鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

経営者とコンサルタントの対立は望ましい

私は、労働問題専門の弁護士さんを何人か

知っているのですが、会社側につく方と、

従業員側につく方がいらっしゃいます。


それは、誰から受任をしたかということで

明確で、それぞれの委任者の利益のために

問題の解決を図ろうとします。


ところが、事業者向けのコンサルティング

の場合、依頼主がわかりにくい場合があり

ます。


例えば、事業再生のコンサルティングは、

コンサルタントは会社と契約し、報酬も会

社から支払われますが、実質的には、その

会社の株主である再生ファンドやその会社

を支援している銀行の意図に従って行われ

ます。


そのため、事業再生をする中で、社長の能

力が不足すると判断したときは、コンサル

タントが、社長の交代を株主に求める場合

もあり、実際に社長が交代することもあり

ます。


(事業再生をしている会社の社長は、事業

再生を行う前からの社長がそのまま就任し

ている場合や、再生ファンドから指名され

たターンアラウンドマネージャーなどが就

任している場合もあります)


コンサルタントが社長と対立することがあ

るというのは不思議な感じがしますが、会

社の最終的な責任者は株主なので、コンサ

ルタントの意見と株主の意見が一致すれば

社長が解任されることもあるわけです。


一方、一般的なオーナー会社の場合、社長

は大株主でもあるため、コンサルティング

も社長の意向に沿って行われます。


それでは、コンサルティングを受けている

オーナー会社で、コンサルタントと社長の

間で意見が対立した場合はどうなるでしょ

うか?


その場合は、コンサルタントが自ら顧問を

おりるか、社長がコンサルティング契約を

解除することになります。


もちろん、コンサルタントの力量が足りな

い場合や、方針の選定にあたってコンサル

タントが誤った判断をしている可能性もあ

るので、そのような時は、コンサルタント

と会社との関わりを断つことが正解という

ことになります。


ただ、私の経験から、コンサルタントと社

長の意見が対立する時というのは、社長側

が改善活動の継続に音を上げる時というこ

とが多いと感じています。


そのような場合、コンサルタントの方針が

正しいかどうかというよりは、社長の能力

の高さによって改善活動が停止してしまう

ことになります。


現実には、もっと複雑で、コンサルタント

と社長のどちらが正しいかというように、

明確に線引きができるものではなく、仮

に、社長の能力があまり高くないという場

合は、コンサルタント側にも、社長のキャ

パシティに応じて、実践しやすい改善方針

を提示することが求められます。


ただ、オーナー会社の場合、事業再生をし

ている会社と違って、社長の交代は選択肢

にありません。


解任されない限り、ずっとひとりの社長と

事業改善に取り組むことになります。


だからといって、私は、オーナー会社のコ

ンサルティングを行うことを否定的に考え

てはいません。


むしろ、やりがいがあると思っています。


正直なところ、事業経営において、経営者

の判断や、コンサルタントの判断は、事前

に100%正しいというものを出すことは

できません。


右に進むことが100%正しく、同時に、

左に進むことが100%正しいということ

もあります。


逆に、右に進むことが100%間違いであ

ると同時に、左に進むことも100%間違

いということもあります。


問題なのは、結果は、後からわかることな

ので、結果がどうかよりも、事前にどれだ

け検討を尽くしたかということが大切にな

ります。


そういった議論を、経営者とコンサルタン

トの間で行うことは、とても意義があると

思います。


むしろ、コンサルタントが経営者の解任を

選択肢に入れているというのは、専制的で

あり、判断も誤りやすくなると思っていま

す。


(念のために付言すると、事業再生のよう

な、期間が区切られている関与の場合は、

経営者の変更がやむを得ない場合もあるの

で、経営者の変更そのことを否定するとい

うことではありません)


ちょっと、変なまとめなのですが、社長が

ひとりで何でも決めたり、逆に、コンサル

タントが何でも会社に指示したりというこ

とではなく、両社で大いに議論していくと

いうことが、経営者の方の経営センスを、

より研ぎ澄まされたものにしていくものだ

と私は考えています。


そして、経営コンサルタントは、何でも社

長のいいなりになったり、逆に、何でも口

出しをしたりするのではなく、社長の議論

の相手となって、社長のセンスを高めてい

くことが、大きな役割のひとつであると思

います。

 

 

 

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