正しく、同時に、

左に進むことが100%正しいということ

もあります。


逆に、右に進むことが100%間違いであ

ると同時に、左に進むことも100%間違

いということもあります。


問題なのは、結果は、後からわかることな

ので、結果がどうかよりも、事前にどれだ

け検討を尽くしたかということが大切にな

ります。


そういった議論を、経営者とコンサルタン

トの間で行うことは、とても意義があると

思います。


むしろ、コンサルタントが経営者の解任を

選択肢に入れているというのは、専制的で

あり、判断も誤りやすくなると思っていま

す。


(念のために付言すると、事業再生のよう

な、期間が区切られている関与の場合は、

経営者の変更がやむを得ない場合もあるの

で、経営者の変更そのことを否定するとい

うことではありません)


ちょっと、変なまとめなのですが、社長が

ひとりで何でも決めたり、逆に、コンサル

タントが何でも会社に指示したりというこ

とではなく、両社で大いに議論していくと

いうことが、経営者の方の経営センスを、

より研ぎ澄まされたものにしていくものだ

と私は考えています。


そして、経営コンサルタントは、何でも社

長のいいなりになったり、逆に、何でも口

出しをしたりするのではなく、社長の議論

の相手となって、社長のセンスを高めてい

くことが、大きな役割のひとつであると思

います。

 

 

 

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私がフリーランスになってから、それまで

理解していた「運」の意味が違っているの

だろうかと感じるようになりました。


運というと、私は、宝くじに当たった時な

どに、自分には運があったのだと考えてい

ました。


また、お財布をどこかで落としてしまった

ような時は、逆に、運がなかったのだとい

うように思っていました。


ちなみに、大辞泉によると、運とは「人の

身の上にめぐりくる幸・不幸を支配する、

人間の意志を超越したはたらき」というこ

とだそうで、私のかつての理解も必ずしも

間違っていないように思います。


でも、フリーランスになってから、いろい

ろな成功者の方のお話をきいていると、そ

のような方たちは、運とは単に天任せのこ

とではないというように考えているようで

す。


成功者の方は、ほぼ、同じ考え方をしてい

るようですが、稲盛和夫さんの場合、「真

面目にコツコツ精進している人間を、天が

見捨てるようなことは決してありません」

とお話しされておられます。


稲盛さんは、かつて、海外市場を開拓する

ために、昭和37年に米国へ、そして、昭

和39年に欧州へ営業に行ったことがある

そうです。


ところが、当初は、1件も注文が取れな

かったようです。


そこで、稲盛さんは「日本で待っているみ

んなに申し訳ない、神様が哀れんでくれる

くらいひたむきに努力しよう」と、同行し

た社員たちにお話したそうです。


その結果、香港マイクロエレクトロニクス

社、アメリカ・フェアチャイルド社から、

まとまった注文が入るようになったという

経験を持っているそうです。


ここまでの強い思いで活動すれば、稲盛さ

んは、神様に助けてもらったのではなく、

明らかに自らの努力で顧客を獲得したと私

は思うのですが、稲盛さんは神様に助けて

もらったと考えているようです。


でも、これは、私の想像ですが、稲森さん

は神様を信じたというよりも、努力をした

人は必ず報われるという因果応報の法則を

信じて努力を続けたということなのだと思

います。


だからといって、私のような途上にあるも

のが、「努力をした人は必ず報われるの

で、経営者の方は、努力を怠らないように

しましょう」などといったことを言える立

場にはありません。


ただ、業績が芳しくない会社経営者の方を

見る時、まだ、改善の余地があるのに、そ

れを実践しないなんてもったいないと感じ

ることがあります。


一方で、業績のよい会社経営者の方が、危

機感を強くもって、日々、懸命に働いてい

るように感じることが多々あります。


もし、自分が神様だったら、どちらの会社

を助けてあげたいと思うかというと、それ

はあえて述べるまでもないと思います。


本当に神様がいるかどうかは別として、私

も、神様が手伝ってあげたい相手だと思わ

れるようにならなければと考えながら、

日々、精進を続けていきたいと思っていま

す。

 

 

 

