鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

何が一番?

新聞の折り込み広告を見ると、「当店は、

お客さま第一主義です」というスローガン

が書かれているものもある一方で、求人広

告には、「当社は社員を大切にする会社で

す」と書かれていたりします。


そして、会社の投資家向けのページを見る

と、「弊社は株主重視の経営を実践してい

ます」と書いてある会社も多くあります。


会社には、顧客、従業員、株主と、大切に

しなければならない相手がたくさんいると

いうことがわかります。


それでは、これらのうち、どれ(誰)が最

も大切なのでしょうか?


私はこれには正解がないと思っています。


なぜなら、経営者の方によって、何が大切

なのかという考え方が異なるからです。


ただし、法律的には株主が最も大切です。


それは多くの会社が商号に「株式会社」と

あるとおり、会社は株から構成されている

からです。


確かに、商品を買ってくれ顧客がいなけれ

ば利益を得ることはできないし、働いてく

れる従業員の方がいなければ事業を遂行す

ることもできません。


しかし、株主が出資をしなければ、会社そ

のものを設立できません。


そして、会社は株主から資金を提供しても

らったからには、配当をするという義務を

負うことになります。


少し冷たい言い方ですが、顧客に商品を

買ってもらうことも、従業員の方に働いて

もらうことも、株主に配当をすることが目

的です。


ここで、「株主はそんなに偉いのか」とい

う疑問を持つ方も多いでしょう。


しかし、銀行に預金をする人は利息が得ら

れることを期待するのと同様に、株主は配

当を期待しています。


(中には、短期的な売買で利益を得ようと

する株主もいますが、基本的には、株主が

期待するものは配当です。


また、配当が低い、または、無配当の会社

は、短期売買をする人も、その会社の株式

を持とうとはしないでしょう)


会社は資金を提供してもらう見返りとして

配当することが求められています。


ただ、これがこの記事の結論ではありませ

ん。


中小企業の多くは、経営者自身が大部分の

株を持っており、その面では、株主である

経営者が、自らの権利、すなわち配当を得

ることを後回しにするということも考えら

れます。


実際に、地域の人たちに貢献したいという

動機や、従業員の方たちによろこんで働い

てもらうことが生き甲斐という経営者の方

もいます。


ただ、忘れてならないことがあります。


それは、会社が配当はしなくても利益は出

し続ける必要があるということです。


実際に、利益が出ている中小企業でも、そ

の多くは配当は行わず、税金を支払った残

りの利益を社内に蓄えています。


なぜ、利益が必要かと言えば、会社を継続

するためです。


では、なぜ利益がなければ会社は継続でき

ないかというと、赤字の分だけ、会社に入

るお金よりも出ていくお金が多いというこ

とであり、したがって赤字の分だけ会社は

財産を失うということです。


会社の財産が減って行けば、事業を営むこ

とができなくなります。


そして、赤字の会社は、顧客、従業員から

見ても、信用は得られないでしょう。


会社にとって、顧客も従業員も大切ですが

その結果、会社の財産が減ることは、事業

を営む意味はありません。


かといって、従業員を犠牲にしたり、顧客

を欺いたりして利益を得ることは許されま

せんが、最終的には会社は利益を得ていな

ければ、その存在意義はないということに

なります。


ですから、経営者の方は、顧客、従業員と

いったステークホルダーと、利益を得ると

いう会社の根本的な目的との間の利害を最

適に調整しなければならないという、とて

も難しい役割があるということが、今回の

結論です。

 

 

 

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