鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

在庫切れは誰の責任か

これは、卸売業や小売業での話題になりま

すが、在庫切れはよいことか、悪いことか

ということについては、一般的には、悪い

ことでしょう。


(ここで「一般的には」と書いたことには

理由がありますが、それは、後述します)


では、在庫切れが起きたとき、それは誰の

責任になるでしょうか?


購買担当者(在庫担当者も含む)でしょう

か、それとも、販売担当者でしょうか?


私は、経営者(または、事業の責任者)で

あると思っています。


これは、現場で起きたことは何でも経営者

の責任であるという意味ではありません。


というのは、もし、在庫切れの責任が在庫

担当者にあるとしたら、在庫担当者はどう

いう行動をとるでしょうか?


在庫切れが起きないよう、在庫をたくさん

持とうとするでしょう。


在庫が多いと在庫切れが起きないので、販

売先からの引き合いにも迅速に対応でき、

売上も増えて、事業は順調に進むというこ

とになるかもしれません。


ところが、在庫が多いと、売れ残りが増え

たり、商品の仕入代金に充てるための借入

を増やしたり、大きな倉庫を持たなければ

ならなくなったりします。


このことは、あまり目立ちませんが、事業

の利益を押し下げる要因になります。


よって、在庫は多ければよいという訳では

なく、かといって、すぎても少なすぎても

よいという訳ではありません。


したがって、利益を最大にするにはどの程

度の在庫を持てばよいかという、難しい判

断をするところに、経営者の手腕が問われ

ると私は考えています。


ですから、「在庫を多く持つこと≠利益を

増やすこと」ではありませんから、経営者

が判断した適切な在庫量を維持していると

きに、在庫切れは起こり得ることです。


そこで、在庫切れが起きることが、必ずし

も利益が減ること、即ち、悪いこと、では

ありません。


そこで、在庫担当者の責任はどこにあるの

かというと、経営者の決めた適切な在庫量

を維持しているかどうかということです。


もし、在庫担当者が、発注を忘れてしまっ

たり、在庫が少なくなったことに気づかな

かったりして適切な在庫量を維持できず、

そのことが原因で在庫切れが起きれば、そ

れは在庫担当者の責任です。


一方、適切な在庫量が維持されているにも

かかわらず、在庫切れが起きたときは、そ

れは在庫担当者の責任ではありません。


その在庫切れは、経営者の意思にしたがっ

て起きた在庫切れです。


ただ、経営者の判断がいつも正しいとは限

りませんので、経営者が判断を誤って適切

でない在庫量を在庫担当者に指示して在庫

切れが発生した場合は、経営者に責任があ

るということです。


今回は、在庫切れについて例をとって述べ

ましたが、今回の記事の趣旨は、結果責任

を従業員に負わせることは賢明ではないと

いうことです。


従業員の方に結果責任を負わせるようにす

ると、その従業員は、自分の責任を回避す

るということに力を注ぎ、自分だけがよけ

ればよいという行動をとることになりま

す。


これは部分最適といい、必ずしも、会社の

利益を最大にする全体最適の行動ではなく

なります。


会社全体が、全体最適の行動をとるように

するためには、まず、経営者が事業の方針

を示し、それに基づいて、それぞれの部署

に「行って欲しいこと」を示すことが必要

です。


この具体的な方法の説明は割愛しますが、

例えば、前述の例で言えば、「在庫切れを

起こすな」ではなく、「この商品は、●●

個から●●個の間で在庫を維持する」とい

う具体的な活動内容を示します。


単に、起きたことについて責任を問うだけ

でよいなら、どんな人でも経営者を務める

ことができます。


経営とは、難しい判断をすることであり、

だからこそ誰にでも務められるわけではな

いと私は考えています。

 

 

 

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