鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

売上計上基準

私は、これまで、中小企業経営者の方は、

月次決算を行いましょうと何度も薦めて

いますが、それが実行できない原因の

ひとつに、「売上」とは何かが不明確に

なっていることが挙げられると思って

います。


このように書くと、「売上は、商品を

販売することではないのか」と考える

方が多いと思いますが、実は、会計的

には、なかなかやっかいです。


会計的には、所有権が移転したときに

販売したということになります。


所有権の移転は、民法第176条では、

当事者の意思表示で効力が生じますが、

実際には、そのように行かない場合も

あります。


例えば、自動車販売店で自動車を購入する

場合、お店で代金を支払ってから、後日、

自宅に自動車を届けてもらうことになると

思います。


所有権が移転したという点に着眼すれば

販売店が代金を受け取った時点で売上を

計上するということになります。


しかし、顧客側から見れば、自動車が

自宅に届くまでは、自動車を購入したと

いう認識はしないでしょう。


そこで、販売店が自動車を顧客に届けた

時点で売上を計上するという考え方も

できると思います。


これはひとつの例であり、そして、どの

考え方が正しいという訳ではありません。


この、何をもって売上を計上すべきかと

いうことは、会計上もいくつかの基準が

あります。


ちなみに、税法上は、「棚卸資産の販売

による収益の額は、その引渡しがあった

日の属する事業年度の益金の額に算入

する」(法人税法基本通達2-1-1)と

あり、これを引渡基準といいます。


すなわち、当事者が合意しただけでは

販売したとは認識せず、商品が引き渡さ

れたときを販売したと認識するという

ことです。


そして、商品引き渡しのタイミングに

ついては、「出荷した日、相手方が

検収した日、相手方において使用収益が

できることとなった日、検針等により

販売数量を確認した日等当該棚卸資産

種類及び性質、その販売に係る契約の

内容等に応じその引渡しの日として

合理的であると認められる日のうち

法人が継続してその収益計上を行う

こととしている日」(同2-1-2)と規定

しています。


これらは、それぞれ出荷基準、検収基準、

使用収益基準、検針基準などといい、

それぞれの会社の事業に合わせて決める

ことが許されていますが、ただし、その

基準は継続して使用することが前提と

なっています。


ここまで、会計上、税務上の考え方を

述べてきましたが、本旨は会計上の

考え方を理解して欲しいということ

ではありません。


売上の基準は簡単なようで、実は、複雑

だということです。


そこで、月次決算を行うというときに

(もちろん、このことは本決算を行う時も

該当します)、何をもって売上とするのか

ということを明確にする必要があります。


しかし、自社の事業は、出荷基準、検収

基準、使用収益基準などの、どの基準を

あてはめればよいのかということを、

決めなければならないということその

ものが、月次決算を行うときの負担と

なっているのではないかと思います。


今回は、会計上の売上の認識について

述べましたが、事業を管理するため

には、いろいろな基準を設定するという

負担は避けることはできないという

ことです。


この負担は、大きな手間と考える経営者の

方もいらっしゃると思いますが、事業の

管理をすることが経営者の基本的な役割

であり、このことを避けることはできなと

私は考えています。

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20170910230305j:plain