鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行の忘れられがちな役割

私がときどき経営者の方からきくことなの

ですが、銀行は、会社ではなく、事業を評

価して融資をすることはできないのかとい

う要望をお持ちのようです。


このようなことを経営者の方が考える理由

は、銀行から融資を受けている会社が、仮

に事業に失敗してしまうと、会社は融資を

返済するために財産を失ってしまうことが

多く、そのため、再チャレンジができなく

なってしまうからということのようです。


そこで、もし会社が事業に失敗しでも、銀

行は融資の返済を免除し、会社が再チャレ

ンジできるようにしてもらいたいというこ

とを考える人がいるとしても、不思議では

ないのかもしれません。


実は、銀行は、このような考え方に基づく

融資を行うことがあります。


それはノンリコースローン(非遡及型融

資)という契約による融資です。


例えば、商業ビルを建てるための融資を、

ノンリコースローンで行った場合、仮に、

その事業が失敗しても、銀行は、そのビル

を処分(売却)して得られた資金以外に、

融資を行った相手に返済を求めません。


ノンリコースローンは、実際は、もう少

し複雑なのですが、理解を容易にするため

に、このような説明とすることをご了承く

ださい)


では、冒頭のような要望を持っている経営

者の方は、ノンリコースローンを利用でき

るのかというと、答えはNOです。


ノンリコースローンは、数十億円以上とい

う大規模な事業でしか利用されず、また、

それに応じる銀行も、複数の銀行が資金の

出し手となって協調して行います。


では、なぜ、ノンリコースローンは大規模

な事業でしか行われないのかというと、事

業の評価が難しく、相当の手続きを経て行

われるので、小口融資には向かないという

ことです。


ただ、今回の記事の本旨は、ノンリコース

ローンの説明ではないので、ノンリコース

ローンに関する記述はここまでとします。


以前にも少し触れましたが、一般的な会社

経営者と銀行の間では、投融資に関する知

識や理解には乖離があります。


(ご参考→ https://goo.gl/nECN2M


融資を受ける側と融資をする側の間で、金

融に関する知識や理解に乖離があることは

当然なのですが、ただ、融資を受ける側に

その知識や理解が少ないために、銀行に対

して誤解をすることは好ましくないと、私

は考えています。


銀行は、預金者から預金を集めて、その資

金を融資を受けたい人に融資をするという

間接金融が主な事業ですが、もし、銀行が

なかったとしたら、融資を受けている会社

はどれくらいの手間が増えるでしょうか?


仮に、1億円の融資を受けている会社があ

るとすると、その融資相当額の出資をして

くれる人か、または、融資をしてくれる人

を探し、個別に自社の状況を説明して契約

をすることになります。


しかし、もし、1億円の融資を1つの銀行

で受けているとすれば、説明も、契約も、

1つの銀行に対して行うだけですみます。


いま、銀行から融資を受けている会社の経

営者の方は、銀行に対して多くの不満があ

るかもしれません。


でも、まず、不特定多数の預金者から、銀

行を通して間接的に自社に対して融資が受

けられるようにしている銀行の機能を考え

ると、銀行に対しての考え方も変わるので

ないかと思います。


だからといって、銀行に対する不満を我慢

しなければならないとか、銀行に対して必

要以上にへりくだらなければならないとい

うことではありません。


例えば、冒頭の、「会社ではなく、事業を

評価して融資をしてほしい」という要望

も、相手が銀行だから持つことができるの

であって、もし、資金の提供者が銀行以外

の投資家しかいないとすれば、説明や契約

の手間などを考えると、そのような要望を

持つまでには至らないのではないでしょう

か?


繰り返しになりますが、今回の記事の主旨

は、銀行に不満を持ってはいけないという

ことではなく、会社経営者の方が銀行に対

して持っている不満の中には、金融に関す

る知識や理解が少ないことが原因となって

いるものもあるということです。

 

 

 

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