鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

何でも屋を楽しむ

先日、バランス経営クリエイターの鈴木淑

子さんのご著書「未来につながる働き方じ

ぶんサイズで起業しよう!」

( http://amzn.to/2yef5a9 )を拝読しまし

た。


鈴木さんは、都市銀行派遣社員として働

いていたとき、弟の妻が余命3か月の宣告

を受けたことから、家族同士で相談し、鈴

木さんが、弟の2人の子どもを鈴木さんの

実家で預かることにしたそうです。


このとき、鈴木さんは、70代の父親と病

弱な母親もいっしょに暮らしていたので、

鈴木さんがフルタイムで働くことは不可能

と考え、「じぶん起業」をすることにした

そうです。


同書では、鈴木さんの経験から、いわゆる

プチ起業をする人への助言が豊富に記載さ

れていますが、その中で、私も共感した内

容についてご紹介します。


ひとつめは、「社会を変えたい!」という

思いはいちばん最後にすべきということで

す。


社会を変えたいという思いを持つことが悪

いわけではないのですが、それを最後にす

るべきという理由は次の通りです。


まず、プチ起業で取り組む仕事は、ライス

ワーク、ライクワーク、ライフワーク、ラ

イトワークの4つに分けられます。


ライスワークは生活のためにする仕事、ラ

イクワークは嫌いな仕事ではないけれど、

ワクワクしない仕事、ライフワークは天職

とする仕事、ライトワークは天命であり、

自分がライトになって社会を照らす仕事と

いうものです。


特に、ライトワークは、事業に成功した人

が、私財を投じで慈善活動をするような仕

事だということです。


鈴木さんによれば、起業した時点でライト

ワークを行おうとすると、理想と現実の乖

離が大きすぎて、燃え尽き症候群になって

しまうと言います。


鈴木さん自身もライトワーク(人身売買を

なくすためのNGOのプロジェクト等)に

少しずつかかわっているそうですが、その

NGOなどは、情熱や思いだけでなく、高

い経営スキルを兼ね備えているから成果が

得られているということでした。


私も、ときどき「社会を変えたい」という

思いを持って起業しようとしている人に会

うことがあります。


その思いは尊いものだと、私も思うのです

が、起業して直後には難しいことは当然で

あり、それなりのスキルを高めるというス

テップを踏むことは避けられないというこ

とを認識して起業に臨むべきだと考えてい

ます。


中には、むしろ、社会を変えるということ

を通して、自分の自己実現欲求を満たした

いということを考える方もいるようです。


そのことが悪いわけではありませんが、そ

れは難易度の高いことなので、安定した収

入がない時点では、まずはライスワークか

ら固めていかなければ、いきなりライト

ワークに臨んでも、無収入になってしまう

可能性が高い、すなわち、起業が失敗に

至ってしまいかねません。


ふたつめは、「何でも屋を楽しむ」という

ことです。


起業すると、事業に関するすべてのことを

事業主自身がやらなければなりません。


中には、税金の申告、ホームページの開設

などは外注することもできますが、経費を

支払う余地が少ないときは、これらも自分

でやらなければならないときもあるでしょ

う。


これについて、鈴木さんは、「画家が描い

た絵は、単なる絵具ではなく、画家の個性

や魂であるように、会社が生産した製品は

経営者の精神が躍動してできた、芸術の名

にふさわしいものである」という松下幸之

助さの言葉を挙げ、経営者として「何でも

屋」を楽しむべきと述べています。


起業家にも、それぞれ得手不得手がありま

すが、好き嫌いをして、やりたいことだけ

をやるという姿勢ではなく、事業を通して

経営者として関わることが、よい製品を産

み出すことになるということです。


これは、多くの方が理解されると思います

が、現実には、起業してから「こんなはず

ではなかった」と、感じる方は多いようで

す。


というのは、起業する動機として、自分の

思う通りの事業をするために起業をしたの

に、起業をしたら、自分のやりたくないこ

ともやらなければならなくなったというこ

とです。


ここで、経営者は、単に、やりたくないこ

ともやらなければならない役割と考えるこ

となく、経営者が事業のすべてのことに関

わるからこそ、よい製品が出来上がるとい

う考え方をすると、前向きに事業に取り組

むことができると私は考えます。

 

 

 

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