鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

不満はなくなっても満足にはならない

前回の記事で、社員が定時退社をしつつも

業績を伸ばし続けている化粧品販売会社、

ランクアップの社長の岩崎さんのご著書に

ついて述べました。


実は、同書で、もうひとつ興味深い内容が

書かれていたので、今回は、それについて

ご紹介したいと思います。


それは、ランクアップは業績が順調で、か

つ、社員が17時に退社できる会社である

にもかかわらず、社員にはストレスが多く

て、中には体調不良を訴える社員もいたそ

うです。


これは、衛生要因ー動機付け要因という理

論で説明される現象です。


(ご参考→ https://goo.gl/yPQi1Y


簡単に述べれば、人は、仕事に関して、不

満足を感じる原因となる衛生要因と、満足

を感じる原因となる動機付け要因があると

いうことです。


衛生要因の具体的なものは、会社の方針や

職場の環境で、これらが不十分なときに、

不満足を感じます。


動機付け要因の具体的なものは、仕事の内

容、達成感、承認などで、これらが十分で

あれば満足を感じます。


ここでポイントとなるのは、不満足を感じ

る要因を取り除くことで、不満足は感じな

くなるものの、それだけでは満足はしない

ということです。


岩崎さんの会社で言えば、定時退社できる

ということで、不満はなくなったものの、

それをもって社員の方は満足を感じてはい

なかったということです。


そこで、岩崎さんは、専門の会社に依頼し

て、社員にアンケートをとってもらったそ

うです。


その結果、働き甲斐のある会社と感じてい

た人は、管理職で83%なのに対し、一般

社員は47%だったそうです。


その他の回答として、経営者は言行一致し

ていると感じるが6%、従業員が会社の施

策の意思決定に参画していると感じるが

11%、管理職にえこひいきがないと感じ

ているが17%、役職員は裏工作や誹謗中

傷がないように心がけていると感じるが

17%、会社の方針と実現方法が明確であ

るが11%というような回答が得られたそ

うです。


これを見た岩崎さんは、自分が社長として

失格という烙印を社員から押されたも同然

と感じ、いろいろな改善策を行いました。


そのひとつは、会社の価値観を「お客さま

に選ばれ続ける会社になるためには変化が

必要であり、そのために新しいことに挑戦

する」と決め、社員に公表したというもの

です。


これは、いままでは、社内に判断基準が明

示されておらず、すべて社長である岩崎さ

んに伺いを立てるようになっていたという

反省によるものです。


しかも、岩崎さん自身も、朝令暮改のこと

を言っていたことがあり、判断基準を示す

ことでそれを防ぐ狙いもあります。


その結果、社員が提案してきたお客さまイ

ベント、社内でのハロウィンパーティー、

化粧品の店舗でのテスト販売を実施するよ

うになったそうです。


とはいえ、これらの企画は、すべて提案し

た社員に任せるというものです。


かつては社員から企画の提案があっても、

岩崎さん自身がいろいろと口出しをして、

結果として岩崎さんの発案した企画になっ

てしまい、それを実施する社員は、受動的

にしかなれなかったそうです。


でも、現在は、岩崎さんは社員を信頼し、

仕事を任せるようにしたそうです。


その結果、新しいヒット商品が生まれた

り、いままで実施をためらっていた10周

年イベント、社員旅行、広報部の設置など

を実施できるようになったそうです。


そして、企業サーベイもグーグル社なみの

高得点を得ることができたそうです。


ここまで書いてきたことは、よく理解でき

る内容とは思いますが、案外、当事者には

気づきにくいことのようです。


岩崎さんも、かつては、会社が好決算のと

きに、社員の方をねぎらうために高級ホテ

ルのディナーに招待したことがあったそう

です。


いまでは、当時のことを「いい会社と言わ

れたくてやったことでしょう」と社員から

言われ、その通りだったと考えているそう

ですが、当時の岩崎さんは、社員のために

いろいろなことをやっているのに、なぜ、

満足してもらえなかったのかがわからな

かったそうです。


でも、自分を客観的に評価してもらおうと

いう謙虚さがあったことで、真の原因に気

づく機会を得ることができたわけです。


今回の記事の結論は、経営者の方は、注意

深くしていても、知らずに独善的になって

しまいがちなので、空回りしないように、

相当の注意が必要だということです。


また、「会社を自分の思い通りに動かせな

ければつまらない」と考える経営者の方も

多いと思いますが、それは、社員の方たち

を、単に、黙って命令に従うロボットと同

じ扱いをしてしまうことになりかねず、そ

のことも問題ですが、そのような考え方で

会社を経営していると業績もよくならない

ということにもご注意いただきたいと思い

ます。

 

 

 

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