鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行は融資を受けにくい相手か

「銀行はなかなか融資をしてくれない。

でも、最近はクラウドファンディングや

フィンテックという新たな資金調達方法が

登場してきた。したがって、もう銀行に

頼る必要はなくなっていくだろう」という

主旨の記事を見かけるようになりました。


私は、新しい手法による資金調達が活発に

なることは望ましいと考えていますが、

新しい手法による資金調達が、銀行の

中小企業に対する融資に代わるように

なるまでには、まだまだ時間がかかると

思っています。


その理由のひとつめは、現時点では、

「相対的に」銀行からの融資を受ける

ことの方が、負担が少ないからです。


「いやいや。銀行から融資を受けるには

相当の手間がかかる」と考えている

経営者の方は少なくないと思いますが、

クラウドファンディングは、銀行からの

融資よりも、大きな手間がかかります。


もちろん、手間がかかる分だけ、銀行

からの融資よりも有利な面もありますが、

手間をかけたくないという観点からは、

相対的に銀行の方が負担が少ないと

言えます。


ふたつめは、資金の提供者がどれくらい

事業へのリスクを受け入れてくれるか

ということです。


クラウドファンディングで寄付型や

購入型という方法では別ですが、金融

型の場合、資金の提供者はアマチュア

投資家であり、銀行の融資のように、

専門家の観点からリスク判断を行う

ことはしてもらえないと考えられます。


これは分かりにくい説明ですので、

別の言い方をすれば、銀行は使命を

もって融資を行おうとしますが、

「投資家」の立場の人は、やはり、

自分の損得を考える部分が大きいと

いうことです。


これに対して「銀行だって、融資には

及び腰ではないか」と思う人も多いと

思いますが、それでも、銀行は、専門

的に融資を行っており、融資先を注視

できる立場にあること、そして、もし

回収が難しくなりそう出れば、自らが

持つノウハウで、融資を回収できる

可能性が高いことから、その分、

融資に対してリスクを取りやすいと

言えます。


一方、個人投資家は、もし、投資先が

倒産してしまうと、ほとんど手を打つ

ことができないため、そういった面

からは、銀行の方が資金提供には、まだ

積極的になってもらえると言えます。


ここまで述べた内容からは、私は、

新しい資金調達に否定的になっている

印象を持たれてしまうかもしれませんが、

そうではなく、むしろ、新しい資金調達

方法で多くの会社が資金調達を行って

欲しいと思っています。


多くの会社が資金調達のノウハウを身に

付け、また、フィンテックが進展すれば

資金を調達する側の事務負担が減少して

行くかもしれません。


しかし、資金調達の方法が容易になると

しても、経営者が成り行きで経営に臨んで

いる会社は、新しい資金調達方法を利用

しようとしても、その目的を達成する

ことはできないでしょう。


言うまでもありませんが、新しい資金

調達の方法は、会社経営を容易にする

ものでもなく、また、資金の提供を受け

ようとする会社の説明責任を無くすもの

でもありません。

 

 

 

 

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