鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

すぐに効果のあること

「すぐに効果の出る施策をやれ!」


これは、私がかつて働いていた銀行の本社

で働いていた時に、役員から何度も聞かさ

れた指示です。


当時の銀行は、多額の不良債権を抱えてい

て、その補填のために多くの利益を出さな

ければならない状態でした。


その状況は分かっていたので、指示を受け

た私たちも、懸命にすぐ利益の出ることを

実施しようとしていました。


でも、その一方で不安も感じていました。


なぜなら、すぐに利益の出る施策というの

は、実が青いうちに収穫するようなもので

あったり、将来につけを残すようなことば

かりだったからです。


結果として、銀行は国有化という形で、実

質的な倒産を迎えました。


バブル崩壊後の銀行は、あまり傷を負わな

かった銀行と、深い傷を負った銀行に分か

れ、徐々に両者の業績の差は広がって行き

ました。


そして、旧山一證券や旧拓銀の経営破たん

をきっかけに、傷の深い銀行は国有化され

たり、強制的に資本注入を受けたりしまし

た。


そこで、私が勤めていた銀行は、遅かれ早

かれ経営破たんしたことには違いがないの

かもしれません。


そうであれば、傷の浅いうちに資本注入を

受けるよう自ら手を挙げた方が、損失額は

少なかったことは確実です。


ただ、これは、多くの破たんした会社の例

を見ると、ほとんど不可能なのかもしれま

せん。


なぜなら、会社を破たんさせた経営者は、

責任を追及されるからです。


もう少しありていに書くと、破綻した銀行

の経営者は、不良債権を負ったことについ

て損害賠償請求訴訟を起こされ、ほとんど

の場合は、旧経営者はすべての財産を失う

ことになります。


恐らく、当時の経営者は「もう少し会社が

持てば、なんとか切り抜けられるのではな

いか」という甘い希望を持っていたのかも

しれませんが、やはり、傾き出した銀行を

正常に戻せるのであれば、とうの昔にでき

ていたはずです。


と、ここまで書いてきたことから何を言い

たいのかというと、「すぐに効果の出る施

策をやれ!」と経営者が言い出した時点

で、もう会社は倒産への道を転がり出して

いるということです。


もうひとつ付け加えると、「すぐに効果の

出る施策」だけをやっていればいいのであ

れば、経営者は不要です。


そもそも、事業の施策は1年~2年でゴー

ルするものではなく、短くても3年~5年

をかけて実を結ぶものです。


だからこそ、その実を結ぶまでに経営者の

采配が必要なのです。


ですから、「すぐに効果の出る施策」を求

める経営者は、自らの存在を否定している

ことにもなります。


実は、「すぐに効果の出る施策をやれ!」

という言葉は、私が事業改善のお手伝いを

した会社の経営者の口からもきいたことが

あります。


そのような状況に至った理由はさまざまな

ものがあったかもしれません。


ただ、「すぐに効果の出る施策をやれ!」

という指示を出さないですむようにするこ

とが経営者の最低限の責務であり、それを

口にしなければならなくなるような状況に

なったのであれば、せめて、それ以上傷口

が広がらないように善後策をとることが望

ましいということを、私の経験から感じて

います。

 

 

 

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