鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

不祥事の本当の原因

最近、大手の鉄鋼業や自動車製造業で不祥

事が相次いでいます。


私は、この不祥事を伝えるニュースを聴い

ていて、実はイラっとする気持ちになって

います。


なぜかというと、なぜデータ改ざんや規則

違反が起きたのかということを伝えていな

いからです。


伝えたとしても「利益を優先する企業体質

があった」という程度です。


しかし、この「利益優先」による不祥事は

残念なことに常に起こっており、平成18

年に施行された会社法では大会社等への内

部統制の体制整備が義務付けられたり、日

本版SOX法(金融商品取引法の一部)が

施行されたりしていても、不祥事はなくな

らないのはなぜかという部分はまったく伝

わって来ません。


といいつつ、私も、明確な回答をもっては

いません。


ただ、そのひとつの原因として私が考えて

いるのは、日本の法律と日本の会社の実態

に乖離があるということです。


日本の会社法などは、米国の会社のように

株主主権となっています。


一方で、日本の会社では従業員出身者が社

長や役員のほとんどを占めたり、終身雇用

などによって従業員の会社への帰属意識

高くなるなど、実態としては従業員が株主

よりも大きな影響力を持っています。


これは、よい方向にも働くことがあります

が、逆に、日本の不祥事の多くは日本的な

慣行の悪い面が影響していると思っていま

す。


これは、少し状況が異なりますが、米国の

ハイテン戦略軍司令官は、11月18日に

カナダ東部ハリファクスで開かれたシンポ

ジウムで、「(もしトランプ大統領から核

攻撃の命令が出されたとき、その命令が)

違法なら、『大統領、それは違法だ』と言

うことになる」と発言したそうです。


(ご参考→ https://goo.gl/nE4F1V


これに限らず、米国軍は上官からの命令が

違法であれば拒むということをしているそ

うです。


これをもって、日本の会社でも、上司から

違法な指示が出たら拒むべきというように

は直ちには言えませんが、とはいえ、日本

では、結果として上司からの指示で法律を

犯してしまうことはあります。


その端的な例は、サービス残業でしょう。


サービス残業で最も損をするのは、従業員

自身にもかかわらず、日本では上司の権限

が強く、自分を犠牲にして取り入ろうとし

ます。


このようなことは、経営者にもあてはまる

例があります。


かつて、経営破たんした旧日本長期信用銀

行(現在の新生銀行)の、破たんしたとき

の頭取であった大野木克信元頭取らは、粉

飾決算を行なっていたとして、証券取引法

違反と商法違反の罪に問われていました

が、最高裁は無罪の判決を出しています。


詳細は割愛しますが、大野木元頭取らは、

日本長期信用銀行が破たんした時の頭取で

あったというだけで、破たんの原因を作っ

た訳ではなく、本当の破たんの原因を作っ

たのは、バブル期に頭取であった杉浦敏介

氏らであり、大野木氏は杉浦氏から粉飾決

算を申し渡し事項として引き継いだだけに

過ぎないということが、大野木氏らが無罪

になった主な理由のようです。


この例が必ずしも適切とは言えませんが、

不祥事を起こしている日本の会社の例を見

ていると、1人の社長だけではなく、何人

かの歴代の社長が関わっているという点で

共通しています。


これは、日本の会社では、社長の権限でさ

え限定的ということであり、社長は自分を

社長に指名した前任者に従わざるを得ない

ということです。


このことは、表面的には社長を指名する権

限を持っている株主の権限が形骸化してい

る一例です。


(厳密には、定款で定められている場合を

除き、株主は社長を選任する権限はなく、

取締役を選任する権限のみしか持っていま

せんが、理解を容易にするために「株主は

社長を指名する権限を持っている」とあえ

て記載しています)


話しを本題に戻すと、経営者や上司は、部

下に対して法律を破れという命令をしてし

まうことがあるということです。


自動車会社の例では、納期を早くしたりコ

ストを削るために、無資格者に検査をさせ

ることに至ってしまったのでしょう。


経営者は、法律を破れとまでは言っていな

と主張したとしても、納期短縮やコスト削

減の指示が法律を破る原因となっているこ

とに変わりはありません。


このような時、部下は、「その指示は法律

を破ることになる」と明確に伝えられるよ

うになっているかどうかがポイントです。


多くの日本の会社では、たとえ法律を破ら

なければ実行できない指示が出されても、

部下はそれに従わざるを得ない状況にある

のでしょう。


ここで、「法律は守らなければならない」

という紋切り型のことを私は主張するつも

りはありません。


結果として、法律を破った場合と、守った

場合では、どちらが会社の利益は大きいか

ということを考えれば、明らかに、法律を

守った会社です。


もし「ばれなければ法律を破ってもいい」

という経営者がいるとすれば、私は、大き

な見当違いをしていると思います。

 

 

 

 

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