鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ABCとABM

公認会計士の林總さんのご著書、「『原価

計算』しているのに、なぜ『儲け』が出な

いのか?コストを見える化する『ABC』

入門」( https://amzn.to/2QATpi5 )を拝

読しました。


これは、伝統的な原価計算には限界があ

り、見えにくいコストを活動基準原価計算

(Activity Based Cos

ting ,ABC)で可視化すること

で、経営者が適切な判断をできるようにな

るということを、林さんのご経験を踏まえ

たフィクションの物語で説明しています。


(ABCについては、こちらもご参照くだ

さい→ https://goo.gl/XZ7Kne


見えにくいコストとは、林さんによれば、

製造間接費と、機械設備の稼働実態と述べ

ておられます。


そして、それらを可視化することで、正し

い原価率が分かり、適切な改善を進めるこ

とができるようになります。


その結果、同書にも同様の事例がかかれて

いますが、ABCを導入した林さんの顧問

先では、1億円のコスト削減に成功してい

るそうです。


このように、ABCの導入は、事業の改革

をするということでもありす。


すなわち、原価計算の方法を変えるだけで

製造原価が減るのではなく、ABCによっ

て隠れている無駄が明るみになり、それを

排除することによって、製造原価が減るの

です。


このような改善活動を、活動基準管理(A

ctivity Based Manag

ement,ABM)と言います。


とはいえ、この本の行間から伝わること

は、製造現場ではABMを実施することに

心理的な抵抗があるようです。


このことは、私がこれまで事業改善をお手

伝いしてきた経験からも感じます。


端的に言えば、生産部門は製品を作りさえ

すればよいという、部分最適を求めている

場合が多く、詳細な説明は割愛しますが、

製造現場の意識を、顧客によりそった価値

創造に向けなければならないということで

す。


さらに、このABMは、情報技術の進展に

よって、さらに精緻なものになりつつある

ようです。


したがって、ABMは、これからの会社に

とって、重要な役割を占めます。


ただ、そのためには、前述のように、事業

を改善しようという、組織的な意識の向上

も求められるということが、今回の記事の

結論です。


今回ご紹介した、林先生のご著書は、中級

者向けですが、ABCとABMの実例を分

かりやすく解説しておられますので、特に

製造業の事業改善をしたいという方にはお

薦めします。


ただ、ABCは、製造業だけが対象ではあ

りませんので、小売業やサービス業の方に

とっても、学びの多い本です。

 

 

 

 

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融資は借りられるときに借りる

先日、経営コンサルタントの小山昇さんの

ポッドキャスト番組を聴きました。


(ご参考→ https://goo.gl/K5nUMz


この番組で、小山さんの顧問先の鶴見製紙

株式会社の里和永一さんが、銀行からの融

資についてお話しておられました。


すなわち、里和さんは、融資をたくさん受

けると、自己資本比率が低くなってしまう

ので、融資はあまり増やさないようにしよ

うと考えていた。


そのため、取引銀行の支店長から3億円の

融資セールスを受けたときに、それを断っ

た。


しかし、それを小山さんに報告したとこ

ろ、融資を受けられる機会を逃してはいけ

ないと助言を受けた。


そこで、銀行の支店長に会いに行き、いっ

たん断った3億円の融資を受けることにし

た。


その際、支店長からは、融資審査のときに

会社の自己資本比率は見ておらず、月商の

3か月分以上の手もと資金を持っているか

どうかを見ていると言われた、というもの

です。


正直なところ、このお話は、少し誇張して

いるとは感じますが、大筋では正しいと思

います。


現在は低金利時代であり、融資を多めに借

りても金利負担は大きくないし、それより

も、手もとに多めの資金を置いておくこと

によって、思い切った事業展開を決断でき

るようになります。


ただし、どんな会社でも、多めに融資を受

けることができるわけではありません。


少なくとも、赤字にならないことが条件で

す。


すなわち、会社の財務目標は、損益の黒字

(=利益を出す)と収支の黒字(=現金を

切らさない)の、2つがあるということで

す。


多くの会社の場合、短期的な財務目標であ

る収支の黒字にばかり目が行ってしまい、

長期的な財務目標である損益の黒字には目

が行かないので、思ったように融資を受け

ることができないでいます。


すなわち、小山さんがお話しておられるよ

うな事業展開をするには、(1)損益の黒

字→(2)収支の黒字→(3)積極的な事

業展開、という順序を踏まなければならな

いということです。


この順番を飛び越えて、積極的な事業展開

を目指すことはできないということが、今

回の記事の結論です。

 

