鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

かんばん方式と全体最適

前回に引き続き、トヨタに17年間勤務の

後、現在はカイゼンコンシェルジュとして

ご活躍の石井住枝さんからおききしたお話

について述べたいと思います。


石井さんの古巣のトヨタと言えば、「かん

ばん方式」が代名詞になっています。


かんばん方式はあまりにも有名なので、こ

こであらためて説明する必要はないと思い

ますが、念のために簡単に触れると、自動

車の製造工程で、後工程が前工程に部品を

調達しに行く際に、何が使われたかをかん

ばんを使って伝える方式で、このことによ

り、不要な在庫を持たないようにすること

ができます。


ちなみに、かんばんとは、トヨタが独自に

名付けたもののようで、品名、品番、置き

場所などの情報が記載されている管理用の

カードを指します。


(ご参考→ https://goo.gl/Ysb9fb


ところで、私は、このかんばん方式につい

て、学生時代の会計の講義を受けていると

きに初めて学びました。


会計では、在庫は必要以上に持たないこと

が望ましいという考え方があり、前述の通

り、それを実現する手法として、よく、ト

ヨタのかんばん方式が好事例として紹介さ

れます。


そこで、私は、トヨタかんばん方式を導

入しているのは、会計の観点から、むだな

在庫を持たないようにするためであると、

ずっと考えていました。


ところが、石井さんのお話しをきいたとこ

ろ、かんばん方式は、会計上の観点からだ

けではないということが分かりました。


以前もご紹介しましたが、トヨタの製造現

場では、「前作業は神様、後作業はお客

様」という考え方をしているそうです。


(ご参考→ https://goo.gl/x5f7iW


これは、自分の作業は、前作業の担当者が

きちんと作業をしてくれたからできるよう

になっているので、前作業は神様と考えま

しょう、そして、自分の作業は、後作業の

担当者にきちんとバトンタッチできるよ

う、お客さまに対して仕事をするように渡

しましょうということを指しています。


このことをひとことで言えば、自分の担当

する工程だけのことを考えず、すべての工

程のことを考えながら仕事をする、すなわ

ち、全体最適を意識した結果、編み出され

た方式が、かんばん方式なのだそうです。


そして、当然のことながら、全体最適を目

指して行けば、むだな在庫を持つことも防

ぐことができるようになるという、会計の

観点でも効率化が図ることができます。


私も、会計学を学んだ当初は、会計とは事

業のひとつの側面を示したものに過ぎない

ということに常に注意しなければならない

と教えられ、ずっとこれを意識してきまし

た。


でも、石井さんのお話をきいて、自分自身

で戒めていた、会計の観点だけで、トヨタ

かんばん方式をとらえてしまっていたと

いうことに気づかされました。


今回の記事の結論は、事業は、会計の観点

だけから見ていてはいけないということで

す。


順序としては、事業全体を効率化すること

から出発し、その結果、よい製品ができ、

働く人も満足し、利益も得られるというこ

とになります。


ちなみに、これは会計の観点だけにあては

まるのではなく、別の観点にもあてはまり

ます。


例えば、「よい製品」と造ろうとして、製

品だけにこだわりすぎると、むだなコスト

がかかったり、従業員が疲弊してしまうと

いうことにもなります。


事業でよい成果を得るには、ひと、もの、

かねの3つの経営資源を最適に配分するこ

とが大切です。


そして、その配分をどうするかという調整

をすることが、経営者に求められている大

切な役割でもあります。

 

 

 

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