鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

プロ野球選手に4割打者がいない理由

公認会計士の岩谷誠治さんのご著書、「経

理の知識ゼロでも決算書が読めるようにな

る本」( https://amzn.to/2Ilancj )に、

プロ野球選手に4割打者がいない理由につ

いて書かれていました。


その疑問の前提として、平成8年に東京六

大学野球首位打者になった慶応大学の高

橋由伸選手(現在のプロ野球読売ジャイア

ンツの監督)は、5割1分2厘の成績を残

すなど、東京六大学野球では、4割打者が

たくさん現れるのですが、これと比較して

プロ野球選手には4割打者がまったくいま

せん。


その理由は、プロ野球選手の打席は多いか

らと、岩谷さんは述べておられます。


プロ野球では、1つのシーズンに140程

度の試合があるので、レギュラーの野手は

年間に400回は打席に立ちます。


一方で、東京六大学野球では、1シーズン

が10試合程度なので、40回程度しか打

席に立ちません。


したがって、東京六大学野球の選手は、

シーズンの10試合の間だけ調子が良けれ

ば、4割の打率をあげることも可能なので

しょう。


しかし、1シーズン400打席のあるプロ

野球選手は、半年以上かけて行われる14

0試合を通して、ずっとよい調子を維持す

ることは不可能でしょう。


そのため、シーズンの間、調子のよい期間

と調子のよくない期間があり、それが平均

されると、2割~3割の打率になるという

ことが、冒頭の疑問への回答として書かれ

ています。


では、このプロ野球選手に4割打者がいな

い理由と会計は、どう関係があるのでしょ

うか?


これについて、岩谷さんは、「規模が大き

い会社ほど、毎年の決算書の変化は小さく

なります。


したがって、規模が大きい会社では決算書

の数値の小さな変化にも意味があります

が、規模が小さい会社は、毎年の決算書の

変化が大きいので、ザックリと決算書を見

た方が、有益な情報が得られます」と書い

ておられます。


これは、当たり前のことなのですが、一般

の人はここまで意識していることはあまり

ないでしょう。


これがどういう時に重要になってくるかと

いうと、中小企業では、売上高のブレが会

社全体に大く影響するということがありま

す。


例えば、売上高が3億円程度の工務店があ

るとします。


その会社では、主に、注文住宅を販売して

いるのですが、たまたま、1棟の住宅の工

期が遅れて、その会社の決算日までに引き

渡しする予定が、翌期にずれてしまったと

します。


住宅の価格が3千万円であったとすると、

その売上高が翌期にずれると、その期の売

上高の約10%が減少してしまうことにな

ります。


これが、売上高が30億円の会社の場合で

は、売上高が1%しか減少しないことにな

るので、会社全体から見た変化は小さくな

ります。


銀行が、融資先の審査をするときは、この

ような中小企業の特徴は理解しています。


そこで、融資審査は、1期の決算書だけで

は審査せず、最低でも3か年分の決算書に

目を通し、複数年の平均値などを算出する

など、より実態に近い状況を把握して融資

審査を行います。


一方、融資を受ける側にも注意すべき点が

あります。


前述の工務店の例では、単純ですが、仮に

引き渡しが遅れた住宅が、遅れずに予定通

り引き渡しできた場合の仮の売上高、仮の

利益額などを計算して銀行に状況を説明す

ると、銀行に自社の状況を理解してもらい

やすくなるでしょう。


ただ、現実的にはもっと複雑な事情で売上

高がぶれることが多いので、セグメント情

報(区分情報)を提供できるようにしてお

くとよいでしょう。


セグメント情報とは、例えば、売上高を、

店舗別、地域別、商品別、顧客別、部門別

といった、内訳で示す情報のことです。


私も、銀行職員時代に、融資先から売上高

が減少したときに「●●部門の売上のうち

●●円が翌期にずれこんだ」と口頭で説明

を受ける時がよくあったのですが、実は、

その会社は部門別に売上高を集計していな

いために、その口頭での説明の裏付が得ら

れないということがほとんどでした。


その口頭での説明が必ずしも信用できない

ということではないのですが、帳簿などを

見せてもらってよく調査をすると、社長の

説明は、売上高の減少の真の原因ではない

ということも少なからずありました。


やはり、きちんとした裏付けがないと、銀

行側はいぶかしく受け止めるでしょう。


話を戻して、今回の記事の結論は、中小企

業にとっては、売上がずれる影響は、大企

業と比較して相対的に大きいことから、部

門別の情報が活用できるよう、より細かい

管理が大切になるということです。

 

 

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