鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

コンサルタントと事業リーダーの違い

DeNAを創業した南場智子さんのご著書

不格好経営-チームDeNAの挑戦」

( https://amzn.to/2HG8rfj )を拝読しま

した。


ご著書によれば、南場さんがDeNAを創

業したきっかけは、南場さんがコンサル

ティング会社のマッキンゼーに勤務するコ

ンサルタントとして、ソニーコミュニケー

ションネットワークの社長へ「ネットオー

クションをたちあげるべきです」と提案し

たところ、「そんなに熱っぽく語るなら、

自分でやったらどうだ」と言われたことだ

そうです。


この一言で火がついた南場さんはDeNA

を立ち上げたわけですが、このことによっ

て、南場さんは、コンサルタントから事業

リーダーに立場が変わったということでも

あります。


これについて、南場さんは、ご著書で、次

のように述べています。


「まず、物事を提案する立場から決める立

場への転換に苦労した。


コンサルタントとして、『A案にすべきで

す』と言うことには慣れているのに、『A

案にします』と決断するとなると、とんで

もない勇気が必要になる。


コンサルタントの『するべき』も判断だ。


しかし、プレッシャーのなかでの経営者の

意思決定は別次元だった。


ところで、『実際に事業をやる立場と同じ

気持ちで提案しています』と言うコンサル

タントがいたら、それは無知であり、おご

りだ。


優秀なコンサルタントは、間違った提案を

しても死なない立場にいるからこそ、価値

のあるアドバイスができることを認識して

いる」


これは、コンサルタントと事業リーダー

(社長)の両方を経験した南場さんの言葉

であり、深い真実味が伝わってきます。


当然、私も、南場さんの考え方に同感なの

ですが、経営者の最大の役割は「意思決

定」であり、この役割から経営者は逃れる

ことを南場さんの本を読んで改めて感じま

した。


話はそれますが、業績のよくない会社の共

通点として、経営者が肝心なことの意思決

定をせずに、成り行きで事業運営をしてい

るということを感じることがあります。


意思決定をしないことの問題は、改善のた

めの活動に着手できなくなるばかりか、

「自分が決めたわけではないから、現状が

悪化したのは自分の責任ではない」と考え

てしまう人もいるということです。


「意思決定をしない」ということも、経営

者が意思決定しているわけですから、単な

る責任逃れに過ぎません。


むしろ、明確に意思決定をすることによっ

て、経営者は能動的に事業に臨むことがで

きるのであって、意思決定から逃れようと

することは、責任放棄をしているに過ぎま

せん。


話を戻して、南場さんは「優秀なコンサル

タントは、間違った提案をしても死なない

立場にいるからこそ、価値のあるアドバイ

スができることを認識している」と述べて

おられますが、これは、優秀なコンサルタ

ントは、提案することに徹しているという

ことでもあると思います。


先ほど、「経営者の最大の役割は意思決

定」と述べましたが、これは、「事業の成

果は、すべて、意思決定をした経営者のも

の」ということでもあると私は考えていま

す。


よって、優秀なコンサルタントは意思決定

の支援には全力を注ぐものの、意思決定に

はかかわらないことによって、事業の手柄

はすべて経営者のものとしているというこ

とです。


そして、南場さんが批判している「実際に

事業をやる立場と同じ気持ちで提案してい

ますと言うコンサルタント」は、本来はす

べて経営者のものである手柄のいくばくか

を、自分のものにしたいと考えている人で

しょう。


逆に、「コンサルタントは人のふんどしで

相撲を取ろうとしている」と批判する経営

者の方に会うこともあります。


これは、コンサルタントは口は出すが責任

をとろうとしないということへの批判だと

思います。


私は、このような批判は、前提が誤ってい

ると思います。


すなわち、コンサルタントは意思決定の支

援が役割であり、意思決定は経営者が自ら

の責任で行わなければなりません。


でも、その意思決定をすることがその人に

とっては大きな負担であるために、コンサ

ルタントにも責任を持ってもらいたいと考

えていることから、「コンサルタントは無

責任である」と、批判してしまうのでしょ

う。


今回の結論は、大きな勇気がいるものの、

経営者は自らの責任で意思決定することが

最大の役割であり、それから逃れることは

できないということです。


だからこそ、事業が成功したときの手柄

も、すべて経営者のものとなるということ

です。


そして、意思決定に果敢に挑んでいる経営

者の経営する会社こそ、業績もよくなると

いうことです。

 

 

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