鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

力を引き出すコミュニケーション

サンフレッチェ広島やドイツのプロサッ

カーリーグで選手として活躍した後、川崎

フロンターレの監督などを経て、2017

年に名古屋グランパスの監督に就任し、そ

の年にチームをJ1昇格に導いた、風間八

宏さんの「伝わる技術-力を引き出すコミュ

ニケーション」

( https://amzn.to/2vr98qt )を拝読しま

した。


タイトルからも分かるとおり、この本は、

風間さんがコミュニケーションにどのよう

な工夫をしてきたかが述べられています。


風間さんの考え方の基本として、「伝えた

いことを垂れ流すだけで伝わるのか、指導

者が自己満足で伝えたつもりになっている

だけでは、結局何もつたわらない」という

ことがあると思います。


このことは、多くの方がご理解されると思

いますが、その一方で、「どうやったら、

部下に、経営者の考え方が伝わるのだろ

う」と悩んでいる経営者の方もいると思い

ます。


確かに、コミュニケーションは意思を伝え

るためのツールですが、必ずしも「部下が

経営者の意図通りに動かないことは、コ

ミュニケーションに問題がある」とは限ら

ないでしょう。


部下が経営者の意図通りに動かない原因と

しては、(1)経営者の伝え方に問題があ

る、(2)部下の聴き方に問題がある、

(3)部下に経営者の意図は伝わっている

が、それを実践するための能力が部下にな

いか、部下がそれに従いたくないと考えて

いる、などが考えられます。


(1)と(2)は、コミュニケーションの

問題ですが、(3)はコミュニケーション

の問題とは言えないでしょう。


しかし、これは、すべての場合ではありま

せんが、良好なコミュニケーションとは、

部下を経営者の意図通りに動く指示の仕方

という前提で議論されることも多いと思い

ます。


風間さんのいう、「伝えたいことを垂れ流

すだけで伝わるのか」ということは、経営

者が一方的に自分の意図を伝えようとする

ことは無意味ということを、示唆しておら

れると思います。


では、経営者は、何をどのように部下に伝

えればよいのでしょうか?


これについて、風間さんは、「目先の勝敗

を指標にしてこだわりすぎると、監督とプ

レーヤーの間でブレが生じます。


しかし、『楽しむ(=本気になれる)』を

指標に置けば、楽しんでいるかどうか、自

分で向き合うことができます。


本気であるかどうかが大事なのです」と述

べておられます。


これは、コミュニケーションが、組織の構

成員の共通目的に沿って行われているかど

うかが問われるということでしょう。


(ちなみに、共通目的は、コミュニケー

ション、貢献意欲とともに、組織の3要素

のひとつです)


サッカーチームで言えば試合に勝つ、会社

で言えば利益を得る、というのは、監督や

経営者の都合である要素が大きいでしょ

う。


でも、サッカーチームに所属するプレー

ヤーとして、技術を高めることができると

いう目的を達成できるようにするための指

示であるということが分かれば、プレー

ヤーは監督の指示を積極的に聞くようにな

るし、それに従って活動するようになるで

しょう。


その例として、風間さんは、川崎フロン

ターレの監督時代に、何度も日本代表メン

バーに選ばれている中村憲剛選手に対し

て、「お前は自分を抑えて、50%くらい

でプレーしているんじゃないか?


本当はもっとできるだろう?


周りを気にせず、100%のプレーをして

ほしい」と伝えたそうです。


中村選手は和を乱さないという気遣いをす

る選手だったので、自分を抑えてプレーし

ていたわけですが、それは、中村選手の本

心ではなかったわけです。


風間さんはその状況を見抜き、中村選手に

は全力でプレーしてもらった方が、中村選

手がより向上できるだけでなく、チーム全

体にもよい影響を与えると考え、前述のよ

うな指示をしたのでしょう。


このような指示が出されたことで、中村選

手はより本気でプレーし、中村選手にも

チームにもよい結果をもたらすことになっ

たことでしょう。


これは、ビジネスにおいても共通すること

です。


当然のことですが、経営者の立場だけで指

示を出すのではなく、従業員の立場、会社

全体の利益を前提に指示を出さなければ、

コミュニケーションは何の意味もありませ

ん。

 

 

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