鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

中小企業への金融支援の功罪

前回、日本銀行の金融システムレポートの

内容をご紹介し、低金利が続くことが、金

融機関の危機を高めるということについて

書きました


実は、私は、先日、債務超過の会社のご支

援を行い、その会社が金融機関から低利の

融資を受けることに成功しました。


その融資は、自治体の制度融資で、信用保

証協会の保証もついているので、金融機関

としても前向きに取り組んでくれました。


ただし、その融資は銀行から見て、あまり

うまみのない、低金利の融資でした。


具体的には、融資期間は5か年で、利率は

1.8%、さらに、信用保証協会への保証

料は全額自治体が負担します。


このことは、融資を受ける会社にとっては

ありがたいことです。


もし、制度融資がなく、信用保証協会の保

証がなければ、銀行としては、同様の融資

の利率が1.8%では、間違いなく採算が

割れてしまうでしょう。


もちろん、銀行は、信用保証協会の保証が

ついているので、貸倒リスクはなく、その

コストは負担しなくてすみます。


でも、業況の芳しくない会社が、低利の融

資を受けることができるという状況が、銀

行がプロパー融資(信用保証協会の保証が

なく、制度融資でもない銀行独自の融資)

金利を引き上げにくくしているというこ

とも事実だと思います。


制度融資や信用保証協会の保証には、利用

できる金額に限度があるので、銀行がその

限度を超える融資をするときは、プロパー

融資をすることになります。


もちろん、一般的にプロパー融資は制度融

資よりも利率は高くなりますが、それでも

制度融資の利率が低いと、プロパー融資の

利率を上げにくくなるでしょう。


一方で、制度融資や信用保証協会による、

中小企業への金融支援が問題があるのかと

いうと、それらの金融支援は重要な意義が

あり、必要性が高いと言えます。


ただ、本来は淘汰されるべき会社も、金融

支援によって事業を続けることができてし

まうことで、金融期間の適正な融資利率の

確保をより困難にしている可能性もあると

考えられます。


中小企業庁などは、信用保証協会の業務を

縮小することを目指していると思われる動

きがありますが、その要因のひとつは、こ

のような状況もあると考えられます。


話はそれますが、昨年から、宅配会社が十

分な採算を得られていないことに社会的な

関心が集まり、多くの宅配業者が料金の値

上げをしました。


それは、宅配会社の採算が悪い状態が続く

と、かえって宅配会社がなくなってしま

い、社会的な問題となるということが認識

されたことが、料金の値上げを受け入れら

れることにつながったのでしょう。


これと同様に、金融機関も、採算の改善に

努力は求められますが、過度な採算悪化

は、金融機関の適正な業務運営を困難に

し、逆に中小企業を苦しめることになるか

もしれません。


この問題は、すぐに結論は出ないと思いま

すが、今後、社会的な問題として認識され

ることが必要だと私は考えています。

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

f:id:rokkakuakio:20180422221713j:plain