鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

利息は返すものではなく払うもの

中小企業診断士の安田順さんのご著書、

「社長のための『中小企業の決算書』読み

方・活かし方」( http://amzn.to/2kaErju )

を拝読しました。


内容としては、銀行職員は、なかなか本音

を融資先の経営者に話さない。


また、融資審査にあたって銀行職員は、一

般的な財務分析を行っていない。


そのため、融資を受けている会社は、銀行

の不意な方針転換に翻弄されやすい。


そこで、銀行の考え方を理解してそれに備

えておくことが大切だということです。


そして、この本には、私が銀行職員時代に

感じたことがたくさん盛り込まれていて、

共感することも多く、お薦めしたい書籍で

す。


今回は、そのなかから長期借入に関する考

え方について取り上げたいと思います。


安田さんは、銀行から融資を受けている会

社の経営者に対して、「銀行に(毎月)い

くら返済していますか?」と問うと、「元

金と利息を合わせて●●●円くらいです」

という答えが返ってくることが少なくない

と述べておられます。


これについて、安田さんは、前述のような

言い回しが決して誤っているわけではない

ものの、きちんと「『返済元金』は●●●

円、『支払利息』は●●●円」と回答すべ

きだと述べておられます。


すなわち、返済するものは融資元金であり、

支払利息は返済するものではなく支払うも

のであるということをきちんと認識するべ

きということです。


これは、私の経験ですが、かつて事業再生

をするために、銀行から債務免除、すなわ

ち、借入金の棒引きを受けた会社の経営者

から、「今回、借入金の返済の一部を免除

したと言われても、うちの会社はこれまで

借入した額の倍も支払ってきている」と、

ぽつりと言われたことがあります。


現在は、金利はかなり低いので、その水準

から考えるとイメージしにくいかもしれま

せんが、かつて、借入金の金利が8%程度

の時代は、長期借入金を返済すると、返済

が終わるまで、支払利息額は相当な額にな

りました。


前述の経営者の言った、倍というのは誇張

しすぎですが、例えば、1億円の融資を受

けて、金利が8%とすると、これを10か

年で返済するときの金利総額は約4千万円

になります。


もちろん、元金は返済する(貸借対称表の

負債の部が減少する)もので、利息は支払

う(損益計算書の支払利息・割引料が増加

する)ものということは、私が説明するま

でもなく、多くの方は理解すると思います。


でも、経営者の方の中には、支払利息は経

費とは考えていないという方もいるようで

す。


前述の経営者の方は、「債務免除といって

も、それに相当する程度の利息は銀行は受

けとっているのだから、銀行は損をしてい

ないはずだ」と主張したいのでしょう。


もちろん、銀行は慈善事業ではないので、

融資利息は正当なもうけなのですが、債務

免除を受けた会社の経営者としては、感情

的に、自分たちは銀行に迷惑をかけていな

いと思いたかったのだと思います。


話しを戻して、安田さんが述べたいことの

趣旨は、長期借入金の返済元金は相当額の

利益を得ることを目標として認識している

かどうかが、リスケジュール(融資の返済

条件の変更、実質的には、融資元金の返済

猶予)を受けなければならなくなるかどう

かの分かれ目になっているということです。


すなわち、長期借入金の返済元金と支払利

息相当額以上の利益(この利益には、減価

償却費を加算した金額を指します)を目標

として事業に臨んでいる会社は、確実に融

資額を減らすことができます。


一方、資金繰りが繰しくなったら、新たに

借入をして、それで以前に借りた融資を返

済すればよいと考えている経営者の経営す

る会社は、借金が膨らんで、いつかリスケ

ジュールをしてもらわなければならなくな

ってしまうということです。


「利益」と「現金」、「支払利息」と「返

済元本」は違うということを分かっている

方は多いと思いますが、その一方で、前述

のような誤った判断をしてしまう人は意外

と多いということです。


これは、私への戒めでもありますが、自分

はこのことは分かっていると思いつつ、実

は間違ったことをしてしまっていることも

あるので、慢心には注意すべきということ

を感じました。

 

 

 

 

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