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事業が急拡大している会社は危険

もう、半年ほど前のことになりますが、横

浜市の着物の販売会社が、成人の日当日に

なって店を開けず、着物の購入を予定して

いた新成人が、着物を着ることができなく

なったという事件は、記憶に新しいと思い

ます。


その会社が、神奈川県警から、3,500

万円の融資を受けるために銀行をだました

疑いを持たれていると、先日、新聞で報道

されていました。


(ご参考→ https://goo.gl/ofZ7LF


具体的には、「社長は28年9月、柏市

新店舗を開店するために、売上5,000

万円を水増しした27年9月期の決算書類

を神奈川県内の銀行に示し、3,500万

円の融資を受けた」と、記事に書かれてい

ます。


これについては、大きな疑問点が2つあり

ます。


ひとつは、偽の決算書を銀行はなぜ見抜け

なかったのかということです。


ただ、会社が税務署へも売上を水増しした

ものを申告していると、銀行も、それを真

正な決算書として受理せざるを得ません。


同社がどのような方法を使ったのかまでは

報道から分かりませんが、もし、税務署と

銀行へ、同一の、売上を水増しした決算書

を提出するという方法をとっていたとした

ら、銀行としては、「本物の決算書を提出

してください」とは言えなくなります。


ふたつめの疑問点は、仮に、前述のよう

に、同社が税務署と銀行に対して売上を水

増しした決算書を提出していたとしても、

それが、粉飾であることを銀行がなぜ見抜

けなかったのかということです。


売上の架空計上は、単に、売上高の数値を

増やせばよいという訳ではなく、それにと

もなって、仕入額や経費も増やさなければ

なりません。


もともと、存在しない売上を増やしたわけ

ですから、つじつま合わせも相当な苦労が

必要になり、よほど会計に詳しい人でなけ

れば、銀行から不自然な決算書と気づかれ

てしまうと思います。


また、報道によれば、「同社は26年以降

に東京都八王子市などに計5店を開設し、

店舗数を拡大していく過程で債務が広がっ

た」とあるように、同社は事業が急拡大し

ており、そのような会社に対しては、銀行

は、ちょっとしたことがきっかけで大幅な

赤字に転落する可能性が高いという前提で

慎重に審査すると思います。


それでも、同社は融資を得ることができた

わけですが、同社が故意に銀行をだまそう

としていたとはいえ、融資をした銀行支店

は、結果責任だけではなく、審査過程に重

大な見落としがあったという指摘は避けら

れないでしょう。


これは、新聞記事からだけの限定的な情報

を前提とする見解なので、断定的には述べ

ることはできないのですが、銀行がもう少

ししっかりと融資審査を行い、同社の粉飾

を見抜いていれば、28年の時点で同社は

融資を受けることができず、その時点で事

業は停止し、被害に遭う新成人が減ったの

ではないかと私は思っています。


今回の記事の結論は、着物販売店は、いっ

たん、粉飾決算によって融資を受けること

に成功していますが、それが成功すること

は一般的には考えにくく、例外と考えるべ

きだということです。


そして、その会社は、粉飾決算によって1

度は融資を受けることに成功しています

が、結果的には倒産に至り、経営者自身の

責任がさらに大きくなってしまっただけで

なく、より多くの人が損害を受けることに

なってしまいました。


事業がうまく行かなった場合、銀行などに

はなかなか言い出しにくいと思いますが、

早めに相談する方が、会社が挽回する確率

も高くなります。


そして、そういうときのためにも、業況の

良いときから銀行と信頼関係を築いておく

ことは大切です。

 

 

 

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権力依存症

先日、インターネットテレビのAbema

TVの「よるバズ!」という番組をみてい

たところ、大王製紙の前会長の井川意高さ

んがご出演されていました。


(ご参考→

https://youtu.be/nAbhQN7tJ6A


井川さんは、大王製紙の経営者時代に、カ

ジノなどで遊興するうちにギャンブル依存

症になり、そのかけ金を工面するために、

大王製紙の子会社から不正に約105億円

の融資を受けた、いわゆる大王製紙事件で

特別背任の罪に問われ、懲役4年の判決を

受けました。


もちろん、今回の記事の主旨は、ギャンブ

ル依存症についてではありません。


井川さんが番組の中で、「依存症というと

一般的にはギャンブルやアルコールに依存

している人に対してだけ言われているが、

それだけではなく、例えば、経営者が権力

依存症になって、ずっと権力の座から離れ

られないでいる人を何人も見ている」とお

話しされていたことについて、私も思い当

たることが多々あったので、それについて

述べたいと思います。


この、経営者の方がずっと退任しないこと

が問題になっているということは、私だけ

でなく、多くの方が認識しておられると思

います。


私も、かつては、経営者の方が、長期間に

わたって同じ会社を経営することが、結果

として好業績をもたらすこともあり、した

がって、必ずしも問題ではないと思ってい

たのですが、最近は、長期間の経営の弊害

が大きくなってきたと感じるようになり、

やはり、経営者の方は、一定期間、会社を

経営した場合は、その座を譲ることが必要

だと思っています。


(もちろん、言うまでもありませんが、座

を譲るとは、肩書を譲るだけでなく、譲っ

たあとは口を出したり、陰に陽に影響力を

行使しないようにすることです)


経営者が長期間経営者でいることの弊害は

たくさんありますが、その大きな理由のう

ちのひとつは後継者が育たないということ

です。


これは、一見すると、自己否定のようにな

るかもしれませんが、経営者の最大の役割

は、後継者を育てることだと思います。


なぜなら、会社の事業は半永久的に継続す

ることが前提であり、一方、人間は寿命が

限られているからです。


そうでなければ、経営者の寿命=会社の寿

命となり、残された役職員の方たちは大い

に困ることになるでしょう。


もうひとつの弊害の例としては、井川さん

自身がかつて経営していた会社で起きたよ

うなことが起こりやすくなるということで

す。


井川さんの場合は、大王製紙の子会社か

ら、融資契約書を作ったり、取締役会の決

議を経たりすることなく、融資を受けたこ

とです。


これは違法であるにもかかわらず、井川さ

んの違法行為を誰も指摘する人が社内に存

在しなくなる、すなわち経営者が裸の王さ

まになってしまうというのは、経営者が長

期間経営者の座にい続けたことが最大の要

因でしょう。


話を戻して、経営者の方の引き際というの

は、(医学的には正しくないかもしれない

ですが)権力依存症にかかっている可能性

のある人は、正しく判断できる可能性が低

いということです。


それではどうすればよいのかという具体例

は、ここで私が述べるほどのこともないと

思いますが、その中で最も大切な方法(か

つ、最も難しい方法でもありますが)は、

経営者の方自身が、常に自分を客観視でき

るように心がけるしかないというのが、こ

の記事の結論です。


経営者というのは、本当に、自分のことを

制御できる強い心を持つことが大切だとい

うことを、井川さんのお話をきいて感じま

した。

 

 

 

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