鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

上流工程と下流工程

多くの中小企業では情報技術を採り入れた

いと考えていると思いますが、その多く

は、生産性向上・合理化、インターネット

による集客などだと思います。


これらも効果のある情報化武装ですが、

残念ながら、戦術レベルでの情報化でに留

まります。


情報化武装についての詳しい説明は割愛し

ますが、マクドナルド、ユニクロニトリ

などのサプライチェーンは、全面的に情報

技術を採り入れている事業です。


また、ERP( Enterprise Resources

Planning , 経営資源計画)を導入してい

る会社も、情報技術を事業に全面的に採り

入れなければ、それを実現できません。


(ERPの詳細な説明は省略しますが、ひ

と・もの・かねの経営資源を適切に配分す

る計画をコンピューターで作成し、無駄の

ない事業運営を行うことです)


とはいえ、経営資源の少ない会社で、サプ

ライチェーンを構築したり、ERPを導入

することは容易ではありません。


(ただし、最近は数千万円でERPシステ

ムを導入できるようになってきたので、中

小企業であっても、必ずしも、ERPの実

施が不可能ということではないようです)


しかしながら、すでに売られているソフト

を、単に、そのまま取り入れるということ

だけでは、情報技術を十分に経営に活かし

ているともいえません。


では、どうすればよいかというと、戦略策

定の段階から、どのように情報戦略を活用

するかということを織り込むことが必要に

なります。


この、情報技術を織り込んだ戦略と、そう

でない戦略の違いは分かりにくいと思いま

すので、以前に多能工の例で紹介した、三

州製菓さんの例を示します。


(ご参考→ https://goo.gl/Cd1ZRP


この三州製菓さんでは、トレーサビリティ

(もともとの意味は、追跡可能性という意

味ですが、現在は、食品の加工・製造・流

通などの過程を明確にすることという意味

で使われています)に情報技術を採り入れ

ました。


同社では、以前から手作業でトレーサビリ

ティを行ってきましたが、情報技術の導入

によって、材料、仕掛品、製品にラベルを

貼って追跡を容易にするなどの合理化を

行っています。


これだけであれば単なる合理化に過ぎませ

んが、製造工程のデータを社員全員で共有

できるようになったことから、クレーム対

が、従来の5日間から1日間に短縮し、納

品先からの信頼性を向上させただけでな

く、社員の安全への取り組みの意識を向上

させることにつながっています。


さらには、将来は、顧客自身が商品に貼ら

れたコードから、直接、生産情報を確認で

きるようにすることを目指しています。


確かに、これらの効果は手作業を機械化し

たことで得られるものですが、信頼性向上

を目指すという戦略のもとで情報化を行っ

ている点で、単なる合理化とは異なるもの

となっています。


ところで、今回の記事の結論は、三州製菓

さんのような情報化武装をしましょうとい

うことではありません。


もちろん、三州製菓さんはお手本になる事

例ですが、情報化武装は、戦略ありきで導

入することの方が効果が大きいということ

が今回の記事の結論です。


では、なぜ、このようなことを指摘するか

というと、現在のシステム開発会社の多く

は、ユーザーに対して、単に、自社システ

ムの導入だけを提案する例が多いからで

す。


そのことが直ちに問題になるわけではない

のですが、いわゆるパッケージソフトの導

入では、それをどう活かすかという検討が

不十分なまま導入されてしまいがちになり

ます。


導入前に、自社はどのような戦略を採るべ

きか、そのためにはどのような情報化武装

が適切か、その情報化武装によってどのよ

うな効果が得られるのかという検討を経る

ことなしに、単に、パッケージソフトを採

り入れただけでは、それを十分に使いこな

せなかったり、期待していた効果が得られ

なかったりということが起きやすくなりま

す。


最悪の場合は、そのパッケージソフトを使

うことを止めるということに至ってしま

い、結果として投資を無駄にしてしまうと

いうことになります。


このような、情報化武装の前の、戦略の検

討といったプロセスは、情報化武装の上流

工程といいます。


これに対して、システム開発会社の選定、

システムの導入、システムの運用といった

工程を下流工程といいます。


(なお、システム開発会社でも、上流工程

下流工程という言葉を使っていますが、

ここで示したことと別の意味で使っていま

すのでご注意下さい)


ところで、前述の、現在のシステム開発

社の多くは、ユーザーに対して、単に、自

社システムの導入だけを提案しがちである

という理由は、上流工程を支援できる人材

が少ないという事情があります。


本来の情報化とは、上流工程が土台となっ

て、それに基づいて下流工程があるわけで

すから、下流工程だけの情報化を行って

も、十分な効果は得らないことは明らかで

す。


では、これに対しては、どのような対策を

採ればよいかというと、前述の三州製菓さ

までも行っていますが、ITコーディネー

タなどの外部専門家を活用することです。


(ちなみに、小職も、ITコーディネータ

であり、情報化武装のご支援を顧問先に対

して実施しています)


最後に、繰り返しになりますが、情報化武

装とは、単に、ソフトを導入するだけでは

十分ではないということをお伝えしたいと

思います。

 

 

f:id:rokkakuakio:20171222223906j:plain