鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

補助金は万能ではない

最近は、景気浮揚策として、ものづくり

補助金や、小規模企業持続化補助金など、

たくさんの補助金が登場しており、

私にも補助金に関するお問い合わせが

多く寄せられています。


補助金は、融資と違って、受け取った

お金は返さなくてもよいということが

最大の魅力です。


私も、これまでに、何件もの補助金

採択を受けた方のお手伝いをしてきて、

とても喜ばれてきました。


しかしながら、補助金を受け取る

ことが必ずしも得策ではないという

例もありますので、今回は、補助金

関する注意点について述べたいと

思います。

 

(1)タイミングが限定的


補助金は、募集期間が明確でなく、

かつ、補助対象期間も採択後、

約1か年となっており、申し込む側に

ほとんど選択の余地がありません。


創業しようとする事業に補助金

利用しようとすれば、前もって申請の

準備をしておき、募集が始まってから

直ちに申請しなければなりません。


裏を返せば、募集期間が限定的に

なっていることは、利用希望者を

限定してしまうことになり、これに

ついては、私は、補助金の最大の

短所であると考えています。

 

(2)補助の目的が限定的


補助をするという性格から、ある程度は

弱者対策や雇用創出などの国の政策に

合致する事業に対して補助を行うという

ことは当然です。


そして、自社の行おうとしている事業と

補助金の対象としようとする事業が一致

していればよいのですが、補助金を得る

ために、無理に補助金の対象となる

ような事業を始めようとする方がも

見ることがあります。


このような場合、本来は、自社の事業を

遂行することよりも、補助金をもらう

ことが目的となってしまうという、本末

転倒の状態となってしまい、補助金

採択されても、事業の実施段階になって

取り下げをしたり、事業を実際に開始

してみても、補助対象の事業を着手しな

かったりするという例も見られます。


したがって、自分が始めたい事業と、

補助金の目的が一致しているかという

ことを、前もって見極めてから申し込む

ことが大切です。

 

(3)補助金は後払いである


補助金は事業資金の調達の負担を減らす

ことにはなりますが、いったん、自社で

全額を支払い、補助対象期間の終了後に

支出を報告し、それが補助対象の支出と

合致しているかを補助金事務局が確認

してから、補助金を受け取ることが

できます。


したがって、創業融資のように、自社が

事業を始めようとするときの資金不足を

埋め合わせることには利用できません。


また、補助金の対象は限定されており、

例えば、補助対象の事業に利用する

ためであっても、用途に汎用性のある

パソコンは補助対象にはなりません。


このような細かい規定があるために、

補助対象になると思って支出した

費用が、補助金事務局には、補助

対象の支出として認めてもらえない

ということも希にあります。


また、これもレアケースですが、

補助対象事業を実行してみて、うまく

軌道に乗せられなかったとき、事業

そのものを実行できていないと

補助金事務局が判断したときは、

補助金をまったく得られなくなって

しまうということもありますので、

注意が必要です。

 

(4)手続きが煩雑である


補助金の申請をするためにもかなりの

労力が必要ですが、補助対象事業が

採択された後も、補助金をもらうための

資料を揃えることは、慣れない会社に

とっては負担に感じると思います。


例えば、補助金の対象の設備を調達する

際には、相見積を取り、調達前の現場の

写真、設置中の写真、設置後の写真を

撮って置くという手間が必要です。


補助対象事業に関わる従業員の給与に

ついても、雇用契約書のコピーや、

勤務状況が分かる資料、給与の支払が

分かる資料をコピーして置かなければ

なりません。


さらに、補助金を受け取っても、その後、

5か年は、事業の状況を報告しなければ

なりません。

 

(5)融資もあわせてアレンジする

必要がある


特にものづくり補助金に当てはまる

ことですが、補助金の金額が大きく

なると、それにともなって、補助対象

事業を遂行するには、多額の融資が

必要になることがあります。


しかし、補助金の審査は、補助対象と

なる事業が補助金の目的と合致して

いるかどうかという視点で審査される

ため、それは、銀行から見て、融資を

したくなる事業という視点で審査された

訳ではありません。


したがって、補助金が採択されたから

といって、必ずしもその事業に銀行が

融資をしたくなるということにはなり

ません。


多くの場合は、銀行は、補助金が採択

された会社に積極的に融資を行うと

考えられますが、補助金が採択され

たのに、銀行から融資を得られないと

いうことになると、補助金の申請の

ための労力が無駄になってしまうので、

申請の段階から銀行にも相談をしながら

申請を行う必要があります。

 


ここまで、補助金についてネガティブな

要素をあげましたが、私は、補助金

対して決して否定的ではありません。


補助金を得るためには、前述のような

負担があるとしても、補助金相当額の

利益を得るための労力の方が大きいと

私は考えています。


自社の事業が補助金の対象となるという

見込みがあれば、積極的に利用すると

よいと私は考えています。


ただし、実際に申請してみてから、

「こんなはずではなかった」という

ことにならないよう、前もって、

補助金の特徴を十分に理解しておく

ことが大切です。

 

 

 

 

 

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