鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

事業が急拡大している会社は危険

もう、半年ほど前のことになりますが、横

浜市の着物の販売会社が、成人の日当日に

なって店を開けず、着物の購入を予定して

いた新成人が、着物を着ることができなく

なったという事件は、記憶に新しいと思い

ます。


その会社が、神奈川県警から、3,500

万円の融資を受けるために銀行をだました

疑いを持たれていると、先日、新聞で報道

されていました。


(ご参考→ https://goo.gl/ofZ7LF


具体的には、「社長は28年9月、柏市

新店舗を開店するために、売上5,000

万円を水増しした27年9月期の決算書類

を神奈川県内の銀行に示し、3,500万

円の融資を受けた」と、記事に書かれてい

ます。


これについては、大きな疑問点が2つあり

ます。


ひとつは、偽の決算書を銀行はなぜ見抜け

なかったのかということです。


ただ、会社が税務署へも売上を水増しした

ものを申告していると、銀行も、それを真

正な決算書として受理せざるを得ません。


同社がどのような方法を使ったのかまでは

報道から分かりませんが、もし、税務署と

銀行へ、同一の、売上を水増しした決算書

を提出するという方法をとっていたとした

ら、銀行としては、「本物の決算書を提出

してください」とは言えなくなります。


ふたつめの疑問点は、仮に、前述のよう

に、同社が税務署と銀行に対して売上を水

増しした決算書を提出していたとしても、

それが、粉飾であることを銀行がなぜ見抜

けなかったのかということです。


売上の架空計上は、単に、売上高の数値を

増やせばよいという訳ではなく、それにと

もなって、仕入額や経費も増やさなければ

なりません。


もともと、存在しない売上を増やしたわけ

ですから、つじつま合わせも相当な苦労が

必要になり、よほど会計に詳しい人でなけ

れば、銀行から不自然な決算書と気づかれ

てしまうと思います。


また、報道によれば、「同社は26年以降

に東京都八王子市などに計5店を開設し、

店舗数を拡大していく過程で債務が広がっ

た」とあるように、同社は事業が急拡大し

ており、そのような会社に対しては、銀行

は、ちょっとしたことがきっかけで大幅な

赤字に転落する可能性が高いという前提で

慎重に審査すると思います。


それでも、同社は融資を得ることができた

わけですが、同社が故意に銀行をだまそう

としていたとはいえ、融資をした銀行支店

は、結果責任だけではなく、審査過程に重

大な見落としがあったという指摘は避けら

れないでしょう。


これは、新聞記事からだけの限定的な情報

を前提とする見解なので、断定的には述べ

ることはできないのですが、銀行がもう少

ししっかりと融資審査を行い、同社の粉飾

を見抜いていれば、28年の時点で同社は

融資を受けることができず、その時点で事

業は停止し、被害に遭う新成人が減ったの

ではないかと私は思っています。


今回の記事の結論は、着物販売店は、いっ

たん、粉飾決算によって融資を受けること

に成功していますが、それが成功すること

は一般的には考えにくく、例外と考えるべ

きだということです。


そして、その会社は、粉飾決算によって1

度は融資を受けることに成功しています

が、結果的には倒産に至り、経営者自身の

責任がさらに大きくなってしまっただけで

なく、より多くの人が損害を受けることに

なってしまいました。


事業がうまく行かなった場合、銀行などに

はなかなか言い出しにくいと思いますが、

早めに相談する方が、会社が挽回する確率

も高くなります。


そして、そういうときのためにも、業況の

良いときから銀行と信頼関係を築いておく

ことは大切です。

 

 

 

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