鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

合同会社の特徴

先日、起業しようとする方の多くは株式会

社を設立しようとするするという主旨の記

事を書きましたが、これについて、読者の

方からご質問が届きました。


(ご参考→ https://goo.gl/fyL3Ue


ご質問は、次のふたつです。


(1)合同会社の設立費用が安いというの

は、どれくらいなのか。


(2)合同会社は「個人的なつながりで会

社を運営する」との記載があったが、どう

いうことか。


(なお、この記事では、株式会社を、指名

委員会等設置会社、または、監査等委員会

設置会社でないという前提で記述します)


2つのご質問に順に回答すると、まず、実

際の合同会社の設立費用はケースバイケー

スで一概に述べることはできないのです

が、明確に異なるのは、登録免許税と公証

人への手数料です。


登録免許税は、会社の登記などをするとき

に、法務局へ支払う税金で、登録免許税法

で定められています。


会社の登記のときに支払う登録免許税の金

額は、株式会社では15万円ですが、合同

会社では6万円で、株式会社よりも9万円

少なくなっています。


(厳密には、株式会社の登録免許税は、資

本金の0.7%か、15万円(合同会社

6万円)のいずれか少ない金額ですが、こ

こでは、最低額の15万円(合同会社は6

万円)ということで記載します)


次に、公証人への手数料ですが、これは、

株式会社は登記に先立って、定款(会社法

で作成を義務付けられている、会社の基本

的な規則)の内容を、公証人(公証人法に

基づき法務大臣から任命された公務員で、

契約の内容などが適正であることを証明す

る役割などを担っている人)に見てもら

い、認証(内容が適正であることを証明す

ること)を受ける必要あるので、その際に

公証人へ支払うものです。


株式会社の定款の認証を受けるときの手数

料の金額は5万円です。


一方、合同会社は、定款の作成は義務付け

られていますが、公証人の認証は必要ない

ので、この手数料は不要です。


以上の2つの点で、登記に関する費用は、

合同会社は株式会社と比較して、14万円

少なくてすむということになります。


また、実際の登記にあたっては、司法書士

の方などに手数料を支払うことになります

が、これらもケースバイケースで一概に比

較はできないものの、株式会社の方が、申

請に関する手続きが複雑であることから、

一般的にこちらも合同会社の方が少ないよ

うです。


次に、「個人的なつながりで会社を運営」

ということですが、これは、会社法に規定

されているものではありません。


また、「個人的つながり」という表現も、

後述する合同会社の特徴を指した表現であ

り、一般的に使われている「個人的つなが

り」という意味とは異なる面もありますの

で、ご注意ください。


その合同会社の特徴とは、次のようなもの

です。


(1)合同会社では出資者=経営者である


合同会社の出資者は社員と呼ばれますが、

これは、一般的に使われている従業員など

を指す社員という意味ではありません。


そして、合同会社において、社員は出資者

であると同時に、経営者の役割を担うこと

になります。


株式会社の取締役に任期がある一方で、合

同会社の社員には任期がないというのは、

合同会社の経営者に任期がないというより

も、合同会社に出資をしている人は、出資

を続けている限り出資者であり、その出資

者は同時に経営者でもあるので、出資をし

ている限り、結果として、経営者でもある

ということになるわけです。


裏を返せば、合同会社の出資者でなくなれ

ば、合同会社の経営者でもなくなるという

ことになります。


これは、株式会社の取締役は、その会社の

株主であることが要件となっていないこと

と比較して、大きく異なっています。


なお、本旨からそれますが、合同会社の社

員は業務執行(事業運営の指揮・管理をす

る役割、すなわち会社を経営すること)を

担い、また、会社を代表(会社の代理人

して、対外的に契約などを行うこと)しま

すが、社員のうち、業務執行を行わない社

員を定めたり、会社を代表しない社員を定

めたりすることができます。


業務執行をしない社員を定めたときは、業

務執行をしない社員でない社員を、業務執

行社員として選任します。


さらに、業務執行社員のうち、会社を代表

しない社員を定めたときは、会社を代表し

ない社員でない社員を、代表社員として選

任します。


よって、代表社員業務執行社員、代表社

員でも業務執行社員でもない社員がいる合

同会社では、代表社員は株式会社の代表取

締役に、業務執行社員は株式会社の取締役

(※1)に、代表社員でも業務執行社員

もない社員は株式会社の株主に相当すると

いうことになります。


(※1)株式会社の取締役であっても、定

めによって、業務執行を担わない取締役を

置くことも可能です。


さらに、本旨からそれますが、合同会社

社員は、自然人(個人)だけでなく、法人

も社員(=出資者)になることができ、そ

の場合はその法人が選任した職務執行者が

実際の社員としての役割を担います。

 

(2)意思決定は出資額によらない


株式会社の株主総会の議決権は、株数(=

出資額)に応じて議決権が割り振られます

が(※2)、合同会社は出資額ではなく、

出資者1人につき1つの議決権が与えられ

ており(※3)、必ずしも出資額の多い出

資者の意思に基づいて意思決定が行われる

とは限りません。


(※2)株式会社の特殊決議では、議決権

ではなく、株主数の半数以上の賛成が必要

になる場合があります。


(※3)合同会社の定款により、出資額に

応じた議決権を割り振ることも可能な場合

があります。

 

以上の2つの特徴、すなわち、出資者自ら

が会社を経営すること、意思決定は出資額

に応じた議決権数ではなく、社員1人に1

つずつ与えられた議決権によって行うこと

などから、株式会社と比較して合同会社

個人的つながりで運営される会社と言われ

ています。


このような特徴から、合同会社は人間関係

によって事業を営んでいる会社に向いてい

ると考えられます。


ただ、合同会社の代表者は、前述の通り、

代表取締役ではなく代表社員という肩書に

なるので、これを嫌って株式会社を設立す

る人も多いようです。


一方で、米国では、日本の合同会社に相当

するLLC(Limited Liability Company)

が多く設立されており、ウォルマートの子

会社である西友や、アマゾンの日本法人の

アマゾンジャパンは合同会社組織となって

います。


現在の日本では、合同会社は小さな組織と

いうイメージを持つ人が多いかもしれませ

んが、これから、日本でも多くの大規模な

合同会社が設立されると、合同会社のイ

メージが変わっていくのではないかと私は

考えています。


なお、今回の記事は、理解しやすい記述に

することを優先しており、正確さを犠牲に

しているところがありますので、実際の会

社設立にあたっては、専門家の助言のもと

に判断されるようお願いします。

 

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