鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

冴えない社長

私の知人の経営コンサルタントのSさんか

ら、印刷会社のおもしろい社長さんの話を

ききました。


その社長さんは、Sさんの会社の近所に事

務所があり、業歴も長い会社なのですが、

社長さんの見かけはあまりぱっとしないそ

うです。


そして、ときどきSさんの会社に訪問して

きては、Sさんの顔を見るだけで、「こん

にちは!」とあいさつだけして、すぐに出

て行ってしまうそうです。


このように、その社長はそれほど愛想がい

いというわけでもなく、印刷技術に何らか

の優れた特徴があるわけでもなく、値段も

安いというわけでもないので、Sさんはそ

の社長さんには仕事を依頼せずに、名刺を

作るときなどは、インターネットで発注し

ていたそうです。


しかし、ある時、Sさんの上司が、その印

刷会社の社長が来たタイミングで、「●●

さん、いつものお願いね!」と、何かを発

注したところを見たそうです。


これに対して、その社長さんは「かしこま

りました」とだけ答えて、翌日、その上司

の方の名刺を4箱印刷して納品に来たそう

です。


さらに、その後、Sさんが出張の準備をし

ていて忙しい思いをしているときに、たま

たま、その社長さんがSさんの前に現れた

そうです。


そして、Sさんがその社長さんの顔を見た

ら、社長さんは何かに驚いたようで、逃げ

るように出て行ってしまったそうです。


思わず、Sさんは、すぐにその社長を追い

かけて行き、「名刺を200枚印刷してく

ださい」と発注してしまったということで

した。


この社長さんがよいか悪いかは別として、

Sさんの印象に残っているということは間

違いがなく、だからこそ、私にお話しをし

てくれたのだと思います。


では、このお話しから何か得るものがある

とすればどういうものがあるでしょうか?


これについては、失礼ながら、私はこの社

長さんを丸ごと真似ることは、あまり賢明

ではないと思っています。


しかし、あまり積極的な営業をしていない

にもかかわらず、仕事を受注している点は

見習うべきところがあるのではないかとも

思います。


それは、定期的に得意先を訪問するという

こともあると思うのですが、私は、見込み

客に仕事をする意思があるということを示

すことではないかと思っています。


これは、逆の例を示すとよくわかると思い

ます。


私の経験ですが、ある時、テレビ取材をさ

れた、おいしいと評判のとんかつのお店を

訪れたときがあります。


この時の接客方法が、とてもまずかったと

いう訳ではないのですが、私から見て「た

くさん来る客の内のひとり」という扱いを

されたという印象を持ってしまいました。


これは、私がそういう印象を持ったという

だけであって、お店の方がそのように考え

ていたことが明確であったということでは

ありません。


ただ、そのお店のファンになって、また来

店しようという気持ちにまではなりません

でした。


印刷会社の社長さんのお話しに戻ると、そ

の社長さんは、Sさんに対しては、仕事を

くださいとは言っていませんが、「あなた

から仕事が欲しいと思っている」というこ

とは伝わっていたのだと思います。


すなわち、「私の会社の印刷技術はすばら

しい」とか「私のお店の料理はおいしい」

ということを伝えることよりも、「私はあ

なたから仕事が欲しいと思っている」とい

うことが伝わることの方が効果が大きいの

ではないかと私は思いました。


そういう意思が相手に伝わると、製品や商

品そのものがどうかということよりも、

「自分のために仕事をしたいと思っている

人だったら、きっと、間違いない仕事をし

てくれるだろう」という安心感を顧客が持

つことができ、それが受注につながるので

はないか、ということが、今回の記事の結

論です。

 

 

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