 

 

 

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銀行職員と何を話すか

私は、銀行から融資を受けることができる

ようにするには、毎月、銀行に前月の事業

の状況を報告にいくことをお薦めすると、

これまで述べて来ました。


しかし、これをなかなか実践できる中小企

業経営者の方は、少なく、その最大の理由

は、月次決算書を翌月上旬までに作成する

こと自体が難しいからのようです。


もうひとつの理由は、銀行に事業の報告に

行っても、何を話せばよいのかわからない

ということもあるようです。


その、毎月の訪問で、銀行職員に話すとよ

いと思われることには、いくつかあります

が、いずれにしても、難しいことを話す必

要はないと、私は考えています。


そのひとつの例として、経営者自身の分析

と、銀行職員の分析を比較してもらうとよ

いと思います。


経営者の方の中には、自分自身の分析と、

試算表から得られた分析結果に、くいちが

いがあることが、ままあります。


例えば、経営者の方が商品の粗利益の確保

に努めたと考えていても、実際には、サン

プルとして無償の商品も提供していたため

に、思ったほどの粗利益が得られていな

かったり、売上が増えているので、利益も

増えたと考えていたけれども、販売促進費

の伸びも多く、結果として営業利益は変わ

らなかったということもあります。


この程度の分析は、初歩的な財務分析なの

ですが、そうはいっても、月次試算表を

まったく見ない経営者の方は、もし、自分

の分析が誤っていたとすれば、ずっとそれ

に気づかないわけですから、銀行職員に確

認してもらうだけでも、その意義は大きい

と言えます。


ちなみに、本題とはそれますが、当事務所

のメール相談サービスを受けている会社の

経営者の方のうち、毎月、月次試算表の分

析を依頼して来る方が何人かいらっしゃい

ます。


そのような方は、自社の状況を、単なる財

務分析だけではなく、融資審査の目線では

どう評価するかということを確認してもら

いたいということのようです。


(ご参考→ https://goo.gl/JBDbCD


もし、直接、銀行に自社の状況を見てもら

うことが不安という方は、このサービスの

ご利用をお薦めします。


話を戻して、冒頭でも少し触れましたが、

毎月銀行に行くということは、面倒なこと

と感じる方も多いと思います。


しかし、自社の財務分析や改善点を、無料

で銀行職員の方に教えてもらえ、さらに、

円滑に融資を受けられるようにするための

対策にもなると考えれば、とても効果のあ

ることと、私は考えます。

 

 

 

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経済統計を読む

中小企業経営者の方の中には、経済統計を

定期的に見る習慣のある方も少なくないと

思いますが、まだ、見ていない方もいらっ

しゃると思いますので、今回は、経済統計

について述べたいと思います。


日本で発表されている経済統計はたくさん

ありますが、私は、全国中小企業団体中央

会が発表している中小企業月次景況調査を

見ることをお薦めします。


(ご参考→ https://goo.gl/mKzMMT


これは、毎月20日ころに、前月の調査結

果が公表されます。


この調査をお薦めする理由は、中小企業に

関する調査の代表的なものだからです。


日銀の短観も中小企業を調査対象にしてい

ますが、中小企業月次景況調査は、中小企

業を専門に調査しているので、中小企業の

経営者の方にとっては、より、身近に感じ

ることができると思います。


では、具体的に調査結果をどう見ればよい

のかというと、自社の状況と調査結果を比

較することで、自社のポジションを客観的

に知ることから始めるとよいと思います。


こうすることで、自社の強みや弱みを、よ

り、詳しく知ることができるようになるで

しょう。


さらに細かく分析すると、事業の改善のヒ

ントもつかめるようになると思いますが、

まず、定期的に自社のポジションを確認す

ることから始め、徐々に、詳細な情報の活

用を行うようにするとよいと思います。


なお、地域金融機関も、地元経済の状況の

統計情報を公表しています。


例として、山梨県地方銀行の統計情報を

ご紹介します。→ https://goo.gl/WnCUXZ


地域金融機関の統計情報は、地元経済の情

報を細かく示しているので、中小企業は、

自社の事業展開のための、より有益な情報

を得られると思います。

 

 

 

 

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アイディアを募ることは無責任?

