鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

君が取り組んでいる問題が赤なだけだ

先日、米国のコンサルティング会社のアー

ビンジャー・インスティテュートの著書

「自分の小さな『箱』から脱出する方法

ビジネス篇管理しない会社がうまくいく

ワケ」( http://amzn.to/2xt8aWv )を読み

ました。


原書のタイトルは「The Outward Mindset :

Seeing Byond Ourselves」(外向き志向:

我々自身の外側を見ること)であり、本の

内容は、このタイトルの方がイメージしや

すいと思われます。


ここでは、この本に書かれているいくつか

の逸話の中から、特に注目すべきものと思

われた3つの逸話について紹介したいと思

います。


ひとつめは、アービンジャーの職員である

ジョーのことについて書かれています。


ジョーには、息子と娘がおり、努めて子ど

もたちとバスケットボールで遊ぶようにし

ていたそうです。


ところが、ある時、娘から「お父さんは私

のことを嫌いなんでしょう?」と言われた

そうです。


それは、娘はバスケットボールが好きでな

いのに、父親は弟の好きなバスケットボー

ルばかりしているからという理由でした。


娘からこのように言われたジョーは、自分

が子どもたちとちゃんと遊んでいるつもり

だったのは、実は、自分が子どもたちとや

りたいことをやっていただけということに

気付いたそうです。


そして、会社においても誤った方針で活動

していて、「自分の会社が利益を得るのは

自分の会社の利益を考えていなかったと

き」ということに気付くにいたったそうで

す。


これは、稲盛和夫さんがおっしゃっている

利他行に似ていますが、ここでは、ついつ

い陥りがちな「ニセモノの外向き志向」に

注意すべきということを示唆しています。


私がこの逸話を選んだ理由は、ニセモノの

外向き志向に陥ることはよくないというこ

とは多くの方が分かっているものの、実は

正しくニセモノの外向き志向に陥ってい

て、かつ、それに自分が気付いていないと

いう例が多いように感じたからです。


いわゆる、裸の王さまに気付かずになって

しまっていたという社長をみると、このよ

うなことが原因なのだろうと思います。


もちろん、そういう私自身も気付かずにニ

セモノの外向き志向に陥る可能性があるの

で、自分自身も戒めたいと思います。


ふたつめは、外向き志向にもとづいて、債

務者に無料のサービスを提供することで業

績を向上させた債権回収会社の手法です。


この会社の創業者は、自分自身も債権回収

会社から債務履行の督促を受けた経験があ

ることから、自分が経験したことと別の方

法、すなわち債務者に誠意と敬意をもって

対応する方法で債権回収を行うことにした

そうです。


具体的には、お金を払えとは言わずに、お

金を払えるようにするための支援をしたそ

うです。


例えば、失業している債務者が就職できる

ように、債務者に代わって履歴書を書いた

り、模擬面接の相手になったり、面接の日

にモーニングコールをしたりといったこ

をしたそうです。


このようなことをした結果、収入を得られ

るようになった債務者は、この会社に対し

て、進んで返済をするようになったという

ことです。


これは、前述の、「自分の会社が利益を得

るのは、自分の会社の利益を考えていな

かったとき」の例のひとつでしょう。


みっつめは、経営難から業績を回復させた

フォードの例です。


2006年にフォードの社長に就任したム

ラーリーは、毎週、役員とのミーティング

で、計画の進捗状況を報告させていまし

た。


会社は赤字であるのに、どの役員も計画通

りに事業が進行していると報告していまし

た。


当時のフォードには、他人の足を引っ張り

合う風土があり、自らは問題があるという

報告はしにくかった状況だったようです。


そこで、ムラーリーは「うまく行っていな

いことはありますか?」と質問したにもか

かわらず、これには誰も返事をしなかった

そうです。


そんな中、役員のひとりのフィールズが担

当する部門が開発した自動車に欠陥がある

ことがわかりました。


フィールズは躊躇したものの、役員ミー

ティングで、ただひとり、自分の担当する

事業が計画通りでないことを報告しまし

た。


しかし、この報告を受けたムラーリーは、

まず、「君の状況を見る力はすばらしい」

と評価したそです。


そして、次に、他の役員に対して「フィー

ルズを助けてあげられるものはいないか」

と呼びかけ、他の役員からの支援を引き出

しました。


次の週のミーティングでも、ムラーリーは

フィールズに対して、「君自身は赤ではな

い、君が取り組んでいる問題が赤なだけ

だ」と述べて、役員同士が助け合って、会

社の問題を解決していくことが大切である

ということを理解させたそうです。


(フォードのミーティングでは、計画通り

でない状況を報告するとき、それを書き込

むチャートの色に赤を使っており、ムラー

リーの述べた「赤」とは、そのチャートの

色を指しています)


このことがきっかけで、フォードの体質が

変わり、業績が回復していったそうです。


ちなみに、2014年にムラーリーが社長

を退任した後に社長に就いた人は、フィー

ルズだったそうです。


今回は、本の中から3つの逸話を紹介しま

したが、いずれも多くの方が共感するもの

だと思います。


しかしながら、理解できるものでありなが

ら、実践は容易ではなさそうです。


私自身も、自分の事業にこれをすぐにあて

はめることはできそうにはありませんが、

あきらめずに実践できることを目指して行

きたいと思いました。

 

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20171009225641j:plain

写真提供:cmonville

なお、記事と写真は関係ありません。