鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

A3報告書

トヨタに17年間勤務し、現在はカイゼン

コンサルタントとしてご活躍の石井住枝さ

んのご著書、「できる人はなぜ、『A3』

で考えるのか?」

( https://amzn.to/2sRc4sD )を拝読しま

した。


ちなみに、A3報告書とは、トヨタで50

年以上にわたって継承されてきた、業務改

善プロジェクトのフォーマットのことで

す。


(A3報告書の具体的なフォーマットにつ

いては、こちらをご覧下さい。→

https://goo.gl/SJePqd


このフォーマットには、(1)テーマ→

(2)テーマ設定の背景→(3)現状把握

→(4)目標の設定→(5)要因解析→

(6)対策と実施→(7)実績結果と横展

→(8)反省と今後の課題の、8つのス

テップを記入します。


本のタイトルを見ると、A3報告書を使え

ば、難しい課題も容易に解決できるように

なる手法が書かれていると感じてしまうか

もしれませんが、実際の本の内容は、A3

報告書そのものよりも、前述の8つのス

テップについて説明されています。


ですから、A3報告書がトヨタの業務改善

のノウハウであるというよりも、8つのス

テップがトヨタの業務改善のノウハウであ

ると考えた方がよいでしょう。


ところで、私が地方銀行の本社に勤務して

いた時も、すべての従業員約3,000人

を巻き込むことになる業務改善プロジェク

トを何度か手掛けてきましたが、その場

合、単に、「この手法はよさそうだから実

践してみましょう」と発案するだけでは、

誰も動いてくれませんでした。


大勢の人を巻き込むことになるということ

から考えれば当然のことですが、それなり

の改善の効果や達成可能性について、しっ

かりとした根拠を示さなければ、プロジェ

クト実行の承認をしてもらうことすらでき

ませんでした。


そういった経験から、石井さんのご著書で

示された8つのステップの重要性を、私も

強く感じました。


また、同書の内容はたいへん濃いものに

なっており、この記事で解説するにはス

ペースがとても足りないくらいです。


あえて端的に述べると、プロジェクトの可

視化、進捗管理、PDCAの実践を愚直に

実践することが、8つのステップの基本に

なっていると思います。


したがって、繰り返しになりますが、A3

報告書のフォーマットさえ使えば業務改善

が進むというものではなく、プロジェクト

リーダーが8つのステップを確実に遂行す

るスキルを身に着けることが最大のポイン

トになります。


現に、石井さんもご著書の中で、初級編、

中級編、上級編と、難易度を追って解説し

なければならないくらい、トヨタの業務改

善の手法を実践することは容易ではないと

いうことです。


ただ、これは裏を返せば、いったん、この

業務改善のためのスキルを身に着けること

ができれば、トヨタ自動車が解決してきた

困難な課題と同じくらいの困難な課題でも

解決できるスキルを身に着けることができ

たということになります。


ただ、そこまでのスキルを身に着けないま

でも、前述の8つのステップを意識して取

り組むだけでも、これまで遂行できなかっ

たことが改善できるようになるのではない

でしょうか?


一方、これまで私が事業改善のお手伝いを

してきた中小企業では、経営者の方が社内

で何らかのプロジェクトを実践しようとす

るとき、単に、「君をプロジェクトリー

ダーにするから、これをやりなさい」とい

う程度の指示しかしないという例を多く見

ています。


仮に、そのプロジェクトを実践するという

経営者の方の判断が正しかったとしても、

プロジェクト管理がつたないために失敗し

てしまうという可能性もあります。


もちろん、社内のリーダーに、プロジェク

ト管理のスキルを身に着けるための経験を

させることも必要ですが、そのためには、

まず、経営者自身がそのスキルを身に着け

ていなければ、部下に対して助言すらでき

ず、単なる丸投げになってしまいかねませ

ん。


今回の記事の結論は、会社の事業活動を組

織的なものとし、成果を高めようとするの

であれば、トヨタが実践している8つのス

テップの水準に至らなくても、きちんとし

たプロジェクト管理を実践することがする

ことが基本になるということです。


少なくとも、口頭で指示するだけでは、経

営者の方の意図する通りに活動が進むこと

は期待できないでしょう。


さらに、経営者の方がきちんとプロジェク

トを管理できれば、改善活動が完遂される

だけでなく、さらにより難しい活動も実践

できるスキルが身に付き、徐々にではあり

ますが、ライバルに差をつけることができ

るようになると、私は考えています。

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180612222025j:plain