鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

権限委譲の効果

先日、ちょっとしたことがあって、携帯電

話会社に問い合わせをしました。


その具体的な用件は、データ通信の使用量

をホームページで確認したところ、料金の

締め日が知らないうちに変更になっている

ことに気付いたからです。


問い合わせた結果、データ通信の容量を変

更した都合で、通話料の締め日も変更に

なったことがわかりました。


したがって、現在の通話基本料は、通常の

1か月分ではなく、1度だけ変速的に50

日分で計算されるそうです。


ここで、利用できるデータ通信量も1か月

分ではなく、50日分相当に増えるのかと

私が質問したところ、データ通信量は1か

月分で変わらないけれど、データ通信料金

は50日分になるとの説明を受けました。


ただ、ここで、その説明をしていた電話会

社の方自身も、容量は増えないのに、料金

だけは50日分になることはおかしいと感

じたようで、私から問い直される前に「こ

れはおかしいので、データ通信料金は50

日分ではなく、1か月分だけ請求するよう

に請求データを修正しておきます」との説

明がありました。


私は、問い合わせをしなければ50日分の

請求があったかもしれないという点に疑義

は残りましたが、電話会社自身でおかしさ

に気付き、すぐに料金の修正をした点は評

価できると思っています。


ここで、私が気付いたことは、電話のオペ

レーターは、料金の修正ができる権限が与

えられていたということです。


もし、権限が与えられていなければ、権限

のある人に問い合わせるなど、修正をして

もらうまでに時間がかかったり、または、

「このような決まりになっています」とい

機械的な対応で終わっていたかもしれま

せん。


この件では、会社の事業の手順は、必ずし

も完全ではないことから、ほころびが見つ

かったときのために、現場の職員に権限を

与えておくことが大切であるということを

実感することができました。


ところで、権限委譲というと、リッツカー

ルトンホテルの$2,000までの支出の

権限委譲を思い出します。


このホテルの権限委譲については広く知ら

れていて、例えば、大阪市内にあった同ホ

テルの宿泊客がホテルに重要な書類を置き

忘れてしまい、問い合わせを受けた従業員

が、この$2,000の権限移譲を活用し

て、新幹線の電車に乗って書類を東京まで

届けたことがあると言われています。


ただ、このエピソードは実話かどうかい

かしいといわれていますが、あるホテル業

専門学校が、当時の同ホテルの日本支社長

であった高野登さんへのインタビューの中

で、高野さんが同様の事例をお話しされて

おられます。


(ご参考→ http://bit.ly/2AjTlLv


すなわち、ホテルのレストランに親子が訪

れたが、男の子が泣き出して、レストラン

の雰囲気が崩れた。


そこで、ウェーターがホテルの売店から2

万円のライオンの人形を買ってきて、その

男の子にプレゼントし、泣き止ますことが

できた、というものです。


ここで、高野さんは、ひとつ注意点を述べ

ています。


すなわち、権限委譲は口で叫ぶだけではだ

めだということです。


前述のウェーターは、次の日、総支配人か

ら部長会に呼び出され、ほかのリーダーや

スタッフの前で男の子にライオンの人形を

与えたという対応のすばらしさを褒められ

たそうです。


一般の会社なら「2万円の人形を顧客にた

だで与えるなんて」と叱られてしまいそう

なことであるからこそ、ウェーターが決断

して実践したことがきちんと評価されなけ

れば、権限委譲は浸透しないということで

す。


ところで、権限委譲は職務充実の手段のう

ちのひとつです。


職務充実は、職務拡大(担当の仕事を増や

すこと)の対語で、より高度な仕事をして

もらうことです。


職務充実も職務拡大も、人材開発の手法の

ひとつであり、それと同時に、従業員の方

の士気を高めることにもなります。


とはいえ、権限委譲は単に権限を与えれば

よいというだけではありません。


前提として、権限を与えられるだけのスキ

ルを従業員の方に身に付けさせていなけれ

ばならないし、また、前述のウェイターの

例のように、きちんと成果を評価すること

も必要です。


でも、それができれば、顧客も満足し、従

業員も能力がより高まる上に、士気も向上

するなど、いくつもの効果が得られます。


経営者としては、このような人材育成を行

うことは難しいことですが、それができる

ようになれば、ライバルとの競合も優位に

なります。


そして、このような人材育成こそ、経営者

らしい仕事といえると私は考えています。

 

 

 

 

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