鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

物理的定義と機能的定義

先日、九州大学ビジネススクール目代

史准教授が、ポッドキャスト番組で、ファ

イブフォース分析に関するお話をしておら

れました。


(ご参考→ https://goo.gl/fv4ciY


ファイブフォース分析は、ポーターの提唱

した分析手法で、経営戦略の立案にあたっ

て、その会社の属する業界の経営環境を、

5つの要因から分析するものです。


その5つの要因とは、供給企業の交渉力、

買い手の交渉力、競争企業間の敵対関係、

新規参入業者の脅威、代替品の脅威のこと

ですが、私は、最近は、代替品の脅威に関

する分析が重要になってきていると考えて

います。


前述の番組の中では、目代先生は、カジュ

アル衣料の代替品は、衣料品に限らないと

指摘しておられます。


すなわち、カジュアル衣料品は、衣服が欲

しい人が購入すると考えられがちですが、

その場合、フォーマルウェアやスポーツ

ウェアが代替品ということになります。


しかし、最近は、カジュアル衣料品を買う

人は、必ずしも衣料品そのものを求めてい

るのではなく、余暇のショッピングをした

いというニーズを満たすために購入されて

いるということが分かっているそうです。


そうであれば、余暇を過ごす他の手段も代

替品となるので、カジュアル衣料品店

とっては、カフェや習い事なども脅威にな

り得るということです。


ところで、カジュアル衣料品を衣料品を販

売する事業という見方をすることを、物理

的定義といい、一方、ショッピングを楽し

む手段を提供する事業という見方をするこ

とを機能的定義といいます。


このことは容易に理解されることと思いま

すが、一方で、実際の事業の現場では、自

社製品のライバルを物理的定義という狭い

範囲で考えられてしまいがちのようです。


その原因はいくつも考えられるのですが、

最も大きな原因は、自社の事業の範囲が狭

い方が、事業に携わる側としては楽である

ということでしょう。


確かに、自社の事業の範囲を広げすぎるこ

とも問題なのですが、範囲を狭くしすぎる

ことも、顧客の真のニーズをとらえること

ができなくなります。


最近の例では、シダックスが、カラオケは

グループで楽しむものという前提で事業を

続けてきたことから、ひとりカラオケの

ニーズをつかみきれず、カラオケ事業を運

営する子会社を売却することになったとい

う例があります。


経営者にとっては、事業へのこだわりがあ

り、そのこだわりが利益の源泉となる場合

もありますが、それと同時に、顧客のニー

ズを的確につかんでいるか、思わぬところ

に代替品の脅威が潜んでいないかというと

ころにも注意しなければなりません。


このような、自社事業の戦略の正しさを常

に検証することは、経営者の重要な役割で

す。

 

 

 

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