鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

社外コミュニケーション

私が、銀行勤務時代、および、

コンサルタントとして活動している

ときを通して、「銀行は自社のことを

よく理解してくれない」という不満を

持つ中小企業経営者の方と多くお会い

してきました。


結論から述べると、そのような

経営者の方たちは、銀行職員に対して、

自社の従業員の人たちと同じ程度に

自社の事情を知っていて欲しいという

要望を持っているようです。


銀行職員も、なるべく経営者の方の

要望に応じることができるように

努めてはいますが、常に会社にいる

わけではない人が、その会社の

従業員と同じ知識を持つことは

現実的には不可能です。


このことについては、理解され易い

ことだと思いますが、経営者の方が

銀行に対して自社の状況を説明

しようとすると、やはり「銀行は

もっと自社のことを知っていて

くれれば、説明が楽になるのに」と

感じてしまうのでしょう。


ただ、このような認識のギャップは、

経営者と従業員の間でも起きること

です。


経営者としては負担を感じるかも

しれませんが、自社のことは、

努めて詳しく説明しなければ、

聞き手はきちんと理解してもらえ

ないという前提で話をするしか

ないでしょう。


もうひとつは、経営者と銀行では、

視点が「真逆」ということです。


「真逆」というのは、当然なの

ですが、自社の事業はうまくいくと

考えて事業運営に臨んでいます。


ところが、銀行の立場としては、

融資先の事業について、「うまく

行くと社長が説明した」という

ことを融資稟議書に書いただけでは

承認はもらえません。


なぜうまく行くのかという客観的な

説明が必要です。


これについては、数字に落とし

込んでまで検証している会社は

少ないようです。


経営者(だけでなく、一般の人も

そのような傾向がありますが)は

頭の中でうまく行くと納得して

しまえば、それだけで意思決定を

しがちです。


そのため、その根拠を銀行から

尋ねられると、「なぜ、銀行は

自社のことを理解してくれないの

だろう」と不満を感じてしまうの

かもしれません。


これについても、前述の通り、

コミュニケーションは労力の

かかるものであるという前提で

臨むしかないと私は考えています。


しかも、それは、大きな組織の

上に立つ人ほど感じるものである

ということも認識することが肝要

でしょう。


さらに付け加えたいこととして、

自分の考え方を検証することも

大切だということです。


検証とは、具体的には、顧問

税理士、外部の専門家、取引

銀行などに評価してもらうと

いうことです。


いわゆるオーナー会社では、

会社の経営方針は社長一人で

決めていることでしょう。


だからこそ、その方針に間違いは

ないかということを検証する

必要性は高いということです。


しかし、これは、自社の状況を

銀行に説明すること自体が負担と

感じている人が、さらに検証まで

するということは、実際には

少数でしょう。


むしろ、他人に口出しされたく

ないから会社を起こしたのに、

わざわざ口出しをしてもらう

ようなことはしたくないと

考える方も多いでしょう。


そして、前述のように「自社の

事業はうまく行く」と考えて

しまっていると、もし、自分の

事業構想に落とし穴があった

ときは、不幸な結果に至って

しまいます。


もちろん、経営者の方が単独で

考えた方針どおりに事業を進めた

結果、事業が成功するという

ことも多いでしょう。


ただ、事業規模が大きくなるに

つれ、自社の方針の精度は高く

ならなければなりません。


経営者はそこまでやらなければ

ならないのかと考える方も多いと

思いますが、もし、そこまで

できるようになれば、冒頭の

「銀行は自社のことをよく理解

してくれない」という不満が

出てくる機会はなくなるでしょう。


結論としては、銀行に対して自社の

ことを理解してもらうために、

社外に向けたコミュニケーションを

円滑に行うことは、面倒なことでは

なく、それこそが経営者の本来の役割

であると認識しなければならないと

いうことです。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20170711135103j:plain