鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行の本部は融資稟議書を否決しない

融資を断られたときに、銀行職員の方から

「本部(審査部)の承認が得られなかっ

た」ということを理由にされた会社経営者

の方は少なくないと思います。


でも、私は、これは方便だと思います。


仮に、本部の承認が得られなかったことが

事実であったとしても、それでは、営業店

は、どれくらい本部にかけあったのかとい

うと、ほとんどかけあうことはしていない

でしょう。


私はかつて銀行に勤務していましたが、そ

のうちの約12年間の営業店勤務の経験の

中で、制度としては「否決」はあるもの

の、一度も融資稟議書を本部に否決された

ことはありませんでした。


ただし、「実質上の否決」はありました。


本部が承認したくない融資案件について

は、営業店に対して、不明点に関する質問

をしてきたり、融資額の減額や担保条件の

追加などを条件としてよいかという問い合

わせをしてきます。


そのようなときに、営業店側が質問にきち

んとした回答をしたり、融資額の減額の条

件に応じたり、担保の追加の条件に応じた

りすれば、本部の承認が得られます。


でも、営業店側が、本部の意向を汲み取っ

て、本部は承認したくなさそうだし、それ

を覆すことができそうな材料がないという

時は、営業店側が本部に対して、「稟議申

請を取り下げます」と伝えることがありま

す。


これが事実上の否決です。


ただ、希ですが、どうしても営業店と本部

で折り合いがつかないときは、支店長が本

部に出向き、審査部長や担当役員に直に折

衝して承認を「勝ち取る」というときもあ

ります。


ここまでの内容を読むと、「それでは、融

資の本部審査は意味がないのではないか」

と感じる人が多いと思います。


しかしながら、本部での審査は、一定の効

果があると私は考えています。


なぜなら、確かに融資稟議書はほとんど決

裁されるものの、稟議申請する時点で、本

部での承認が得られそうでなければ、営業

店も申請そのものを行いません。


逆に、本部での審査があるからこそ、営業

店も客観的に融資を判断しようという姿勢

になれるのであって、融資をすべて営業店

で決めてよいことになると、営業店での融

資審査が厳格にならなくなる可能性が高ま

ります。


ところで、今回の記事の結論は、次のよう

なことがらです。


これは、私が銀行職員時代に融資審査部で

審査している方から聞いたのですが、営業

店から届く融資稟議書は、本部側からは断

りにくいということです。


なぜなら、融資審査は書類に書いてある内

容で判断すればよいことにはなっているも

のの、だからといって、直に融資先と接触

している営業店の意向を、その融資先と一

度も接触したことがない本部が覆すことは

やりにくいということです。


これは、融資の判断は、書類だけで行われ

ているのではなく、融資先の状況、例えば

経営者の人柄、事業活動の状況、預金口座

の動き、近隣からの評価などが影響してい

るということです。


これも当たり前のことですが、銀行と良好

な関係を作ろうと努力していない会社は、

そもそも融資稟議書を銀行の営業店が作成

しようという気持ちにもなることはできな

いでしょう。


現場の経営者が懸命に事業をよくしようと

する姿勢が銀行に伝われば、銀行の営業店

も、その経営者を応援しようという気持ち

になれるし、本部にも懸命に融資稟議書の

承認を得られるようにしようと努力を惜し

まない気持ちになれるのです。


(だからといって、融資を受けようとする

会社が、銀行に対してへりくだる必要もあ

りません)


ここまで書いたことは当たり前のことなの

ですが、融資審査の要素を理解してもらう

ための事例として、融資稟議書を審査する

本部の考えについて書きました。


なお、そうはいっても、融資審査に占める

判断の比重は、財務状況が最も大きく、銀

行との関係強化だけでは融資が受けやすく

なるわけではないということも書き添えて

おきます。

 

 

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