鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

情報化武装は戦略ありき

私が銀行の本社に勤務していた時、一時、

融資審査システムの電子稟議書の導入に携

わったことがあります。


当時の銀行業界での融資稟議書は、詳細な

理由は割愛しますが、紙として残しておく

ことが必要な面もあったことから、なかな

かペーパーレスが進んでいませんでした。


しかし、融資稟議書の電子化にはそれなり

の利点があり、銀行業界でも徐々に導入が

進んでいました。


そこで、私が勤めていた銀行でも、融資稟

議書のペーパーレス化を進めることを検討

することになり、すでに電子稟議書を導入

しているいくつかの銀行を訪ね、その状況

をきく機会がありました。


そして、やはり、どの銀行も、融資稟議書

の導入には苦労している状況が伝わってき

ました。


その中で、最も印象に残っているのは、従

来の紙に書かれた融資稟議書のフォーマッ

トを、そのまま、パソコンの画面に表示さ

れるよにして欲しいという、融資事務の現

場、特に、融資審査部からの要望が強く、

それに押し切られた銀行のお話しです。


融資審査部の人は、毎日たくさんの融資稟

議書を見ている中で、どこにどの情報が書

かれていて、どういう順番で見るかという

ことがルーティン化しているので、それを

融資稟議書のペーパーレス化で変えたくな

いということのようでした。


私も営業店で融資事務をしていた経験があ

るので、そのような気持ちも理解できるの

ですが、あまり、紙ベースでの形式にこだ

わることも賢明でないと考えています。


なぜなら、パソコンの画面だからこそ、紙

の融資稟議書よりも効率的にたくさんの情

報を表示できる可能性があるからです。


ただ、その銀行では、従来の方法を変えた

くないという要望の方が強く、それに押し

切られたということです。


実は、私は、中小企業の情報化武装のご支

援もしていますが、システムを導入するこ

とで、大きく仕事の仕方が変わることがあ

ります。


その際は、前述の融資稟議書の導入時のよ

うな摩擦が起きることがあります。


情報化武装は、単に、コンピューターを

使って仕事をするというよりは、情報機器

を導入して、より強力な事業戦略にシフト

することが本来の目的なので、仕事のやり

方も変わることは当然です。


このことは、未経験の方には理解しにくい

点なのですが、自社の戦略を変えるという

前提で情報化武装をしないと、情報化をし

たのに、仕事が増えたとか、負担が大きく

なったという印象を従業員の方が抱いてし

まい、情報化武装が失敗するということに

なってしまいます。


もちろん、例えば、出退勤管理をタイム

カードからICカードへ変更して効率化を

図るというような、部分的な効率化もでき

ますが、それだけを積み重ねても、情報化

武装とは言えません。


本来は、新たな戦略を立て、それを従業員

の方がよく理解し、そして情報機器を使い

こなせるスキルを身に付けるという手順を

踏むことで、情報化武装の真の威力が発揮

できます。


情報化武装は、単に、仕事が効率化して楽

になることと考えている経営者の方も多い

と思いますが、本来は、より難易度の高い

戦略を実践するための手段と考えるべきで

す。


そして、10年前、20年前と比較して情

報化武装が容易になった時代においては、

経営資源の少ない中小企業も大企業と互角

に戦うことができる機会が増えたと考える

こともできます。


私は、多くの中小企業が情報化武装で大企

業に負けない事業展開をしていただきたい

と思いながら、そのご支援をしています。

 

 

 

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