よく、経営者の方が、従業員の方に対し、

「新しい収益機会や事業改善につながりそ

うな、よいアイディアがあったら出して欲

しい」という要望を出すことがあります。


これは、一見すると、ボトムアップでの事

業改善の手法であり、評価できる手法と思

われがちですが、私は、安易に従業員の方

にアイディアを募ることは避けるべきと考

えています。


なぜなら、従業員の方にアイディアを求め

ても、経営者の方が満足するものが得られ

る可能性は低いからです。


その原因は、従業員の方に能力がないとい

うことではなく、従業員の方は経営者の方

のポジションで事業を見る機会を持ってい

ないからです。


言い換えれば、従業員の方は自分の担当の

範囲でしか事業を見ることしかできないの

で、仮に、何かアイディアを出したとして

も、それは、従業員の立場でのアイディア

であって、経営者の立場でのアイディアで

あることは少ないということです。


もちろん、従業員の方が、経営者の方に役

立つであろうと感じた情報や気づきを伝え

たいと思うことがあると思います。


そういった、従業員の方の配慮には耳を向

けるべきですが、しかし、それをそのまま

戦術に採り入れたり、参考にして新たな戦

術をつくったりするときは、いったん、経

営者自身が経営者の観点で齟齬がないかを

確認し、経営者の判断として実践すべきで

す。


ここまでは教科書的なことを書いたのです

が、これは、私の中小企業をみてきた経験

から感じることとして、従業員の方にアイ

ディアを出して欲しいと要望を出す経営者

の方は、実は、経営者自身が、ほとんど事

業遂行に時間をとられ、事業改善をどうし

たらよいかという方法を考える時間がとれ

なくて思案に暮れ、従業員の方に一緒に事

業改善の方法を考えて欲しいという意味で

要望を出していると感じます。


ただし、冒頭でも触れましたが、従業員の

意見に耳を傾けることは必要ですが、経営

者には、会社全体を俯瞰して戦術を採用す

るという、経営者にしかできない役割があ

ります。


ここで私がこだわっている「会社全体を俯

瞰する」というのは、いわゆる会社の組織

や事業を俯瞰するということではありませ

ん。


内部環境である自社の事業や従業員の特色

だけでなく、顧客、仕入先、業界動向、銀

行などの外部環境も含めて判断する必要が

あるということです。


これを言い換えれば、外部環境・内部環境

の全体を見て意思決定を行うという、経営

者本来の役割に軸足を置いていないと、安

易に従業員の方に頼ってしまうことになる

ということが、今回の記事の結論です。


繰り返しになりますが、経営者の方が従業

員の方と話し合うことはよいことではあり

ますが、それだけで会社の方針を決めてし

まうと、偏ったものになったり、効果が低

いものになったりしてしまう可能性が高く

なります。

 

 

 

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事業改善の当事者

先日、日産のゴーン前会長が金融商品取引

法違反で逮捕された問題に関し、同社を監

査した監査法人の責任が問われるのではな

いかという旨のを読みました。

 

