鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

中小企業だから?

残念なことですが、「中小企業」という言

葉は、ネガティブなイメージで使われるこ

とが多いと思います。


よく使われる場面としては、会社の業績が

芳しくない状況がつづいているとき、「う

ちは中小企業ですから…」などという使い

方をされるところが思い浮かびます。


ここまで書けば、今回の記事の結論は、業

績の悪さを中小企業であることのせいにす

るなということがわかってしまうと思いま

す。


それはそうなのですが、ここではその根拠

を少し掘り下げたいと思います。


その前に、中小企業とは、具体的にどのよ

うな会社を指すのでしょうか?


ことばとしては、中規模・小規模の会社を

指しますが、法律で、概ね次のように定義

されています。

 

(1)資本金3億円以下か、常時使用する

従業員の数が300人以下の製造業、建設

業、運輸業などを営む会社。


(2)資本金1億円以下か、常時使用する

従業員の数が100人以下の卸売業を営む

会社。


(3)資本金5千万円以下か、常時使用す

る従業員の数が100人以下のサービス業

を営む会社。


(4)資本金5千万円以下か、常時使用す

る従業員の数が50人以下の小売業を営む

会社。


このように、法律上の定義を見ると、意外

と中小企業に定義される会社の範囲は広い

と思います。


中小企業でなくなるためには、小売業でも

資本金を5千万円を超え、かつ、従業員を

51人以上にしなければなりません。


製造業では、資本金を3億円を超え、かつ

従業員を301人以上にしなければなりま

せん。


このことが、日本の会社に占める中小企業

の数の割合が約99.7%となっているの

でしょう。


ちなみに、中小企業に勤めている従業員の

数の割合は約76%です。


言い換えれば、日本の雇用の3分の2を支

えているのは中小企業です。


(ご参考→ https://goo.gl/zsR2Pf


また、製造業の付加価値のうち、50%弱

が中小企業で産み出されています。


(ご参考→ https://goo.gl/1M5Z6T


以上は統計上の数値ですが、この記事の本

旨は、中小企業白書平成12年版の記述で

す。


「細分化された専門分野(いわゆるニッチ

分野)での高い技術力を背景に国際市場の

一定割合を占有する等、極めて高い競争力

を有する中小企業(いわゆるオンリーワン

企業)や大企業への企画提案型企業に加

え、自らの知識、ノウハウ等を的確に活用

しつつ新たな事業を開始する中小企業な

ど、我が国の経済構造に変化を促す活力あ

る中小企業、新規企業が出現するように

なっており、このような中小企業が将来の

我が国経済活性化の新たな推進役になって

いくものと期待される」


この中に登場する、ニッチ分野でのオン

リーワン企業はたくさんあります。


例えば、群馬県桐生市の従業員数33名の

会社が製造する、液晶画面に使われる偏光

板の世界シェアが5割を占めています。


(ご参考→ https://goo.gl/vyByCL


確かに、中小企業のすべてがこのような競

争力を持っているわけではなく、むしろ、

割合としては低いでしょう。


ただし、中小企業であることが、競争力が

小さいということにはならなくなっている

ということを、前述の中小企業白書で述べ

ている訳です。


そして、中小企業白書平成12年版では、

その記述に続けて、次のように述べていま

す。

 

「このため、平均値のみを比較し、大企業

に比して弱い存在として中小企業を一律に

とらえることは適切ではなくなってきてい

る。


以上のように、中小企業基本法が制定され

た時の、中小企業の企業数の過多性、企業

規模の過小性という画一的な中小企業像を

前提とした大企業と中小企業との間の『格

差是正』という政策理念とこれに基づく政

策体系は、もはや現実に適合しなくなって

いる。


以上のような中小企業及び中小企業政策を

取り巻く大きな環境変化等を踏まえ、政策

理念も含めた政策の再構築を図ることが、

昨年の中小企業基本法改正のねらいであっ

た」


この記述にある中小企業基本法は平成11

年に行われていますが、要は、「中小企業

=弱者」とは限らないので、一律に支援す

るのではなく、能力の高い中小企業を支援

する政策に転換したということを説明して

います。


話しを戻すと、中小企業だからと行って、

大企業と勝負できないということではなく

なっていることです。


その背景には、規制緩和が進んだり、情報

技術が発展したことが挙げられると思いま

す。


しかし、「そうはいっても、経営資源の大

きい大企業にはなかなかかなわない」と考

える中小企業経営者の方も多いと思いま

す。


私も現実的にはそうだと思います。


ただ、これからは「中小企業だから…」と

いう「言い訳」はあまり通用しなくなる時

代に移りつつあるということも事実だと思

います。


むしろ、「中小企業だからポテンシャルも

大きい」という気持ちを持つことが大切だ

と私は考えています。

 

 

 

 

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