鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

リースに関する誤解

先日、リースに関する私へのインタビュー

が、週刊東洋経済に掲載されました。


(ご参考→ https://goo.gl/xgDuqf


このインタビューを受けた時にも少し感じ

たのですが、ビジネスマンの方々の間で、

リースについて誤解されている点があると

感じましたので、今回は、リースに関する

誤解の代表的なものを2つ説明したいと思

います。


ひとつめは、リースによって設備(リース

物件)を調達すると、その設備はリース会

社の所有物であるから、設備の利用者

(ユーザー)はリース物件を持つことには

ならない、すなわち、貸借対照表には計上

されないと考えている方が多いということ

です。


このような理解は、半分は正解で、半分は

誤りです。


正解の部分は、法的には、リース契約は賃

貸借契約であり、したがって、リース物件

の所有権はリース会社にあり、ユーザーの

所有物ではないという点です。


では、誤りの部分は、これは、会計を学ん

だことがある人は理解しておられるのです

が、リース契約をすると、リース物件相当

額(※)をリース資産として、固定資産に

計上する仕訳取引をします。


(※:リース資産に計上する金額の算定に

は細かい規定がありますが、ここでは理解

を容易にするために、便宜的に、「リース

物件相当額」として記述します)


それと同時に、同額をリース債務として、

負債勘定に計上します。


リース資産は毎年減価償却し、また、リー

ス負債はリース料の支払に従って減額して

いきます。


このように、会計上の規則(リース会計基

準)では、リース物件はユーザーの資産と

みなして、貸借対照表に計上され、また、

今後支払う見込みであるリース料全額も、

リース負債として負債の部に計上します。


つまり、会計の考え方からは、リースに

よってリース物件を調達した場合は、それ

は、リース会社からお金を借りた場合と同

様に扱われるということです。


(ただし、リース資産の減価償却は、自社

資産の減価償却の方法とは異なる方法で計

算されます。


また、リース負債の減額方法も、単にリー

ス料相当額を減額するのではなく、細かい

規定があります。


さらに、リース物件相当額がユーザーの貸

借対照表に計上されるからといって、リー

ス会社は、それを自社の資産として貸借対

照表に計上しないということではありませ

ん)


ところで、この誤解があると、どのような

問題があるかというと、リースで設備を調

達した会社が、前述のような誤解をしてい

て、リース物件は借金で調達したわけでは

ないと認識する一方で、その会社に融資を

している銀行から見ると、その会社はリー

ス料総額相当の借金をしていると認識し、

両者の間で認識の相違が起きるということ

です。


ここで、やっかいなことは、中小企業の会

計に関する規則の規範となっている、中小

会計指針、もしくは、中小会計要領

( https://goo.gl/GP6kD5 )では、リース

契約をした場合、リース会計基準のように

売買契約をしたという仕訳取引をせずに、

法律通り、賃貸借契約をしたという仕訳取

引をすることとしていることです。


すなわち、多くの中小企業は、リース契約

をしても、リース資産やリース債務を貸借

対照表には載せていません。


そこで、経営者の方は、リースをした場合

借金をしたわけではないと認識しやすいと

いうことです。


しかし、これは銀行にもよりますが、法的

には、ユーザーはリース料総額を支払う義

務を追っているので、リースを利用してい

る会社は、残りのリース料相当額の負債が

あるとみなして融資審査をしている可能性

があるということです。


(なお、リース会計基準においても、リー

ス契約のすべてを売買取引として扱うので

はなく、条件によっては賃貸借契約として

扱うリース契約もありますので、ご注意下

さい)


ここはややこしいのですが、リースをする

ことは、借金をすることであると考えるこ

とをお薦めします。


ただし、これをもって、リースは利用を避

けた方がよいということではありませんの

で、ご注意ください。


もうひとつの誤解は、リースを利用すると

リース物件はリース会社のものだから、管

理の手間が増えるのではないかというもの

です。


これについては、結論は、「負担は増えな

い」ということです。


というのは、リース物件を管理する負担は

あるということは事実です。


しかし、リース物件も自社が所有する設備

も、いずれも大切な資産であり、自社資産

は管理の負担はないが、リース物件は借り

物だから、管理の負担があるということは

ないということです。


これも、会計について学んだことがある方

はご理解されておられますが、会社は、決

算のときに実地棚卸を行うのと同様に、固

定資産についても、きちんと使われている

か、大きな損傷はないか、盗難や紛失はな

いかということを確認しています。


リース物件についても、同様の確認をすれ

ば、特に問題はないでしょう。


普段からリース物件を大切に利用し、かつ

決算のときに前述のような確認をしていれ

ば問題はないのであって、リース契約をす

ることによって、管理の負担が「増える」

ことはありません。

 

 

 

 

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