鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

昔話

私が銀行職員時代であったときや、経営コ

ンサルタントとして独立した後も、経営者

の方から、昔の苦労話を聴く機会がたくさ

んあります。


まれに、愚痴っぽいものもありますが、多

くは、とても参考になる話として聴かせて

もらいます。


もっとも印象的だったお話は、自社工場が

火事になったとき、社長は、工場の保険金

を工場の建て直しに使わずに、他の会社か

ら製品を買い受けて、自社に発注していた

顧客にその製品を送り、顧客に迷惑がかか

らないようにすることを優先したというお

話です。


自社のことよりも、顧客からの信用を最優

先するべきということが理解できる事例で

した。


その他は、毎日朝から深夜まで働き続けた

お話、販売先が見つかるまでたくさんの顧

客に頭を下げて回ったお話、販売先が倒産

して手形が不渡りになったお話、従業員に

お金を持ち逃げされたお話など、どうやっ

て危機を乗り越えてきたかというお話は、

銀行職員や経営コンサルタントだから聴く

ことができるお話だと思いながら聴いてい

ました。


そして、それは、他の会社への助言にも応

用できる、貴重なものとなっています。


ただ、割合としては少ないのですが、過去

に苦労をしてきた経営者の方の中には、自

分の価値観を、無意識に、従業員の方に求

めようとしてしまう方がいます。


すなわち、従業員の方に起業家精神を持っ

て行動するように伝えている方を、これま

で何人か見て来ました。


私は、従業員の方に、社会人としての資質

を求めたり、自社の事業に必要な力量を身

に付けてもらうことを求めることは必要で

あるとは思います。


でも、そもそも従業員として働いてもらっ

ている方に、かつて、自分が経営者として

経験した苦労を乗り越えるための心構えを

求めることは、いったんは、置いておくべ

きだと思います。


もちろん、従業員の方から望んで指導を依

頼してきた場合は別ですが、従業員を相手

に、経営者並みのことを要求してしまう

と、いわゆるブラック企業と受け止められ

てしまいかねないということです。


これは、実際に見てきて感じることなので

すが、経営者の方が従業員の方に経営者と

しての考え方で行動することを求めること

によって、この会社は従業員を酷使すると

受け止められかねません。


もちろん、経営者の方は、善意で起業家精

神を持つべきだと助言していることは理解

できるのですが、経営者としてではなく、

従業員として働きたいとだけ思っている方

には、悪い影響を与えてしまいます。


とはいえ、自分の価値観を従業員と共有し

たいと考えている経営者の方は、自社から

社長を引き継ぐことができる人が現れて欲

しいと、望んでいるということもあるので

しょう。


これについては、答えはひとつではないと

思いますが、私は、「経営者はこんなにた

いへんなのだから、こういった心構えを持

たなければならない」ということを伝える

のではなく、「社長はたいへんそうだけど

仕事のやりがいもありそうだ」と思われる

存在になることだと思います。


むしろ、「経営者はたいへんだ」と言い続

けることは逆効果だと思います。


この、後継者育成の具体的な手法について

は、また、機会をみて述べていきたいと思

います。

 

 

 

 

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