鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

バカ正直な営業

先日、オーダーメイドスーツを販売

している株式会社museの代表

取締役を務める、勝友美さんのご著書

「営業は『バカ正直』になればすべて

うまくいく」( http://amzn.to/2w57iXB )

を拝読しました。


この本で最も心に残ったことばは、

次の部分です。


「営業マンなら、言いたくないことを

言い、したくないことをする。


そうやって、自分にウソをついてでも、

相手に気に入られることが必要だと

思っている人は結構多いんじゃないかと

思います。


けれど、私はそうは思いません。


実際、私が今までお客さまと会っている

時にしてきたことは、正直に話し、行動

すること。


面倒な決め事は一切ナシです。


もしも、これだけで営業がうまくいくと

したら、営業をするのがずっとラクに

なると思いませんか?」(同書84

ページ)


「どんなに大切なお客さまが相手でも、

自分にウソをついてまで行動を変え

ない。


これが私のモットー


営業マンだから、接待をするのは当然。


この考えにも疑問があります。


何かをしてもらう代わりに、何かを

するという考え方がまず、好きじゃ

ない。


スーツを買ってもらう代わりに、

お客さまのいうことならなんでも

聞く。


それでは単なる御用聞きです」(同書

86ページ)


引用した内容は、本のタイトル通りの

内容であり、勝さんの最も伝えたい

部分でもあるでしょう。


そして、このことは、すべての方が、

必ずしも受け入れることができるとは

限らない内容でもあると思います。


勝さん自身も、「私の考えと合わない

人は自然と離れていきます」と、本で

述べておられるように、万能の考え方

ではありません。


ところで、私がお伝えしたいことは、

「勝さんのように正直な営業をしま

しょう」ということではありません。


ただし、正直であることは大切だと

思っています。


その理由のひとつは、「『あ、今日

あの人と会わなくてはいけない』と

憂鬱になるような商談が続くことは、

限りなくゼロに近いです。


とても健やかな気持ちで、大好きな

お客さまのスーツを作らせていただ

いています」と勝さんが本で述べて

おられるように、ストレスがなく

なるということです。


もうひとつの理由は、課題を先送りに

することにならないということです。


やや意味が異なりますが「噓つきは

泥棒の始まり」ということわざが

あるように、正直でないことが積み

重なると、後から解決しなければ

ならないことが増えてしまいます。


「嘘も方便」ということわざもある

ものの、方便が多すぎると、結果と

して、事業をよい方向に進めようと

するときの足かせになってしまい

ます。


私はときどき、業績があまり芳しく

ない会社から、融資の申請のご支援を

依頼されるのですが、そのような

ときは、「これからこのように事業を

改善していきます」という改善策を

添えることで、多くの場合は融資の

承認を得ることができます。


しかし、すべてではないものの、

融資の承認を得られても、そこで安心

してしまい、銀行に約束した事業の

改善を怠ってしまう会社も少なく

ありません。


そのような会社は、「方便」を重ねて

いるだけであり、早晩、事業は行き詰る

ことでしょう。


そして、そのような会社の経営者からは

「建前ばかりではやっていけない」と

いうこをよく耳にします。


かくいう私も、100%正直に生きて

いるかというと、弱い部分もあるので、

嘘をつくことはあります。


ただ、ここで伝えたいことは、正直さを

道徳や倫理で論じるのではなく、事業を

発展させていく観点から考えれば、

近道になるということです。


これを言いかえれば、不正直さは課題の

先送りであるということです。


最後に、私の個人的な経験ですが、私が

かつて勤務していた銀行で、不良債権

多さなどから、多くの預金者が不安を

抱き、短期間に多くの預金の引き出しが

行われたとき、「建前通りに事業をして

いる会社でないと、顧客からは支持され

ない」ということを痛感したということを

付け加えさせていただきたいと思います。

 

 

 

 

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