(ご参考→ https://goo.gl/mvcJ9M


しかし、私は、以下のような理由から、同

社で強大な権限を持っていたゴーン氏の違

法行為を事前に見抜くことを、監査法人

求めることは酷なのではないかと考えてい

ます。


その理由のひとつは、監査は、会社のすべ

ての取引を検査するのではなく、プロセス

に問題がないかを見ることが役割であると

いうことです。


これは、もれが起きる可能性もあるとも言

えますが、もれが起きないようにするには

全量を確認することになり、物理的に困難

です。


ふたつめは、監査法人公認会計士や職員

は、被監査会社に常駐はしていないという

ことです。


監査法人公認会計士や職員は、定期的に

被監査会社を訪問はするものの、その頻度

では、これもトップの違法行為を見抜くこ

とは困難でしょう。


確かに、監査法人が会社の違法行為を見抜

くことができればそれに越したことはあり

ませんが、前述のような前提であれば、ど

んなに優秀な監査法人でも限界があると言

えるでしょう。


ところで、立場は異なるのですが、私も、

コンサルティングの顧問先から、従業員と

同じくらいの会社に関する状況を把握して

おいて欲しいという要望を受けることがあ

ります。


私も、なるべく、そのような要請に応じる

努力はしますが、それには、前述の監査法

人と被監査会社の関係と同様に、限界があ

ります。


コンサルタントは、顧問先の会社に常駐し

ないし、また、すべての取引を見ているわ

けではありません。


すなわち、事業を改善しようとする日常的

な活動は、コンサルタントのような外部専

門家では行うことはできないので、経営者

と従業員が自ら行わなければならないこと

が前提ということです。


これは、当たり前のことを述べていると感

じるかもしれませんが、経営者の方の中に

は、「コンサルタントコンサルティング

を依頼したのだから、事業の改善はコンサ

ルタントに任せよう」と考えてしまう方も

少なくありません。


ここは意見の分かれるところなのですが、

私は、コンサルタントは顧問先の事業改善

の「当事者」になってはならないと考えて

います。


これを言い換えれば、コンサルタントに当

事者になって欲しいと考えている経営者の

方は、自分で解決できそうにない課題がで

きたら、コンサルタントに代わって解決し

てもらおうという意図があるのでしょう。


確かに、事業の効率化のためにアウトソー

スできる部分はアウトソースすることは必

要ですが、事業の改善活動は外部に依頼し

てはならないし、依頼できるものでもない

ということが、今回の記事の結論です。


ちなみに、日産の事件の件は、経営トップ

に遵法の意識がなければ、その責任の一端

を外部専門家に求めることは筋違いである

と思います。


また、これは現段階では断言できないもの

の、経営トップの不法行為について内部告

発があったということは、日産の役職員に

は、自らが会社をよくしようと考えている

志の高い方がいるということの表れだと思

います。

 

 

 

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木こりとサトリ

先日、岡山県倉敷市にある真言宗の寺院、

高蔵寺の住職の天野高雄さんのメールマガ

ジンを読みました。


(ご参考→ https://goo.gl/aZgqBW


「仏教説話に『木こりとサトリ』というも

のがあります。


サトリとは架空の獣のことで、誰もが獲物

として狙っている希少な珍獣です。


ある日、木こりが、木の伐採のために山中

に入っていったところ、偶然、サトリと遭

遇します。


そこで、木こりがサトリを捕獲しようと、

持っていた斧を構えると、サトリは『その

斧で俺を殺す気だな』とつぶやきました。


構わず木こりが動くと、サトリは、『ん、

ちょっと不安になってるな』などと、木こ

りの心中をすべて読み解いてしまいます。


何をやろうとしても的中しているので、木

こりは、とうとうあきらめて、サトリに構

わず、当初の目的の、斧で木を倒すことに

専念します。


すると、振り下ろした斧の刃が外れて、そ

ばにいたサトリに当たり、ついには仕留め

ることが出来たのです」


この説話は、ビジネスにもそっくりあては

まると思います。


「木こり→経営者」、「サトリ→名声・評

価」と置き換えれば、よく分かると思いま

す。


すなわち、経営者が名声を求めて活動しよ

うとすると、周りの人たちにその下心が読

まれてしまい、かえって名声を得られなく

なります。


でも、邪心を持たずに、真摯に本来の事業

運営に専念すると、いつしか名声が得られ

るということだと思います。


でも、私自身も含め、人は、どうしても見

返りを求めたくなる習性があるようです。


このようなことは、私が述べるような資格

はありませんが、心を鍛えることによって

純粋に経営に没頭できるようになり、その

ような人が経営する会社に対しては、多く

の協力者が現れるようになり、やがて、事

業が成功し、その経営者も評価されるよう

になるのでしょう。


ところで、ここから述べることは、やや、

こじつけ気味な面もありますが、私は、経

営者はプロセスにこだわるべきと、機会が

あるごとに述べてきました。


できるだけ近道をして、結果だけを得よう

と考える経営者の心の中には、早く名声を

手にしたいという気持ちも、少なからずあ

るのだと思います。


でも、きちんとしたプロセスを得ないで、

仮に事業が成功したとしても、私は、それ

はくじを引いて当たったようなものとしか

評価されないと思います。


真に経営者が評価されるためには、きちん

とした経営者の努力の跡(=プロセス、ま

たは、プロセスの確立)が欠かせないと、

私は考えています。

 

 

 

 

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