鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行は融資先の何を審査するのか

融資を申し込んだ中小企業経営者の方

から、「銀行は自社の事業のことを

ぜんぜんわかってくれない」という

不満をよくきくことがあります。


実は、これは、ある意味、当然です。


なぜなら、銀行の融資審査は、事業は

あまり見ていないともいえるからです。


見ているのは、会社の事業が継続するか

どうかを、財務分析の視点からみている

のです。


ここで、「だからこそ、銀行は定量的な

分析に偏ることなく、定性的な分析も

行って融資審査を行うべきだ」という

反論をされる方もいるでしょう。


この指摘も正しくその通りです。


ただし、これは以前の記事にも書いた

ことですが、銀行の融資審査は、

過去の分析である定量的な分析の

比重が高く、未来の分析である

定性的な分析の比重は、不確定な

要素が多いので、あまり高くない

ということにも注意が必要です。


ところで、銀行は、定性的な分析に

関心がないのかというと、実はそう

でもありません。


銀行の融資審査は、融資を断るために

審査をしているのではなく、他の

銀行に先駆けて伸びる会社に融資を

することを目指しています。


そうすることが、融資量を伸ばし、

収益を高めるからです。


むしろ、教科書的に財務状況が良好で、

安心して融資をできる会社は、

他の銀行とも競合しているので、

あまり収益を得られません。


ですから、やはり、定性的な分析は

重要視しており、財務上はちょっと

危ないと感じるかもしれないが、

定性的な分析から、将来は好転する

要因がないかということを探す

工夫はしています。


例えば、日本政策金融公庫のOBで、

中小企業診断士の上野光夫先生は、

同金庫勤務時代は、プライベートで

融資先の経営者の方に会ってお話を

きいていたそうです。


ご退職後、経営者の方から聞いた

お話をまとめ、「3万人の社長に

学んだしぶとい人の行動法則」

( http://amzn.to/2tmIAkW )と

いう本を書いています。


同書では、しぶとい人(=経営が

上手な人)の共通点が書かれて

いますが、これは、上野先生が、

融資審査に定性的な要素を採り入れ

ようとしてまとめた分析結果が

書かれているわけです。


私は上野先生のご努力には頭が

下がる思いがしますし、銀行に

勤務している人は、上野先生を

見習って欲しいと思っています。


しかしながら、いま、銀行は

人材が不足し、1人あたりの

担当会社数は増加傾向にあります。


そのため、上野先生のようなことを

する方は、あまり現れないと思って

います。


そこで、融資を安定的に受けたい

会社は、定期的に銀行を訪問し、

自社の定性的な情報を伝えることが

必要になります。


しかし、自ら定性的な情報を伝える

ということは難しいと考える方も

多いと思います。


実は、これは、あまり懸念する必要は

ないと思っています。


経営者の方が話す会社の情報は、

銀行から見れば、定性的な情報が多く

含まれていると感じてもらえます。


ですから、毎月、月次試算表を銀行に

持参して、自社の状況をお話しする

だけでも、冒頭のような「銀行は

自社の事業のことをぜんぜんわかって

くれない」という不満はなくなると

私は考えています。

 

 

 

 

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