鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

信用保証制度の変更

4月1日から、信用補完制度(信用保証協

会の保証業務)が変更になります。


(ご参考→ https://goo.gl/NP5sFJ


今回の変更で注目されていることは、「信

用保証協会と金融機関の連携」でしょう。


これは直接的には記載されていませんが、

ひとことで言えば、信用保証協会の負担を

減らすということです。


それは、次の文から読み取ることができま

す。


「信用保証への過度な依存が進んでしまう

と、金融機関にとっては、事業性評価融資

やその後の期中管理・経営支援への動機が

失われるおそれがあるとともに、中小企業

にとっても資金調達が容易になることか

ら、かえって経営改善への意欲が失われる

といった副作用も指摘がされており、こう

した副作用を抑制しつつ、中小企業の経営

改善や生産性向上を一層進めていくための

仕組みを構築することが必要です。


こうした考えの下で、信用保証協会と金融

機関との連携を法律上に位置づけ、中小企

業のそれぞれの実態に応じて、プロパー融

資(信用保証なしの融資)と信用保証付き融

資を適切に組み合わせ、信用保証協会と金

融機関が柔軟にリスク分担を行っていくべ

く、信用保証協会と金融機関との間で更な

る連携を図ります。


また、実効性を担保するため、信用保証協

会向けの監督指針にもリスク分担について

明記し、各信用保証協会・各金融機関のプ

ロパー融資の状況等について情報開示(見

える化)を行うとともに、今般の改正趣旨

が現場レベルで浸透しているかという視点

からのモニタリングを行います」


よって、今回の変更は、将来、信用保証協

会の負担を減らすための、初めのステップ

と考えることができます。


したがって、4月から、融資の受け方に関

して中小企業が受ける影響は少ないもの

の、将来に備えて準備をしておかなければ

ならないということに間違いはないでしょ

う。


では、なぜこのようなことが行われるので

しょうか?


それは、前出の引用文にもある通り、金融

機関が融資業務について、信用保証協会に

依存的になっている部分があり、それを解

消したいと当局が考えているからです。


依存的になっている部分とは、いくつかあ

るのですが、そのひとつは、金融機関が貸

倒リスクを信用保証協会に「丸投げ」しよ

うとしていることです。


これは、信用保証協会が保証した融資につ

いては、融資先が返済不能になっても、信

用保証協会がそれを肩代わりしてくれると

いう機能もありますが、もうひとつの動機

は、金融機関が自己資本比率を高くしたい

という思惑もあります。


それは、次の式を見ていただければご理解

いただけると思います。


自己資本比率=純資産/総資産


金融機関が融資を増やせば、分母の総資産

が増えるので、自己資本比率が低くなって

しまいます。


金融機関は健全さを示すために、自己資本

比率は高くしたいという思いがあるため、

業績のよくない相手には融資を避けたいと

いう思惑が働きます。


しかし、信用保証協会の保証のある融資に

ついては、自己資本比率の計算のときに、

総資産からその融資額を差し引くことがで

きることになっています。


したがって、信用保証協会の保証のある融

資を増やしても、自己資本比率には影響し

ないという効果があることも、金融機関が

融資に対して信用保証協会の保証をつけよ

うとする動機になっています。


もうひとつの信用保証協会に依存的な理由

を挙げると、融資審査を信用保証協会に

「丸投げ」しようとする思惑もあります。


これは、融資審査が得意な人材が少ない、

比較的規模の小さな金融機関にこのような

傾向が高いようです。


このような金融機関は、「信用保証協会に

保証の審査をしてもらい、その結果、保証

の承認が得られれば融資をするが、保証を

しれもらえなければ融資をしない」という

審査の丸投げをしがちです。


主に以上の2点が、今回の信用補完制度の

改定の背景にあると私は考えています。


したがって、今後、どのような対策が必要

かというと、ひとつめは、融資審査を信用

保証協会にあまり依存しない金融機関を探

し、その金融機関との関係を強化すること

です。


ふたつめは、融資を受けやすくする基本的

な対策と変わりませんが、財務状況の改善

や、情報開示を積極的に行うということで

す。


そして、前出の引用文にあるように、「中

小企業にとっても資金調達が容易になるこ

とから、かえって経営改善への意欲が失わ

れるといった副作用」が現れている会社で

あると、信用保証協会から判断されないよ

うにしなければなりません。

 

 

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