鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

取引先分散による経営環境への備え

先日、ある地方銀行が、融資審査書類の改

竄などが原因で、業務の一部停止命令を受

けましたが、その銀行の状況について詳し

調べてみようと思い、同行の有価証券報告

書(上場会社等の決算報告書にあたるもの

で、金融証券取引法により、事業年度終了

後3か月以内に内閣総理大臣(実際には金

融庁)へ提出することになっています)を

見てみました。


そうしたところ、その19ページに、同行

の融資相手の業種ごとの融資残高が記載さ

れている表がありました。


(ご参考→ https://goo.gl/Mu8Kg7


この表で驚いたことは、同行の融資額、約

3.25兆円のうち約91%の約2.96

兆円が、「その他の業種」になっていたこ

とです。


この「その他の業種」とは、住宅ローンな

どの、非事業性の融資や、今回、問題と

なっている、投資用不動産向け融資と思わ

れます。


住宅ローンや投資用不動産向け融資を行う

ことそのものに問題はないのですが、その

ような融資が、融資全体の91%というこ

とは文字通り特異であると思います。


一般的に、銀行では、融資相手の業種があ

まり偏らないように配慮しています。


例えば、観光地が多い地方の銀行では、ど

うしても観光業への融資が増えてしまいま

す。


しかし、もし、観光業が不況になると、そ

の銀行もその不況の影響を受けやすくなっ

てしまうので、前述のように、融資相手の

業種が偏り過ぎないように注意をしていま

す。


一方で、同行では、非事業性の融資が91

%という状況は、仮に、現時点で収益の見

込まれる相手への融資であったとしても、

社会状況が変わったときの影響も大きくな

るというリスクを抱えることになります。


話がそれますが、銀行の監督官庁である金

融庁は、当然、同行のこのうような状況は

把握していたはずで、それはリスクがある

としても銀行独自の判断で収益を高めるた

めの戦術と見ているという中立的な見解を

示しているのであれば別ですが、前長官

が、同行をお手本とすべき銀行と述べてい

たことは、大きな問題があると思います。


話を戻して、同行が融資相手をあえて偏重

させていたことは、収益を高めようとして

いたという意味では評価できなくもないの

ですが、偏重にはリスクも伴うということ

が今回の記事の結論です。


これを中小企業にあてはめてみた場合、販

売先、販売地域、販売客層を絞るという戦

術は有効であると、私は考えています。


それは、中小企業は小回りが利くからで、

経営環境が変わったときの体制変更も、比

較的容易であるという面と、中小企業は経

営資源が少ないので、幅広く事業展開する

よりも、事業領域を絞る方が効率性が高い

からです。


しかし、事業規模が大きくなるにしたがっ

て、小回りは聞きにくくなるので、取引相

手を分散させていくことが必要になってい

くと言えるでしょう。


売上が増えていくにしたがって、事業の柱

を1つから2つへ、そして3つへと、タイ

ミングを見計らって増やしていくことは、

経営環境の変化に備えてリスクを低減させ

るために大切です。

 

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20181007200032j:plain