鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

乗客ではなく乗務員

ネッツトヨタ南国の元社長で同社相談役の

横田英樹さんのご著書、「会社の目的は利

益じゃない-誰もやらない『いちばん大切

なことを大切にする経営』とは」

( https://amzn.to/2KBeyRO )を拝読しま

した。


同書には、好業績が続いているネッツトヨ

タ南国の経営者として、横田さんがどう臨

んできたかが詳しく書かれていますが、今

回は、最も印象に残ったところを紹介した

いと思います。


それは、乗客と乗組員の話です。


横田さんが、ある時、ある社長から、「不

景気で業績が下がり、社員が暗い顔をして

困っているが、どうすればよいか」と相談

されたそうです。


そこで、横田さんは、会社を船に例えて、

次のように答えたそうです。


すなわち、「船が順風満帆で航海している

ときは、乗組員は明るく元気だったが、嵐

が来て船が沈没するかもしれないとなった

ら、みんな元気がなくなるというのは、船

長が追い風のときは機嫌がよく、嵐が来た

ら真っ先に暗くなったからだ。


すなわち、その船の乗組員は、自ら能動的

に行動できるはずの乗組員ではなく、実は

受動的にしか行動しない乗客に過ぎないの

だ」


この例え話は、社員に当事者意識を持たせ

ることを薦めているように思われますが、

横田さんの意図はそれにとどまりません。


詳細は割愛しますが、横田さんのいう当事

者意識とは、部分最適の考え方を持つので

はなく、全体最適の考え方を持つというこ

とです。


もし、社員が部分最適の考えしか持ってい

なければ、自分さえよければいいというセ

クショナリズムでしか行動せず、一方、全

体最適の考えを持っていれば、どうすれば

会社がよくなるのかという組織を優先した

行動をする。


したがって、社長は全体最適の考え方を持

つ社員を育成することが必要だということ

です。


これだけを読むと、誰でも理解できるお話

なのですが、実践することは容易ではない

ようです。


先ほどの相談をした社長は、翌日、「朝礼

で、社員は乗客ではなく乗組員にならなく

てはならないと、社員に檄を飛ばした」と

横田さんに電子メールを送ってきたそうで

す。


しかし、横田さんは、その社長は自分自身

こそが、乗組員ではなく乗客であることに

気づいていないと指摘しています。


ところで、これは私自身のことなのです

が、私が会社員時代に、次のような経験が

ありました。


すなわち、朝礼で、上司が部下に対して大

企業病に気をつけるようにというお話をし

ていました。


その内容は、「大企業病の第一段階は、顧

客からかかってきた電話を社内でたらいま

わしにするようになる、第二段階は、会社

に出勤さえしていれば定年まで安泰だと考

えるようになる、そして末期的症状は、自

分が大企業病になっているという自覚症状

がなくなる」というものでした。


ただ、これはその内容だけからは分かりま

せんが、実は、その上司は仕事そのものは

あまり熱心ではなく、処世術で出世したよ

うな人であったため、失礼ながら部下のほ

とんどがその上司こそ大企業病の末期的症

状に侵されていると考えており、全員が朝

礼が終わるまで笑いをこらえていました。


しかし、人はどうしても自分を棚に上げて

しまう習性があり、私自身もその上司を嘲

笑せず、他山の石としなければならないと

感じました。


話を戻して、横田さんに相談をした社長も

自分自身のことにはなかなか気づかない人

のうちのひとりだったのだと思います。


横田さんは、ネッツトヨタ南国をすばらし

い会社に育てましたが、そのためのいろい

ろな施策の前に、社長が自ら変わらなけれ

ばならないということを認識することが欠

かせないということを、改めて認識しまし

た。

 

 

 

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