鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

不正融資はなぜ起きるのか

先日、ある地方銀行が、金融庁から業務改

善命令を受けたという報道がありました。


(ご参考→ https://goo.gl/rjxb1A


その銀行のことについては、今回の記事の

本旨ではないので、その記事から気になる

ことについて述べたいと思います。


ひとつは、記事の中にある「支店長や副支

店長が営業成績を上げるため、取引先に支

店の担当エリア内に実態のない営業所を登

記させ、融資を実行した」というところで

す。


これは、不正の方法が違いますが、商工中

金が、融資条件が合致するように取引先の

決算書を改ざんしたことと質が同じです。


中小企業の中には、なかなか融資を受ける

ことができないと悩んでいる会社がある一

方で、金融機関としては不正なことまでし

て融資を伸ばそうとしていることには、真

逆の現象であると感じます。


これについては、客観的な裏付けはありま

せんが、銀行から見て融資をしたいと思え

る会社は限られていて、そこで、前述の銀

行は、融資先を増やすために不正な方法を

使うに至ったのだと思います。


だから、なかなか融資を受けることができ

ない会社は、銀行はすべての会社に対して

融資をしたがらないから自社は融資を受け

られないと考えるべきではなく、自社が銀

行から見て融資をしたいと思える会社では

ないと考えるべきでしょう。


これは、当然のことのように思えますが、

融資を受けられないでいる会社経営者の方

とお話しをすると、「銀行は『中小企業』

には融資をするつもりがない」というよう

に、銀行の姿勢に問題があると考えている

(または、銀行に責任転嫁している)方も

いるので、あえて言及しました。


ふたつめは、「金利とは別に根拠不明な手

数料を取引先から取る」という記載です。


最近、銀行は、超低金利時代になり、融資

先からの金利収入が減少したために収益が

悪化したという報道を見かけますが、私は

これは直接的な原因ではないと思います。


金利が低くなっても、適切な利鞘を確保で

きれば銀行の収益は悪化しないので、利鞘

を確保しにくくなっていることが本当の原

因でしょう。


では、なぜ、利鞘を確保できないかという

と、それは、競争が過剰になっているから

でしょう。


よく、銀行は目利き能力を高めるべきだと

主張する人もいますが、目利き能力が高ま

ることによって、現在は赤字であっても、

将来は業況がよくなる会社を見つけること

ができると同時に、現在は黒字であって

も、将来は業況が悪くなる会社を見つける

こともできることになるので、融資総額を

増やすことにはそれほど関係はないと私は

考えています。


仮に、目利き能力を高めることで融資先を

増やすことができたとしても、それが、適

正な利鞘の確保をすることには直接的な関

係はありません。


話が変わりますが、最近まで、物流コスト

が適正に転嫁できないことが社会的な問題

になっていましたが、銀行においても、適

正な利鞘を確保できないと、事業に行き詰

る銀行がたくさん現れるようになり、社会

問題化するのではないかと、私は考えてい

ます。


もちろん、現在の銀行にも改善の余地があ

りますが、それだけでは根本的な問題は解

決しないと思います。


銀行の収益構造は、外部からは見えにくい

ものとなっており、その最大の原因は銀行

自身にありますが、銀行の事業が行き詰る

ことは大きな社会問題となります。


今回の業務改善命令の報道を読み、私は、

単に、ひとつの銀行の事件と受け止めるべ

きではないということを感じました。

 

 

 

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